アプリケーションノート 4218

不平衡ツイストペアがジッタに与える影響

筆者: Ron Olisar

要約: このアプリケーションノートでは、シリアルディジタルビデオの差動ケーブルの不平衡(非対称性)に対するジッタの影響を予測する新しい試験方法を提案します。本稿では、品質指標としてのペア間スキューに関する誤解と、紛らわしいペア間スキューの測定とジッタの関係を明らかにします。各モードには固有の伝送速度と損失特性があるため、ケーブルの不平衡に起因する差動およびコモンモード間のモード変換を主な問題として捉えます。データジッタと直接的に関係する良品/不良品基準とともに、ケーブルのモード変換の経済的な試験方法を解説します。

このアーティクルはマキシムの「エンジニアリングジャーナルvol. 64」(PDF、1.99MB)にも掲載されています。

はじめに

ビデオインタフェース規格のDVI™、HDMI™、DisplayPort™では1Gbpsを超える速度でシリアルディジタルビデオ信号を伝送する必要がありますが、そのため、PCとHDTVモニタをつなぐケーブルに高い性能が求められるようになりました。つまり、2.5GbpsのPCI Express®やInfiniBand™、3.125GbpsのCX4、4.25GbpsのFibre Channelなどに用いるデータ通信用シリアルディジタル差動ケーブルのメーカー各社が学んできたことと同じことを、従来アナログのオーディオ/ビデオ用ケーブル提供してきたサプライヤが学ばなければならなくなりました。

このアプリケーションノートでは、ビデオ信号の差動成分とコモンモード成分を変換する際に発生するデータジッタについて説明し、ペア間スキューに関する誤解を明らかにするとともに、ジッタの予測が行えるケーブル試験方法を提案します。このアプリケーションノートは、適切に平衡のとれた差動ケーブルであれば、高価なものでなくても高い性能を発揮することを説明します。

DVI/HDMIシステムで必要とされる0.25Gbpsから3.40Gbpsという速度でディジタルビデオ信号を伝送する場合、一般に、差動ケーブルとして100Ωのシールドツイストペア(STP)線を使用します。100Ωの2芯ケーブル(twinax)を使う方法もあり、こちらがデータ通信アプリケーションでは主流となっています。

平衡状態を確保する

DVIシステム、HDMIシステム、およびDisplayPortシステムでは、ディジタルビデオのシグナリングに4レーンの差動インターコネクトを使用します。この場合、信号を安価な電子回路で受信するためには、以下の2つの条件を満足する必要があります。1) 差動パスから差動モードで信号が送信され、かつ、コモンモードへの変換がないかごくわずかである。2) 平衡な差動パスである、つまり、信号に対する2本のラインからの影響が対称的である。

信号エネルギーを差動モードに保つケーブルの場合、位相遅延と表皮効果損失が発生しますが、いずれも予測可能で簡単に補償することができます。この補償ができない場合、通常のレシーバでは信号を復元できなくなります。結合型差動ケーブル(STPやtwinax)で差動モードとコモンモードの変換が発生すると、この位相遅延や信号損失が予測できなくなります。

このような信号劣化の測定対象としてペア間スキューがあり、これは、差動ペアとなる2本のラインで伝搬遅延に差がある場合に発生します。2芯同軸ケーブルでラインの長さが異なる場合について考えてみます(図1)。入力は差動モードであるため、コモンモード電圧はゼロです。しかし出力側には、伝搬遅延の差に等しいペア間スキューが発生し、それとともに、コモンモードエネルギーが発生し、差動モードエネルギーが減少します。

Figure 1. Simple intrapair skew converts some differential signal to common-mode (CM) energy.
図1. シンプルなペア間スキューによる差動信号からコモンモード(CM)エネルギーへの変換

