アプリケーションノート 4852

LNAのMAX2180を使用してAM/FMアクティブアンテナLNAソリューションを設計

筆者: Matthew Waight

要約: このアプリケーションノートは車載用AM/FMアクティブアンテナ用のリファレンスデザイン(RD)です。このRDはアクティブアンテナローノイズアンプ(LNA)のMAX2180の柔軟性を示すと同時に、AMおよびFMの利得と自動利得制御のアタックポイントの設定の方法を説明しています。入出力整合回路を含む、シングルおよびデュアルアンテナの回路図が詳細に示されています。このRDをデータシートおよびデバイスの評価(EV)キットと共に使用することで、広範囲のアクティブアンテナの要求仕様を満たす試作アンテナを簡単に開発することができます。

はじめに

このアプリケーションノートは、車載用AM/FMアンテナ用のリファレンスデザインを紹介します。この設計では、アクティブアンテナモジュール向け、高集積AM/FMローノイズアンプ(LNA)のMAX2180が使用されています。このLNAはマキシムの自動利得制御技術をAMとFMの両方の信号経路に集積しており、ユーザー設定が可能なアタックポイントも提供されます。AMおよびFMの信号経路の最大利得も変更が可能で、ユーザーの幅広い要求仕様に対応します。このRDでは、高集積、車載用ソリューションの柔軟性と性能を詳細に解説します。

概要

車載用アンテナの要求仕様は、現代のAM/FMラジオに要求される高性能を維持しながら、より小型で高集積のソリューションへと依然突き進んでいます。自動利得制御(AGC)が要求されるソリューションが存在する一方で、最小のコストを実現するために固定利得LNAを採用するソリューションがあります。安定化された電源電圧がアンテナに供給されるソリューションが存在すると同時に、より大多数のソリューションは依然バッテリ駆動となっています。この結果アンテナソリューションの供給業者が直面する課題は、ディスクリートソリューションの絶え間ない再設計や、高コストな上にPINダイオードやレギュレータの外付けが必要となるICを使用することなく、いかにして広範囲に及ぶ業界の仕様要求を満足させるかというものです。リソースとスペースが限られているため、アンテナ供給業者が理想とするソリューションは高性能、低コストでありながら、再設計や部品変更、基板の再設計をすることなく容易に様々な要求仕様を満たす柔軟なICです。

アクティブアンテナ用の高集積AM/FMソリューションを提供するサプライヤは現在数社あります。しかし残念なことに、これらのソリューションは、AGCを実現するには外付けPINダイオードが必要です。またこれらのソリューションは、バッテリ駆動する場合には安定化電源もしくは外付けパストランジスタも必要となります。これらの外付け部品はコストを上昇させ、ソリューションの実装面積を拡大します。AGCが不要な場合には、ソリューションのサプライヤは通常ディスクリート部品を使用してコストを最小限に抑えます。ディスクリート部品の問題は、利得や電源電圧、または実装面積の仕様が変化すると再設計が必要となる点です。これによって見積りに手間がかかり、常に不足している設計リソースの追加が必要となります。

最適なアンテナソリューションとMAX2180

Maxim Integratedは、すべてのアクティブ部品を内蔵し、今日の車載用アンテナの厳しい要求仕様を満たすAM/FMアンテナソリューションを開発しました。このアンテナはLNAのMAX2180を使用しています。MAX2180はマキシムの高耐圧CMOSプロセスを採用し、AMとFM両方のAGCと高耐圧レギュレータを小型4mm x 4mmのTQFNパッケージに封止しています。この設計では、すべてのPINダイオードと外付けレギュレータまたはパストランジスタが不要で、バッテリまたは安定化電源での動作が可能です。MAX2180は、AMおよびFMの最大利得とAGCのアタックポイントの設定ができます。この製品はアンテナモニタ機能も備えており、障害時の消費電流は15mAです。

このLNAの内蔵レギュレータは7V~24Vで動作します。内蔵の温度センサーは、フの字電流制限によって最大接合部温度を制限し、温度による損傷から保護します。これによって、周囲条件に関係なくアンプはアクティブに保たれます。

AM入力はハイインピーダンス、出力はローインピーダンスとなり、FMアンプは50Ωの入力および出力インピーダンスを提供します。AMの最大利得は、外部抵抗の変更によって0dB~6dBで設定が可能です。FMの最大利得はR1 = 0Ωの場合5.8dB~8.5dB、R1=390Ωとすることにより、雑音指数が向上し、最大利得範囲が10.0dB~10.8dBに増加します。マキシムの特許取得済みAGC回路を使用すると、両信号経路とも30dBの利得制御範囲となります。さらにAGCのアタックポイントを変更することによって、ヘッドユニットに希望の最大出力レベルを供給可能です。

データシートの表を使用して要求される信号経路の利得とAGCアタックポイントを選択することで、MAX2180を使用した設計を簡素化することができます。このようにカスタム化可能な範囲が広いため、基板を再設計することなく1つの設計で複数の要求仕様を満たすことができます。図1に示されるように、MAX2180は競合ソリューションよりも高い集積度を提供し、同時に広範囲の要求仕様を満たす柔軟性があります。図2はシングルアンテナソリューションのアプリケーション回路図です。

図1. 高集積ソリューションのMAX2180 (A) vs 競合するAM/FMアクティブアンテナソリューション(B)
図1. 高集積ソリューションのMAX2180 (A) vs 競合するAM/FMアクティブアンテナソリューション(B)

図2. MAX2180を使用したシングルアンテナソリューションのアプリケーション回路
図2. MAX2180を使用したシングルアンテナソリューションのアプリケーション回路

