アプリケーションノート 5867

「降っても晴れても」1 - 車載ヘッドアップディスプレイは昼夜・天候を問わず使える必要がある

筆者: Greg Fattig

要約: このアプリケーションノートは、車載ヘッドアップディスプレイ(HUD)について解説します。ある程度の背景情報を提供します。広い調光範囲の必要性を説明し、可能なソリューションを示します。

同様の記事が2014年4月28日に「EDN」に掲載されました。

車載電子製品の競争が激化しています。消費者は最新の最も便利な電子製品を期待し、自動車メーカーは自社のモデルを競合車種と差別化するための電子製品を求めるようになっています。今日の自動車市場では、ある特定の技術、すなわちヘッドアップディスプレイ(HUD)が目立って勢いを増しています。HUDを搭載した自動車の全世界での販売台数は、2012年の120万台から、2020年には910万台へと急増することが予想されています。2

HUDは、通常は液晶ディスプレイ(LCD)からの画像を、フロントウィンドウまたはインスツルメントクラスターの上に位置するガラス部分に投影することによって動作します。HUDは、速度、燃料残量、車線指示、ナビゲーション、運転支援警告などの有益な情報を表示します。画像は、通常はコリメートされます(つまり、光線が運転者の視線と平行になるように調整されます)。これによって、表示される情報は進路上の光学的無限遠に浮いているように見えます。HUDで情報を表示することによって、運転者の注意を道路上に集中させたままにすることが可能です。ケンブリッジコンサルタンツ社の研究員も、HUDは前方の道路を見る運転者の視野と一致しており注意を逸らすことがないため、先進運転支援システム(ADAS)からの視覚的警告を従来のダッシュボードディスプレイやカラースクリーンよりはるかにうまく伝えることができると認めています。3このように、HUDは単に自動車の差別化に役立つ流行の技術というだけではなく、より安全なドライビング体験にも貢献します。

優れたHUDの設計には、数多くの課題があります。HUDは非常に広いコントラスト比を備える必要があります。晴天下でも明瞭に見えるように十分な明るさで画像を表示する必要がありますが、夜間に運転者の目を眩ませないように画像を暗くする必要もあります。HUDの画像が明瞭に見えるためには、HUDのコントラスト比(式1)が1.15~1.5の範囲である必要があります。

HUDのコントラスト比= (ディスプレイ輝度 + 周囲の明るさ)/(周囲の明るさ) (式. 1)

コントラスト比が1.15より低いと画像が検知不能になる可能性があり、コントラスト比が4を超えると見て不快感を覚える可能性があります。4

月のない夜には、周囲の明るさがわずか10-3カンデラ/平方メートル(cd/m2)になる可能性があります。晴れた日中には、周囲の明るさが10,000cd/m2にも達する場合があります。5自動車のヘッドライトによって夜間でも周囲の明るさは若干上昇しますが、それでも運転環境に対応するためHUDの光度が広範囲に変化する必要があることは明らかです。

HUDの光度は、LCDのバックライトに使用される発光ダイオード(LED)によって設定されます。これらのLEDは、高輝度(HB) LEDドライバ回路で制御されます。標準的なHB LEDドライバは、各LEDストリング用に定電流シンクを備えたスイッチング電源を内蔵しています。HUDを設計する場合、LEDドライバは主として入力電圧範囲、所望のスイッチング周波数、調光能力、およびディスプレイのサイズに基づいて選択する必要があります。最近のHB LEDドライバは非常に広い調光比が可能なため、この課題に最適です。

HB LEDドライバのMAX16813は、それぞれ最大150mAに設定可能な4つの内蔵電流シンクを備えたブースト/SEPIC電流モードコントローラを内蔵しています。図1および図2に示すように、電流シンクを並列にして、1つのLEDストリングを介して最大600mA、または2つのLEDストリングを介してそれぞれ300mAをシンクすることも可能です。このデバイスは広い4.75V~40Vの入力電圧範囲を備え、ロードダンプやコールドクランクなどの標準的な車載バッテリ過渡に耐えることができます。また、このデバイスは非常に広い10,000:1のPWM調光比も提供します。これによって、HUDが明るい日差しの中で明瞭な画像を表示し、夜間には運転者の目を眩ませない抑えた画像を表示することが確保されます。

図1. HUDで使用するためのHB LEDドライバ(MAX16813)用の標準的なSEPICアプリケーション回路。このSEPIC構成は、LEDストリングの電圧が予想される最小および最大入力電圧の範囲内の場合に使用されます。 図1. HUDで使用するためのHB LEDドライバ(MAX16813)用の標準的なSEPICアプリケーション回路。このSEPIC構成は、LEDストリングの電圧が予想される最小および最大入力電圧の範囲内の場合に使用されます。

図2. HUDで使用するための標準的なブーストアプリケーション回路。ここでもHB LEDドライバのMAX16813を使用しています。このブースト構成は、LEDストリングの電圧が予想される最大入力電圧より大きい場合に使用されます。 図2. HUDで使用するための標準的なブーストアプリケーション回路。ここでもHB LEDドライバのMAX16813を使用しています。このブースト構成は、LEDストリングの電圧が予想される最大入力電圧より大きい場合に使用されます。

歌詞1にあるように、「曇りの日もあれば晴れの日もあるだろう…降っても晴れても」なのですが、適切に設計されたHUDはどんな天気でも輝きを失いません。


参考文献

  1. Johnny Mercer (作詞)、Harold Arlen (作曲) 「Come Rain or Come Shine」。この歌の歴史を辿る出発点としては、http://en.wikipedia.org/wiki/Come_Rain_or_Come_Shineが良いでしょう。
  2. Vince Bond Jr.、「Head-up display sales poised to soar, IHS says」、Automotive News、2013年7月。
  3. Kevin MakおよびIan Riches、「Advanced Driver Assistance Systems: Assessing Opportunities and Challenges」、Automotive Electronics Service、Strategy Analytics、Automotive Electronics Service、2007年3月。詳細については、www.businesswire.com/news/home/20070329005887/en/STRATEGY-ANALYTICS-Forecasts-63-Million-Unit-Market#.U0wc9aKwWBoを参照。
  4. Human Factors Aspects of Using Head Up Displays in Automobiles: A Review of the Literature」、米国運輸省道路交通安全局、1995年8月。
  5. Paul Schlyter、「Radiometry and photometry in astronomy – FAQ」、2009年3月18日。
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