チュートリアル 2997

スイッチングレギュレータの基本的なレイアウト手法


要約: この記事では、スイッチングレギュレータ基板のレイアウトについての基礎をいくつか取り上げています。この記事はステップアップスイッチングレギュレータを重点的に取り扱っていますが、この記事が対象とする概念は、他のタイプのスイッチングレギュレータを取り扱うときにも役立ちます。この記事は、接地方式、部品配置、ノイズ干渉の低減、および浮遊容量/浮遊インダクタンスの低減の重要性について述べています。

スイッチングレギュレータ基板の最適なレイアウト方法を検討するときには、スイッチングレギュレータ基板の目的を思い出してください。この目的とは、一定の大きさの安定した電圧を供給するということです。経験豊富なレイアウト設計者は、接地方式に細心の注意を払うことで安定した電圧を実現します。彼らは、グランドに完璧はないと考えています。グランドは「単なるグランド」ではありません。グランドの対処こそが回路の成功にとって極めて重要なことなのです。また、設計者はさまざまなレギュレータ部品の配置に特別の注意を払っています。

グランド

おそらく、見習いエンジニアにグランドを表す3本の小さな線を引かせるのは間違いでしょう。あの記号は、グランドは完璧であるという幻想を助長する傾向があります。代わりに電源やバッテリのマイナス端子にさまざまな回路部品を接続するためにより長い線を引くことで、グランドが完全でないことを容易に直観することができます。これらの線は、グランドプレーンやグランドトレースの抵抗とインダクタンスを通じて電流が電源に逆流することを示唆しており、その過程で電圧降下が生じます。したがって、一般にゼロボルトと呼ばれる完全に安定した電圧からグランドが変化することを顕著に示します。
図1のブーストコンバータによって、不完全なグランドの原因を明らかにする必要性を示します。このレギュレータは、コントローラIC内のリファレンスと2つのフィードバック抵抗器に依存して特定の電圧を生成しています。正確なフィードバック(したがって正確な出力)を得るためには、リファレンスのグランド、抵抗分圧器、および出力コンデンサが同一の電位でなければなりません。より具体的に言えば、コントローラのアナロググランドピン(これはリファレンスのグランドになります)の電圧と抵抗分圧器のグランド端子の電圧が、出力コンデンサのグランド端子の電圧と等しくなければならないということです。出力コンデンサのグランド端子の電圧が重要なのは、通常、負荷(レギュレータの正確な出力電圧を必要とする)が出力コンデンサの隣りに配置されるためです。したがって、その特定のグランド部のリファレンスとなるフィードバックが必要となります。
図1. この正常に機能しているステップアップスイッチングレギュレータ用の基板レイアウトの背景にある概念は、他のスイッチングレギュレータトポロジのレイアウトにも当てはまります。
図1. この正常に機能しているステップアップスイッチングレギュレータ用の基板レイアウトの背景にある概念は、他のスイッチングレギュレータトポロジのレイアウトにも当てはまります。
コントローラは、別の理由で、正確な電圧のフィードバックを必要とします。ジッタのないスイッチングを実現するためには、コントローラは出力電圧の交流摂動についての正確なパターンを必要とします。コントローラはフィードバックを介して正確なパターンを受け取ります。

