アプリケーションノート 5260

過酷な産業環境のための設計について


要約: この記事では、産業アプリケーションに見られるような過酷な環境で回路の堅牢性に影響を与える要素について検討します。取り上げる話題には、電圧過渡への対処および静電気放電(ESD)とフォルトに対する保護の方法が含まれます。MAX4708フォルト保護マルチプレクサファミリおよびMAX14770E PROFIBUSトランシーバについて紹介します。

この記事の類似バージョンが「ECN」誌の2011年11月11日号に掲載されています。

はじめに

半導体(IC)の堅牢性—動作温度範囲は?高い電気的ノイズにどう対処しているか?ESDとフォルト保護はどうか?これらの問題は、必ずしもICの選択時に設計エンジニアが最初に考慮するものではありません。それにも関わらず、長期的な動作および信頼性と評価の高い最終製品にとって、堅牢性は性能の重要なパラメータです。過酷な動作条件が一般的である産業環境用のシステムを設計する場合には、特にそれが当てはまります。産業機器は、広い温度範囲、電源ラインまたはデータライン上の高い電気的ノイズ、およびESDや短絡のようなフォルト事象に晒される可能性があるためです。
現在、産業環境でのICの事実上の温度の標準は-40℃~+85℃で、数年前の標準だった-40℃~+70℃の温度範囲から+15℃高く「拡張」されています。業界の傾向はさらに高い温度での動作を求めており、やがては自動車業界の-40℃~+125℃が新たな基準になると思われます。電流および電力密度の増大にともなって、明らかにICメーカーはより広い温度範囲に耐える回路を設計する必要があり、そうしなければ部品決定のプロセスから除外されることになります。

電圧過渡への対処

電圧過渡は、誤った配線や偶発的な短絡が原因でしばしば電源ライン上で発生します。入力が保護されていない場合、これらの過渡によってダウンストリームの回路が損傷する可能性があります。ほとんどの電圧過渡に対する保護のために、従来は直列のヒューズと過渡電圧サプレッサ(TVS)ダイオードで構成された単純なディスクリート回路が使用されてきました(図1)。
Figure 1. Transient voltage-protection circuit using discreet components.
図1. ディスクリート部品を使用した過渡電圧保護回路
しかし、ディスクリート部品を使用した過渡保護には固有の制約があります。TVSダイオードの保護スレッショルドは十分に規定されていない場合が多く、温度に対して大幅に変化する可能性があります。また、過電圧状態が発生したあとはヒューズを交換する必要があります。最後に、大きい過渡には大型のTVSダイオードが必要になるため、基板スペースを消費し発熱量が増大します。
過電圧および過渡事象を管理するためのより制御された方法は、保護スレッショルドおよび反応回路をICに内蔵することです。常に高い信頼性の反応を確保するために、内蔵コンパレータおよびダイオードが多数のスーパーバイザおよび保護ICの設計に組み込まれています。一部のICはデータライン用の高電圧フォルト保護を備えています。自分自身を損傷から保護するために、フォルト保護されたデバイスは正常なデータライン電圧レベルを超えた時点でラッチアップします。この1つの例が、MAX4708マルチプレクサファミリです。MAX4708/MAX4709は2つのフォルト検出器を内蔵しています。正のレール(V+)以上のNO_ 電圧を検出するための1つのハイサイド検出器と、負のレール(V-)以下のNO_電圧を検出するための1つのローサイド検出器です(図2)。NO_の電圧がいずれかの電源レールを超えた場合はフォルト状態が発生し、その時点で、N1およびP1の両方のFETがオフになります。この方法によって、フォルト状態が発生した場合にスイッチの入出力が迅速に切断されます。
図2. MAX4708/MAX4709のファンクションダイアグラム
図2. MAX4708/MAX4709のファンクションダイアグラム
データシステムの電圧過渡は、RS-485トランシーバを使用して管理することもできます。RS-485トランシーバのレシーバ入力とドライバ出力は、産業用システム向けのEIA/TIA-485規格で規定されている-7V~+12Vのコモンモード範囲より大幅に高い電圧に晒される可能性があります。最近のトランシーバはこれらの過電圧事象に耐えるように設計されており、現在では最大±80V (グランド基準)にさえ損傷することなく耐えることが可能です。この最新技術により、堅牢な保護および長寿命の動作が確保されます。

ESDおよびフォルトに対する保護

内蔵のESD回路は有害なESD事象からICを保護し、システム全体をより堅牢にする上で役立ちます。
静電気放電(ESD)はもう1つの過電圧事象で、電位の異なる2つの材質が接触し、蓄積された静電荷が伝達され、スパークを生じたときに発生します。ESDスパークは人間と周囲との相互作用によってしばしば生成されます。これらの偶発的なスパークによって半導体デバイスの特性が変化し、性能が低下したり完全に破壊される可能性があります。ESDは産業にとって重大な問題で、年間数十億ドルの損害を引き起こしていると推定されます。現場で発生するESD事象は個々の部品の故障原因となり、場合によっては壊滅的なシステム障害につながります。
外付けのESDダイオードおよびその他のタイプのディスクリート部品回路を使用してデータラインを保護することが可能です。多くのICデバイスはある程度のESD保護を内蔵しているため、IC自体のためにそれ以上の外付けの保護を必要としません。図3は、非常に簡略化した一般的な内蔵保護方式のファンクションダイアグラムを示します。信号入出力(I/O)の電圧スパイクはVCCまたはGNDにクランプされ、内部回路を保護します。多くのインタフェース製品およびアナログスイッチはIEC 1000-4-2規格に準拠するように設計されたESD保護を内蔵しています。注目すべき情報として、マキシムは最近PROFIBUS RS-485トランシーバのMAX14770Eで、±35kVのESDヒューマンボディモデル(HBM)レベルを達成しました。
図3. 内蔵ESD保護回路の簡略図
図3. 内蔵ESD保護回路の簡略図

結論

堅牢性は、動作温度範囲から、フォルト/ライン保護、ESDや短絡まで、さまざまな種類の設計上の問題に関係しますが、一般に設計エンジニアはその点を最初に考慮しません。それは重大な誤りの可能性があります。産業市場のアプリケーションは過酷な環境に耐えることが仕事の一部であり、そのために堅牢な部品を必要とします。これらのアプリケーションでは、設計フェーズの早い段階で堅牢性について考慮すべきです。
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