アプリケーションノート 4258

MAX3580 DVB-Tチューナのアプリケーションについて


要約: このアプリケーションノートには、NorDig 1.0.3準拠のMAX3580 DVB-Tチューナソリューションを実装するのに必要な情報が記載されています。この情報には、MAX3580のデータシートとCコードのドライバが補足として含まれています。デュアルループとシングルループのAGC制御間のトレードオフについて取り上げています。デュアルループAGC制御のオプションは、MBRAIも満たしています。推奨される回路図とプログラムを掲載しています。

はじめに

このアプリケーションノートには、MAX3580のデータシートおよびCコードのドライバとともに、NorDig 1.0.3準拠のMAX3580 DVB-Tチューナソリューションを実装するために必要な情報が記載されています。このソリューションは、MAX3580、およびディスクリートのLNAとループスルーで構成されます。このアプリケーションノートでは、デュアルループとシングルループのAGC制御間のトレードオフについて分析し、また各ソリューションについて詳述しています。関連するアプリケーションの回路図を掲載しています。最適な性能を得るためのレジスタの推奨プログラミングを示しています。最適な復調器のインタフェースの詳細についても記載しています。

デュアルループAGC制御のオプションは、MBRAIも満たしています。シングルループAGC制御のオプションはMBRAI用に試験されていません。

デュアルループAGCとシングルループAGCの性能比較

MAX3580の利得は、デュアルループAGCまたはシングルループAGCのいずれかのソリューションによって制御することができます。デュアルループの手法の方が、最大信号性能に優れ、またBOMコストもわずかに低くなりますが、2つのPWM出力を伴う復調器を使用する必要があり、ソフトウェアも幾分複雑になります。測定の結果、どちらのソリューションもNorDig 1.0.3に準拠していることが判明しています。

デュアルループAGCの場合、復調器からのフィルタリングされた1つのPWM出力によってBB_AGCを制御し、もう1つのPWM出力によってRF_AGCを制御します。シングルループAGCの場合、復調器からのフィルタリングされた1つのPWM出力によってBB_AGCを制御します。つまり、RF_AGCは、その後、単純なPNPトランジスタ回路を通じてBB_AGCに接続することによって制御されます。よりフレキシブルなデュアルループAGCであるほど、よりすぐれた最大信号性能が得られます。強い信号状態の下で、より良好な最適RF_AGC電圧 が供給されるからです。詳細については、後の「デュアルループAGC制御の説明」の項で説明します。

図1は、MAX3580のデュアルループAGC制御とシングルループAGC制御の性能比較を示しています。

図1. デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御の感度の比較
図1. デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御の感度の比較

図1は、デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御で感度がほぼ同じであることを示しています。NorDigに対するマージンは2dBを超えています。ここで、QEF限界は、BER = 2e-4です。測定システムに制限があるため、VHF-IIIとUHFのどちらの測定にも8MHz帯域幅の信号を使用しています。NorDigによって規定されている7MHz帯域幅の信号で測定すれば、VHF-IIIの感度で0.6dBの改善を期待することができます。

図2. デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御の最大信号の比較
図2. デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御の最大信号の比較

どちらのAGCソリューションの最大信号性能もNorDigの要件を25dB以上も上回っていますが、図2は、デュアルループの最大信号性能の方が、少なくとも9dB (VHF-IIIの場合)あるいは2dB (UHFの場合)だけ、シングルループよりも良好であることを示しています。デュアルループの最大信号性能は、両方の帯域で3dBm上回っていますが、シングルループAGCの場合、ワーストケースの測定値は174MHzで-8.4dBmになります。この場合も、QEF限界は、BER = 2e-4です。

図3. VHF-IIIにおけるデュアルループAGC制御とシングルループAGC制御のディジタルインタフェース/キャリア(I/C)の比較
図3. VHF-IIIにおけるデュアルループAGC制御とシングルループAGC制御のディジタルインタフェース/キャリア(I/C)の比較

図3は、VHF-IIIにおけるディジタルI/C性能が両方のAGCオプションでほぼ同じであることを示しています。両方のオプションで少なくとも4dBのマージンが存在します。ここでも、QEF限界は、BER = 2e-4です。

図4. UHFにおけるデュアルループAGC制御とシングルループAGC制御のディジタルI/Cの比較
図4. UHFにおけるデュアルループAGC制御とシングルループAGC制御のディジタルI/Cの比較

図4は、UHFにおけるディジタルI/C性能が、デュアルループAGC制御の場合に約2dBだけ良好であることを示しています。ここでも、QEF限界は、BER = 2e-4です。

