チュートリアル 4690

ディジタル体温計を設計する上での重要な検討事項

筆者: John DiCristina

要約: このアプリケーションノートはディジタル体温計の種類と、サーミスタおよびサーモパイルによる体温計算の基本的な考え方を紹介します。自然対数を使用する場合とルックアップテーブルを使用する場合の比較、計算速度と精度とのトレードオフ、およびディジタル温度計に必要となる様々な部品についても議論します。

概要

医療用体温計は、37℃前後の狭い温度範囲で人体の温度を測定します。この10~15年の間に、測定の迅速化と簡易化を実現する新しい技術の登場や、従来の温度計で使用されていた水銀が環境に及ぼす害への懸念から、棒状水銀体温計の代わりにディジタル体温計が使用されるようになってきました。市販されているディジタル体温計には、主にプローブ式と耳式の2種類があり、それに加えて側頭部式や前頭部式も登場しています。プローブ式体温計は、従来の棒状水銀体温計と同じように使用され、口、直腸、脇の下などの温度を測定します。耳式体温計は非接触型であり、外耳道から放射される赤外線エネルギーを測定します。側頭部式と前頭部式の体温計は、通常は接触型であり、側頭部や前頭部から放射される赤外線エネルギーを測定して体温を算定します。

プローブ式ディジタル体温計
プローブ式ディジタル体温計

耳式ディジタル体温計
耳式ディジタル体温計

前頭部式ディジタル体温計
前頭部式ディジタル体温計

測定

プローブ式体温計は、プローブの先端に組込まれたサーミスタを使用して体温を測定します。サーミスタは、温度の変化によって抵抗値が変わる抵抗器です。高精度抵抗と直列接続したサーミスタで構成される分圧器をリファレンス電圧で駆動し、中間点でシングルエンド測定を行うか、またはサーミスタの両端で差動測定を行います。リファレンス電圧の経時的なドリフトによって生じる誤差を除去するため、別の回路で同じリファレンス電圧と別の高精度抵抗を使用する場合もあります。サーミスタディバイダ回路とアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)が同じリファレンス電圧を使用している場合は、高精度較正抵抗は必要ありません。そのような場合、リファレンス電圧は温度の計算から除外されるため、リファレンスの要件が緩和されます。

サーミスタには自然対数を使用する較正が必要であり、その処理にはマイクロコントローラで多大な演算サイクルとコードスペースが費やされる場合があります。もう1つの方法として、ルックアップテーブルを使用して温度を計算することもできます。通常はこの方式の方が計算は高速で、コードもコンパクトになります。ただし、テーブルのサイズとテーブルエントリ間の補間誤差はトレードオフの関係にあり、テーブル内のポイント数を増やすと補間誤差が減少します。この測定には12ビット以上のADCで十分であり、測定範囲と必要な精度に応じて利得段を使用します。

ディジタル体温計のファンクションブロックダイアグラム。マキシムが推奨するディジタル体温計の設計ソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/thermometerをご覧ください。
ディジタル体温計のファンクションブロックダイアグラム。マキシムが推奨するディジタル体温計の設計ソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/thermometerをご覧ください。

耳式体温計は、サーモパイルとサーミスタを使用して体温を測定します。サーモパイルは、出力電圧を高めるために複数の熱電対を直列に接続したものです。サーモパイルは、吸収したエネルギーに比例した出力電圧を生成します。サーモパイルでは黒体放射の原理を利用しています。絶対零度よりも高温の物体は、必ずエネルギーを放射します。この場合、赤外線スペクトルが測定されます。外耳道からの赤外線放射はサーモパイルに集中され、その低レベルの電圧出力は増幅され、分解能12ビット以上のADCによって変換されます。サーミスタはサーモパイルの冷接点温度を測定し、サーモパイルとサーミスタの両方の測定結果を使用して体温が計算されます。

側頭部式と前頭部式の体温計も、耳式体温計と同じ技術を利用して赤外線放射を測定します。人体の測定部位が異なるだけです。側頭動脈体温計と呼ばれる特化した前頭部式体温計では、前頭部にある側頭動脈の温度と周囲温度を測定し、これらの温度を使用して体温を計算します。

ディジタル体温計は、水銀体温計よりもはるかに高速です。サーミスタを予熱することによって最終温度への到達を加速する場合もあります。多くの場合、体温の算定には予測アルゴリズムが使用されます。このアルゴリズムは、温度センサーが完全に安定するのを待つことなく、測定サイクル開始時の応答とサーミスタの特性に基づいて最終温度を予測します。

電源管理

プローブ式体温計はボタン電池1個またはボタン電池2個を使用し、耳式体温計はボタン電池1個またはAAA (単4形)アルカリ電池2本を使用するのが普通です。これらの体温計は両方とも、選択された回路に応じて、電池で直接動作させるか、またはステップアップスイッチングレギュレータで動作させることができます。

前頭部式体温計の中には、9Vトランジスタバッテリを使用するためにステップダウンスイッチングレギュレータまたはリニアレギュレータを必要とするものがあります。このようなアプリケーションでは、低いシャットダウン電流、およびスイッチングレギュレータを使用していないときにオフにする機能が、長いバッテリ寿命を確保するために極めて重要です。電圧監視回路がバッテリを監視し、バッテリがマイクロコントローラの安全動作電圧を下回った場合はマイクロコントローラにリセットを提供することができます。さらに、ADCへの追加の入力でバッテリを測定し、バッテリ交換時期が迫っていることをユーザーに警告することもできます。

可聴式インジケータ

可聴式インジケータは、サーミスタの使用準備が完了した時点や測定が完了した時点を示すために使用されます。これは、通常マイクロコントローラのタイマー出力からシングルエンドまたは差動で駆動されるビープ音またはブザーです。

ディスプレイとバックライト

すべてのディジタル体温計は、ドライバを内蔵したマイクロコントローラで駆動することができる単純なLCDディスプレイを使用しています。ディスクリートLEDドライバで駆動される1個の白色LED (WLED)、またはエレクトロルミネセント(EL)シートとドライバを使用することによって、バックライトを実装することができます。
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