この例では、ディジタル非ゼロ復帰(NRZ)波形ではなく、正弦波形を用いました。そのため、図1のシンプルな2芯同軸ケーブルによるスキュー遅延は周波数に関わらず一定となっています。しかし、実際のSTPケーブルやtwinaxケーブルでは、ディジタルNRZ波形の正弦(フーリエ)成分ごとに異なる量のスキューが発生します。

ペア間スキューに関する誤解

差動信号からコモンモードエネルギーへの変換について、ケーブルメーカーでは、ケーブルの品質管理試験の一環として、一般にペア間スキューの測定を行います。しかし、通常の方法ではジッタを正しく予想できない測定結果しか得られず、判断を誤るおそれがあります。

誤解—その1:ペア間スキューは周波数に対して変化しない。

これは2芯同軸ケーブルなどの非結合型差動ペアについては成立しますが、STPやtwinaxなどの結合型ケーブルについては成立しません。28AWG twinaxに対する影響の一例を図2に示します。周波数によってペア間スキューの極性が反転することさえあります。

Figure 2. Intrapair skew vs. frequency for 28AWG twinax.
図2. 周波数に対する28AWG twinaxのペア間スキュー

誤解—その2:ペア間スキューはケーブルの長さに比例する。

これはごく低い周波数の(ケーブル長に対して波長が長い)ときには成立しますが、STPやtwinaxなどの結合型ケーブルで高周波数を取り扱う場合には成立しません。図2には、長さが異なる28AWG twinaxのペア間スキューが示されています。300MHzから1500MHzの周波数では、一番短い10フィートのケーブルのペア間スキューが最悪となっています。

誤解—その3:ペア間スキューはステップ信号を用いた試験で予測できる。

この試験では、差動あるいはシングルエンドの電圧ステップをケーブルの一端へ導入し、反対側の端に出てくる(+)エッジと(-)エッジの時間差(スキュー)を測定します。しかし残念ながら、ケーブル自体が出力エッジに対するローパスフィルタとして働いてしまい、この影響はケーブルが長くなると非常に大きくなります。つまり、この試験でも低周波数のペア間スキューについての測定は可能ですが、シリアルディジタルビデオで問題となる高周波のペア間スキューについては何もわかりません。

前述のように、STPケーブルやtwinaxケーブルの場合、ペア間スキューは周波数の関数となります。図3は、50mのDVIシステム用22AWG STPケーブルについての測定結果です。ステップ試験から予想されるペア間スキューは300psと、WUXGAディスプレイで必要となる1.65Gbpsというビデオレートの約半分(0.5UI)となります。つまり、DVI/HDMI規格に定められたペア間スキュー要件を満足していません。しかし、レシーバ側でイコライザ後段のアイダイアグラムは非常にきれいな状態になっています。これはケーブルの高周波数ペア間スキューが非常に低く、1.65Gbpsで高い性能を得ることができることを示しています。ステップ試験で測定できるのは低周波のペア間スキューだけとなるため、その結果が悪いというだけでケーブルを使えないと判断するのは早計です。

Figure 3. Step method fails to predict serial data jitter.
図3. ステップ試験ではシリアルデータのジッタが予想できない

結合型差動ペア

図4に示すように、結合型ケーブル(STP、UTP、twinax)の場合、ペアとなる(+)ラインと(-)ラインを結ぶインピーダンス(Z1)と、各ラインのグランドに対するインピーダンス(Z2、Z3)によって差動特性インピーダンスが決定されます。長さやねじれの違いや、誘電体環境が非対称になると(誘電体環境が非対称になるとZ2 ≠ Z3となる)、差動モードからコモンモードへの変換が発生し、ペア間スキューなどの症状が発生します。

Figure 4. Uncoupled (twin coax) and coupled (twinax, STP) 100Ω differential pairs.
図4. 100Ωの非結合型差動ペア(2芯同軸ケーブル)と結合型差動ペア(twinax、STP)