図5. デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御のアナログI/C比較
図5. デュアルループAGC制御とシングルループAGC制御のアナログI/C比較

図5は、アナログI/Cが両方のAGCオプションでほぼ同じであることを示しています。少なくとも6dBのマージンが存在します。QEF限界は、「60秒間にパケットエラーなし」です。

測定機器の可用性のため、PAL干渉源は、75%カラーバーによるNTSC信号と、-13dBcでのオーディオキャリアによってシミュレートしています。NTSC信号は、6MHzチャネル用に設計されていますが、NTSC信号は、8MHzチャネルにおいて、所望のキャリアに最も近いエッジにシフトされます。

デュアルループAGC制御の説明

図6. デュアルループAGCの回路図
図6. デュアルループAGCの回路図

図6は、デュアルループAGC制御の回路図を示しています。PWM復調器の2つの出力はそれぞれ2回RCフィルタを通過してから、MAX3580のAGC制御ピンに接続されています。各ラインで最大限の干渉除去を得るため、1つのRCフィルタがPWM出力の近くに配置され、もう1つのフィルタがMAX3580の近く(MAX3580のシールドの端)に配置されます。

図7. 所望の信号のみによるデュアルループAGCの応答
図7. 所望の信号のみによるデュアルループAGCの応答

図7は、入力レベルが増大するときのMAX3580の推奨AGC制御電圧を示しています。復調器のPWMがこれらの電圧を供給します。PWMは、ソフトウェアのアルゴリズムから入力として16進ワードを受け取り、次にパルス列を出力します。この出力はRCフィルタを通過し、DC制御電圧となります。入力レベルが感度から上昇すると、BB_AGCがアクティブになり、利得を低減して復調器のADC入力を目標水準に維持します。RF_AGCは最大利得を保ちます。次に、BB_AGCが1.7Vに低減すると、RF_AGCは同様にアクティブになります。入力レベルが上昇を続けると、一定の比率に従って、RF_AGCとBB_AGCの両方を低減することによって、復調器のADC入力レベルを目標水準に調整します。両方のAGC電圧に対して直線的に減少する応答は、-72dBm以上で観察されます。急な勾配で観察されるように、RF_AGCがこの領域全体を支配しています。-76dBmと-72dBmの間に遷移領域が発生します。ここでは、RF_AGC利得の調整が制御電圧に対して非線形になります。

CNRは感度の19.0dBから上昇し、測定システムの限界である最大信号の45dBの近くまでに達します。CNRは、復調器の入力端でスペクトルアナライザのプローブを用いて測定します。このとき、キャリアをオンおよびオフにした状態で、AGCを固定してチャネル電力を測定します。SNRのプロットは、復調器の推定値です。標準的な復調器の最大SNR測定値の限界(24dB~26dB)は、-72dBm~-10dBm範囲の入力レベルについて発生します。-10dBm以上の入力レベルにおけるSNRの低下は、帯域内の混変調によって説明することができます。これはSNRの測定に含まれていますが、CNRの測定には含まれていません。

図8. 28dBcにおいてN+1ディジタル干渉源によるデュアルループAGCの応答
図8. 28dBcにおいてN+1ディジタル干渉源によるデュアルループAGCの応答

図8は、干渉源を追加するとRF_AGCが低下する様子を示しています(図7と比較)。これによってCNR値とSNR値が低下します。所望のキャリアレベルが-54dBm~-44dBmの範囲まで上昇すると、干渉源による混変調によってCNRとSNRは低下します。

図9. 代替のデュアルループ利得制御
図9. 代替のデュアルループ利得制御

図9は、代替のデュアルループ利得制御の応答を示しています。これは試験されていませんが、おそらく正常に動作するものと考えられます。特定の復調器のソフトウェアがこの手法をサポートしています。

-72dBmのRF入力電力は、RF_AGCに対する推奨引継ぎ電圧(TOV)ポイントです。RF入力電力が感度レベルからTOVまで上昇すると、BB_AGCはベースバンド利得を低減し、ADC内で希望のレベルを維持します。一方、RF_AGCは最大RF利得で維持されます。BB_AGCディジタルワードがTOVまで低減されると、復調器は、BB_AGCをフリーズし、RF_AGCがアクティブになります。RF_AGCは、0.5V (MAX3580 RF_AGCの最小制御電圧)に低減されるまでアクティブ状態を維持します。ここで、RF_AGCはフリーズされ、BB_AGCが再びアクティブになり、さらにBB_AGCを低減します。



