アプリケーションノート 5964

回路の基盤となる電源、スイッチング電源のレイアウトを習得する


要約: この記事では、電源、グランド、PCB、およびシステムレイアウトのヒントとテクニックを概説します。これには、電源、グランドのスターポイント、およびマルチ周波数電源デカップリングの使用法の概要が含まれます。また、部品の配置を制御して大電流スイッチングループの大きさを最小限に抑える方法も示します。

地震の多い地域の高層ビルと同様に、優れた回路設計かどうかは、長寿命と有用性を実現する強固な基盤にかかっています。

完全な電子回路用電源は、家庭や工場に配電される交流(AC)を、電子回路が必要とする直流(DC)に変換します。完全な世界では、直流はノイズフリーで、ACからのリップルや高調波がありません。さらに、DC電源の基準となるグランドは、クリーンで純粋です。しかし、エンジニアである我々はすぐにこの世界が完全とは程遠いことを学びます。そのため、我々のスキルと知識を活用して、制約にも関わらず所望の結果を得る必要があります。

最初に動作環境を理解し、多くの場合に外部のトランスミッタおよび同じプリント基板(PCB)上で動作するデジタル回路からの無線周波数干渉が存在することを認識する必要があります。まずACプラグの検討から始めましょう。ほとんどの場合、図1に示すような電力線フィルタが適切です。

図1. コモンモードチョーク電力線フィルタ
図1. コモンモードチョーク電力線フィルタ

このフィルタは、両方の側から対称にデバイスを保護するための中心点としての役割を果たします。このフィルタは、電力線からデバイスへの電磁放射、およびデバイスから電力線に戻る電磁放射を防ぎます。このフィルタは、ボックスから出る電磁放射の試験に必要であるとともに、ボックスに入る信号の感受性の試験にも必要です。

基板レベルでの一般的なレイアウトエラー

一般に、ソリッドグランドプレーンおよび電源プレーンを備えた多層基板は、最高レベルの信号完全性を生み出します。

シャーシ上および各基板上でグランドのスターポイントを選ぶことは、出発点として適切です。経験不足なユーザーの中には、グランドをすべての悪いことや干渉が消え去る不思議な場所だと考える人がいます。グランドスターから設計を開始しても、その後で個々のタイプの回路からそのスターに個別にリターン電流を戻さない場合があります。図2は、そのエラーを示します。

図2. システムのグランドバウンスエラー
図2. システムのグランドバウンスエラー

ここでは、スターグランドを備えた5V電源から検討を始めます。ノイズの多いデジタル回路は、+5V電源とグランドの両方により多くのノイズを追加します。アナログ回路にはクリーンな3.3V電圧が必要であることが分かっていますが、電源に戻る+5Vとグランドの両方を個別にスターポイントに配線せず、簡単に済ます方法を考えます。クリーンな3.3V電源を作るためにLDOが必要です(あるいは、必要だと考えます)。実際には、リニアレギュレータは常にリファレンスまたはグランド上に正確な3.3V出力を維持します。そのため、グランドが赤い矢印で示すように上下にバウンスし、LDOが正常に機能している場合、+3.3V出力はグランドのバウンスに従って上下動することになります。我々は、スターポイントに戻るアナログとデジタルの配線を個別にしなかったために、どれだけの時間をトラブルシューティングに費やすことになるか、自問してみる必要があります。図3は、アナログ回路のより良い接続方法を示します。

図3. グランドおよび電源のスターポイントの適切な使用法。スターポイントでは電源およびグランドがクリーンであることを示しています。
図3. グランドおよび電源のスターポイントの適切な使用法。スターポイントでは電源およびグランドがクリーンであることを示しています。

スターポイントでは電源とグランドがクリーンであるという含意(図3)は、スターポイントでは電源とグランドが同質であることを意味します。電源とグランド間に差動ノイズは存在しません。理想的には、電源出力はインピーダンスがほぼゼロであるか、または目的の周波数での等価直列抵抗(ESR)が低いデカップリングコンデンサを備えます。さまざまな回路をグランドおよび電源スターポイントに接続する個々の導体に、直列抵抗およびインダクタンスがあります。その抵抗とインダクタンスによって、ノイズの多い回路をクリーンな回路から分離します。直列抵抗とインダクタンス、および各回路ブロックの出力のデカップリングコンデンサによって、ローパスフィルタが形成されます。他の回路ブロックへの配線が比較的短い場合、個別部品による抵抗とインダクタンスの追加が必要になる可能性があります。

