チュートリアル 4688

肺活量計入門と電気部品の選択で重要となる設計上の検討事項

筆者: Franco Contadini

要約: このアプリケーションノートは肺活量計とその基本機能についての紹介をします。検査室用の装置と診療現場での検査用のポータブル機器について議論し、各クラスの肺活量計の電気部品の選び方について手引きします。流量検出、信号コンディショニング、接続機能、電源およびディスプレイなどのファンクションブロックについて論じます。

概要

肺活量計は、肺機能の評価のために、吸入され、吐き出される空気の量と速度を測定し、喘息、肺気腫、および嚢胞性線維症などの肺疾患に対する第1段階の診断検査を行います。

肺活量計は、基本的に検査室用の装置とポータブルの2つの種類の装置に分けられます。前者は、デスクトップコンソールまたはキャビネットサイズの装置で、訓練を受けた技術者が操作します。後者は、小型のデスクトップ装置またはハンドヘルド装置で、一般診療科や患者宅での使用が想定されています。

検査室用の肺活量計には、高い性能と精度が要求されます。デスクトップ型の装置は、高精度の肺活量測定を行い、流量、1回換気量、および最大換気量など、様々な検査を実施することができる必要があります。

体プレチスモグラフなどのキャビネットサイズの装置は、全肺気量、機能的残気量、残気量など、高度な肺機能検査を実施するために使用します。

ポータブルの肺活量計は、診療の場が臨床検査室から一般診療科や患者宅に移るにしたがって普及しつつあります。一般開業医は、患者の基礎数値の確認や肺疾患の検出のために肺活量計を使用することが多くなっています。これらの新しい市場で肺活量計が受け入れられるためには、低コストであることが重要です。サイズと消費電力も、設計上重要な考慮事項になります。これらの装置は、USBやバッテリ電源で動作し、充電機能を内蔵し、複数の接続オプションを備えている必要があります。

版権所有/提供者:Smiths Medical
版権所有/提供者:Smiths Medical

版権所有/提供者:COSMED SRL
版権所有/提供者:COSMED SRL

肺活量測定

肺活量計を使用すると、以下のような複数のパラメータを測定することができます。

FVC (努力肺活量):できるだけ大きく息を吸って、一気に吐き出すことができる空気の量。

FEV1 (1秒努力呼気量):FVC測定中の最初の1秒間に吐き出すことができる最大空気量。

PEF (最大呼気流量):できるだけ大きく息を吸って、一気に吐き出したときに達成した最大流量(または流速)。

装置の複雑さに応じて、1回換気量、最大換気量、流量ループ、気管支誘発といったその他のパラメータの測定も実施することができます。

デスクトップ型肺活量計のシステムブロックダイアグラム。マキシムが推奨する肺活量計ソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/spirometerをご覧ください。
デスクトップ型肺活量計のシステムブロックダイアグラム。マキシムが推奨する肺活量計ソリューションの一覧については、japan.maximintegrated.com/spirometerをご覧ください。.

酸素測定

動脈血の酸素飽和度を非侵襲的に測定するパルス酸素測定機能が内蔵されている場合は、喘息の診断検査も可能です。この機能は、歩行テストの包括的ソリューションを提供することができます。また、この機能を備えた肺活量計は、スポーツ医学における体力テストにも適用することができます(パルス酸素濃度計の設計の詳細については、このガイドの「パルス酸素濃度計」の章を参照してください)。

肺活量計ソリューション

流量検出のメカニズム

肺活量計では、流量測定にタービントランスデューサを使用することがよくあります。このトポロジでは、被験者が生み出した気流に反応して回転羽根が回ります。羽根が光線をさえぎるときに回転数をカウントし、気流の速度と量を測定します。

タービントランスデューサの代わりに差動圧力センサーを使用する場合もあります。一般に呼吸気流計と呼ばれるこれらの設計では、低流量を高い精度で測定することができます。もう1つの利点はコストです。これらの設計は比較的安価であるため、圧力トランスデューサによって使い捨ての呼吸気流計を実現することができます。

フロントエンド

タービンベースの肺活量計では、流量計をマイクロコントローラに接続するフロントエンドを使用するのが比較的簡単です。それによって、光学エンコーダからの信号をシュミットトリガで容易に管理することができます(図1)。

