アプリケーションノート 5348

G3-PLC技術がついに電気自動車の充電をスマート化


要約: このアプリケーションノートは、電気自動車(EV)と電気自動車用給電装置(EVSE)間の高信頼性の通信に必要な基準について検討します。G3-PLCシステムが、自動車業界と電力業界によって確立された基準にすでに適合していることをデータで示します。複数の国際的試験によって、G3-PLCの実装は低周波帯のソリューションとして最適であることが証明されています。

この記事の類似バージョンが「Power Systems Design」誌の2011年8月号に掲載されています。
電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)は、初めて有望なモバイル電力消費者の市場を形成しつつあります。当然、電気の供給者(電力会社)と自動車の所有者の間に新しい関係が現れています。多くの電力会社はEVの所有者に対して月額固定料金を含む特別な料金プランをすでに提供しているか、または提供を計画しています。
EVによって電力供給自体に新しい力関係と要求が課せられます。事実、EVと電力供給者の間に共生関係が展開しています。蓄電容量が大きい(10kVHが珍しくない)ため、EVは80A以上の電流を数時間にわたって消費します。これは電力グリッドの構成要素に過大な負担を与え、特に低電圧トランスは消費者の家庭への給電中にオーバーヒートして故障する可能性があります。一方で、EVの蓄電容量は電流の流れを逆転させることも可能です。その場合、グリッドに対して逆に電力を供給することにより、電力会社がカーボン排出量の多いディーゼル発電器を使用せずに需要のピークに対応する上で役立ちます。
この新しい動的関係を可能にするためには、EVと電力プロバイダとの通信が必要です。電力会社は個々の車両を認証することができる必要があり、電力のフローレートおよび方向のネゴシエーションをサポートするために双方向通信が必要です。この新しい市場の要件に対応するため、米国自動車技術者協会(SAE)、国際標準化機構(ISO)、および国際電気標準会議(IEC)を含む複数の標準化団体が、EVと電気自動車用給電装置(EVSE)と呼ばれる充電ステーションとを接続する通信システムの仕様策定作業を行っています。このセキュアで高信頼性の双方向通信を既存の送電システムに統合するためには、多数の重要な設計上の問題が伴います。一方で、EVの充電は業界の重要なニーズになっているため、スマートグリッドの新しい標準規格であるG3-PLCが、電力線上でのエネルギー管理通信の主要技術として台頭しました。
このアプリケーションノートでは、EV-EVSE間の高信頼性の通信に必要な基準について検討します。G3-PLCシステムが、自動車業界と電力業界によって確立された基準にすでに適合していることをデータで示します。複数の国際的試験によって、G3-PLCの実装は低周波帯のソリューションとして最適であることが証明されています。

EV-EVSE間の通信の基準

自動車メーカー各社は3年以上にわたり、さまざまなEV-EVSE間通信ソリューションの研究とテストを重ねてきました。最近、自動車コミュニティはテスト対象を2つの電力線通信(PLC)ソリューションに絞り、低周波数用の選択肢としてG3-PLCシステムに重点を置きました。実用的な通信システムに対する課題は多く、設計者たちはすべての可能性を検討しています。
重要な通信の基準は、以下のとおりです。
  1. 信頼性—堅牢な通信と車載グレード部品の両面
  2. EMC、関連付け、およびクロストークの要求に対する準拠
  3. 電力線の規制に対する世界規模での適合
  4. コントロールパイロットライン上での動作
  5. ACまたはDC電源での動作
  6. エネルギー管理システム用のセキュアなネットワークのサポート
さらに、車載ソリューションはICの設計者およびメーカーに特別な難題を与えます。ICは過酷な環境条件に耐える必要があります。10年~20年にわたり高信頼性の動作を行い、車載固有の認定/品質保証プログラムに適合する必要があります。