コンデンサには寄生インダクタンスがあるため、デカップリングは複雑です。実際には、コンデンサは図4に示す直列RLC回路として表されます。容量は低周波数で支配的ですが、 自己共振周波数(SRF)以上では、図5に示す各グラフの下降が、コンデンサのインピーダンスが誘導性を示し始める点です。そのため、目的の周波数でコンデンサが低インピーダンスを示す場合、そのコンデンサはSRF付近またはそれ以下の周波数範囲でのみデカップリングの目的に役立ちます。

図4. コンデンサの固有の寄生要素
図4. コンデンサの固有の寄生要素

図5. 6つの値のコンデンサとそれぞれの自己共振点
図5. 6つの値のコンデンサとそれぞれの自己共振点

図5は、さまざまな値のコンデンサの標準的なSRF性能を示します。1これらのグラフから、グラフの下降によってSRFを明確に見ることができます。また、容量が大きいほど、小さい値のコンデンサよりも低い周波数でより良いデカップリングを提供する(より低いインピーダンスを示す)ことも分かります。コンデンサの自己共振グラフ作成用のSPICEプログラムが無料で提供されています。2、3、4

スイッチング電源集積回路レベルでの特定のレイアウトエラー

図6. MAX17501スイッチング電源の簡略回路図
図6. MAX17501スイッチング電源の簡略回路図

図6で、大電流高速立上り時間スイッチングパルスを示す、2つの異なるグランド記号(三角形)に注意してください。高周波数、大電流パルスをアナログ小信号またはリファレンスグランドから分離することが重要です。

図6で、セラミック入力フィルタコンデンサ5 (C1)がデバイスのVIN端子の近くに配置されています。このコンデンサはパワーリザーバとして機能し、コンデンサがない場合にDC電源に伝播して戻ることになる電力パルスを平滑化します。スイッチングパルスの立上り時間によっては、広い周波数範囲をカバーするためにこのコンデンサは異なるサイズの複数のコンデンサで構成される場合があります。VCC端子のバイパスコンデンサも、できる限りVCC端子の近くに配置してください。このコンデンサも、複数のコンデンサで構成する必要がある場合があります。最も効率的な放熱を実現するために、デバイスのエクスポーズドパッドの下に複数のサーマルビアを用意してください。

図7. グランドおよびグランドスターポイントと大電流ループ(赤い点線で囲まれた部分)間の分離
図7. グランドおよびグランドスターポイントと大電流ループ(赤い点線で囲まれた部分)間の分離

図7の電流ループは、スイッチング電源の最も重要な領域です。この部分のわずかな変更が、効率、ノイズ、電磁放射、および無線干渉に非常に大きい影響を与えるため、安定した動作にとって2つのグランドを分離することが非常に重要です。このループにはパルス電流が含まれるため、PCBトレースを非常に短く、できる限り太くして浮遊インダクタンスを低減する必要があります。この電流ループの簡素な変更が、良いレイアウトと悪いレイアウトの差になります。ループの最小化に取り組むことによって悪いレイアウトが20%改善され、単にインダクタを90°回転させることによってより良いレイアウトになります。ビアに固有の直列インダクタンスを低減するため、必要に応じて2つ、4つ、またはそれ以上のビアを並列にしてください。

図7を見ると、小さい円を含んだビアの円に気付きます。これは電源グランドプレーン接続(回路図のグランド三角形)で、基板裏面の電源グランドプレーンおよびグランドスターポイントに接続されます。Xを含んだビアの円は、リファレンスおよび信号安定性のためのグランドです。これらは、基板裏面の個別のグランドプレーンに接続され、グランドスターポイントで電源プレーンに接続されます。アナログ小信号またはリファレンスグランドとスイッチング電流の電源グランドは個別にする必要があります。これらは、スイッチング動作が最小になる位置(スターポイント、通常はVCCバイパスコンデンサのリターン端子)で相互に接続してください。

プラス記号を含んだビアの円は、出力電圧をフィードバック端子に接続します。これは、できる限り早くインダクタおよび電力ループから遠ざけて配線する必要があります。直列抵抗(R4)は、図8に示すようにフィードバック端子の入力コンデンサとともにローパスフィルタを形成するため、できる限りフィードバック端子の近くに配置する必要があります。

図8. R4を出力端子の近くに配置すると、フィードバック端子(FB/VO)への長い配線がアンテナの働きをする。
図8. R4を出力端子の近くに配置すると、フィードバック端子(FB/VO)への長い配線がアンテナの働きをする。

