アプリケーションノート 860

バイポーラ電圧を出力するシリアルデータインタフェースチップ


要約: このデザインノートではどのようにシリアルデータインタフェースICが外付け回路に適量の電流を供給するのかについて説明しています。この回路は、インタフェースICであるMAX3212Aのバイポーラ電圧レイルからの電力を使用し、インタフェース動作を中断しません。

シリアルデータ送信用に市販されている一部のインタフェースICは、5Vまたは3.3Vの低VCCで動作するだけでなく、EIA/TIA-232規格の最小ドライバ出力をサポートするためのバイポーラDC電圧(±6.5V~±10V)を生成します。設計を注意深く行えば、ICの動作を邪魔することなく電源電圧から電力を借用することができます。

図1のICのスイッチモードコントローラは外付インダクタ、ダイオード2個およびコンデンサ2個で動作し、±6.5Vを供給します。FET Q1とQ2はこれらのスイッチモード電源電圧が発生するまで負荷を切り離すことにより、回路の起動を確実なものにします。ここでQ1はロジックレベルのデバイスでなければならないことに注意してください。

図1. データレートとドライバ出力負荷が最大許容限度以下である場合、このシリアルインタフェースICのV+およびV-出力は少量の電流を外部回路に供給することができます。
図1. データレートとドライバ出力負荷が最大許容限度以下である場合、このシリアルインタフェースICのV+およびV-出力は少量の電流を外部回路に供給することができます。

電源電圧の供給用に設計されたICとは異なり、インタフェースICの一般仕様には内部で発生する電源電圧から引き出せる電流量は規定されていません。許容電流量のほとんどはドライバ出力に接続されている負荷によって決まります。たとえば、IC1ではトランスミッタ2個が3kΩ負荷の両端にDC出力を維持している状態で、残りの1個が3kΩと1000pFの並列負荷を250kbpsで駆動することが保証されています。これらの条件からチップの最大出力電流能力を計算することができますが、最大出力時に余剰の電流を引き出すことはできません。

最大許容出力電流を計算するには、AC成分とDC成分を重ね合わせます。出力電流は、NRZ出力波形が保証された最小出力レベル(±5V)でスイングすると電源電圧範囲で交互に流れます。1つのデータ周期(250kbpsなら4µs)で出力が-5Vから+5Vまで変化する必要があるとき、AC成分はCLOAD(dv/dt) = 1000pF (10V/4µs) = 2.5mAとなります。DC成分の方は、オームの法則により1個のトランスミッタでI = E/R = 5V/3kΩ = 1.67mAとなり、3個合わせるとDC負荷は5mAとなります。AC成分とDC成分を合わせると、控え目な最大定格として2.5mA + 5mA = 7.5mAが得られます。

3kΩの負荷というのはEIA-232の規格ですが、データレートと負荷容量はアプリケーションに依存するパラメータです。これらのパラメータが小さければ外部で使用できる電流が増加します。たとえば、3kΩの抵抗と1000pFの容量(20pF/フィートで50フィートのケーブル)を並列に用いた負荷に対して、遠隔検出システムが2400bpsで動作している仮定とします。3個のトランスミッタに対するDC負荷は5mAで、低データレートのアプリケーションにおいては1個のトランスミッタのAC負荷(72µA)は無視しても差支えない程度です。この場合の許容電流は7.5mA - (5mA + 72µA) = 2.428mAとなります。

上記の計算は控え目な値になっています。VCC = 2.7Vで、3個のトランスミッタの負荷が3kΩ||1000pFとすると、有効なEIA-232レベルの2400bpsでの送信回路は、実際には外部負荷に6.7mAを出力します(VCC = 3V以上の場合にはもっと増加します)。前述のように、Q1およびQ2はこうした条件下でもこの回路の起動を可能にします。トランスミッタ負荷を切り離した場合、起動が可能な最大外部負荷電流は11.5mAとなります。Q1とQ2を外した場合の最大値は僅か5.7mAです。