アプリケーションノート 5345

1年に1か月間、電気を無料で使用したくありませんか?


要約: 家庭向けガジェットによる電気の待機時消費は、エネルギーを保存し、人と企業を大きなエネルギー災害から保護するという方針の欠如を示す1つの指標です。大半の消費者は、この事実に気付いておらず、また、多くの消費者は、ほんのわずかな努力で年間の電気料金を最大10%節約できることを知りません。

この記事と同様の記事が、2012年8月20日に「Electronic Design」に掲載されました。

はじめに

それほど遠くない昔、電子デバイスには「ハード」のパワースイッチがあり、オフにすればデバイスは確実にオフになり、電流をまったく消費しませんでした。
ラジオとそれに続くTVのリモートコントロールの発明がそれを変えてしまいました。最初のリモートコントロールは有線式で、配線がトリップ障害を引き起こしていたため、あまり普及しませんでした1。1939年に発表されたPhilco® 「Mystery Control」は、家庭のラジオ受信機をコントロールするワイヤレス無線送信機でした2。Zenith Radio Corporationは、1950年代初期に配線を使用した有線TVリモートコントロールの開発に取り組みました。しかし、リモートコントロールが実際に普及したのは、ZenithがFlashmatic、その後にSpace Commandリモートコントロールを発表した1955年と1956年でした3。Zenith® Flashmaticは、TVセット内にフラッシュライトと光電管を搭載した画期的なリモコンでした。Space Commandは、超音波トーンを発生するアルミニウム棒を押す機械式ボタンを採用していました。TVに内蔵されたリモート受信機は、常に通電しておく必要があり、通電していなければ座ったままTVを付けることはできませんでした。受信機は独立したパワースイッチを備えていたため、家族が休暇で不在の際には、電気を大量に消費するチューブ回路が電気を消費して電気料金が上がることはありませんでした。(当然ながら、このスイッチは、世帯主がスイッチを切り忘れないことを前提として機能していました)。
その後、「間接」電源コントロールは、ほぼすべての電子デバイス(バッテリ式、電線式にかかわらず)で使用されている今日の「ソフト」パワースイッチへと発展しました。制御回路がユニットを起動、作動させるようパワースイッチから命令を受けるまで、デバイスは多少の電流が流れている状態でスタンバイモードを保ちます。
ソフト電源コントロールは、必要から開発されたものでした。チュートリアル5274 「It's Hot! Why Are My CMOS Logic Circuits Burning Up?」において、当社は、不測の挙動、システムロックアップ、損傷も引き起こさない電源のシーケンスが重要であることを述べました。ソフトコントロールは、順序立ったパワーアップおよびパワーダウンを可能にするだけでなく、ユニットのマイクロプロセッサ(マクロプロセッサを装備していない電子デバイスなどあるでしょうか?)にシステムチェックと問題報告を実行させます。1日中フットボールをご覧になれるようご家庭のTVがPOSTを実行するのにどれほど時間がかかるかについて不平を言う前に、それは高性能HDディスプレイに対して支払わなければならない代価であることを思い出してください。

Suburbiaの待機電気

スタンバイモード時の電流ドレインは、一般的にはファントム負荷、リーク電気4、あるいはこれを示す表現のなかで最も恐ろしい言葉である待機電力と呼ばれています。大半の消費者は、「オン」になっていないと思われるときに、いかに多くの電子デバイスアが電力を消費しているかに気付いていません。これらの電子デバイスには次のようなものがあります。
  • オーディオ/ビデオ機器に内蔵されているリモートコントロールシステム(図1)
  • クロックおよびタイマー(特に電子レンジ、レンジ、iPod®ドックに内蔵されているもの)
  • コンピュータおよびコンピュータ周辺機器
  • バッテリチャージャ
  • ガジェットおよび小型機器(とりわけ外部電源を備えた物)の全マナー
外部電源(ふざけて「wall warts (壁の疣)」と呼ばれる)は、悪評の高い電力ドレインです。小型化とコスト削減を図るため、大半の外部電源は、1次インダクタンスが低い小型変圧器を使用しており、その結果、余分な電流を消費します。外部電源は、電力を供給しているデバイスが停止した後でも触れると暖かいままです。「余分な」電流とは言っても、10mAまたは20mAとわずかです。しかし、家庭で多くのデバイスが毎日24時間接続されていれば、電気料金はある程度上がります。

