アプリケーションノート 5536

スマートグリッドのエネルギー測定とセキュリティ—あまりに長く見過ごされてきたこと

筆者: David Andeen

要約: スマートグリッドには電力業界を完全に変化させる可能性があるというのは、使い古された言葉に聞こえるかも知れませんが、明らかに真実です。しかし、スマートメーターとグリッド管理のみでスマートグリッドの成功を確保することはできません。従来のITネットワークとは異なり、スマートグリッドはエネルギー測定とセキュリティを考慮する必要があります。この技術を完全に最適化するために、スマートグリッドの設計においてエネルギー測定とセキュリティに重点を置く必要があります。このチュートリアルは、エネルギー測定とセキュリティの両方の利点と、それらによってマシン・ツー・マシンのネットワークが従来のITとどのように異なるものになるかについて検討します。

同様の中文記事が「EE Times China」に2013年1月7日に掲載されました。

はじめに


世界規模でスマートメーターの配備が続く中で、消費者、設計エンジニア、および電力会社は、スマートグリッドがどのように電力業界全体を変化させるかについて議論しています。すでにスマートメーターは、誰かが出向いて物理的にメーターを読み取る代わりに、メーターのデータにアクセスすることによって電力会社のコスト節約を可能にしています。現在、電力会社、工場、および消費者は、さらなる節約と代替燃料を求めています。新しいビジネスモデルは、最大需要時の消費を低減するために、時間帯別料金などのインセンティブを介してピーク需要の削減を奨励しています。電気自動車やさまざまな形式の太陽光および風力発電などの分散供給源は、再生可能エネルギーを最大化し、利用可能な資源を活用することによってピーク需要に対応しようとしています。これらの進展のすべては、スマートグリッド内でのより多くのビッグデータ分析にもつながります。スマートメーターの使用により、電力会社は月1回以下のメーター読取りから、日に6~96回のメーター読取りに移行しています。スマートメーターから生成されるすべてのデータによって、電力会社が今後明確化すべき、利用パターン、浪費、その他の要素についてより深く理解する機会が提供されます。
しかし結局は、スマートメーターとグリッド管理のみでスマートグリッドの成功を確実なものとすることはできません。この技術を完全に最適化する場合は、スマートグリッドの設計においてエネルギー測定とセキュリティに重点を置く必要があります。

エネルギー測定は実際にエネルギーの節約につながる

残念なことに、現在主に強調されているのは、将来のスマートグリッド技術の管理と、通信インフラに見られるそのルーツであり(この詳細については、「付録:スマートグリッドと通信—2つのネットワークの物語」を参照)、エネルギー測定とセキュリティがシステムの成功に不可欠であることが忘れられがちです。結局、電力管理に関係するネットワークは、その重要な商品を測定するとともに、それを配送する貴重なインフラを保護する必要があります。エネルギー測定について考えてみましょう。
スマートメーターは、「メトロロジー」と呼ばれる電力会社グレードのエネルギー測定機能を使用して、産業用および家庭用のエネルギー消費を測定します。これらのスマートメーターは、すでにイタリア、カリフォルニア、およびスカンジナビアの一部を含むいくつかの地域において、大規模なマシン・ツー・マシン電力ネットワークの一部を形成しています。しかし、エネルギー消費量に強い関心を持っているのは電力会社のみでしょうか?もちろん違います。広範囲のエネルギー測定は、グリッド上の膨大な数のユーザーやプロバイダにも利益をもたらします。
個人的な例として、我が家では去年の10月、11月、12月にかけて次第に電気料金が高くなっていきました。12月の後半に、電気乾燥機が壊れました。幸い、妻と私はすぐに新しい乾燥機を買うことができました。冬のさなかに乾燥機がないと大変なところでした。振り返ってみると、乾燥機のモーターが焼き切れかかっていたために過度のエネルギー消費が発生したのが、毎月の電気使用量が増えて電気料金が高くなった原因であり、最後は直ちに新しい乾燥機を購入するという財政的負担を招いたのです。