図1. タービントランスデューサの標準的なフロントエンド
図1. タービントランスデューサの標準的なフロントエンド

圧力センサーを使用した場合、フロントエンドはより複雑になります(図2)。この場合は、センサー出力を補正して最終オフセットを取り除くために信号コンディショナが必要です。得られた信号はアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)でディジタル化する必要があります。このADCは、約1kspsのサンプリングレートと12ビット以上の分解能が必要です。これらの設計には、高性能ADCを内蔵したマイクロコントローラが最適です。

図2. 圧力センサーの標準的なフロントエンド
図2. 圧力センサーの標準的なフロントエンド

接続機能

デスクトップ型の肺活量計は、プリンタとキーボードを備え、遠隔医療用にRS-232、USB、Bluetooth®といった複数の通信インタフェースを内蔵しているのが一般的です。ハンドヘルド型の肺活量計では、通常、データ転送とバッテリ充電にUSBを使用します。また、Bluetooth機能を内蔵している場合もあります。

肺活量計のデータを管理し、患者を監視するには、USBと無線の接続オプションが重要です。それらのインタフェースでデータをPCに送ることによって、保存や分析を行ったり、遠隔監視が要求されるときには医療機関に転送したりすることができます。

電源

デスクトップ型の肺活量計は一般に電源ラインで給電しますが、リチウムイオン(Li+)やニッケル水素(NiMH)の充電式バッテリも内蔵しているのが普通です。これらの肺活量計では、感熱式プリンタに高電圧が要求されるため、通常は6セルのバッテリパックを使用します。また、ステップアップコンバータを使用して5Vを9Vに昇圧する場合は、USBで給電することもできます。図3に示すとおり、OR-ingの段で、ロジック用の3.3Vレイルと酸素測定用の5Vレイル(内蔵されている場合)の生成に使用されるLDOのソースが選択されます。

図3. デスクトップ型肺活量計の電源例
図3. デスクトップ型肺活量計の電源例

ハンドヘルド型の肺活量計は、ボタン電池1個または充電式のLi+バッテリ1個で給電することができます。3Vのボタン電池を使用する場合は、低電力ステップアップコンバータを使用して必要な電圧を生成することができます(図4)。充電式のLi+バッテリには、デュアル入力(USBとACアダプタ)を備えたバッテリチャージャを使用して、最適な電源を自動選択することができます(図5)。

図4. ボタン電池1個を使用したハンドヘルド型肺活量計の電源例
図4. ボタン電池1個を使用したハンドヘルド型肺活量計の電源例

図5. 充電式のLi+バッテリ1個を使用したハンドヘルド型肺活量計の電源例
図5. 充電式のLi+バッテリ1個を使用したハンドヘルド型肺活量計の電源例

マキシムのSmart Power Selector™回路は、入力電源がシステムで使用されていないときはバッテリを充電することによって、USBやアダプタの限られた電力を最大限に活用します。この方式には、システムを低残量のバッテリで動作させたり、バッテリをまったく使用せずに動作させたりすることができるという利点もあります。

このバッテリ管理回路では、さらに残量ゲージを使用して利用可能な容量を見積もります。また、ステップアップおよびステップダウンコンバータを使用して、2.7V~4.2Vの入力から3.3Vと5Vの出力を供給します。

ディスプレイ/キーボード

肺活量計では、通常、バックライト付きのフルカラーLCDを使用して、患者の情報、肺活量測定パラメータ、呼吸曲線、およびシステム情報(バッテリ残量など)を表示します。最近の装置では、プログラミングのプロセスをわかりやすくするために、タッチスクリーンとグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を組み合わせて使用することが多くなっています。ユーザーの入力に対して視覚的、聴覚的、および触覚的に応答することによって、より操作性の高い設計が可能になります。マキシムの高度なタッチスクリーンコントローラは、触覚型のフィードバック、タッチ処理によるバストラフィックの低減、自律モードによる高精度のジェスチャ認識を実現します。

キーボードやキーパッドを備えた装置では、静電放電(ESD)保護を提供するデバウンサによってキースイッチを管理することができます。ESD保護の内蔵によって、ディスクリート保護部品が 不要になると同時に、IEC 61000-4-2のESD要件への適合が容易になります。