アプリケーションノート 5131

産業用超音波アプリケーションの高電圧ニーズに応えるマキシム製IC

筆者: Luigi Franchini

要約: 現在入手可能な超音波送信用ICは、ほとんどが医療アプリケーションを想定したものであり、産業アプリケーションのニーズには必ずしも適していません。非破壊試験(NDT)、流量計、ソナーなどの産業アプリケーションでは、電圧能力、電流能力、周波数に関して異なる要件が課されることがよくあります。マキシムの高電圧(HV)製品は、柔軟性に優れているため、幅広いアプリケーションで使用することができます。このアプリケーションノートでは、MAX4940クワッドHVデジタルパルサとMAX4968 HVマルチプレクサ(Mux)のさまざまなアプリケーションについて説明します。

目次

概要

MAX4940 HVデジタルパルサ

図1は、高電圧(HV)デジタルパルスを4チャネル備えたデバイス、MAX4940の基本ファンクションダイアグラムです(図には、4チャネルのうち1チャネルしか示していません)。
  • スイッチS1とS2 (それぞれVPP_とVNN_に接続)は、200Vの電圧能力と2Aの電流能力を備えています。
  • スイッチS3 (データシートでは「クランプ」と記述)は、200Vの電圧能力と1Aの電流能力を備えています。
  • このデジタルパルサは、バイポーラとユニポーラの両方のアプリケーションで動作することができます。言い換えると、次のすべてのケースがサポートされます。
    • [VPP、VNN] = [+100V、-100V]バイポーラ
    • [VPP、VNN] = [0、-200V]ユニポーラ負
    • [VPP、VNN] = [+200V、0]ユニポーラ正
  • INP_とINN_がそれぞれS1とS2を制御します。
  • INC_はS3 (クランプ)を制御しますが、S1とS2によって条件付けられます。大部分のアプリケーションでは、INC_を駆動する必要はありません。INC_をハイに保ち、INP_とINC_のみを駆動することができます。その際、S1とS2の両方がオフになるたびに、S3をアクティブ化します。
図1. MAX4940のファンクションダイアグラム(4チャネルのうち1チャネル)
図1. MAX4940のファンクションダイアグラム(4チャネルのうち1チャネル)

表1. MAX4940の真理値表
INP_ INN_ CLP_ OUT_
X X X High-Z
0 0 0 High-Z
0 0 1 GND
0 1 X VNN_
1 0 X VPP_
1 1 X Not allowed

MAX4968 HVアナログスイッチ

図2は、16個の独立したHVアナログスイッチを備えた、MAX4968の基本ファンクションダイアグラムを示しています。各スイッチの内部ステータスは、SPI™インタフェースでプログラムすることができます。ほとんどの超音波アプリケーションでは、HVアナログスイッチを使用してHVマルチプレクサを実装しています。
  • SW1A、SW1Bは、VNN~VNN + 200Vの範囲でスイングすることができます。
  • HVアナログスイッチは、バイポーラとユニポーラの両方のアプリケーションで動作可能です。入出力電圧の範囲は、以下のケースのいずれかです。
    • (SW_)の範囲 = [+100V、-100V]バイポーラ
    • (SW_)の範囲 = [0、-200V]ユニポーラ負
    • (SW_)の範囲 = [+200V、0]ユニポーラ正
  • VNNは入力信号の振幅とその極性に応じて、0V~-200Vの範囲で変化します。VNNは、パルサ(トランスミッタ)の負電源と共有することができます。
  • VPPは、低電圧電源(10V専用)です。
  • 等価RONは入力範囲全体で均一(約20Ω)であり、オン容量は16pFのみです。
図2. MAX4968のファンクションダイアグラム
図2. MAX4968のファンクションダイアグラム

サポートされているアプリケーション

マキシムのHVパルサとスイッチは、バイポーラとユニポーラの両方のアプリケーションで動作可能な点で独特です(大部分の産業用超音波アプリケーションは、ユニポーラです)。マキシムのソリューションは、ユニポーラアプリケーションの小型化とシステム簡素化の両面で大きな恩恵をもたらします。バイポーラとユニポーラの両アプリケーションについて、下にアプリケーション図とタイムチャートを示します。外付けのグラスクリッピングダイオードを省略している場合があります。

バイポーラアプリケーション

図3. MAX4940クワッド、バイポーラデジタルパルサの標準アプリケーション回路
図3. MAX4940クワッド、バイポーラデジタルパルサの標準アプリケーション回路