このような状況で、エネルギー測定が役立ちます。家電製品や産業用モーターなど、さまざまなアプリケーションにエネルギー測定を適用することで、電気消費量の削減、重要な資産の保守や交換の必要性を示す利用パターン、より正確な情報に基づいて消費量やシステムの動作について判断することができるユーザーやシステムオペレータの啓蒙など、非常に多くの利点が提供されます。我が家の乾燥機の場合、モーターの電気消費量が高精度で測定されていれば、時間とともにエネルギー消費が増えていることがすぐに分かったはずです。自動車の「エンジン要点検」ライトと同様に、エネルギー測定は利用パターンを記録することによって、故障の発生よりも十分に早い時点で装置の状態や動作を示す情報を提供します。その利用パターンがあれば、衣類乾燥機を修理するか、または(セールのときに!)新しい乾燥機を探すための十分な時間が得られたことでしょう。
我が家の壊れた衣類乾燥機の場合に消費された(あるいは無駄になった)エネルギーは、産業施設における高精度のエネルギー測定の潜在的利益に比較するとわずかな量です。製造環境ではモーターが電気使用量の54%を占めるため¹、アップタイムの要件と生産目標を伴う、より掛け率の高い状況が発生します。たとえば、100hpのモーターに2.5%の電圧不平衡がある場合、年間476ドル分の電気が余計に消費される計算になります²。それに加えて機器の損傷も増えるため、保守コストおよび交換が早まることによるコストが増大します。産業用スマートグリッドシステムにおけるエネルギー測定に莫大な潜在的利益があることはすぐに分かるでしょう。ここで、議論をさらに一歩進めてみます。電気と保守のコストを、全世界で使用されているすべてのモーターについて掛け合わせると、エネルギーの保全と節約の膨大な機会であることが示されます。
十分に管理されたエネルギー測定の重要性を理解したら、それを実装するためのソリューションを探す必要があります。ここで非常に重要になるのが、スマートエネルギーメーターおよび測定システムです。マキシム・インテグレーテッドは、エネルギー状態監視用の数種類のエネルギー測定およびモーター診断ソリューションを提供しています。78M661078M661378M6631、およびMAX78638は、カスタムファームウェアによる高精度、4象限の電力測定を実現します。これらのデバイスは、ソーラーパネルにおける効率的なインバータの動作、産業用アプリケーションにおけるモーターの状態、および照明/コンピュータアプリケーションにおけるエネルギー消費の監視と測定のための貴重な測定データを提供します。結局、エネルギー測定ソリューションへの投資は、機器の故障防止とシステムのアップタイム確保という面での節約に比べて小さなものになります。

グリッドのセキュリティ—必須にもかかわらず、認識が不十分

スマートグリッドは、1日24時間/週7日の完全なセキュリティも必要とします。ほとんどの消費者は、さらには産業および電力オペレータでさえ、このことの重要性を過小評価しています。スマートメーター、産業用モーター、民生機器、および広く普及しているオートメーション機器などのエンドポイントは、すべて電気を消費し制御します。一方で、スマートグリッドのオペレータが力率補正、電圧最適化、高精度の障害位置特定、および修理時間の短縮によるアップタイム確保のために「スマート」ネットワークを利用するとともに、グリッドに接続される機器のアプリケーションは増え続けています。
サイバー攻撃、IP盗難、生産性の中断などのすべて脅威は、スマートグリッドと産業制御システムの両方で高まっています。単純な家庭用衣類乾燥機の場合も、あるいは高度な分散型産業複合施設の場合も、スマートグリッド向けに最適化された完全なセキュリティ対策のみが、これらの過酷な脅威を防止し、最大限の稼働アップタイムを確保することができます。残念ながら、多くの場合セキュリティリスクの重大性に対する認識が不十分で、最小限のセキュリティ対策のみが存在します。ある電力会社の専門家と話したとき、彼の会社の変電所は「有刺鉄線、南京錠、および高電圧のみで保護されている」と言っていました。事情に疎い他のオペレータは、ハードウェア自体が備えているセキュリティ対策を信頼しており、ソフトウェアを介したサイバー攻撃によって発生する、より大きい脅威について認識していません。
最も効果的なセキュリティソリューションは、ハードウェアとソフトウェアを介して製品のライフサイクル全体の安全を確保します。潜在的なセキュリティ侵害は、購入から、製造、動作、廃棄まで、機器の動作のすべての段階で発生する可能性があるため、グリッドのセキュリティには広範囲のアプリケーションが存在します。
スマートグリッド上で動作する製品を購入する場合、シリコンおよび他の重要な計算デバイスを購入するための信頼すべきチャネルの存在が購入者に対して保証される必要があります。これは、偽造製品を防止するために不可欠です。製造時には、強力な認証手法によって、受託製造先などのサードパーティによる鍵の盗難と、それらの鍵を使用したその後の電気の盗用やグリッドへのウィルス感染を防止することができます。現場での使用時には、セキュアキーストレージと複数層の暗号化によって、通信チャネルにわたりデータの安全を確保することができます。セキュアブートローダは、ウィルスやマルウェアがシステムにロードされるのを防止します。ハードウェア手法は物理的セキュリティを監視し、タンパー発生への対応を可能にします。常時監視されていないデバイスやセンサーには、明らかにそれらの包括的なセキュア保護が必要です。
最も効果的なセキュリティは、システムまたはグリッド自体の一部として設計され統合されるものです。マキシムは、スマートグリッドのセキュリティニーズに適合するMAXQ1050MAX36025、およびMAX71637などのセキュア製品を、完全なラインナップで提供しています。これらの製品には、分割鍵、非対称暗号化、セキュアブートローダ、および各種の物理タンパー保護機構を含む多層方式のための基本的な認証が内蔵されています。