結合型ケーブルでは、差動信号とコモンモード信号の伝播速度が異なり、長いケーブルの場合、数ナノ秒もの違いが発生することがある点も問題となります。差動エネルギーからコモンモードエネルギーへ、またその逆へと変換が行われると、任意量の位相が発生します。これが、差動モードジッタの一因となります。差動モードとコモンモードの間で信号が自由に変換されると、ケーブルの周波数応答と位相応答が予測不能となります。

表皮効果により、信号の減衰率(dB/m)も差動モードとコモンモードで異なります。ただし、これには良い側面もあり、この特性を活用することも可能です。コモンモード損失が差動モード損失よりも大幅に大きければ、ケーブルのペア間スキューは小さくなるからです。ケーブル出力端にコモンモードエネルギーが出てこなければ、ペア間スキューもゼロとなります。極端な例ですが、CAT5 UTPケーブルの場合、高周波数のコモンモードエネルギーは(シールドされていないため) EMIとして放散され、出力側には差動モードエネルギーしか出てきません。つまりペア間スキューはゼロとなります。

差動モードからコモンモードへの変換によるジッタの予測

この問題を考えるには、差動モードとコモンモードの往復変換というシンプルなモデルが便利です。一定範囲を塊だと考えて連続プロセスを近似したものに過ぎませんが、モード変換が累積的であること、また、波長とケーブル長との相対的な関係により、部分的となったり複数回繰り返されたものとなることがわかります(図5)。

Figure 5. Illustration of mode conversion along cable length.
図5. ケーブルに沿ったモード変換図

差動シグナリングにおいてタイミングジッタの原因となるのは、コモンモードエネルギー自体ではないことに注意する必要があります。問題は、モード変換では整合性のない信号が差動モードへ戻るため、信号が劣化してしまうことにあります。(一定の差動入力信号に対する)コモンモードエネルギーを測定すればモード変換の状況を把握し、そこから差動モードジッタを予測することができます。

ケーブル品質の測定は、ディジタルビデオシグナリングの品質が予想できるものでなければなりません。たとえば、ケーブルの不平衡により発生し、レシーバ側で表皮効果と誘電損失に対して理想イコライゼーションをかけたあとに残る残留ジッタであるゼロクロッシングジッタがデータ中にどの程度発生するのかを予測できる必要があります。そして、ジッタの予測という意味では、ステップ入力を用いたペア間スキューの測定は不適切となります。

ケーブル不平衡によるデータジッタを正しく予測するためには、差動モードからコモンモードへの変換を測定するべきです。理想的な状態では、ケーブルからは差動モードのエネルギーのみが出力され、コモンモードのエネルギーは出力されません。コモンモードエネルギーが存在するということは、ケーブルに不平衡があり、その結果、差動エネルギーの一部がコモンモードに変換されたことを意味します。

シンプルなモデルとして、正弦波の差動入力をケーブルに加えるケースを例に考えてみます。
  1. ケーブル内において正弦波エネルギーの一部が差動モードからコモンモードへと変換され、同時に、同じ割合がコモンモードから差動モードへと逆変換されると仮定します。Sパラメータ命名規則を用い、往復の変換率をSCD21とSDC21と表します(出力ポートが前であることに注意してください)。
    • SCD21とは、ポート1からポート2における差動モードからコモンモードへの変換を表します。
    • SDC21とは、ポート1からポート2におけるコモンモードから差動モードへの変換を表します。
    • 現実世界のケーブルでは、SCD21(振幅) = SDC21(振幅)という近似が成り立ちます。
    • SDD21とは、ポート1からポート2への差動モード伝送を表します。
  2. 往復変換(差動モードからコモンモードへ、そしてまた差動モードへ)を終了したエネルギーの位相は不定であると仮定します。このような挙動が生まれる原因は、まず、差動モードとコモンモードで伝播速度に違いがあるからです(STPやtwinaxでは一般的な現象)。正弦波の周期よりも大きな遅延差が発生するほどケーブルが長いということも仮定します。
Figure 6. Offset in the zero-crossing time TJ(pk) is caused by SCD21 and SDC21. All waveforms shown are differential signaling (single ended not shown).
図6. SCD21とSDC21によってゼロクロス時のオフセットTJ(pk)が発生します。なお、図には、差動シグナリングの波形のみを示しています(シングルエンドの波形は示していません)。