コストを「計算」する

待機電力は、先進国において家庭用電力の5%から10%を「消費する」と推定されています5。デバイスを電源から外す、あるいは電源タップを遮断してこの電力を節約すれば、消費者は、1年に1か月間は電気を「無料」で使用することができるかもしれません。また、これにより、新しい発電所の増加速度を抑えられる可能性があります。
待機電力による経済的消耗は、ほぼ20年間にわたって認識されてきました。1990年代以降、政府と産業は、共に待機電力を低減するための目標を掲げてきました6。2010年の目標は、スタンバイ電力を1ワット未満に低減するというものでした。2013年の規制は、スタンバイ電力を0.5ワット未満に低減しています。(0.5ワットという電力が少ないと思われるのであれば、次の計算をしてみてください。1家庭に10台のデバイス x 100,000家庭 x デバイスあたり0.5ワット)。
エネルギーの浪費は、不必要な装備や機能を排除することによっても低減することができます。料理をしていないときや時間を設定して料理していないときに電子レンジのクロックを作動させる必要はありますか?ある試算によれば、常に表示されているクロックは、電子レンジの使用コストの半分を占めていることになります4
図1. 主回路を作動せるためには、デバイスのリモートコントロール受信機およびプロセッサに通電する必要がある。大半の現行の(残念ながら!)デバイスは、セットを電源から外す以外にR/C受信機を遮断する方法がない。
図1. 主回路を作動せるためには、デバイスのリモートコントロール受信機およびプロセッサに通電する必要がある。大半の現行の(残念ながら!)デバイスは、セットを電源から外す以外にR/C受信機を遮断する方法がない。

脆弱なAC電源

図2は、さまざまな機器が取り付けられた電柱を示します。最上部には、3相高圧線(一般的には2kVから30kV)が接続されています。変圧器(灰色の円柱)は、家庭向けおよび非産業向けに高圧を120V/240Vに下げます。電柱の下の部分には、ケーブルTV用の細い同軸線と太い電話用ケーブルが接続されています。
暴風、大雪、制御不能になった車両により高圧線が切断される可能性があります。これらの高圧線が他の線に落下すると、ブレーカまたはフューズが開く前に、数百(あるいは数千)ボルトの電圧が使用している機器、電話やケーブル接続部を流れます。送電線に接続されているあらゆるデバイスは、オン状態、オフ状態、スタンバイ状態に関わらずほぼ確実に損傷します。
電力グリッド自体は、問題の原因となり得ます。負荷最適配分時、あるいは、大きな誘導負荷(特にモータおよび冷蔵設備)がオン、オフされる際に、損傷を与えるスパイクおよびトランジェントが発生する可能性があります。
図2. 電柱の最上部に接続されている高圧線が切断されると、電圧の低い送電線および通信回線上に落下する可能性がある。
図2. 電柱の最上部に接続されている高圧線が切断されると、電圧の低い送電線および通信回線上に落下する可能性がある。

電話線の保護

電話会社には、高圧線が自社の電話線に落下するのを防止してきた長い歴史があります。たとえば、JanskiとFaberが1916年に発表した著書「Principles of the Telephone7 (電話の原理)」では、落下トロリ線、避雷器、さらにはその他のタイプの高圧保護対策が紹介されています。金属スパークギャップは非常に有効ですが、溶融し、手作業による交換が必要なため高価です。より有効な別の方法では炭素ブロック(図3)を使用します。炭素ブロックは、交換が必要になるまで多数のストライクに耐えることができます。
図3. 炭素ブロック避雷器は、落雷が発生するたびに交換しなくても保護効果を発揮する。
図3. 炭素ブロック避雷器は、落雷が発生するたびに交換しなくても保護効果を発揮する。
通常、2個の炭素ブロックは、厚さ1/5000インチから1/10000インチの雲母シートで分離されています(図3)。図4の例は、避雷器がどのようにして電話線をトロリ送電線からの600Vの電圧との直接接触から保護するかを示しています。
図4. 炭素ブロック避雷器は、電話線を高圧事故および落雷から保護する。
図4. 炭素ブロック避雷器は、電話線を高圧事故および落雷から保護する。
両方のフューズセットは、電流が雲母スペーサの周囲の空気中でアークを発生すると開きます。炭素ブロックは、低融点金属スラグを内蔵することもできます。アークの発生によりフューズが飛ばない場合、金属スラグは溶融し、アークギャップを短絡し、フューズを溶断するのに十分な電流を流します。(図5)
図5. 1900年頃のWestern Electric社のタイプ58A保護装置は、落雷およびその他の高圧からの保護を行っていた。
図5. 1900年頃のWestern Electric社のタイプ58A保護装置は、落雷およびその他の高圧からの保護を行っていた。
取扱説明書に記載されている落雷に対するアドバイスは現在でも通用するものです。「雷雨時には有線電話を使用しないこと」。(同様にシャワーを浴びないこと)。

サージ保護デバイス— 安全か危険か?