図4. MAX4940とMAX4968を併用して、高電圧電源を使用したバイポーラアプリケーションの設計を大幅に簡素化
図4. MAX4940とMAX4968を併用して、高電圧電源を使用したバイポーラアプリケーションの設計を大幅に簡素化

  1. 簡素化のために、2チャネルのみを接続し、MAX4968を1:2のHVマルチプレクサとして構成しています。
  2. 必要なHV電源は2つだけです(VPP、VNN)。
  3. MAX4940のエクスポーズドパッド(図4に含まれません)をVNNに接続する必要があります。
図5. バイポーラ負アプリケーションでMAX4940とMAX4968を使用したパルスとスイッチの信号タイミング図
図5. バイポーラ負アプリケーションでMAX4940とMAX4968を使用したパルスとスイッチの信号タイミング図

:CLP_は常にハイです。標準的な3レベルの送信に、チャネル当り2つの制御信号のみを使用します。

ユニポーラ正アプリケーション

図6. ユニポーラ正アプリケーションにおけるMAX4940
図6. ユニポーラ正アプリケーションにおけるMAX4940

図7. ユニポーラアプリケーションでMAX4940とMAX4968を併用し、HV電源の必要を軽減
図7. ユニポーラアプリケーションでMAX4940とMAX4968を併用し、HV電源の必要を軽減

  1. 必要なHV電源は1つだけです。
  2. CGN_をCDN_に直接接続して、チャネル当り1つのコンデンサを取り除くことができます。
  3. MAX4940に対するVEE電圧の供給が不要になりました(VEEピンが接地されています)。
  4. コンデンサの許容電圧は200Vです。
  5. MAX4940のエクスポーズドパッド(図に含まれません)は接地可能です。
図8. ユニポーラ正アプリケーションでMAX4940とMAX4968を使用したパルスとスイッチの信号タイミング図
図8. ユニポーラ正アプリケーションでMAX4940とMAX4968を使用したパルスとスイッチの信号タイミング図

ユニポーラ負アプリケーション

図9. ユニポーラアプリケーションにおけるMAX4940の使用
図9. ユニポーラアプリケーションにおけるMAX4940の使用

図10. ユニポーラ負アプリケーションでMAX4968とMAX4940を併用して、必要なHV電源の数を削減
図10. ユニポーラ負アプリケーションでMAX4968とMAX4940を併用して、必要なHV電源の数を削減

  1. 必要なHV電源は1つだけです。
  2. MAX4940のエクスポーズドパッド(図に含まれません)は、VNNに接続されています。
  3. ユニポーラ正(図67)は、ユニポーラ負に比べてやや望ましい構成です(必要な外付け部品が少なく、エクスポーズドパッドがGNDプレーンに接続されるため、熱的性能が向上します)。
図11. ユニポーラ負アプリケーションでMAX4940とMAX4968を使用したパルスとスイッチの信号タイミング図
図11. ユニポーラ負アプリケーションでMAX4940とMAX4968を使用したパルスとスイッチの信号タイミング図

BTL構成による電圧駆動能力の倍増

産業アプリケーションでは、200Vを超える電圧でのトランスデューサの駆動が必要になることがよくあります。NDTや流量計測、他のアプリケーションなどで使用されるトランスデューサ要素では、性能向上のために200Vを超えるパルスが要求される場合があります。

MAX4940は、ブリッジ接続負荷(BTL)構成でトランスデューサ要素を駆動することによって、等価的にピーク間の励起信号を倍増させることができます。1つのトランスデューサ要素の駆動にMAX4940のチャネルを2つ使用する必要があります。励起電圧は最大400VP-Pまで可能です。

1要素のトランスデューサの両電極が利用可能なら、常にBTL構成が可能です。これは、各要素が通常GNDに接続された共通のノードを共有することが多い、大規模なトランスデューサアレイには当てはまりません。

図12は、BTLの標準的なアプリケーション図を示しています。出発点はユニポーラ構成です(この例では正)。しかし、ここではトランスデューサ負荷がOUT1_とOUT2_の間に接続されています。図13は、標準的な駆動回路を示しています。結果として、励起信号の振幅を2 x VPP、つまり400VP-Pまで広げることができます。

