アプリケーションノート 5291

ASKトランスミッタ/レシーバの組合せによる自動車の盗難防止アラートシステム

筆者: Tom Au-Yeung

要約: 自動車を駐車して家に入ったあと、おそらく一番考えたくない事態は、誰かに自動車を盗まれることでしょう。この設計案は、トランスミッタ/レシーバのペアで構成され、自動車の盗難防止アラートシステムとして機能する簡単な回路を示します。

同様の記事がEE Times誌の2012年3月8日号に掲載されています。
この簡単な回路はトランスミッタ/レシーバのペアで構成され、自動車の盗難防止アラートシステムとして機能します。設計の前提は単純明快です。トランスミッタを家の外に駐車している自動車の中に設置し、レシーバを家の中に置いておきます。自動車がエリア外に出た場合、トランスミッタとレシーバの間の距離が増大するため、受信電力レベルがあらかじめ決められたレベル(スレッショルド)を下回り、この回路は警告音を発します。実質的に、自動車盗難の可能性があることをこの回路が警告することになります。この回路は、USBフラッシュドライブの安全確保や子供の存在監視など、セキュリティを目的とする他のアプリケーションにも適用することができます。
図1は、キャリア周波数315MHzのASKトランスミッタシステムを示します。IC1は555ベースのタイマーのICM7555で、2レベルの発振信号を提供します。IC2はASKトランスミッタのMAX1472で、最大+10dBmの可変出力レベルを備えています。この回路を所有者の自動車の中に設置します。
図1. IC1およびIC2で形成される315MHzのASKトランスミッタ
図1. IC1およびIC2で形成される315MHzのASKトランスミッタ
図2は、家の中に設置するレシーバおよびアラームシステムを示します。IC3は315MHz ASKレシーバのMAX1470で、受信感度は-115dBmです。内蔵の受信信号強度インジケータ(RSSI)およびピーク検出器を使用して、トランスミッタが規定の距離内に位置しているかどうかを判定します。RSSIの信号は内蔵の2次のサレンキー型フィルタによってフィルタされます。フィルタのポールはOPP端子とDSP/DF端子に接続する2つの外付けコンデンサで設定可能です。このフィルタは周波数をASKの最大データレートまでに制限し、フィルタされたデータ信号は内部でデータスライサおよびピーク検出器に接続されます。
データスライサは、受信したRSSI信号をロジックレベルに変換します。平均電圧レベルを使用して、受信した信号がロジックハイかロジックローかを判定します。自己調整式の平均電圧レベルはRC (5kΩ、0.47µF)フィルタによって決定され、それがRSSI値を維持します。ここでは、RSSI信号がその平均レベルの決定に使用されます。そのため、0または1の長いシーケンスが送信された場合、平均レベルがシフトすることになります。このアプリケーションでは、データ信号は使用されず、ロジック0と1の状態が同じ回数発生する555タイマーのIC1の発振によって駆動されるため、この点は問題になりません。代わりに、内蔵のピーク検出器が重要になります。
IC3はピーク検出器(オペアンプおよびダイオード)を内蔵しており、その出力はPDOUT端子です。PDOUT端子のRC回路(1MΩ、0.1µF)は、RSSI信号に対するRCタンクフィルタを提供します。ASK変調のためこれが必要です。RCの定数を大きくすることにより、電圧レベルは555タイマーの発振にわたってそのピーク値を維持するようになります。それでも、人間の速度と比較した場合この時定数による反応は迅速で、スレッショルドに達した直後にアラームがトリガされます。
IC2とIC3 (ASKトランスミッタとレシーバのペア)は、ヨーロッパおよび世界の多くで使用されているISMバンド用の433MHz動作に最適化された設計でも利用可能です。ISMバンドは免許不要のアプリケーションに対応します。この設計で使用している315MHzの周波数は北米で使用するためのものです。
図2. IC3およびIC4で形成される警告音を備えたASKレシーバ
図2. IC3およびIC4で形成される警告音を備えたASKレシーバ