経験不足のレイアウト担当者は、回路図を見て、図8のようにR4をパワー出力の近くに配置する可能性があります。インダクタはフェライトコアを備えたシールドなしのコイルであるため、電磁場の強度を高め、それがフィードバック端子にクロストークします(オレンジの点線の円)。その結果、フィードバック端子とR4間のワイヤがアンテナになり、スイッチングエッジを受信するため、不安定な動作となります。

図9. ワイヤ間のクロストークには、容量性、磁気的、静電、およびこれらの組合せがある。
図9. ワイヤ間のクロストークには、容量性、磁気的、静電、およびこれらの組合せがある。

図9で、ワイヤAは高レベルの信号源で、ワイヤBはハイインピーダンスのレシーバです。ワイヤBを遠ざけるか、そのインピーダンスを小さくすることによって、クロストークを低減することができます。

図10. 適切な信号経路はクロストークを最小限に抑える。R4と「内部コンデンサ」の組合せがローパスフィルタとして機能し、クロストークを低減する。
図10. 適切な信号経路はクロストークを最小限に抑える。R4と「内部コンデンサ」の組合せがローパスフィルタとして機能し、クロストークを低減する。

パワースイッチングの動作周波数は数十kHzに過ぎませんが、クロストークや放射を起こすのはスイッチングエッジの高調波であることを忘れないでください。高調波は数百MHzに達することもあるため、制御が必要です。この理由から、図10の方がパワー出力端子をフィードバック端子に接続するためのより良い方法です。この図では、トレースを大電流ループ(図7)およびインダクタL1から遠ざけています。R4は、オレンジの円が示すあらゆる干渉を減衰させます。R4をMAX17501のフィードバック端子の近くに配置することで、R4と内部容量のローパスフィルタ処理が向上します。

ここでは、基本的な概念を説明するために、スイッチングトランジスタを内蔵したデバイスの最も簡素なレイアウトを取り上げました。外付けトランジスタを使用するデバイスについては、他のマキシム・インテグレーテッドのチュートリアルおよびアプリケーションノートを参照してください。6、7、8、9

結論

電源の慎重なレイアウトに費やした時間には複数の見返りがあり、効率的で低ノイズの電源が実現します。さらに、あらゆる回路で必要とされる十分にクリーンな電源とグランドを供給することによって、残りの回路の優れた基盤としての役割を果たします。設計エンジニアにとってのもう1つの利点として、優れた電源とグランドは他の回路のトラブルシューティングを比較的容易にしてくれます。電源やグランドのノイズが多い状況で、散発的または間欠的なエラーの原因を追求するのは真の悪夢です。経験豊富なエンジニアは、電源レイアウトの重要性を無視して最小化したり経験の浅いエンジニアに任せたりすることは決してありません。それだけ重要な作業です。

参考文献:

  1. マキシム・インテグレーテッドのチュートリアル3630 「WiFiトランシーバのための電源とグランドの設計」、図2および3
  2. KEMET SPICE Software、Kemet®、The Capacitance Company、(コンデンサの自己共振) (フリーウェア)
    http://www.kemet.com/SPICE-legacy
  3. Johanson Technology、JTIsoft® (フリーウェア)は、MLCsoft®とMLIsoft®の2つの先進的設計シミュレーションソフトウェアパッケージで構成されます。このソフトウェアは、1MHz~20GHzの周波数範囲にわたるJohansonのRF多層セラミックコンデンサおよびインダクタシリーズの完全なSパラメータおよびSPICEモデリングデータを提供します。
    www.johansontechnology.com/modeling-software/jtisoftr-overview.html#.VCC3ZBYXPEc
  4. AVX CorporationのSpice Softwareウェブサイト、www.avx.com/design-tools/spice-models/
  5. American Technical Ceramics、「Circuit Designer’s Notebook」 (コンデンサのハンドブック) www.atceramics.com/Userfiles/cdn_nb_brochure.pdf
  6. マキシム・インテグレーテッドのチュートリアル2997 「スイッチングレギュレータの基本的なレイアウト手法」、2004年3月25日
  7. マキシム・インテグレーテッドのアプリケーションノート4944 「車載電源の性能を最大限に高め、放射を抑制するレイアウトのガイドライン
  8. マキシム・インテグレーテッドのチュートリアル716 「適正なレイアウトと部品の選択によるEMIの抑制
  9. マキシム・インテグレーテッドのアプリケーションノート3645 「正しい基板レイアウトによってスイッチモードコンバータのEMIを低減