アプリケーションノート 4642

MAXQ3180の使用方法:レジスタ設定

筆者: Ben Smith

要約: 多相、多機能、メーター計測用AFEのMAXQ3180は、圧倒的な数のコンフィギュレーションレジスタを内蔵しています。デバイスの基本的な動作では、これらのレジスタ中の少数のレジスタのみを設定する必要があります。このアプリケーションノートでは、これらのレジスタ設定を確実に成功させるための方法について解説しています。どのレジスタにロードする必要があるか、どのレジスタをイネーブルするか、そして、どのレジスタが修正不要であるかについて一つの表に分類しています。

はじめに

MAXQ3180は、多種多様なメーター計測環境において動作するように設定することが可能な、洗練された3相電力メーター用ICです。MAXQ3180は、柔軟性を支援するために68のコンフィギュレーションレジスタを内蔵しています。これらのレジスタの動作をすべて理解することは難しい作業です。しかし、ほとんどの場合、68のレジスタすべてを設定する必要はありません。実際、基本的なメーターの動作を可能にするためには、通常10個のレジスタのみを設定する必要があります。

このアプリケーションノートでは、初期設定する必要があるMAXQ3180のレジスタと一定の機能を有効にするために初期設定を行うレジスタについて解説しています。また、この記事は、ほぼすべてのアプリケーションにおいて、未設定のままで問題のないレジスタについて説明しています。

必須の初期設定

MAXQ3180は、電源が供給されると直ちに動作し、電力量を積算し、電圧、電流および電力の測定を開始します。とはいえMAXQ3180をラインに接続して、有効な単位の読み取り値を伝達するためのトランスデューサに適合させるためにデバイスを設定することは必要不可欠です。

MAXQ3180は、2段階の処理で測定を実行します。第一段階では、MAXQ3180が物理的事象(例えば電圧、電流、および電力)を読み取り、これらを内部で「meter unit; (メーターユニット)」と言う任意の値で表現し、第二段階ではMAXQ3180がメーターユニットとして表現された値をボルト、アンペア、およびワットなどの実際の単位に変換します。

物理的事象の読み取り(計測学)

MAXQ3180の最初の段階は、必要な測定を実行し、「メーターユニット」、すなわち、測定回路に適合する単位で正確にこれらの測定値を表現することです。与えられた測定単位—ボルト、アンペア、ワット、またはキロワット時—を正確にメーターユニットに反映するキャリブレーション過程で遂行されます。電流、電圧、電力、および電力量がメーターユニットで正確に表現されると、デバイスによって、これらのメーターユニットの測定値を実際に意味のある特定の単位に変換する必要が生じます。

例として電圧のキャリブレーションを使用しますが、この一般的な手順は、電流、電力、または電力量に同様に適用されます。入力回路として、目標とする変換比率である600:1の分圧器を仮定します。これは、DC 600Vが分圧器の入力に供給された場合、出力電圧が1V近くの電圧になることを意味します。MAXQ3180の電流、電圧入力のロジック回路は、224カウントのレンジを備えています。その結果、この例において、出力コードの最下位の1ビット(LSB)の変化は600 x 2-24ボルト、または35.8µVの電圧変化に準じることになります。他の状態の例として、120VRMSの正弦波を入力に供給した場合、変換前のRMS電圧レジスタの読み取りは、120/(600 x 2-24)、または3,355,443 (0x33 3333)となることが予測されます。

入力信号のスケーリングおよびフィルタ用受動部品、および入力ADC自身の自然変動のため、ADCから読み出される値が期待した値と一致することはあり得ません。この理由で、補償係数は、x.V_GAINレジスタ(xは相の識別子。A、BまたはC)に設定する必要があります。この例で、変換前のRMSレジスタから読み出される値は、3,000,000 (0x2D C6C0)のみであると仮定しています。これは、3,355,443/3,000,000 = 1.12のゲインを適用する必要があることを意味しています。

