デザインソリューション 7348

USB-C Power Deliveryのデータラインには強化された保護が必要

筆者: Nazzareno Rossetti

要約:

USB-CおよびUSB-C Power Deliveryは電圧および電力レベルが向上しています。新しい反転可能コネクタはUSB Micro-Bよりピンピッチが狭いため、短絡のリスクが高まります。これは、常に増大し続けるポータブル機器の複雑性との組み合わせで、強化されたESD、サージ、および過電圧保護の要件につながります。このデザインソリューションは、大幅に低いBOMおよびより小型のPCBスペース占有面積につながる小型、フル機能の保護ICを紹介します。


はじめに

新しいUSB Type-C® (USB-C)ケーブルおよびコネクタ仕様は、デジタルカメラや超薄型タブレットなどの電子機器の相互接続と給電の方法を大幅に簡素化します(図1)。この仕様は最大15W のUSB-C充電アプリケーションに対応し、USB-C Power Delivery (PD)では充電が100Wに拡張され、相互に充電可能な非常に多くの種類の機器が含まれます。USB Type-Cの登場とともに、システムを保護する上で新しい課題が生じています。新しいコネクタはUSB Micro-Bよりピッチが狭いため、VBUSへの機械的短絡のリスクが高まります。さらに、USB PDに伴う高電圧によって、より堅牢な保護が必要になります。最後に、常に増大し続ける電子的負荷の複雑性によって、ESDおよび電圧サージからの保護の強化が要求されます。このデザインソリューションは、USB Type-C PDアーキテクチャおよびD+/D-データ信号保護に関する課題について概説します。その後、最小限のBOMおよびPCB占有面積でこれらの課題に対応することができる高集積2 × SPDTスイッチを紹介します。

図1. USB-Cケーブル経由でタブレットに接続されたデジタルカメラ 図1. USB-Cケーブル経由でタブレットに接続されたデジタルカメラ

USB-C PDシステム

図2は、USB-Cケーブルに接続するために実装されリチウムイオン(Li+)バッテリによって給電される標準的なポータブルパワーマネージメントデバイスフロントエンドを示しています。

VBUSが接続されている場合、VBUSがチャージャ、システム、およびその他のブロックに給電します。この状態で、バッテリが充電されます。VBUSが切断されると、バッテリがシステムに給電します。USB-Cケーブルでは、CC1およびCC2ピンによってポート接続、ケーブル方向、ロール検出、およびポート制御が決定されます。D+/D-ラインは標準USB-C通信ラインで、480Mbpsの速度でデータを処理し、D+/D-保護デバイスによって保護されます。PDコントローラは給電プロトコルを実装します。

図2. USB PDパワーマネージメントシステム 図2. USB PDパワーマネージメントシステム

保護の課題

電源の電気的サージおよび静電気放電(ESD)は一般的なもので、電子的負荷および機器に干渉し、損傷の原因となります。ESDは人体から電子回路への静電気の転移によって引き起こされ、ハンドヘルド電子機器にとって重大な問題です。サージは落雷によって発生するか、または落雷位置の付近に敷設された長いケーブル内で誘導されます。スイッチまたはリレーはオン/オフ動作時にサージを引き起こす可能性があります。また、ロードダンプは自動車でバッテリ接続を切断することによって生じるサージです。優れたデータライン保護ICは、大幅なデータの劣化なしに適切な保護を提供する必要があります。

集積型ソリューション

1つの例として、MAX20334はポータブル機器で使用するための過電圧保護を備えた2 × SPDTスイッチです(図3)。このICは、ダウンストリームのデータラインを高電圧短絡、ESD、またはサージの発生から保護するように設計されています。このデバイスは、ポータブル電子機器での高性能スイッチングアプリケーションに必要な低オン容量と低オン抵抗を兼ね備えています。このICは、正の過電圧およびサージ保護を内蔵しています。このデバイスはUSBロー/フル/ハイスピード信号に対応し、2.7V~5.5Vの電源で動作します。このICは12ピンウェハレベルパッケージ(WLP) (1.23mm × 1.63mm)で提供され、-40℃~+85℃の拡張温度範囲で動作します。

図3. 拡張保護を備えた2 × SPDTスイッチ 図3. 拡張保護を備えた2 × SPDTスイッチ

拡張保護

ESD保護構造が全端子に組み込まれ、取り扱いおよび組立て時に発生する最大±2kV (ヒューマンボディモデル)の静電気放電に対する保護を提供します。COMAおよびCOMB (図2および3)は、さらに最大±15kV (ヒューマンボディモデル)、±15kV (IEC 61000-4-2で規定された気中放電法)、および±8kV (IEC 61000-4-2で規定された接触放電法)のESDに対する損傷のない保護を備えています。このESD構造は、通常動作時およびデバイスがパワーダウン時の両方で高ESDに耐えることができます。ESD発生後、ICはラッチアップなしで機能し続けます。このICは-30V~+45V (IEC 61000-4-5)のサージ保護および最大+20.5Vの過電圧保護を備えています。

図4は、この高集積、拡張保護ソリューションのPCBレイアウトと、正のみのサージ保護とより低いOVおよびESD保護を提供する標準的な競合デバイスとの比較です。後者はESD/サージ/OV仕様に適合するために追加の回路が必要になり、より高コストのBOMおよび5倍大きいPCBアクティブ領域占有面積につながります。

図4. 拡張保護の優位性 図4. 拡張保護の優位性

データ完全性

図5のアイダイアグラムは、青の曲線が禁忌の赤の区域からほぼ最大の距離を維持しており、データ信号の完全性が優れたレベルであることを一目瞭然に示しています。この保護ICの広帯域幅によって、信号の立上り/立下り時間の遅延およびジッターが最小限に抑えられ、USB規格適合試験に合格する上で重要な、エラーに対する優れたマージンが実現します。

図5. D+/D-のアイダイアグラム 図5. D+/D-のアイダイアグラム

結論

USB Type-Cの登場とともに、デジタルカメラや超薄型タブレットなどの電子機器の相互接続、給電、および保護に関する新しい課題が生じています。新しいコネクタはUSB Micro-Bよりピッチが狭いため、VBUSへの機械的短絡のリスクが高まります。さらに、USB PDに伴う高電圧によって、より堅牢な保護が必要になります。最後に、常に増大し続ける電子的負荷の複雑性によって、ESDおよび電圧サージからの保護の強化が要求されます。このデザインソリューションでは、最大±15kVのESD保護、-30V~+45Vのサージ保護、および+20.5Vの過電圧保護を備えた拡張保護デバイスが、単独でデータラインを保護することが可能で、より低集積のデバイスに比べて、より低BOMおよび小型のPCBアクティブ領域占有面積でESD/サージ/OV仕様に適合することを示しました。

このデザインソリューションは、2021年6月にPower Systems Designに初めて掲載された同様の記事に基づいています。