部品配置

接地方式に加え、レギュレータの部品を適切に配置することが重要になります。たとえば、コントローラ内部のリファレンスは、REFピンの近くに配置されたコンデンサを用いてバイパスする必要があります。リファレンス上のノイズが出力電圧に影響を及ぼす可能性があります。また、このバイパスコンデンサのグランド端子はノイズのないグランドに接続する必要があります。このグランドは(コントローラのアナロググランドピンと抵抗分圧器のグランド端子とともに)ノイズの多い電源グランドから絶縁されています。さらに、ノイズの多い電源グランドからこのノイズのないグランドを絶縁するのが重要です。
なぜノイズの少ないグランドからノイズの多いグランドを絶縁しなければならないのでしょうか。結局のところ、最終的には2つのセクションのグランドをまとめて接続しなければなりません。このような絶縁が必要となる理由は、レベルの高いスイッチング電流がアナログ信号と同じグランドリターン経路を通ってバッテリやパワーサプライに戻ることを阻止するためです。これが生じると、これらの影響を受けやすい信号のグランド経路が妨害されることになります。つまり、グランドの抵抗とインダクタンスを通じて流れるレベルの高いスイッチング電流が、リターン経路を伝わる電圧を変動させるということです。
ノイズの多い電源セクションを調べれば、他の回路からこの電源セクションを絶縁することが最重要であることがわかります。図2は、レギュレータの電源セクションの2つの電流経路を描いています。MOSFETがオンのときには、電流は入力ループを通って流れ、オフのときには出力ループを通って流れます。2つのループのそれぞれを構成している部品を互いに近接して配置することによって、高電流はレギュレータの電源セクション内(およびノイズのない部品のグランドリターン経路の外)にとどまります。したがって、CIN、L1、およびQ1は、互いに近接させる必要があります。CIN、L1、D1、およびCOUTも近接させる必要があります。どの部品が互いに近接しているかを明らかにするため、図2では、幾分通常とは異なる方法でこの2つのループを描いています。
図2. ここに図示した2つの電流ループのそれぞれの部品を互いに近接して配置するには、特別な注意を払う必要があります。短くて幅の広いトレースを使用してこの余裕のないレイアウトを実現することにより、効率の改善、リンギングの低減、さらにはノイズの少ない回路部品への干渉防止を達成することができるようになります。
図2. ここに図示した2つの電流ループのそれぞれの部品を互いに近接して配置するには、特別な注意を払う必要があります。短くて幅の広いトレースを使用してこの余裕のないレイアウトを実現することにより、効率の改善、リンギングの低減、さらにはノイズの少ない回路部品への干渉防止を達成することができるようになります。
通常、実際のレイアウトには多少の妥協が伴います。上述2つのループの部品をレイアウトする際にも妥協が伴う場合があります。互いに近接して配置すべき部品のうち、どの部品を実際にともに配置するのかを選択しなければならない場合には、各ループのどの部品に不連続電流が流れているのかを明らかにしてください。このような部品は、浮遊インダクタンスを最小限に抑えるために互いに近接して配置すべき最も重要な部品です。以下の「浮遊容量と浮遊インダクタンスを最小限に抑える方法」を参照してください。

その他の検討事項

ステップアップスイッチングレギュレータに電力を供給するのがバッテリであろうがパワーサプライであろうが、電源は非ゼロの抵抗を示します。これは、レギュレータが急速に変化する電流を電源から取り出すときに、電源の電圧が変動することを意味します。この結果を改善するために、基板設計者は入力バイパスコンデンサを上述の2つの電源ループの近くに配置します(場合によっては2つのコンデンサが使用されます。すなわち、セラミックコンデンサと有極コンデンサが並列に接続されます)。これは、電源セクションに給電される電圧を安定させるために行われるものではありません。つまり、電源セクションに給電する電圧が変化しても、電源セクションは問題なく機能します。それよりも、バイパスコンデンサを電源ループの近くに配置することによって高AC電流を電源セクションに閉じ込めることができるため、これらの電流がノイズの少ない回路に干渉することを防止することができます。
干渉はどのようにして発生するのでしょうか。これには3つの形態があります。第1に、上述したように、レギュレータのアナログ回路内の影響を受けやすい部分のグランドリターン経路の一部または全部を通って電源セクションのグランドリターン電流が流れる場合、グランド経路内の抵抗とインダクタンスが原因で、スイッチングノイズがそのグランド経路に加わることになります。このグランドノイズによって、レギュレータの出力の精度が低下することになります。さらにグランドノイズは、同一基板上にある他の影響を受けやすい回路を妨害するおそれもあります。第2に、グランド経路に対する懸念に似ていますが、バッテリまたはパワーサプライの正レイル上のスイッチングノイズが、同じレイルによって電力が供給される他の部品に伝導される可能性があります。これにはコントローラICが含まれているため、コントローラICのリファレンスが変動するおそれがあります。入力バイパスコンデンサの両端の電圧が変動する場合、コントローラの電源ピンにR/Cフィルタを追加すると有効な場合があります。第3に、AC電流が流れる面積が大きくなると、AC電流が生成する磁場も大きくなり、したがって、これらの電流が干渉を引き起こす可能性が高くなります。入力バイパスコンデンサを電源セクションの隣りに配置することによってその面積、したがって電位干渉を最小限に抑えることができます。
2つの分圧抵抗器の配置が適切でない場合にも、ノイズによって問題が生じる可能性があります。2つの抵抗器をコントローラのFBピンの隣りに配置することによって、比較的ノイズの少ない電圧をコントローラにフィードバックすることができるようになります。このように抵抗器を配置することによって、抵抗分圧器の中間点からスイッチングレギュレータのFBピンに至るトレースの長さを最小限に抑えることが可能です。これが必要となる理由は、抵抗分圧器とFBピンにおける内部コンパレータの入力のどちらもがハイインピーダンスであるため、これらを結合するトレースが、スイッチングレギュレータによって必然的に生成されるノイズを(主に静電結合を通じて)受けやすくなるからです。ただし、レギュレータの出力から抵抗分圧器の「上部」まで伸びるトレース、および抵抗分圧器の「下部」すなわちグランド側から出力コンデンサのグランド側まで伸びるトレースを比較的長くすることができます。つまり、スイッチングレギュレータの低出力インピーダンスによって、これらのトレース上の結合ノイズを低減することができます。

