アプリケーションノート 6498

MAX20730、MAX20733、MAX20734、MAX20735、MAX20743、およびMAX20745のバレー電流保護の説明

筆者: Don Corey

要約: PMBus内蔵スイッチングレギュレータのMAX20730、MAX20734、およびMAX20743は、4.5V~16Vで動作し最大35Aを必要とします。スイッチングレギュレータを12Vバスシステム用に使用する場合、過電流保護(OCP)が重要です。このアプリケーションノートは、マキシムが実装しているバレー電流モードアルゴリズムを使用してOCP値を設定する方法を説明します。このアプリケーションノートは、PMBusインタフェースのないMAX20733、MAX20735、およびMAX20745デバイスにも適用されます。

はじめに

通信、ネットワーク、サーバー、およびストレージ機器の12V分散バスシステム用に、マキシムは4.5V~16Vで動作し最大35Aを必要とするPMBus内蔵集積型ステップダウンレギュレータのシリーズを提供しています。すべてのスイッチングレギュレータと同様、過電流保護(OCP)は重大かつ重要な動作回路機能です。これらのポイントオブロード(POL)コンバータ用に、マキシムはすべてのMLCC出力コンデンサおよび高速過渡応答に対応する高度なバレー電流モードアルゴリズムを実装しています。このアプリケーションノートの目的は、OCPのデータシート仕様の読み取り方をわかりやすく説明することです。

OCP値の設定方法

MAX20730MAX20734MAX20743の場合、OCP値はPGMB端子を使って設定することができます。MAX20733MAX20735、およびMAX20745の場合、OCP値はPGM3端子を使って設定することができます。PGM端子は、レギュレータICの一部の重要な設定可能機能の設定に使用されます。抵抗とコンデンサがPGM端子に接続され、それらの値は起動初期化時に読み取られます(たとえば、値を再読み取りするには電源をサイクルする必要があります)。MAX20743のデータシートに記載されている表1は、特定のOCP設定に対する抵抗値および各RGAIN値に対して可能な4つのOCP設定の概要を示しています。MAX20730、MAX20733、MAX20734、MAX20735、およびMAX20745のOCP設定については、それぞれの ICのデータシートを参照してください。

さらに、MAX20730、MAX20734、およびMAX20743の場合、PMBusを介して過電流保護レベルを調整することができます。詳細については、アプリケーションノート6042 「PMBus Protocols for Controlling and Monitoring the MAX20743/MAX20730 Switching Regulators」を参照してください。

表1. MAX20743 PGMBのOCP設定
Number R (kΩ) ±1% RGAIN (mΩ) OCP (A)
1 1.78 3.6 20
2 2.67 3.6 25
3 4.02 3.6 30
4 6.04 3.6 35
5 9.09 1.8 20
6 13.3 1.8 25
7 20 1.8 30
8 30.9 1.8 35
9 46.4 0.9 20
10 71.5 0.9 25
11 107 0.9 30
12 162 0.9 35

バレー電流開始ポイントの定義

バレー電流開始ポイントを定義し説明する場合は、ピーク・ツー・ピークインダクタ電流の計算方法について簡単に概説し、バレー電流開始ポイントおよび実際の過電流クランプ値についてより明確にする必要があります。

ステップ1:デューティサイクルを計算する

D = VOUT/(VIN × n)(式1)

ここで、
VIN =入力電圧
VOUT =目的の出力電圧
n =コンバータの効率(OCP制限付近)

ステップ2:インダクタリップル電流を計算する

ΔIL = ((VIN – VOUT) x D)/(fS x L) (式2)

ここで、
VIN =入力電圧
VOUT =目的の出力電圧
D = 式1から計算されたデューティサイクル
fS =スイッチング周波数
L =インダクタ

ここではMAX20743EVKITを12V-1V変換の標準アプリケーションとして使用します。以下の標準値を使用して、

VIN = 12V
VOUT = 1V
L = 170nH
fSW = 400kHz
OCP = 35A
ILOAD = 34A
標準効率 = 84% (データシートより)

式1および2を使用して、
デューティサイクル = 0.099または9.9%
ΔIL = 16.014A、これはインダクタを流れるピーク・ツー・ピーク電流です。

電流モード制御アーキテクチャでは、これらの製品は固有の電流制限および短絡保護を提供します。ボトムスイッチの瞬時電流は内蔵の電流検出を使って監視され、制御ブロック内でサイクル単位で制御されます。電流クランプは、図1に示すように最小瞬時(「バレー」)ローサイドスイッチ電流レベルがIOCPスレッショルド電流を超えたときに発生し、ここでIOCPはデータシートに記載されている値です。この状況で、電流がスレッショルドレベルを下回るまでハイサイドスイッチのターンオンは防止されます。バレー電流は制御対象のパラメータであるため、正の電流クランプ時に提供される平均電流は複数のシステムレベルパラメータの関数のままになります。IOCPにはヒステリシスがあり、図1に示すように、トリガされたあと値はIOCP2に低下することに注意してください。

図1. 過電流保護電流クランプ 図1. 過電流保護電流クランプ

図1の説明で、IOCP(AVG)に関する上記の式はコンバータが電流クランプモードで動作し始めたあとの平均電流の値です。IOCPの値は、最小バレー電流での電流OCP開始ポイントを示します。図1で電流は増大しており、インダクタの電流が減少して(最も低いポイントにおいて) IOCPの値以上のとき、IOCPのスレッショルドに達するとデバイスは電流制限に移行します。電流制限状態では、インダクタの電流は組込みのヒステリシスによって実際にはIOCP以下で増大し、ハイサイドFETの予測可能なターンオンを確保します。図2は電流制限移行時のインダクタ電流の実際の波形です。

図2. OCP開始ポイント波形:CH1 (黄色):V<sub>OUT</sub>、CH2 (ピンク):Vx、CH3 (青):I_Ind、CH4 (緑):Stat 図2. OCP開始ポイント波形:CH1 (黄色):VOUT、CH2 (ピンク):Vx、CH3 (青):I_Ind、CH4 (緑):Stat

まとめ

図2から、電流制限が発生する直前の平均電流は、実際にはIOCP + 1/2インダクタピーク・ツー・ピーク電流(式1および2から計算)であることがわかります。これはVOUT (黄色)の低下が始まる前の、インダクタ電流波形(青)の最初の部分で示されています。VOUTの低下が始まった波形の後半部分は平均OCP電流を示しており、これはインダクタ電流がIOCP(AVG)に低下したときに図1の式によって定義されます。IOCP(AVG)は、MAX207xxが電流制限状態のときの実際の平均クランプ電流です。上記の12V-1V変換の例から、ピーク・ツー・ピークインダクタ電流は16.014Aであることを計算しました。したがって、OCP開始ポイントが35Aの場合、OCPがアクティベートされる直前までの実際の平均出力電流は35 + 1/2 x 16.014 = 43.007Aよりわずかに小さくなります。図1の式から、この例ではIOCP平均クランプ電流が36.0Aに等しいという計算になります。