設計例

ここでは小型自動車向けの低利得アンテナの試験例が用いられています。このアプリケーションはこれよりも高い利得が必要ですが、小型自動車のケーブルが短いためアンテナからヘッドユニットにかけての損失を減少させます。ヘッドユニットのAMの目標最大入力レベルは+80dBµVで、FMは+95dBµVです。

AM:1番ピンの抵抗 = 0Ωのとき利得は6.5dB (表1)。17番ピンを接地した場合のAM出力のAGCアタックポイントは+79dBµV (表2)。

FM:10番ピンの接地時のFM利得は8.5dB (表3)。12番ピンの抵抗 = 39kΩを接地したときのAGCアタックポイントは+94dBµV (表4)。

表1. AM信号経路の利得
Pin 1 (Ω) AM gain (dB, typ)
0 6.5
22 5
68 2.5
180 0.5
330 -1

表2. AM信号経路のアタックポイント
Pin 2 AM output attack point (dBµV, typ)
Ground 79
Open 83
VLDO 86

表3. FM信号経路の利得
Pin 10 FM Gain(dB, typ; no external resistor) FM Gain (dB, typ; external resistor = 390Ω)
VLDO 8.5 10.8
Open 7.1 10.3
Ground 5.8 10

表4. FM信号経路のアタックポイント
Pin 12 (kΩ) FM output attack point (dBµV, typ)
0 104
10 100
18 96
27 95
39 94
47 93
56 92
68 90

入力回路

シングルアンテナでは、ダイプレクサは有効入力容量を最小化し、ハイインピーダンスのAM入力に負荷をかけないようにします。AM周波数帯ではアンテナは一般的にハイインピーダンスであるため、シャント容量が増加するとAM信号が減衰されます。またFM入力に対しては、最適な雑音指数と周波数応答を与え、他の周波数帯の信号を除去する必要があります。

AM入力ではFM「トラップ」が使用され、AM入力に入るFM信号レベルを最小限に抑えます。FM周波数帯に負荷をかけないために、アンテナとトラップの間に4.7µHのインダクタが置かれ、トラップで60dBc減衰させています。AM入力に直列のインダクタを置くことによってFM周波数帯でのフィードバックを向上させ、FM-AM歪みを防止します。ダイプレクサのFMセクションは50ΩのアンテナをFM入力に適合させ、同時にAM周波数帯を90dB以上減衰します。部品の追加によってQが低下し、雑音指数が劣化するため、インダクタの数は最小限に抑える必要があります。

デュアルアンテナソリューション(図3)はフィルタを簡素化し、少ない部品点数でFMのマッチングを若干向上させます。

図3. MAX2180を使用したデュアルアンテナソリューションのアプリケーション回路図
図3. MAX2180を使用したデュアルアンテナソリューションのアプリケーション回路図

出力回路

出力回路は、ファントム電源を内蔵の高耐圧レギュレータに供給すると同時に、AMとFM出力の両方を兼ねる必要があります。ファントム電源は、AC結合されたAM出力に接続されたインダクタンスの大きいコイルを介してレギュレータに給電することによってAM信号を減衰させ、レギュレータに入るのを阻止します。AM出力は、FM出力に起因するAM出力段の歪みを防止するための、もう1つのインダクタンスの少し小さいコイルを介して出力コネクタに接続されます。FM出力は小容量のブロッキングコンデンサにAC結合され、混変調(IM2 (A-B))によってAM出力に歪みが生じるのを防ぎます。FM出力にはフィードバック経路もあります。最適な雑音指数性能を実現するためには、390Ωの抵抗(R1)を2200pFのコンデンサ(C1)と直列にするソリューションをお勧めします。出力ブロッキングコンデンサ(C2)の後のパッドは、必要に応じて使用することによって総合利得の調整ができます。FMOUTへのプルアップインダクタ(L1)はインピーダンス整合と利得に合わせた容量となります。LDO出力(VLDO)との間のR/Cフィルタ(3.3Ω/10nF)はFMの雑音指数を向上します。30dBのAGC範囲を実現するためには、各FMBYP端子に100pFのコンデンサを使用する必要があります。

熱に関する検討

回路基板の設計では、製品のエクスポーズドパッドとモジュール筐体の間のサーマルインピーダンスを低くする必要があります。このために20番ピンから23番ピンはGNDに接続することが可能で、筐体への半田付け点またはネジ穴まで、エクスポーズドパッドから強固なGNDプレーンをこれらの端子の下を通し接続することができます(図4)。この製品は温度センサーを内蔵しており、ダイ温度が+135℃に到達すると消費電流を徐々に減少させます。製品は熱損傷から保護されると同時に動作を継続します。

図4. 低熱抵抗ソリューションのプリント基板(PCB)
図4. 低熱抵抗ソリューションのプリント基板(PCB)

結論

AM/FMアンテナLNAのMAX2180は、広範囲に及ぶ性能の高い要求仕様を満足させる車載用アンテナモジュールの設計に必要とされる機能や特長を全て合わせもっています。このLNAは柔軟性が高いため、一からの再設計やコストのかかる部品変更なしに、アンテナを進化し続けるアプリケーションの要求仕様に合わせて変更することができます。集積度の高いMAX2180はコストに敏感なソリューションに使用が可能で、外付けのディスクリート部品点数の削減と基板スペースの節約を実現しながら、今日のローノイズ、高リニアリティの要求仕様を満たすことができます。

このRDのFM信号経路は133dBµVのOIP3と+180dBµVのOIP2を提供します。7V~24Vの電源電圧での動作に対応しており、8V~15Vの性能が保証されています。MAX2180は4mm x 4mmのTQFPパッケージで提供され、±4kV HBMのESD保護に対応しています。サンプルとEVキットが提供されています。