浮遊容量と浮遊インダクタンスを最小限に抑える方法

図1の回路において電圧が急激に変化するノードを特定することができれば、容量を最小限に抑えるべき場所がわかります。なぜなら、コンデンサの電圧は急激には変化しないからです。インダクタ、ダイオード、およびMOSFETの接合によって形成されるノードが、回路の電源部分における唯一の該当するポイントです。スイッチがオンのとき、このノードはグランド近くにあり、スイッチがオフのとき、出力電圧を超えるダイオードドロップまで上昇します。必ずこのノードにて浮遊容量が最小限となるように基板のトレースを這わせてください。浮遊容量によってこのノードの電圧遷移が遅くなると、レギュレータの効率が悪化することになります。このノードのサイズを小さく保つことができれば、ノードの浮遊容量が低減するだけでなく、浮遊容量によって生じるEMI (電磁妨害)も低減することができるようになります。ただし、細いトレースを使用してノードの領域を狭くすることのないようにしてください。細いトレースではなく、幅の広い短いトレースを使用してください。
電流が急激に変化する回路分岐を特定することができれば、インダクタンスを最小限に抑えるべき場所がわかります。コンデンサの両端の電圧の場合と同様、インダクタを流れる電流は急激には変化しないからです。インダクタンスを流れる電流が急激に変化すると、そのインダクタンスにおける電圧が瞬時に上昇してリンギングを生じ、EMI問題を引き起こすおそれがあります。さらに、そのリンギング電圧の振幅は、さまざまな回路部品に損傷をもたらすのに十分なほど大きくなる可能性があります。
図3は、回路の3つの分岐の電流波形を示しています。電流I1は、比較的緩やかに変化するため問題を生じることはありません。しかも、ここにはすでに大きなインダクタンス、すなわちL1そのものが存在しています。ただし、MOSFETに直列なインダクタンスは、電流I3が急激に変化するために実際に問題を引き起こす可能性があります。この直列インダクタンスには、I3のリターン経路内のあらゆる部分からCINのグランド端子までのインダクタンスが含まれています。つまり、Q1のリード線からの浮遊インダクタンス、およびグランドリターン経路そのもののインダクタンスが含まれています。CINを流れる電流は急激な変化を受けないことに留意してください。すなわち、この電流はインダクタ電流のAC部分(I1)に等しくなります(バッテリがDC部分を供給します)。また、急激に変化する電流は、MOSFETがオフのときに形成されたループの一部にも流れます。この電流(I2)は、D1とCOUTの両方に流れ、さらにグランドリターン経路の銅にも流れます。したがって、これらの部品とそのグランドリターン経路の浮遊インダクタンスを最小限に抑える必要があります。
図3. スイッチングレギュレータ回路の分岐の電流波形によって、浮遊インダクタンスを最小限に抑えるべき場所がわかります。急激に変化する電流(すなわちI2とI3)は、経路内のインダクタンスを最小限に抑えることが必要となります。
図3. スイッチングレギュレータ回路の分岐の電流波形によって、浮遊インダクタンスを最小限に抑えるべき場所がわかります。急激に変化する電流(すなわちI2とI3)は、経路内のインダクタンスを最小限に抑えることが必要となります。
負荷のリード線のインダクタンスも問題となるのかどうかを検討するときには、「ESR (等価直列抵抗)が十分に小さくて出力コンデンサが十分に大きい場合には、比較的安定した電圧状態が維持される」ことを思い出してください。これは、負荷抵抗器を流れる電流が大きく変化することがなく、したがって負荷抵抗器に直列なインダクタンスは、負荷自体が動的に変化しない限り、問題にはなりません。

