アプリケーションノート 4277

MAXQ2000のUSB Thumb評価キット入門


要約: このアプリケーションノートは、RISCマイクロコントローラMAXQ2000用のUSB Thumb評価(EV)キットの使用を短時間で開始するために必要な手順について説明します。このアプリケーションノートでは、キットのハードウェアとソフトウェアのインストールと設定を行う方法、およびボード上のマイクロコントローラMAXQ2000によって実行可能なアプリケーションの作成とロードの方法を説明します。周囲温度の読取りと表示を行うプログラム例も提示します。

概要

MAXQ2000のUSB Thumb評価キットは、RISCマイクロコントローラMAXQ2000の評価を容易に行うための、実証済みのプラットフォームです。評価(EV)キットのボードは、USBインタフェースを備えた小型の「サムドライブ」フォームファクタになっています(図1)。接続されているコンピュータにMAX-IDEアセンブリ言語統合開発環境をインストールすることによって、このEVキットのボード上でアプリケーションの開発とデバッグを行うことができます。MAX-IDEプログラムは、キットに付属するUSBフラッシュドライブに収録されており、downloadまたマキシムのウェブサイトからもダウンロード可能です。

図1. MAXQ2000のUSB EVキットのボード
図1. MAXQ2000のUSB EVキットのボード

MAXQ2000のUSBボードには、温度センサDS18B20、4桁の7セグメント液晶ディスプレイ(LCD)、MAXQ2000の内蔵リアルタイムクロック(RTC)用の32kHzの水晶、およびプロセッサの汎用I/O端子の一部に対するアクセスを提供するプロトタイピング用ヘッダが含まれています。

評価キットには、このボードに加えて、ソフトウェア、回路図、データシート、その他の有用なドキュメント類を格納したUSBフラッシュドライブが同梱されています。

ソフトウェアのセットアップ

MAXQ2000のUSB EVキットのメリットを完全に利用するためには、その前にいくつかのソフトウェアパッケージをPCにインストールする必要があります。以下の各セクションで、それぞれのパッケージのインストールとセットアップについて説明します。

USBシリアル変換ドライバのインストール

PCとMAXQ2000 USBボードの間のインタフェースを正しく行うためには、ボード上のUSBシリアルコンバータのための適切なドライバをインストールする必要があります。以下では、Windows® XPにドライバをインストールする方法について詳述します。より詳細な説明およびWindows 2000またはWindows 98にFTDI社のドライバをインストールする方法については、インストールガイドを参照してください。

仮想COMポート(VCP)用FTDIドライバのインストール

これらのドライバのインストールは、以下のステップに従って行ってください。
  • 付属のUSBフラッシュドライブを、有効化されているPCのUSBコネクタに挿入してください。オペレーティングシステムおよびその設定によっては、スティックに格納されたオートラン機能のためにセットアッププログラムが自動的に実行される場合があります。プログラムが自動的に起動しない場合は、ドライブの内容を表示して、ルートディレクトリにあるSetup.exeファイルをダブルクリックしてください。それによって図2に示すMAXQ2000のEVキットのメインメニューが表示されます。
  • 画面の右にあるUSB Serial Driversボタンをクリックしてください。別のウィンドウが開いて、インストールの進行状況が表示されます。インストールが完了すると、確認メッセージが表示されます。

    図2. MAXQ2000のEVキットのメインメニュー
    図2. MAXQ2000のEVキットのメインメニュー

  • 次にMAXQ2000 USBボードをPCの任意の有効なUSBポートに接続してください。必須ではありませんが、現在USBフラッシュドライブが装着されているものとは別のポートを使用するのが望ましい方法です。この追加のポートを使用することによって、切替えなしで両方のUSBデバイスにアクセスが可能になります。「新しいハードウェアが見つかりました」というメッセージが表示されます。短い時間の経過後、「新しいハードウェアがインストールされ、使用準備ができました」というメッセージが表示されます。

仮想COMポートの確認

MAXQ2000 USB Thumb評価キットによって提供される仮想COMポート(VCP)インタフェースとの組み合わせで動作するように、MAX-IDEのようなプログラミングまたは開発ツールの設定を行う必要があります。最初に、オペレーティングシステムがUSBシリアルポートにどのCOMポートを割り当てているか確認する必要があります。それには、スタート コントロールパネルをクリックして、システム ハードウェア デバイス マネージャを選択してください。ポート(COMとLPT)のセクションを見て、VCPに割り当てられているCOMポート番号を確認してください(図3)。