0x4000 (16,384)の値がユニティゲインとなるように、ゲイン調整レジスタを設定します。ゲインを追加するためには、これより大きい値をプログラムします。この場合、16,384 x (3,355,443/3,000,000) = 18,325 (0x4795)をプログラムします。

これで処理の第一段階を完了します。電圧チャネルにメーターユニットで与えられた実際の電圧を正確に反映させます。第二段階は、1LSBが35.8µVに等しいシステムから1LSBが更に単純な、例えば1mVと等しい方式への変換です。

変換定数の計算

直面する問題は、整数乗算操作のみが提供されることです。この変換を実行するために、通常は非整数による除算、具体的には1,000/35.8が実行されます。従って、この解決方法は、要求される単位が2のべき乗で乗算されるように、スケールファクタを選択することです。この例において、LSBは1mVではなく、1mV/216または15.3nVになります。測定を実施する際、単純に下位16ビットを切り捨てます。残りはミリボルト単位の電圧となります。

スケールファクタを決定するために、変換前のLSB値(35.8µV)を必要なLSB値(15.3nV)で単に除算し、2,344 (0x0928)を得ます。これが、VOLT_CCレジスタにロードする値です。

ところで、MAXQ3180は、V.Aバーチャルレジスタが読み出される時は常に、A.VRMSレジスタに2,344を乗算し、計算結果を出力します。この計算結果は、1mV/65,536を単位とするRMS電圧になります。ホスト側ソフトウェアは、下位16ビットを切り捨て、余りをミリボルト単位のRMS電圧としてそのまま記録します。

従って、ほとんどのアプリケーションについては、キャリブレーション処理(適切なVRMSとIRMSレベルを決定するための)を実行し、変換定数(電圧、電流、電力、および電力量用)の計算の実行のみが必要になります。

任意の初期設定

電圧、電流、電力量、および電力について上記に概要を説明した手順に従うことで、これらのパラメータの正確な表示が提供されます。ただし、MAXQ3180に提供される多くの他の機能が存在します。

割込み

MAXQ3180は、ホストプロセッサに例外的な条件の警報を出すために、洗練された割込みサブシステムを備えています。割込みを発生させることができる条件には以下のものが含まれます。
  • 各相について、実効または無効エネルギーフローの方向の変更
  • 各相について、特定の相で特定のスレッショルド時間以上についてゼロクロスイベントが未検出
  • 各相について、低電圧、過電圧、または過電流条件を検出
  • 各相について、電力量レジスタがオーバフロー(正常状態では、積算が実効されるべきであることを示す)
  • コンフィギュレーションチェックサムが変化
  • MAXQ3180の電源が切断された瞬間
割込みサブシステムの詳細については、MAXQ3180のリファレンスデザインを参照してください。

パルスコンフィギュレーション

メーターパルスは、機械的なカウンタをインクリメントするため、または多くのメーターの電気電力量積算レジスタをインクリメントするために使用され、MAXQ3180はメーターパルスに完全に対応しています。対応している2つのメーターパルスの各出力は、メーターパルスに反映されるパラメータを選択するためのコンフィギュレーションレジスタ、メーター定数を設定するためのスレショルドレジスタ、および、メーターパルスの幅を設定するためのパルス幅レジスタを備えています。メーターパルスサブシステムの詳細については、MAXQ3180のリファレンスデザインを参照してください。

改善された精度

理想的な電流、電圧トランスデューサによって、MAXQ3180は広範囲の入力電流で優れた精度を提供します。しかし、電流トランスデューサは決して理想的でありません。多くの場合、これらの動作範囲の最も端の部分に非直線性を持ちます。センサーの周波数、位相応答は、電流の変化に伴って変化します。MAXQ3180は、これを補償するためのレジスタを備えています。

MAXQ3180は、センサーの誤差を調整するための2つの微調整機構を備えています。第一の微調整機構は、独立した低電流時のゲインと低および高電流時の両方のオフセット調整です。このアプローチで、低および高電流レベルでのゲインおよびオフセットの両方の調整を最大4点まで、キャリブレーションに使用することが可能になります。