実現可能な基板レイアウトを作成する方法

スイッチングレギュレータ回路のグランド部分を処理する方法にはいくつかあります。1つは、すべてのグランド接続について単一のグランドプレーンを使用することですが、この方法はおそらく十分には機能しないでしょう。この手法を使用すると、回路の電源部分のグランド電流は、抵抗分圧器、コントローラの特定ピンのバイパスに使用するコンデンサ、コントローラのアナロググランド、またはその3つのすべてのグランド電流と同じグランド経路を流れる可能性があるため、これらのグランドに変動を生じるおそれがあります。
おそらく最善の手法は、2つの別々のグランドセクション、すなわち1つは電源部品用、もう1つはノイズの少ないレギュレータのアナログ部分用のグランドセクションを設けることです。図4aを見てください。電源回路のグランド部分は、出力コンデンサと入力コンデンサのグランド端子とMOSFETのソースで構成されています。これらは、短くて幅の広いトレースで接続する必要があります。電源回路のグランドトレース(および他の電源トレース)の幅を最大、かつ長さを最小にすることによって、抵抗が低減し、効率が改善されます。
アナロググランドセクションには、コントローラのアナロググランドピン、抵抗分圧器のグランド端子、およびコントローラの特定ピンをバイパスするコンデンサのグランド端子(ただし、電源入力バイパスコンデンサであるCINは除く)用のグランドリターン経路が設けられています。アナロググランドはプレーンである必要はありません。長くて広範囲に広がったトレースを使用することができます。その理由は、電流が低レベルで比較的安定しているからです。つまり、トレースの抵抗とインダクタンスは大きな要因とはなりません。
図4aに示すように、コントローラのAGNDピンをPGNDピンに接続します。2つのグランドセクションをこれらのピンにて接続することによって、アナロググランド内にスイッチング電流が循環しなくなります。実質的に電流はその経路を流れないため、AGNDとPGND間の接続はかなり狭くすることができます。AGNDピンをCOUTのグランド端子にじかに接続することが理想ですが、多くのコントローラICでは、その2つのグランドピンを互いにじかに接続することが必要となります(接続しないと、2つのピン間の電圧が、2つのピン間に接続されたダイオードをオンにするほど大きくなった場合に、問題が生じる可能性があります)。PGNDからCOUTまでのトレースを短く、かつその幅を広くすることによって、コントローラ内部のフィードバック抵抗器とリファレンスは基本的にレギュレータの出力と同じグランド電位を共有することになります。これが重要である理由は、これらの部品はこの出力電圧に設定されて制御されるからです。
図4. アナロググランドと電源グランド領域を別々に使用することで、高い振幅の電源グランド電流をより低い振幅のアナロググランド電流と離し、この低振幅の電流が流れる経路を保護します。
図4. アナロググランドと電源グランド領域を別々に使用することで、高い振幅の電源グランド電流をより低い振幅のアナロググランド電流と離し、この低振幅の電流が流れる経路を保護します。
ときには、アナログ部または電源部のグランドに接続すべきではないコントローラをバイパスするコンデンサがあります。ステップアップスイッチングレギュレータのV+ピンをバイパスするR/Cフィルタが一例です(前述のとおり)。この場合、アナロググランドにとってコンデンサのグランドピンのノイズは極めて多く、同時に、コンデンサにとって電源グランドのノイズは極めて多くなります。このようなコンデンサは、コントローラのAGNDピンとPGNDピンを接続するトレースにじかに戻す必要があります(コントローラに1つのグランドピンしかない場合は、GNDピンにじかに戻します)。
最後に、基板の層の数がPCBのレイアウトに影響します。多層基板では、中間層の1つをシールドとして使用することができます。シールド層を使えば、ノイズの多い部品の基板の反対側に部品を配置することが可能で、干渉の可能性がほとんどなくなります。シールド層を組み込むとき、シールドを通して電源部品のグランド側のリード線を接続するのは一般的にお勧めすることができません。代わりに、隔離されて限定された領域にグランド側のリード線を接続することによって、これらの電流がどこを流れてどのように影響するかを知ることができます。
層の数にかかわらず、これらの電源部品は最上層でグランド接続してください。これを実施することで、他のグランドを妨害するおそれのない既知の経路に電流を閉じ込めることができます。最上層での接続が不可能な場合は、絶縁された銅の部品とビアを使用して、他の層を通じてグランド接続を行うことも可能です。抵抗とインダクタンスを低減するため、各接続に、複数のビアを並列に使用してください。
この記事に類似した内容が2003年11月27日号の雑誌「EDN」に掲載されています。