一般的にサージサプレッサと呼ばれるサージ保護デバイス(SPD)は、主に通常の電線のレベルを超える電圧を抑制して機器を保護します8。「通過電圧」は、電線の長さと送電線のインピーダンスによって異なるため、消費者に誤解される可能性があります。IEEE®プレゼンテーションは、SPD仕様のコンセプトを図で分かりやすく説明しています。電圧スパイクが発生すると、サプレッションデバイス(通常は金属酸化物バリスタ(MOV))が伝導状態になり、スパイクを短絡させます。それぞれの「事象」はMOVにわずかながら損傷を与え、MOVは最終的に保護効果を発揮しなくなります。
大半のサージサプレッサは、サプレッション機構が機能しなくなっても電源タップとして引き続き作動します。次の大きいサージは、機器に損傷を与えるか、あるいは発火するほどMOVを過熱させる可能性があります9。したがって、この状態を防止するため、MOVは、温度フューズまたはサーマルカットオフ(TCO)デバイスと併用すべきです10。さらに、サプレッサにはTCOおよびMOVの状態を監視するための表示ランプを装備すべきですが、表示ランプを備えているサプレッサはほとんどありません。
サージサプレッサを購入する際には、以下の装備があるものをお求めください。
  1. 電源タップが過負荷状態になった際に過熱および発火を防止するための回路ブレーカ。
  2. 保護コンポーネントが機能しているか否かを表示するランプ。
  3. 業界、保険または政府の試験機関(Underwriters Laboratories (UL)など)による承認。UL 1449は、SPDに関する最低限の基準を定めている。30ページの書籍には、他の同様の基準が記載されています11
サプレッサのジュールレーティング(1回の事象でサプレッサがどれだけの量のエネルギーを消散するかを示す)は、サプレッサの効果または寿命を示す重要な指標とは見なされていません12。肝心なのは全体のデザインなのです。
サージサプレッション機能のない電源タップにはご注意ください!これらは、精巧な延長コード以上のものではありません。

最高の能力を持った検査員が命を救い、お金を節約

「高品質の製品」の選択に加え、サージサプレッサが目的とする保護を確実に行えるようにするためにできることは他にもあります。サージサプレッサのどの部品も故障する可能性があり、回路ブレーカでさえ例外ではありません。最も重要なことは、サージサプレッサ、配線、プラグおよび機器を定期的に点検することです。これによって、我々自身と家族の命を救うことができるという大きな恩恵を受けることができるのです。また、家中に煙警報器を取り付け、作動させておくべきです。
サージサプレッサについて。
  1. ユニットに保護ランプが装備されている場合、点灯していますか?点灯していない場合、ひとつまたは複数のサプレッションコンポーネントが故障している可能性がありますので交換してください。
  2. サプレッサが過度に暖かくないですか?いずれかの部分に触れて熱い場合は、サプレッサの使用を直ちに中止してください。
  3. 同様に、表面のいずれかの部分が変色している場合も、サプレッサの使用を直ちに中止してください。
サージサプレッサのスイッチを切ることによって節約できるお金は、我々自身のお金であることを忘れないでください。1年に1か月の間電気を無料で使用できるという考えは、実際のところスイッチを切ることを促すインセンティブなのです。

参考文献

  1. Lane, Alfred P., "Radio aims at Remote"; Popular Science Monthly, November 1930, http://books.google.com/books?id=xSgDAAAAMBAJ&pg=PA78&dq=Popular+Science+1931+plane&hl=en&ei=5r8JTaa6Ismr8AaNmb2iAQ&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=8&ved=0CEAQ6AEwBzgU#v=onepage&q&f=true.
  2. Philco Mystery Control, 1939, https://www.philcorepairbench.com/philco-mystery-control/.
  3. Zenith promotional material, Five Decades of Channel Surfing: History of the TV Remote Control, http://web.archive.org/web/20080116212531/http://www.zenith.com/sub_about/about_remote.html.
  4. Student Sustainability Education Coordinators, "Phantom Load," University of California, Berkeley, September 2005.
  5. "Pulling the plug on standby power," The Economist, March 9 2006, www.economist.com/node/5571582?story_id=5571582.
  6. An internationally sanctioned definition and test procedure for standby power was adopted by the International Electromechanical Commission (IEC 62301) in 2005, and this is now widely specified and used. See https://webstore.iec.ch/publication/6789.
  7. Jansky, Cyril and Faber, Daniel, Principles of the Telephone, Part 1, Subscriber's Apparatus, MaGraw-Hill, 1916, pp 120-127.
  8. Eaton Corporation, May 2011, at IEEE®/Music City Power Quality Group Meeting, "Changes to Surge Protection Device Standards," http://ewh.ieee.org/r3/nashville/events/2011/Surge%20Protection%20Device%20Standards%20-%20IEEE%20Meeting.pdf.
  9. Surge Protectors & Power Strips Blamed for Causing House Fires, www.sfowler.com/investigations/Surge%20Protectors.htm.
  10. Littelfuse application note, "Designing with Thermally Protected TMOV® Varistors in SPD and AC Line Applications," www.littelfuse.com/data/en/Application_Notes/ec635.pdf.
  11. Eaton Corporation, June 2007, "Eaton's Guide to Surge Suppression: What You Need to Know About Surge Protection Devices," page 2, Table 1, http://lit.powerware.com/ll_download.asp?file=SA01005003E_150dpi0607.pdf.
  12. Ibid., page 10, "Debunking the Surge Current Myth, 'Why Excessive Surge Current Ratings are Not Required.'" http://lit.powerware.com/ll_download.asp?file=SA01005003E_150dpi0607.pdf.

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