2番目の微調整機構は、電圧対電流の位相オフセットを調整するものです。この調整の仕組みにおいて、2点のスレッショルドを設定することによって、3種類の電流の範囲を設定します。両方のスレッショルド未満の電流は最初の範囲を形成します。2点のスレッショルドの間の電流は、2番目の範囲を形成し、両方のスレッショルドを越える電流は3番目の範囲を形成します。その結果、位相オフセットはA相、B相、またはC相のそれぞれについて、3つの各範囲が設定されます。

MAXQ3180の精度を調整するための微調整レジスタの使用方法についての詳細は、MAXQ3180のリファレンスデザインをご覧ください。

まとめ

MAXQ3180は、様々なメーターアプリケーションで動作可能にするための、いくつかのオプションを備えた、柔軟性の高い電力メーターアナログフロントエンド(AFE)です。小数のレジスタ(具体的には、キャリブレーションおよびスケーリングレジスタ)を設定することによって、電力メーターを動作状態にして、新システムの精度特性の決定作業を迅速に開始することができます。

凡例
            
                    
一般的な使用において、初期設定時にロードする必要のあるレジスタ
            
                    
MAXQ3180の特定の機能をイネーブルするために必要ですが、多くのアプリケーションで設定不要なレジスタ
            
                    
ほとんどのアプリケーションで修正が不要なレジスタ

アドレス デフォルト レジスタ名 解説
0x002 0x00 OPMODE1 接続モードが標準のデルタ結線でもワイ結線でもない、パルス出力極性を逆にする必要がある、または通信CRCを有効にする必要がある場合、このレジスタを設定してください。
0x003 0x00 OPMODE2 このレジスタは、ほとんど使用しない機能のためのビットを含んでいます。
0x006 0x0000 IRQMASK 割り込みを使用する場合のみロードします。
0x010 0x0000 AUX_CFG 補助チャネルを使用する場合のみロードします(通常特別なアプリケーション)。
0x014 0x0001 VOLT_CC メーターユニットから実際の単位へ変換するための定数。
0x016 0x0001 AMP_CC メーターユニットから実際の単位へ変換するための定数。
0x018 0x0001 PWR_CC メーターユニットから実際の単位へ変換するための定数。
0x01A 0x0001 ENR_CC メーターユニットから実際の単位へ変換するための定数。
0x01C 0x0010 CYCNT DSPサイクルを16ラインサイクル以外のサイクルに設定しなければならない場合にロードします。
0x01E 0x00 PLSCFG1 メーターパルスを使用している場合はロードします。
0x01F 0x00 PLSCFG2 メーターパルスを使用している場合はロードします。
0x020 0x009C PLS1_WD メーターパルスを使用している場合はロードします。
0x022 0x00100000 THR1 メーターパルスを使用している場合はロードします。
0x026 0x009C PLS2_WD メーターパルスを使用している場合はロードします。
0x028 0x00100000 THR2 メーターパルスを使用している場合はロードします。
0x02C 0x00C8 REJ_NS ラインサイクルフィルタ;注意して使用してください。
0x02E 0x4000 AVG_NS ラインサイクルフィルタ;注意して使用してください。
0x030 0x4000 AVG_C 信号パスフィルタ;注意して使用してください。
0x032 0x00C8 HPF_C 信号パスフィルタ;注意して使用してください。
0x034 0x0091 B0FUND 基本波モードフィルタ;注意して使用してください。
0x036 0x000003B6 A1FUND 基本波モードフィルタ;注意して使用してください。
0x03A 0x0091 B0HARM 高調波モードフィルタ;注意して使用してください。
0x03C 0x000003B6 A1HARM 高調波モードフィルタ;注意して使用してください。
0x040 0x03E80000 DSPサイクルあたりのADCフレーム数;自動的に計算され、手動による調整はほとんど必要ありません。
0x044 0xFFFF OCLVL 過電流制限を使用する場合にロードします。
0x046 0xFFFF OVLVL 過電圧制限を使用する場合にロードします。
0x048 0x0000 UVLVL 低電圧制限を使用する場合にロードします。
0x04A 0x0003 NOLOAD 設計規格に適合させるために変更します。
0x054 0x2328 NZX_TIMO ゼロクロス未検出タイムアウト;通常、この調整の必要はありません。
0x056 0x03E8 COM_TIMO 通信タイムアウト;通常この調整の必要はありません。
0x058 0x0005 ACC_TIMO 電力量積算スタートアップ遅延;通常この調整の必要はありません。
0x05A 0x0B00 ZC_LPF ゼロクロスフィルタ;注意して使用してください。