図3. デバイスマネージャ内でのUSBシリアルポートのCOMの位置
図3. デバイスマネージャ内でのUSBシリアルポートのCOMの位置

この場合、USBシリアルポートはCOM4に割り当てられています。MAX-IDE (またはMAXQ2000のEVキットと通信を行う他の任意のプログラム)を初めて起動するとき、このCOMポートを使用するようIDEの設定を行う必要があります。この設定の手順については、この後さらに詳しく説明します。ここでは、後で行う設定のために、割り当てられているCOMポートを単に記録してください。

MAX-IDEのインストール

MAX-IDEプログラムは、MAXQ®マイクロコントローラ用の、全機能を完備したアプリケーション開発およびデバッグ環境です。すべてのMAXQのEVキットとの組み合わせで動作して、以下の機能を提供します。
  • MAXQアセンブリ言語アプリケーション用のプロジェクトベースの開発環境
  • すべてのMAXQマイクロコントローラ用の標準ヘッダファイルを含む、統合化されたMAXQマクロアセンブラ
  • JTAG/TAPインタフェースおよびROMブートローダの使用によるインサーキットアプリケーションロード(フラッシュまたはEEPROMプログラムメモリを搭載したMAXQマイクロコントローラに対応)
  • ブレークポイントの設定、プログラムのステップバイステップ実行、およびメモリ/レジスタ内容の表示と変更を含むインサーキットデバッグ機能
MAX-IDEプログラムのインストールは、USBドライバと同様、MAXQ2000のEVキットに付属するUSBフラッシュドライブを使用して行います。
  • 前と同じように、USBフラッシュドライブが有効なUSBポートに装着されていることを確認して、ルートディレクトリのSetup.exeファイルをダブルクリックしてください。メインメニューのProgramming Toolsボタンをクリックして、このメニューからMAX-IDEボタンをクリックしてください。それによって、このプログラムのインストールを行うMAX-IDE Setup Wizardが起動されます。このウィザードはデフォルトでC:\Program Files\MAX-IDE をインストール先ディレクトリにしますが、Browseボタンをクリックすることによって任意のディレクトリを選択することができます。これについても他の選択オプションについても、デフォルトの選択を推奨します。インストール完了後は、スタートメニューからスタート すべてのプログラム MAX-IDE MAX-IDEを選択することによってMAX-IDEを起動することができます。
先ほど確認した、割り当てられているシリアルポートを使用するためのMAX-IDEの設定を行うために、プログラムを起動してDevice Optionsを選択してください。図4に示すように、ドロップダウンの選択肢からCOMポートを選択してください。このCOMポートがリストに含まれていない場合は、単に値(すなわちCOM4)を入力してください。このとき、Device Configuration FileおよびDesired JTAG Clock Frequency (kHz)についてもチェックしておくと良いでしょう。図のような内容になっていない場合は、これらの値を設定してください。

図4. MAX-IDEのオプションの設定
図4. MAX-IDEのオプションの設定

プログラム例

いくつかのMAXQ2000のアプリケーション例が、USBフラッシュドライブの「examples」フォルダ内に用意されています。それらのプログラム例の中の1つはMAXQアセンブリ言語で記述されており、サブディレクトリ\MAXQ2000 USB KIT\MAX-IDE\Temperature に格納されています。このアプリケーションは、ディジタル温度計DS18B20を使用して周囲温度を測定します。測定した温度は、ボードのLCD上に華氏と摂氏で交互に表示されます。この温度アプリケーションを使用して、キットの機能を例示することにします。

このプログラム例のロードと実行を行うためには、PCの作業ディレクトリにファイルをコピーする必要があります。それには、MAXQ2000のEVキットのディスクのメインメニューからProgramming Toolsボタンをクリックして、さらにExample Codeボタンをクリックしてください。それによってインストールウィザードが起動され(少し時間がかかる場合があります)、これらのファイルをコピーするPC上のディレクトリ名を指定するよう求められます。ここではこれらのファイルをディレクトリC:\MAXQ2000USBKIT\Example Codeにコピーしましたが、任意の場所を選択することが可能です。

