アプリケーションノート 4335

省エネルギー:塵も積もれば山となる


要約: ポータブル機器については、バッテリの長寿命化を消費者が強く求めています。据え置き機器についても、エネルギーコストが上昇していることや最新のEnergy Star®ガイドラインが出たことから、無駄な待機電力に注目が集まっています。この結果、24時間稼動し続けるシステムを中心に、グリーンエネルギー規制への対応や待機電力の削減が設計者の合い言葉となりました。消費電力の削減を実現するためには、1つ1つの回路についてその許容電流量に見合うものであるかを検討するなど、きめ細かな対応をしなければなりません。「魂は細部に宿る」からです。このアーティクルでは、マキシムのチップを活用して一般的なシステムの許容電力量を削減する方法を紹介します。マキシムでは超低電流デバイスを各種取り揃えていますが、このアーティクルでご紹介するのはそのごく一部にすぎないことにご留意ください。

このアーティクルは「マキシムのエンジニアリングジャーナル、vol. 65」 (PDF、2.64MB)にも掲載されています。

消費者はポータブル機器で使われるバッテリの長寿命化を強く求めていますが、これは当然のことです。人々は利便性を求めるものであり、このことは人間社会の至るところで見られます。誰しも列に並んで待つ、渋滞で待つなどは避けたいと思いますし、そのような事態を避けるためにお金を払うことさえよくあります。年中無休、24時間稼働のATMも登場しましたし、ディジタルビデオレコーダ(DVR)によって娯楽の時間を自分に都合の良い時間に合わせることができるようになりました。いつでもどこでも好きなときに好きなエンターテイメントを楽しんだり、通信を可能にする携帯機器も登場しました。消費者の合い言葉は「小型、軽量、高速、簡単」です。電子機器を設計する人にとっては、この期待に応えられる機器を設計できるかどうかが、成功を大きく左右します。

機器の「グリーン化を推進」するためには、統合、アーキテクチャ、部品の選択、機能管理などを組み合わせ、ポータブルシステムであればマイクロアンペア単位で、据え置きシステムであればミリアンペア単位またはそれ以上の単位で消費電流を削減する必要があります。ポータブルシステムを設計する際には、マイクロアンペア単位で電流をチェックするものですが、チップの待機電流を超える電流が回路基板のどこか1カ所から漏れてしまえば、その単位の節約も無駄となってしまいます。

50年前のポピュラーソングに「Little Things Mean a Lot」という曲がありますが、これこそ、ポータブル市場向け回路設計の要点だと言えます。歌詞になぞらえて言えば(作詞者には申し訳なく思いますが)、「だって、正直なところ、みんな(バッテリの)負担になるのだから」。最初は大きなところから対策をします。まずマイクロプロセッサをスリープ状態にして、電流を大量に消費するディスプレイやフラッシュメモリ、その他の回路と進めて行きます。「魂は細部に宿る」ので、1つ1つの回路についてその許容電流量に見合うものであるかを検討するなど、きめ細かな対応が必要となります。規制は地域によって異なりますが、多くの場合、待機電力に関する目標は0.5Wから3W以下です。なお、動作時の効率目標は80%以上であることが増えています。

自宅の電力料金を見るのが怖いという消費者の方もおられるでしょう。この電力料金は、我々エンジニアが上手に回路を設計すれば、引き下げることができます。例としてHDTV対応のDVRレシーバを取りあげましょう。HDTV DVRはスタンバイモードのない製品が多く、一般に120W程度の電力を消費します。毎日24時間動作させると、毎月$34.52 (USドル)もの電気代が発生します(カリフォルニア州北部を想定し、$0.399/kWhという割増電気料金を基準に計算)。たった1台の家電製品でこれだけの電気料金が発生するのです。そう考えれば、全体ではどれほどの電気料金になるのか、またそれを削減できればどれほど大きな効果が得られるのか、想像していただけるのではないでしょうか。いわゆる中流の家庭では、35台あまりの電気製品が使用されています。幸いなことに、その多くはスタンバイモードを持ち、システムが休止中には消費電力を低下させるようになっています。