0x05C 0x0000 I1THR マルチレンジ相補償が必要な場合のみ設定してください。
0x05E 0x0000 I2THR マルチレンジ相補償が必要な場合のみ設定してください。
0x12E 0x0000 N_GAIN 中間点のゲイン;中間点の電流監視を使用する場合のみ調整します。
0x130 0x0000 A.I_GAIN A相電流用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x132 0x0000 A.V_GAIN A相電圧用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x134 0x0000 A.E_GAIN A相電力量および電力用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x136 0x0000 A.EF_GAIN 基本波モードを使用する場合のみ、調整します。
0x138 0x0000 A.OFFS_HI 精度拡張用の二次キャリブレーション:A相電流オフセット、ハイレンジ。
0x13A 0x0000 A.GAIN_LO 精度拡張用の二次キャリブレーション:A相電流ゲイン、ローレンジ。
0x13C 0x0000 A.OFFS_LO 精度拡張用の二次キャリブレーション:A相電流オフセット、ローレンジ。
0x13E 0x0000 A.PA0 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x140 0x0000 A.PA1 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x142 0x0000 A.PA2 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x145 0x00 A.MASK この相からの割り込みが必要な場合のみ設定してください。
0x21C 0x0000 B.I_GAIN B相電流用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x21E 0x0000 B.V_GAIN B相電圧用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x220 0x0000 B.E_GAIN B相電力量および電力用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x222 0x0000 B.EF_GAIN 基本波モードを使用する場合のみ調整します。
0x224 0x0000 B.OFFS_HI 精度拡張用の二次キャリブレーション:B相電流オフセット、ハイレンジ。
0x226 0x0000 B.GAIN_LO 精度拡張用の二次キャリブレーション:B相電流ゲイン、ローレンジ。
0x228 0x0000 B.OFFS_LO 精度拡張用の二次キャリブレーション:B相電流オフセット、ローレンジ。
0x22A 0x0000 B.PA0 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x22C 0x0000 B.PA1 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x22E 0x0000 B.PA2 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x231 0x00 B.MASK この相からの割り込みが必要な場合のみ設定してください。
0x308 0x0000 C.I_GAIN C相電流用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x30A 0x0000 C.V_GAIN C相電圧用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x30C 0x0000 C.E_GAIN C相電力量および電力用の一次キャリブレーションレジスタ。
0x30E 0x0000 C.EF_GAIN 基本波モードを使用する場合のみ調整します。
0x310 0x0000 C.OFFS_HI 精度拡張用の二次キャリブレーション:C相電流オフセット、ハイレンジ。
0x312 0x0000 C.GAIN_LO 精度拡張用の二次キャリブレーション:C相電流ゲイン、ローレンジ。
0x314 0x0000 C.OFFS_LO 精度拡張用の二次キャリブレーション:C相電流オフセット、ローレンジ。
0x316 0x0000 C.PA0 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x318 0x0000 C.PA1 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x31A 0x0000 C.PA2 位相補償改善用の二次キャリブレーション。
0x31D 0x00 C.MASK この相からの割り込みが必要な場合のみ設定してください。

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