ゼロとクロスする差動正弦成分は、SCD21とSDC21を経由して戻ってきた成分により、TJ(pk)だけシフトされます(図6)。戻ってきた差動成分の振幅が、差動出力信号のゼロクロッシングで最大となる場合に、スキューが最悪となります。総合差動出力レベル(SDD21)に対し、TJ(pk)だけのジッタを発生する戻りの振幅、A(dB)は、次式で表されます。

A(dB) = [SCD21(dB) - SDD21(dB)] + [SDC21(dB) - SDD21(dB)] = 20 × LOG{sin[2π × TJ(pk) × Frequency]} 式1

現実世界のケーブルではSCD21(振幅) = SDC21(振幅)という近似が成り立つため、ケーブル出力端におけるコモンモードレベルと差動モードレベルの差から、不平衡によりTJ(pk-to-pk)以下のジッタが発生するケーブルの品質を測定することができます。

SCD21(dB) - SDD21(dB) = A(dB)/2 < 10 × LOG{sin[π × TJ(pk-to-pk) × Frequency]} 式2

不平衡により追加で発生するジッタは次式で表されます。
TJ(pk-to-pk) = 2 × TJ(pk)

ケーブルのコモンモード応答と差動モード応答の例を図7に示します。この応答の差をとり、差動モード出力に対する相対的なコモンモード出力をプロットしたのが図8です。図8にはまた、0.1UIと0.2UIのテンプレート(差動ゼロクロッシング、TJ[pk]における定誤差のライン)もプロットしてあります。なおUIとは、当該データレートにおけるビット期間のユニットインターバルです。たとえば、1.65Gbps (WUXGA)に対して算出された0.1UIジッタラインは、最大ゼロクロッシングの定誤差が60psP-Pとなります。

Figure 7. Frequency response of a 60m cable, showing common-mode output (SCD21) and differential-mode output (SDD21). Data is gathered on the MAX3815 TMDS digital-video equalizer.
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図7. 60mケーブルの周波数応答―コモンモード出力(SCD21)と差動モード出力(SDD21)。測定は、MAX3815 TMDSディジタルビデオイコライザで実施。

Figure 8. Plot of (SCD21 - SDD21) difference, with pass/fail template superimposed.
図8. 合否判定テンプレート(SCD21 - SDD21)誤差のプロット

テンプレートの解釈と簡略化

図8に示すケーブルの測定結果(SCD21 - SDD21)が0.1UIラインに達するときがあった場合、ケーブルの不平衡により0.1UIP-Pのジッタが発生する可能性があることを意味します。つまり、ケーブル測定結果が0.1UIP-Pテンプレートに触れる周波数がデータシグナリングシーケンスのスペクトル成分に含まれていた場合、そのスペクトル成分のゼロクロッシング誤差(位相シフトレンジ)は0.1UIP-P (60psP-P)になります。

DVIやHDMI TMDS®の信号にはスクランブルがかけられていないため、周波数スペクトルの高調波成分はデータの内容によって変化します。つまり、成分の大半が(データレート)/20から(データレート) × 0.8までとなる形でスペクトル全域が「使用」されると仮定してよいということになります(NRZデータ信号のsinc²ベキ関数は、周波数 = データレートでゼロになります)。

図9は、式2をもととしたシンプルな合否判定テンプレートです。0.1UIP-Pのテンプレートは、最大ビットレートの0.05倍から0.25倍の範囲では-11dBで、その後、最大ビットレートの0.8倍で-6dBまで直線的に増加する形となっています。このテンプレートは、対象ケーブルの最大運用ビットレート(この例では1.65Gbps)に比例します。