まとめ

スマートグリッドには電力業界を完全に変化させる可能性があるというのは、使い古された言葉に聞こえるかも知れませんが、明らかに真実です。これは刺激的で技術者の注目に値する話題です。しかし、管理に夢中になっている現状では、グリッドに対して測定とセキュリティが果たす、多くの場合隠された、しかし非常に重要な役割が見過ごされがちです。そこでは、高品質のメーター設計が非常に有益であることが実証されています。この技術を真に活用するためにエネルギー測定とセキュリティを重視し続ける場合、スマートメーターがどのようにスマートグリッドを実現するかを認識する必要があります。

付録:スマートグリッドと通信—2つのネットワークの物語

スマートグリッドについて語るとき、我々はしばしば、それが自己修復機能を備えた電力グリッドになり、エネルギー消費量を削減し我々のエネルギーインフラを変化させるという壮大な可能性に重点を置きます。そのような革命的な技術は、どのように設計され作り出されたのでしょうか?何がそれを促進したのでしょう?
優れたアーキテクチャを備え技術的に成熟した通信インフラのネットワークが、現在のスマートグリッドの基盤です。この話題について議論すると、多くの場合、膨大な情報の集約と分析およびそれに基づく有益な意思決定を可能にする、ネットワークとビッグデータの話が出てきます。

確かに、通信とスマートグリッドは、同一のコア、高速性、および相互運用可能な通信レイヤを共有しています。しかし、この2つのネットワークの間には、非常に重要で基本的な違いがあります。スマートグリッドは、真にマシン・ツー・マシンのネットワークです。従来の通信エンドポイントは、電話、コンピュータ、そして今ではスマートフォンによる、マン・ツー・マシン間の相互動作が結果として発生します。マシン・ツー・マシンネットワークのエンドポイントは、センサー、機能マシン、またはその両方で構成されます。多くの場合、これらのマシンは人間によって直接制御されず、したがって必ずしもネットワークの状態あるいは健全性について表示や通知を行うことができるとは限りません。1つの例として、産業用センサーは多くの場合中央のシステムから遠く離れたアクセス不可能な場所に設置され、アップグレードを利用することもできず、人間による監視もまったく行われません。システムとリモートデバイス間に人間が介在しないため、スマートグリッドシステムの設計者は、それらの分散ネットワークのセンサー機能とセキュリティの両方について十分に考慮する必要があります。

参考文献

  1. 米国エネルギー省、「Energy Efficiency and Renewable Energy」、https://www.energy.gov/eere/amo/motor-systems
  2. 「Energy Tips: Motor Systems」、米国エネルギー省、Motor Systems Tip Sheet #7、2005年9月、https://www.energy.gov/sites/prod/files/2014/04/f15/eliminate_voltage_unbalanced_motor_systemts7.pdf
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