シングルループAGC制御の説明

図10. シングルループAGCの回路図
図10. シングルループAGCの回路図

図10のシングルループAGC制御のソリューションでは、BB_AGCは、フィルタバージョンの復調器PWM出力によって制御されます。RF_AGCも同じフィルタバージョンのPWM出力で間接的に制御されます。PNPトランジスタがオンになるよう十分にBB_AGC電圧をローにプルダウンすると、RF_AGC電圧は、BB_AGC電圧よりもおよそ1ダイオードドロップ分だけ上の電圧にまでプルダウンされます。BB_AGCが十分ハイに上昇すれば、トランジスタはオフになり、RF_AGCは、プルアップ抵抗によってほぼ3.3Vにプルアップされます。

図10で、レイアウト上、復調器の近くに配置される部品は、1本の点線で囲まれており、MAX3580の近くに配置される部品はもう1本の点線で囲まれています。1µFと1nFのコンデンサは、MAX3580のシールドの端に配置する必要があります。

図11. 所望の信号のみによるシングルループAGCの応答
図11. 所望の信号のみによるシングルループAGCの応答

図11は、入力レベルが増大するとき、RF_AGCがBB_AGC電圧よりも約0.6V上の電圧にプルダウンされることを示しています。CNRは感度19.2dBから上昇し、測定システムの限界である最大信号の45dBまでに達します。-20dBm以上の入力レベルにおけるSNRの低下は、帯域内の相互変調によって説明することができます。これはSNRの測定に含まれていますが、CNRの測定には含まれていません。

レジスタのプログラミング

MAX3580で必要なレジスタのプログラミングの概要についてここで述べます。パフォーマンスを最適化する一部のレジスタ設定も特に強調して取り上げています。MAX3580のデータシートには、そのレジスタをプログラムするための詳細が記載されています。推奨する方法でMAX3580のすべてのレジスタをプログラムするための詳細な方法についてお客様を支援するために、Cコードのドライバもマキシムから提供しています。 :MAX3580 Cコードドライバは、最寄りのマキシムのフィールドアプリケーションエンジニアまたはアカウントマネージャに要請することができます。

特定のRF周波数をダウンコンバートするには、オンチップのヒューズテーブル(ROMテーブルとも呼ばれる)に保存されている工場調整値を使用した計算に基づいてトラッキングフィルタをプログラムする必要があります。同様に、ベースバンドフィルタの帯域幅をオンチップのヒューズテーブルに保存されている該当の工場調整値にプログラムする必要があります。1つの工場調整値は7MHzチャネルで、通常はVHF用に用意されています。またもう1つの工場調整値は8MHzチャネルで、通常はUHF用に用意されています。さらに、バンドセレクト、N分圧器、およびRF入力セレクトもすべてプログラムする必要があります。

最適なパフォーマンスを得るには以下を行ってください。
  • 600µA用にICPビット(レジスタ0x06 <6>)をプログラムする
  • SHDN_PDビット(レジスタ0x08 <5>)をプログラムしてパワーディテクタをオフにする
  • RDIVビット(レジスタ0x06 <7>)をVHF用に2、およびUHF用に1をプログラムする
  • VHF感度に基づき、特定の復調器に合わせてDC Offset-Correction Thresholdビット(レジスタ0x0B <1:0>)を最適化する。0から始めて3まで増やしていくと感度は改善を続ける
  • VHF感度に基づき、特定の復調器に合わせてDC Correction Speedビット(レジスタ0x0B <3:2>)を最適化する。1から始めて2まで増やす(感度が改善される場合)

I/Qインタフェース

図12. 推奨されるIチャネルインタフェース(Qチャネル用に複写)
図12. 推奨されるIチャネルインタフェース(Qチャネル用に複写)

図12は、各I/Q差動ラインに追加されたT型RCフィルタを示しています。これらのRCフィルタは、RF周波数における、ディジタルクロックの高次高調波を除去します。フィルタがなければ、高調波は、復調器からI/Qインタフェースを通過し、MAX3580のRF入力まで侵入し、その後ダウンコンバートします。これらの高調波は、R2-C2ローパスRCフィルタとR1抵抗パッドによって減衰されます。

R1とC2は、アンチエイリアスフィルタとしての役割も兼ねています。コンデンサC1はACカップリング用です。



I²Cインタフェース

図13. I²Cラインの推奨フィルタリング
図13. I²Cラインの推奨フィルタリング

図13は、I²Cラインに侵入する干渉を除去するために推奨されるRCフィルタリングを示しています。33pFコンデンサをMAX3580のシールドの端に配置してください。