ハードウェアのセットアップ

MAXQ2000のUSB EVキットのハードウェアは非常に単純明快であり、ジャンパもその他のハードウェア構成の設定も存在しません。EVキットのボードの回路図が、付属のUSBフラッシュドライブで提供されています(Documentationボタン)。回路図を見れば、ボード上にごく少数の部品しか存在しないことが分かります。

このボードには、D1、D2、およびD3の、3個のインジケータLEDが搭載されています。LED D1は緑色LEDであり、電源インジケータになっています。このLEDは、ボードがUSBポートから給電されているとき常に点灯します。LED D3は赤色LEDであり、USBポート上で通信が行われているとき点灯します。LED D2は緑色LEDであり、ボードの3.3V電源に接続された電流制限抵抗を通して、ポート端子P3.7に接続されています。ソフトウェアでこのポート端子をロジック0にセットすることによって、LED D2を発光させることができます。

ボードの電力は、すべてUSBコネクタを通して供給されます。USB/シリアル変換チップ(FT232R)が、ボード上の他の回路のために5Vの入力電源を3.3Vに安定化します。独立した低ドロップアウトレギュレータ(U3)が、MAXQ2000マイクロコントローラ(U1およびU5)だけが使用する2.5Vを供給します。マイクロコントローラU1は、シリアル/JTAG変換を行うようにプログラムされた専用のコントローラです。マイクロコントローラU5は汎用のデバイスであり、ユーザのアプリケーションコードをロードして実行します。どちらのマイクロコントローラも、FT232Rデバイスから供給される12MHzのクロックで動作します。このクロックを利用可能にするためには、キットのUSBコネクタを通電中の(非サスペンド状態の) USBホストに接続する必要があります。

実行ファイルのロード

実行形式のプログラムのファイルをMAXQ2000のEVキットのボードにロードして実行する方法はいくつか存在します。たとえば、付属のUSBフラッシュドライブまたはマキシムのウェブサイトからのダウンロードで提供されるMicrocontroller Tool Kit (MTK)を使用して.HEX形式のファイルをロードすることが可能です。しかし、このアプリケーションノートでは、MAX-IDEを使用してプログラムをキットのボードにロードします。温度測定の例をロードするには、以下の手順に従ってください。
  • まだ接続していない場合、EVキットをPCの空きUSBソケットに挿入してください。電源LED D1が点灯します。LED D3が数回光ってから消灯し、USBバス上で一連の動作が行われる様子を示します。
  • まだMAX-IDEプログラムが実行されていない場合は、スタート すべてのプログラム MAX-IDE MAX-IDEを選択することによって起動してください。MAX-IDEのアイコンを見つけて、それをクリックする方法もあります。
  • まだDevice Optionsの設定を行っていない場合は、「MAX-IDEのインストール」の項の説明に従って設定を行ってください。
  • ここでProject Open Projectを選択して、アセンブリ言語による温度測定のプログラム例をコピーしたディレクトリ(たとえばC:\MAXQ2000USBKIT\MAX-IDE\Temperature)に移動してください。2000test.prjファイルを選択して、OPENをクリックしてください。
MAX-IDEがプロジェクトをオープンして、アセンブリ言語のソースファイル(2000test.asm)をディスプレイウィンドウにロードします(図5)。プロジェクトをオープンすることによって、画面下端のメッセージが示すようにMAX-IDEはEVキットとの通信を確立します。しかし、プログラムが実行されるまで、MAX-IDEは実際にはキットにロードされません。プロジェクトをオープンする前に、有効なUSBポートにボードが挿入されていることを確認してください。そうしないと、キットと通信することができないとプログラムが判断するまで、比較的長いタイムアウト時間の間待たされることになります。

図5. プロジェクトがロードされ、実行可能になった状態
図5. プロジェクトがロードされ、実行可能になった状態

アプリケーションをロードして実行するには、画面上端の実行ボタン(図6のハイライト部分)をクリックするか、F5を押下してください。画面下端のメッセージが示すようにプログラムがロードされて、アドレスゼロから実行を開始します。EVキットのボードを観察することによって、プログラムが実行中であることを確認することができます。LCDに温度が表示され、LCDが変化するたびにLED D2が短く点灯します。