Figure 9. Simplified test template, for which 0.1UIP-P pass/fail criteria are recommended.
図9. 単純化された試験テンプレート。合否判定としては0.1UIP-Pを推奨します。

また、このシンプルなテンプレートは、最大ビットレートの0.25倍以下となる基本波の高調波も考慮することができます。図10に、低周波数におけるジッタの2成分緩和と3成分緩和のオフセットと、その基となる式のカーブ(基本波のみ)を示します。

Figure 10. Simplified test template, with underlying family of curves shown for fundamental-only and multiple-harmonic cases.
図10. 単純化された試験テンプレートと基本波のみのケースと複数の高調波を持つケースのカーブ

最大ビットレートの0.25倍以下となる基本波を持つNRZデータパターンには、モード変換の影響を受けた単一成分の戻り成分を緩和することができる高調波成分が含まれています。レシーバ側イコライザは最大ビットレートの0.75倍(つまり、最大ビットレートの0.25倍を基本波とする3次高調波)以上を減衰させる特性を持つことが多いため、最大ビットレートの0.25倍以上の基本波にはこのような高調波は含まれない可能性が高くなります。

試験を実施したケーブルの多くは、ジッタが最大となる可能性がある周波数、つまり、ひとつの最悪周波数を持っていました。信号にはさまざまな高調波成分が含まれていることを考え合わせると、テンプレートに対してもあるトーンがワーストケースになるとの仮定を後押しします。

0.1UIP-P合否判定テンプレートラインもしくはそれ以上の使用

DVI/HDMI TMDSケーブルインターコネクト(コネクタとイコライゼーションを含)で許容されるジッタバジェットは、全体で約0.2UIP-Pです。つまり、TMDS TxマスクとRxマスクの差が0.2UIP-P以下でなければなりません。この基準を示すのが0.2UIP-Pテンプレートラインですが、この場合、当該チャネルにはジッタが発生する原因が他にあってはならないことになります。

当該チャネルにはコネクタなど、他のジッタ発生原因もあること、また、イコライゼーションやスイッチングによる残留ジッタなども考えられることから、そのようなジッタのマージンを考え、図10に示す0.1UIP-P合否判定テンプレートラインの使用を推奨します。プレミアムケーブルには、0.05UIP-P合否判定テンプレートラインなど、一段厳しい性能基準を用いればいいでしょう。

差動モードからコモンモードへの変換量の測定

診断性、柔軟性、経済性という意味で最高の試験方法は、差動モードからコモンモードへの変換量(SCD21)を差動スルー応答(SDD21)に対する相対値で直接測定することです。この試験の目的は、以下のとおりです。
  1. NRZシグナリングにおけるイコライズ後のジッタ性能を予測可能な試験結果が得られること。
  2. 経済的な試験方法であること-高価なオシロスコープやネットワークアナライザが不要であること。
  3. シンプルな合否判定テンプレートが利用できること。
4ポートのSパラメータネットワークアナライザを2ポート差動アナライザに構成すれば(図11)、SDD21とSCD21を直接測定することができますが、このようなアナライザは高価で(5万ドルから10万ドルもする)、上記条件の2番目を満足することができません。1台の正弦波発信器、2つのバラン(平衡-不平衡変換機)、2台の電力計(あるいは2入力の電力計1台)という低コストなテスト装置(図12)でも、SDD21とSCD21を正確に測定することができます。これらの機器はいずれもかなり前から使われているため、中古品を活用するなどすれば、1万ドル以下で試験装置を用意することができます。

Figure 11. This 4-port S-parameter network analyzer is configured as a balanced 2-port analyzer.
図11. 2ポートアナライザに構成した4ポートのSパラメータネットワークアナライザ

Figure 12. This test setup features a low-cost generator, couplers, and power meters.
図12. 低コストの発信器、カプラ、電力計で構成したテスト装置