水晶発振器リファレンス

MAX3580の水晶発振器のリファレンスは通常、復調器と共有することができます。これによって復調器の水晶のためのコストとスペースを節約することができます。MAX3580の水晶発振器は、広範囲の周波数にわたって動作するため、復調器のクロックに受け入れられる周波数を選択することができます。次に、MAX3580のリファレンスバッファピンが、直列の1kΩ抵抗と10nFコンデンサを通じて復調器のリファレンスピンを駆動します。使用可能な最小の周波数をお勧めします。特にVHF帯域において、リファレンス周波数が低いほど、MAX3580 フラクショナルPLLノイズを低減することによって感度のマージンが多くなります。

MAX3580水晶発振器の基準周波数の許容誤差が復調器のデローテーション要件(標準±50kHz)を満たすのに十分であることを確認する必要があります。これを行うには、適切な水晶周波数の許容誤差を選択して、直列のフィードバックコンデンサ(付録Aの回路図のC19、C18、およびC20)の総容量が水晶の負荷容量に等しいことを確認してください。最初の出発点としては、これらのフィードバックコンデンサを等しくなるようにすることです。最寄りのマキシムのフィールドアプリケーションエンジニアまたはアカウントマネージャに連絡して支援を要請してください。

MAX3580の基準発振器の回路は、外部ソースによって駆動されるハイインピーダンスリファレンス入力としても使用することができます(この方法はお勧めしません。リファレンスの高調波がMAX3580の性能を落とすおそれがあるからです)。外部リファレンスを使用するとき、振幅が約1.5VP-PのAC結合コンデンサを通じてMAX3580のXB入力を駆動します。XEは未接続のままにしておきます。外部リファレンスの位相ノイズは1kHz~100kHzのオフセットにて-140dBc/Hzを上回る必要があります。

その他のガイドライン

  • ディジタル干渉を最小限に抑えるため、専用のレギュレータによってMAX3580に電源を供給する必要があります。
  • MAX3580 ICの各セクション間の結合を最小限に抑えるための理想的な電源供給経路は、大きなバイパスコンデンサを中央のVCCノードに配置したスター構成です。VCCのトレースはこのノードから枝を出し、各トレースは、MAX3580上の個別のVCCピンに進みます。各VCCピンにバイパスコンデンサを接続します。コンデンサは可能な限りピンの近くに配置します。1つのVCCピンに複数のバイパスコンデンサを使用するときは、値のより小さなコンデンサをピンの最も近くに配置します。低インダクタンスのグランド接続を得るため、バイパスコンデンサごとに少なくとも1つのビアを使用してください。
  • MAX3580のXBとXEの各ピンの近くに水晶を配置します。
  • 3つのグランドピン(GND_PLL、GND_CP、およびGND_TUNE)は、別々のグランドビアによってグランドプレーンに接続する必要があります。じかにエクスポーズドパッドに接続しないでください。
  • 差動Iチャネルの2つのトレースは互いに近くに配線します。Qチャネルについても同様です。IとQの短いトレースを短く維持します。
  • 復調器に対する目標レベルは、AGC制御のソリューションをセットアップする際の重要なパラメータです。このアプリケーションノートでは、目標の復調器の入力レベルはCW信号を備えた285mVP-Pの差動になります。このレベルを測定するには、閉ループAGC制御が定常状態に達した後、AGCをフリーズします。DVB-T入力信号は666MHzであり、64QAMと3/4コードレートで約-50dBmになります。次に、変調をオフにし、入力CW周波数を667MHzに増やします。したがって、1MHzベースバンド信号となります。最後に、ハイインピーダンスの差動プローブ(200kΩで1pF未満)を使用して、得られるレベルを復調器の入力端で測定します。
  • MAX3580ダイプレクサのアプリケーションノート3700 「MAX3580のためのフロントエンドダイプレックスフィルタ」が利用可能です。

結論

MAX3580の利得は、デュアルループAGCまたはシングルループAGCのいずれかのソリューションによって制御することができます。デュアルループの手法の方が、最大信号性能に優れ、またBOMコストもわずかに低くなりますが、2つのPWM出力を伴う復調器を使用する必要があり、ソフトウェアも幾分複雑になります。測定の結果、どちらのソリューションもNorDig 1.0.3に準拠していることが判明しました。このアプリケーションノートでは、両方のソリューションを実装するためのアプリケーションの詳細を示しています。

付録A. デュアルループAGCのアプリケーションの回路図

付録A. デュアルループAGCのアプリケーションの回路図
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(PDF, 211kB)



付録B. シングルループAGCのアプリケーションの回路図

付録B. シングルループAGCのアプリケーションの回路図
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