図12. MAX4940を使用した標準的なブリッジ接続負荷(BTL)構成
図12. MAX4940を使用した標準的なブリッジ接続負荷(BTL)構成

図13. BTL構成の標準的な駆動回路のタイミング図
図13. BTL構成の標準的な駆動回路のタイミング図

並列化による電流駆動能力の増強

産業アプリケーションでは、2Aを超える電流駆動能力が要求される場合があります。この高い能力を使用すると、高容量性負荷(数nF)を駆動したり、高周波数(たとえば、最大30MHz ~40MHz)で動作したりすることができます。MAX4940のチャネルを並列することによって、電流能力の増強が可能です(2チャネル = 4A、3チャネル= 6Aなど)。

たとえば、図14は、正のユニポーラ4Aデジタルパルサで、2チャネルを並列に使用して1つの要素を駆動する場合を示しています。この図はMAX4940の場合を示していますが、MAX4968にも同様な検討を行うことが可能です。関連した手法をバイポーラとユニポーラ負のアプリケーションで使用することもできます。チャネルを並列化すれば、オン抵抗を引き下げ、駆動能力を高めることが可能です。

図14. 4Aユニポーラ正パルサのアプリケーション図
図14. 4Aユニポーラ正パルサのアプリケーション図

BTL構成使用時にチャネルを並列化することも可能です。言い換えると、MAX4940を使用して、4Aの電流能力で1つの要素を最大400VP-Pまで駆動することができます(図15)。

図15. BTLアプリケーションで4Aを駆動するMAX4940のアプリケーション図
図15. BTLアプリケーションで4Aを駆動するMAX4940のアプリケーション図

低周波および高周波動作

上で説明したアプリケーション図は、大部分のアプリケーションに当てはまります。しかし、低周波信号(< 1MHz)が使用される場合もあります。ソナーアプリケーションでは、10kHz~200kHzの範囲となることがよくあります。

また、高周波(> 20MHz)の動作が要求されるケースも、NDTアプリケーションで軸分解能を高める場合や、PWM変調信号を送信する場合などによく見られます。以下の項では、両方のタイプのアプリケーションについて説明します。

低周波数(< 1MHz)

MAX4940は、1MHz未満の周波数で動作することができます。これは信号コンデンサ(上の例では3.3nF)を、さらに大きな値のコンデンサで置き換えるのに十分です。経験則として、次の式を考えることができます。
CSIGNAL = 3.3nF/freq(MHz)
たとえば、100kHzのアプリケーションでは、提案値は33nFです。それとは対照的に、MAX4968はブートストラップアーキテクチャに基づいています。MAX4968は、100kHzを下回る周波数で動作することができません。

高周波数(> 20MHz)

MAX4940の駆動回路は、40MHzなどの高周波数で動作することができます(短いパルスを生成)。しかし、実際の制限は、通常、電流駆動能力に限りがあることから生じます。

一次近似では、負荷を純粋に容量性(CLOAD)と考えることができます。達成可能な最大スルーレートは、パルサが供給可能なピーク電流(IPEAK)に関連します。式では、次のようになります。
SLEW_RATE = (δV/δt)max = IPEAK/CTOT
ここで、CTOTは、トランスデューサの静電容量、ケーブルの静電容量、ICの寄生容量を含む総負荷容量です。

この場合、ユニポーラ正モード(図6)を使用し、200Vのユニポーラバースト信号を送信するものとします。たとえば、CTOT = 400pFであれば、スルーレートは次の値に制限されます。
(δV/δt)max = IPEAK/CTOT = 2A/300pF = 6.66V/ns
その結果、立上り/立下り時間は、およそ次のように与えられます。
TRISE = TFALL ≈ 200V/(6.66V/ns) = 30ns
したがって、200V振幅の最小パルス幅は約60nsです。

もちろん、バイポーラとユニポーラ負のアプリケーションにも同様な検討を行うことができます。

上で説明したとおり、並列のチャネル数を増やすことによって、電流能力(IPEAK)を高めることができます(ただし、それに応じてICの寄生容量も増大します)。したがって、動作周波数を引き上げることが可能です。たとえば、図14で示した4Aパルサでは、理論的には(ICの寄生容量を無視して)、200Vの出力スイングに対してTRISE = TFALL = 15nsが得られます。
IPEAK = 4A、CTOT = 300pF、スイング = 200V 最小パルス幅 = 30ns
バイポーラやユニポーラ負といった他の動作モードにも、同様な検討を適用することができます。
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