EV-EVSE間の通信向けに最適化されたG3-PLC

この数年、自動車業界の調査と並行して、電力業界は10年以上の寿命を備えた堅牢で高信頼性のG3-PLCの実装を開発してきました。これらの作業は、フランス電力公社(EDF®)を含む世界最大規模の電力会社による支援を受けています。G3-PLC電力線モデムは、負の信号対ノイズ比(SN比)が予想される過酷な条件下で独自の動作を行うように設計されています。このG3-PLCの能力が持つ重要性は、いくら強調しても強調しすぎることはありません。EV-EVSE間通信の全条件範囲にわたり高信頼性の通信を確保する上で、この能力は非常に重要です。
2009年に行われた米国エネルギー省の出資による独立系のDC充電テストで、EV-EVSE間の通信で発生する可能性のある問題点が明らかにされました。それらのテストの結果、マキシムのG3-PLC電力線モデムの堅牢な通信能力はすべての条件での動作に対応することが示されました。

高ノイズの充電ケーブルへの対応

テストされたほとんどの独立系PLCソリューションは、より低電流で動作しました。G3-PLCはテストされた中で250Aにおいて高信頼性で機能した唯一のPLCシステムでした。テストデータ(図1)は、ノイズが信号より20dB以上大きい場合があることを示しています。スイッチング電源からのノイズは、スイッチャによってさまざまな周波数で発生する可能性もあります。G3-PLCシステムはこれらの過酷な条件に対抗するために、堅牢モード(ロボモード)、適応型トーンマッピング、2レベルのエラー訂正、および2次元インターリーバを含む独自の機能を取り入れています。これらの機能はIEEE®のISPLCの論文¹で詳細に解説され、フィールドテストで検証されており、柱上トランスを介して高信頼性の通信を行うG3-PLCの独自の能力を可能にしています。
図1. G3-PLCの動作のテストに使用された250A DCチャージャのスペクトル
図1. G3-PLCの動作のテストに使用された250A DCチャージャのスペクトル

EMCとの戦い

G3-PLCトランシーバが登場するまで、一般的に電磁両立性(EMC)は屋外でのPLC実装の重大な問題点でした。しかし、G3-PLCシステムは低周波数 (500kHz以下)で動作し、全世界のスマートグリッド電力ネットワーク向けに設計されているため、EMCの問題はありません。実際、初期のテストの結果、低周波数帯域(500kHz以下)でのEMCレベルがCISPR-25の制限値以下であることが示されました。この性能は、その後多数の独立系テストで確認されています。

関連付けおよびクロストーク妨害の防止

EVはしばしば近隣の車両と一緒に充電されます。そのため、通信の誤りが課金の誤りにつながるため、EV-EVSE間のネットワークでは関連付けとクロストークが最重要の問題となります。自動車業界は当初、このアプリケーション用に無線ソリューションを検討していましたが、正しい関連付けの保証が問題になることが分かりました。
PLCは、充電されているEVが課金対象になることを保証します。G3-PLCの実装が、この問題を解決します。EVSEのスイッチがオープンの場合、通信は不可能です(図2)。これにより、複数の充電ラインを備えたEVSEにおいて、オープンな接続間あるいは充電ライン間で通信が発生しないことが保証されます。この性能は、最近行われたISO 15118 PT4のテストでさらに確認されました。このテストでは、クロストークを示すためにG3-PLC信号が通常の動作レベルの10倍に増大されました。通常の動作条件、およびそれより高い動作条件においてさえ、クロストークは検出されませんでした。
図2. 送信および受信信号から、G3-PLCを使用した場合オープンな接続を介して通信が発生しないことが分かります。
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図2. 送信および受信信号から、G3-PLCを使用した場合オープンな接続を介して通信が発生しないことが分かります。
グローバルなソリューションを使用することは、自動車メーカーにとって重要な目標です。G3-PLCシステムは、それぞれ10kHz~500kHzの範囲の国際的な認可バンドで運用されている、世界の多数の地域で徹底的にテストされました。地域による認可バンドの違いに対応するために、マキシムのG3-PLCの実装は配備される場所に合わせたプログラムが可能になっています。そのため、ヨーロッパの電力会社のテストでは、G3-PLCシステムはCENELEC® Aバンド(最高95kHz)用にプログラムされました。南北アメリカでは、G3-PLCはFCCバンド(最高490kHz)用にプログラムされ、日本向けにはARIBバンド(最高450kHz)用にプログラムされました。