このテスト装置の中心は、2MHzから2GHzに対応したM/A-COM (Tyco Electronics®の一部門)のH9-SMAカプラです。1台目のカプラは、シングルエンドの正弦波発信器から作動ソース信号を生成するためのものです。2台目のカプラは、測定が行えるように差動モード信号(SDD21)とコモンモード信号(SCD21)を分離するためのものです。

指定箇所には、ペア同士でケーブル長を揃えた高品質のSMAケーブルを使用します。SMA-to-DVI/HDMI試験ボードは、Tektronix®製とAgilent™製があります。対象周波数レンジ全域について(SCD21[dB] - SDD21[dB])を測定してプロットし、合否判定テンプレートと比較します。

まとめ

ケーブルにおいて差動モードからコモンモードへの変換がないかごくわずかであれば、長いケーブルを使っても安価な受信回路でディジタルビデオデータを回復することができます。このようなケーブルは、周波数スペクトル全域にわたる損失と位相遅延量が予測可能で、その補償を簡単に行えるからです。しかし、ケーブルにおける差動モードからコモンモードへの変換が多いと話は別になります。

ディジタルビデオに用いられるDVI、HDMI、DisplayPortで使用されるSTPケーブルやtwinaxケーブルについて、その品質はペア間スキューによって計ることができると一般に考えられていますが、これは誤解です。ステップ入力信号を用いる従来型のペア間スキュー測定方法では、シリアルディジタルビデオの伝送に適したケーブルと適さないケーブルをうまく識別することができないためです。そのため、直接的で柔軟性が高く、かつ経済的な試験方法として、問題の鍵を握るケーブルの不平衡による差動モードからコモンモードへの変換量を直接測定する方法を推奨します。

アペンディックスⅠ:ケーブル測定の実例

Figure 13
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Figure 14
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Figure 15
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アペンディックスⅡ:長いケーブルにおける高周波損失

表皮効果と誘電損失を主な原因として、ケーブルで高周波の損失が発生します。幸いなことに、この損失を補償し、ケーブルを長くすることができるDVI/HDMIイコライザIC(MAX3815など)があります。

表皮効果損失(単位:dB)は、ケーブル長と周波数の平方根に比例します。誘電損失(単位:dB)は、ケーブル長と周波数に比例します。周波数が中程度以下の領域では表皮効果損失が支配的であり、高周波領域では誘電損失が支配的となります。

このような損失が発生すると、ISI (符号間干渉)によるジッタが発生します。ビットレートの半分で6dBから8dBの損失が発生し、その補償を行わないと、ジッタが発生するとともに振幅が減少し、オシロスコープでアイダイアグラムを見ると完全に閉じた状態となります。損失を経済的にイコライゼーションすれば、ISIによるこのジッタを取り除き、信号振幅を回復することができます。

Figure 16

アペンディックスⅢ:M/A-COM H9-SMAハイブリッドジャンクションカプラ

周波数レンジ:2MHz~2000MHz
インピーダンス:50Ω
伝送スルー損失:3.4dB~4.8dB (下図参照)
モード分離:30dB (min、下図参照)

アプリケーション1: シングルエンドから差動へのコンバータ
ポートA: シングルエンドの信号入力
ポートB: 50Ωの終端抵抗を接続
ポートC: 差動(+)出力
ポートD: 差動(-)出力

アプリケーション2: モードスプリッタ(差動モードとコモンモードの分離)
ポートC: 差動(+)入力
ポートD: 差動(-)入力
ポートA: 差動モードレベル出力(シングルエンド)
ポートB: コモンモードレベル出力(シングルエンド)

下図のプロットは、アプリケーション2におけるポートCとポートDの入力に対するポートAとポートBの出力です。上側のライン(ポートA)はポートCとポートDにおける差動信号を示し、下側のライン(ポートB)はポートCとポートDにおけるコモンモード信号を示します。

Figure 17

テストベッドの構築と性能結果を確認する際に使用した測定結果については、Chad Nelson氏の支援をいただきました。