図6. 実行ボタン
図6. 実行ボタン

MAX-IDEの機能に精通していない場合は、ここで調べてみると良いでしょう。実行ボタンの右にあるポーズボタンをクリックすることによって、プログラムを一時停止することができます(図6)。ポーズボタンを作動させると、それに起因していくつかのことが起こります。MAX_IDEはプログラムを停止させ、次に実行されるコード行にハイライトバーを表示します(図7)。画面右側の表に示されているレジスタ内容が更新され、現在の値が反映されます。レジスタの値をクリックして新しい値を入力することによって、レジスタ値の変更も可能です。これはコードのデバッグのための非常に強力なツールになります。実行ボタンをクリックすると、プログラムの実行が再開されます。

図7. プログラム実行の一時停止
図7. プログラム実行の一時停止

単にコードウィンドウの左にある行番号をクリックすることによってブレークポイントを設定することがすることが可能で、また図8の一番左側のStep Intoボタンを使用してコード行の中をシングルステップで進むことも可能です。Step Intoボタンの右にある2個のボタンは、それぞれStep OverボタンとStep Outボタンです。名前が示すように、サブルーチンをステップオーバしたり、サブルーチンからステップインすることが可能です。一番右側のボタンはRun To Cursorボタンです。プログラムの任意の行にカーソルを置いた状態でこのボタンをクリックすることによって、次に実行されるのがその行になるまでプログラムが実行されます。

図8. ステップ系ボタン
図8. ステップ系ボタン

さらに詳細なMAX-IDEの機能の説明については、マキシムから提供されているMAXQ Development Tools Guideをご覧ください(PDF、864KB)。

Cのコード例

USBフラッシュドライブには、この他にもCountdownとTemperatureという2本のプログラム例が含まれており、どちらもフラッシュドライブのExamples\IARサブディレクトリに格納されています。Countdownプログラムは、内蔵タイマーを使用して1秒の間隔を生成して、初期値からのカウントダウンを行います。カウントはLCD上に表示され、値が00:00に到達したところでプログラムが停止します。Temperatureプログラムは、すでに説明した同名のアセンブリ言語プログラムのC言語バージョンです。これらのプログラム例は、いずれもIARコンパイラを使用してコーディングされており、このコンパイラもUSBフラッシュドライブに含まれています。

IARコンパイラのロードと、この2つのMAXQ2000のアプリケーション例の実行に関する詳細な説明は、このドキュメントの範囲を超える話題です。とはいえ、いくつか全般的なコメントを述べておくのは有益と思われます。
  • MAXQ2000のEVキットのメインメニューからProgramming Toolsボタンをクリックすることによって、IARツールセットの評価版(KickStart Edition)をインストールすることができます。次に表示されるウィンドウでIAR Embedded Workbench®ボタンをクリックすると、IARインストールツールが起動します。指示に従って、ツールセットをインストールしてください。オンライン登録フォームに記入することによって、IAR社からライセンスを取得することができます。
  • IAR KickStart Editionのインストール後、ツールセットに対するいくつかのアップデートをインストールするために、MAXQ2000のEVキットのメインメニューからProgramming Toolsボタンをクリックして、次にIAR Patchボタンをクリックしてください。これによって、パッチのインストールプログラムが起動されます。
  • IARツールセットとパッチのインストールが終わったら、File Open Workspace...をクリックしてCountdown_Workspace.ewwを選択することによって、アプリケーション例Countdownをオープンすることができます。Project OptionsのDebug-JTAGカテゴリで、通信ポートをCOM4に設定してください。
  • Project Rebuild Allを選択して、アプリケーションプログラムのコンパイルとリンクを行います
  • Debugボタンをクリックするか、Project Debugを選択して、デバッガを起動します。Step Intoボタン、Run To Cursorボタン、またはGoボタンのいずれでもプログラムを実行することができます。そこから、IARツールセットの機能をさらに詳しく調べてください。

結論

MAXQ2000のUSB Thumb評価キットは、RISCマイクロコントローラMAXQ2000の評価を容易に行うための、実証済みのプラットフォームです。ボードは、USBインタフェースを備えた小型の「サムドライブ」フォームファクタになっています。このEVキットには、MAX-IDEを格納したUSBフラッシュドライブメモリデバイスが含まれています。MAX-IDEとキットのボードを使用することによって、RISCマイクロコントローラMAXQ2000用アプリケーションの開発とデバッグを行うことができます。USBフラッシュドライブには、いくつかのプログラム例と、IAR Cコンパイラおよびツールスイートの評価用コピーも収録されています。