自動車のトランスミッタが家の中のレシーバから離れていった場合、距離の増大とともに受信電力が低下します。その後、コンパレータのIC4 (この場合は、MAX9075)に接続した可変の抵抗分圧器によって定義されるスレッショルド電圧をRSSIレベルが下回ります。完全なシステムおよびトランスミッタ/レシーバの位置に基づいて、「最適な」距離に相当するようにスレッショルド電圧を調整してください。住居内のシステムの位置に基づいてスレッショルドを調整する必要があることに注意してください。寝室や居間から車庫や道路までの距離は家ごとに異なります。また、建材の密度の違いも信号の減衰に影響します。最後に、IC4がレシーバのブザーをトリガし、警告音を鳴らします。この時点で、自動車の所有者は自動車がなくなっているかどうかを確認することができます。
信号レベルが低い場合の対策としては、MAX2634などのローノイズアンプ(LNA)を追加する方法があります。レシーバの位置に配置されたLNAは、レシーバの有効レンジを増大させ、完全なパワーアンプより低コストです。このLNAは、315MHzおよび433MHz ISMバンドでの使用に合わせて最適化することができます。さらに、信号対ノイズ比(SN比)が高いほど、より自由に最適なスレッショルドを設定することができます。
アラームの音量レベルは、トランスミッタの電力がスレッショルドレベルを下回るほど増大します。この次第に大きくなるアラームは、アラートレベルを高めることを意図したものです。音量レベルの増大は、ASK変調によってスレッショルド値の上下でRSSIが変化することの結果です。この効果は、50%デューティサイクルのパルス幅変調(PWM)信号を印加してブザーを駆動する場合に似ています。RSSIが完全にスレッショルドを下回った時点で、ブザーの音量が最大になります。音量の立上り時間を増大させるには、RCタンク回路の値を小さくしてください。ユーザーが定義した距離以上に自動車がレシーバから遠ざかった場合にブザーが完全にイネーブルされるように、スレッショルド値が適切に設定されていることを確認してください。
この盗難防止システムは、重要な情報や機密情報を格納するUSBフラッシュドライブにも実装することができます。このアプリケーションの場合、ユーザーはUSBドライブをキーホルダーに取り付け、ポケットやハンドバッグに入れておきます。USBドライブがカバーから取り外された場合、USBカバーに内蔵されたバッテリ駆動のレシーバがアクティブ化されます。トランスミッタはフラッシュドライブ自体に内蔵されており、コンピュータから直接給電されます。ユーザーがその場を離れた場合、キーホルダーのアラームがトリガされます。トランスミッタとレシーバのペアは低電力シャットダウンまたはスタンバイモードを備えているため、これを利用してバッテリ節約機能を実装することもできます。USBカバーの取外しを検出することにより、シャットダウンモードを使用したバッテリ寿命の延長が可能になります。
この自動車用アラートシステムには、さらにもう1つのアプリケーションがあります。自動車の中に子供が残っていることを親に気づかせるというものです。付き添いなしで子供が車内に残された場合、常にアラームを発生させます。この場合、親はトランスミッタを自動車のシートに固定し、レシーバを所持します。各デバイスは、上記の説明とまったく同様に機能します。大人が自動車から離れすぎた場合、トランスミッタとレシーバは相互に範囲外となります。アラームが鳴り、子供がまだ自動車の中にいることを思い出させるために役立ちます。このアプリケーションの場合、距離が数mを超えた時点でアラームがトリガされるようにポテンショメータを調整してください。また、子供が迷子になった場合に備えて、トランスミッタとレシーバの位置を逆にすることもできます。騒音の多い環境では効果が弱まりますが、アラーム音を頼りに子供の居場所を探すことができます。もう1つのプラスの副作用として、アラーム音が周囲の人々の注意を引くため、親子が再会する上で役立ちます。
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