コントロールパイロットライン上での動作

コントロールパイロット用の設計でさらに問題が増えましたが、それもG3-PLCトランシーバによって克服されました。SAE J1772仕様を遵守するためには、パイロットライン上で動作する場合に、超低電圧と、PWMパラメータとの干渉がない結合という、2つの重要な機能が必要です。G3-PLCシステムは堅牢なため、低電圧(および低電流)での動作は問題ではありません。図3は、パケットの喪失や繰返しを必要とすることなく500mV以下での動作が達成可能であることを示しています。
図3. コントロールパイロットラインに誘導性結合されたG3-PLC信号のオシロスコープグラフは、PWMおよびPLC通信のサポートを示しています。
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図3. コントロールパイロットラインに誘導性結合されたG3-PLC信号のオシロスコープグラフは、PWMおよびPLC通信のサポートを示しています。
また、スルーレートに悪影響を及ぼすPWM信号への負荷の防止と、1kHz、12V信号からのPWM高調波の防止の2つも重要です。PWM周波数帯とG3-PLC送信の重なりを確実に防止するため、G3-PLCシステムは150kHz以上で動作するように設定されています。PWMのスルーレートを確実にシステムの制限値内にするためには、容量性結合よりも誘導性結合が適しています。

汎用性によってさらに広がる可能性

G3-PLCの実装は、多数の世界的な電力会社によってAC商用電源ソリューションとして広範囲にテストされてきました。SAEの後援による複数のテストで、数千万の電力会社の自動車用メッセージをG3-PLCシステムによってエラーゼロで送信可能であることが個別に確認されました。この非常に高信頼性の性能が可能なのは、G3-PLCシステムが給電および非給電ライン(AC商用電源、コントロールパイロット、CAN、または任意の媒体)上で動作することができるためです。
先進的メーターインフラストラクチャ(AMI)でのG3-PLCの実装に対する関心が高まる中で、AC商用電源上でのEV-EVSE間の通信から、G3-PLCシステムが直接メーターに返信するという興味深い可能性が出てきました。図4は、G3-PLCが提供することができる広範なエコシステムを示しています。家庭のEVSEは、独立した、専用のブレーカーを備え、主要な外部ブレーカーに直接戻る経路を提供することが予想されます。そのため、位相差は問題になりません。
図4. EVから電力会社へのG3-PLCの通信経路
図4. EVから電力会社へのG3-PLCの通信経路
一部の電力会社は、自動車メーカーが要求し始める前にIPv6アドレス方式をG3-PLCシステムの要件に追加しようとしていました。実際、Stephen Shankland氏によるZDNetの記事²で説明されているように、IPv4アドレスはほとんど枯渇しています。そのため、IPv6のサポートは常に優先事項でした。G3-PLCの実装では、6LowPAN圧縮を使用して真のIPv6アドレス処理を確保しています。G3- PLCは真のIPv6ネットワークを備えているため、PHYおよびMACを認識しないエネルギー管理ソリューションがそのネットワーク上でシームレスに動作します。

最終的な要点

自動車メーカーは、EV-EVSE間の通信を実装する上で多数の困難に直面しています。しかし、今では低周波帯のソリューションが存在します。G3-PLCシステムのMAX2992電力線トランシーバは、全世界で独立系のテストと検証が行われた、実証済みの、堅牢なソリューションです。現在量産中で、車載グレード認定されており、間もなく制定されるEV-EVSE間の通信についてのSAE J2931/3 PLC仕様に適合しています。また、近く発表されるIEEE 1901.2仕様とも完全な相互運用性があります。

参考文献

  1. ISPLC 2010 conferenceでのG3-PLCプレゼンテーション。
  2. Stephen Shankland氏によるZDNetの記事「Time Running Out for IPv4」は、次のURLで提供されています:www.zdnet.com.au/time-running-out-for-ipv4-339308822.htm
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