参照:エネルギーコストの計算

最近はエネルギーコストが上昇しているため、総所有コストに注目する消費者が増えています。この総所有コストに大きな影響を与えるのは消費電力です。室内で1ワットを消費すれば、その熱量をエアコンで取りのぞくためにもう2ワットの電力が消費されます。つまり、我々エンジニアとしては、グリーンエネルギー規制以上の節約を実現することが事業の成功につながることになり、地球に対する配慮となります。

基礎的な実用的機械

現代社会は、自宅や会社で無数のモータやマイクロプロセッサが動作しています。我々の生活スタイルがどれほど電力に依存しているのかは、自然災害が発生するときなどによくわかります。

図1. 一般的な機械が共通して持つ特性が我々のライフスタイルを規定しています。
図1. 一般的な機械が共通して持つ特性が我々のライフスタイルを規定しています。

我々が使っている機械、家電製品、およびエンターテイメント機器のブロック図をよく見ると、共通点が多いことに気がつきます。実用的な機械を可能な限りシンプルに定義すると、図1のようになります。我々も機械も、まず何かを検知し、それに対する行動を起こします。これは、実は仕事の大半に当てはまる定義です。人間は室温を検知してヒーターやエアコンのスイッチを入れます。人間は照度を検知して照明のスイッチを入れます。芝生の散水機に搭載されたコントローラは、時間を検知し、設定された時間だけ散水用ソレノイドを働かせます。

図2. ソフトウェアとシリコンの組合せで機能を規定するPLCの基礎となるのは、シンプルで実用的な機械というコンセプトです。
図2. ソフトウェアとシリコンの組合せで機能を規定するPLCの基礎となるのは、シンプルで実用的な機械というコンセプトです。

実用的な機械はこのようにシンプルな形からスタートし、そこにさまざまな特徴を追加して作ります。そのような例が図2です。まず、あるパラメータを検知し、あらかじめ定められた基準とその刺激をプロセッサによって比較し、出力となるアクションを起こします。(例として機械的なバイメタル方式のスイッチを持つヒーター、エアコン、または冷蔵庫などを挙げることもできますが、より複雑なデバイスに発展させることができるように、この機械を基本として使います。)このアーティクルでは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を例に話を進めます。システムは顧客から求められる要件を満足するようにカスタマイズする必要がありますが、その様子を示したのが図3です。

図3. マキシムをはじめとする高集積ビルディングブロックICを使用すれば簡単なPLCを構成することができます。
図3. マキシムをはじめとする高集積ビルディングブロックICを使用すれば簡単なPLCを構成することができます。

図3のシステムは、センサ入力とアクションとなる出力を各機能に必要とされる速度で切り分けています。変化速度が比較的遅い入力と出力は、マルチプレクサを通して1つのPLCエンジンで処理することができます。安全性関連のものなど、常時注意を払わなければならないセンサやアクションを処理するためには、複数のPLCを並列に配置しなければならない場合もあるでしょう。この基本PLCエンジンに使える可能性のある製品を表1にまとめてみました。マルチプレクサを通したセンサ入力は、初段オペアンプのゲインとオフセットを切り替えることで信号調節を行うことが考えられます。大量生産する消費者家電機器では、このアンプは安価になるでしょう。制御ループで必要とされる精度を持つ低電力CMOSオペアンプとしては、MAX9915などがあります。アンプの構成はいろいろと考えられ、システム要件に適したものを採用することができます。

表1. 基本PLCの構築に使用可能な標準的なマキシムの低電流IC
Part Description Current Consumption
MAX1108/MAX1109 8-bit ADC, dual-channel, 50ksps Operates on < 130µA; standby < 0.5µA
MAX6029 Series voltage reference, 0.15% initial accuracy Operates on 5.25µA (max)
MAX5380/MAX5381/MAX5382 8-bit DAC, 2-wire serial interface, 5-pin SOT23 package Operates on 230µA; standby 1µA
MAX9915 Op amp, 1MHz unity-gain BW, rail to rail Operates on 20µA; standby 0.001µA
MAX5490/MAX5491/MAX5492 Precision-matched resistor-divider, 0.025% tolerance Operates on ZERO A; standby ZERO A
MAX5426 Digitally-programmable resistor network for instrumentation amps Operates on 90µA
MAX5430 Digitally-programmable precision voltage-divider for programmable-gain amps Operates on 6µA
MAX308, MAX4581 8-to-1 analog multiplexer Operates on < 17µA
MAX5128 Digital potentiometer, nonvolatile Standby 0.5µA
DS80C320/DS80C323 Microcontrollers, 80C31/80C32 compatible, fast for power saving Stop mode: 50µA with bandgap on; 1µA with bandgap off

アンプの構成の例を紹介します。
  1. オペ分割器にMAX9915、誤差0.025%以下という高精度の抵抗分圧器にMAX5490/MAX5492を使用して入力アンプ段を構成する方法が考えられます。この組み合わせは、そこそこのオペアンプで高精度のゲインと優れた温度係数を得ることができます。
  2. 3つのオペアンプとディジタル的に設定可能な抵抗ネットワークのMAX5426を採用して差動入力計測アンプを構成する方法もあります。
  3. ゲインを1、2、4、および8とディジタル的に設定可能な高精度プログラマブルゲインアンプが必要な場合には、高精度分圧器のMAX5430とオペアンプの組み合わせが考えられます。
  4. あるいはまた、MAX5128などのディジタルポテンショメータによってゲイン、バイアス、およびオフセットを設定する方法もあります。MAX5128には不揮発性メモリも集積されており、ゲイン設定を記憶させておくこともできます。なお、電源投入時には前回の値が使用されるため、レベルやオフセットのキャリブレーションに便利です。
制御ループのADCにはMAX1108やMAX1109を使うことができます。これらのデバイスはいずれも8ビット、デュアルチャネル、50kspsのコンバータで、リファレンスを内蔵しています。コンバータの精度を高める必要がある場合には、外付け電圧リファレンスとして低消費電力のMAX6029 (表1参照)を追加する方法があります。

DS80C320/DS80C323は高速動作の8051互換マイクロコントローラです。いずれも高集積のコントローラで、4つの8ビットI/Oポート、2つのフルデュープレクスハードウェアシリアルポート、タイマー/カウンタ、ウォッチドッグタイマ、およびスクラッチパッドRAMが内蔵されています。高速アーキテクチャの採用でスリープサイクルが多くなることから、同じ仕事量を少ない消費電力で実現することができます。

マイクロプロセッサの出力は、8ビットDACのMAX5380/MAX5381/MAX5382でアナログ信号に変換します。いずれも2線式シリアルインタフェースを使い、省スペースの5ピンSOT23パッケージに必要な回路が収められています。これらのDACには出力バッファアンプも集積化されていることから、部品点数や基板面積を最小限に抑えることができます。

基本PLCから複雑なデバイスへと進化させる

最も基本的なPLCエンジンについて詳細を検討することによって、アプリケーションに合わせて機能を追加することができることはご理解いただけたものと思います。誰もが望む利便性を追求すると、どうしても特徴や特殊機能が多くなってしまいます。これが「ファンクションクリープ」と呼ばれる設計者の頭痛の種です。営業も機能を増やせとは言ってきますが、価格を上げることはできません。したがって、上手な設計でコストの上昇を防ぐ必要があります。マキシムが提供する各種の高集積ソリューションは、電流消費量、サイズ、およびコストを削減することによってさまざまなアプリケーションで目標の達成を支援してくれます。

今、世界的に省エネルギーが強く求められており、マキシムも省エネルギーに真剣に取り組んでいます。マキシムはエネルギー効率が高い省エネルギー型の各種製品を設計し、サポートする研究開発も強力に推進しています。このアーティクルでご紹介したのは、マキシムが提供するデバイスのごく一部にすぎません。これらのほかにも、電流消費量が少ない製品が幅広く用意されています。japan.maximintegrated.comをご覧いただければ、バッテリマネージメント、バッテリ充電、および高効率電源などさまざまな省エネルギー型デバイスを見つけることができます。