アプリケーションノート 4132

電気機械的SFNパッケージの取り付け方法


要約: このアプリケーションノートでは、SFNと呼ばれるマキシムのパッケージングソリューションを紹介します。これは、電気機械的接点のソリューションのために設計されたものです。この記事では、電気機械的接点のための従来のパッケージングソリューションを取り上げ、その代案としてSFNを紹介します。またSFNの機械的な仕様について説明します。この記事では、アクセサリまたは消耗品にSFNを取り付ける方法を推奨し、次に電気機械的インタフェースの接点を推奨しています。また、パッケージの信頼性解析について説明しています。

はじめに

従来の非電子型の周辺機器や消耗品に電子的な機能を付加することが一般的なシステム要件になりつつあります。標準的なシステム主導型の要件として、キャリブレーションデータや製造情報の保存、あるいは周辺機器、アクセサリ、または消耗品のOEM認証があります。これらの電子要件に適したメモリとセキュリティ機能を選択することに加えて、ホストシステムと周辺機器との間に電気接続を追加する必要があります。

このアプリケーションノートでは、電気機械的接点の環境用として特別に設計されたマキシムのSFNパッケージングのソリューションについて詳細に説明します。また、SFNの機械的な仕様についても説明します。この記事では、アクセサリや消耗品にSFNを取り付けるためのソリューションを推奨し、次に電気機械的インタフェースの接点を推奨します。その後、SFNパッケージの信頼性解析について説明します。

従来のパッケージングソリューション

従来型のICパッケージは、PCBに実装することができるように設計されています。次に基板のリードを接触パッドに結合した後、ホストシステムのスプリング接点に接続することができるようにしています。図1は、これらの回路基板の例を示します。例a)では、両面基板の背面にチップを実装しています。中央と右側のパッドはIOです。左側のパッドはGNDです。この冗長設計は、2種類の接点配置に適合します。例b)では、チップとパッドの両方が片面回路基板の同じ側にあり、コストを削減する手法です。いずれのケースも、基板サイズはほぼ同じです(1cm x 2cm)。図2は、市販のプリンタカートリッジに実装された例a)の設計を示します。

図1. 接触パッドを備えた回路基板の設計例(目盛りはセンチメータ)
図1. 接触パッドを備えた回路基板の設計例(目盛りはセンチメータ)

図2. 最終製品での例a)の写真
図2. 最終製品での例a)の写真

図1の従来のソリューションの主な短所は、サイズがかなり大きくなること(取り扱いを容易にするため、およびねじを取り付けるため)、余分な部品(回路基板)、およびコストです(回路基板、および対象物への実装)。この接続手法が正しく実行されたとしても、回路基板にパッケージを実装するということは、元の課題に対する最も低コストなソリューションとはなりません。ただし、リードではなく接触パッドを備え、またサイズが十分に大きいため周辺機器に簡単にそのまま取り付けることができるというICパッケージは理想的なソリューションになりえます。

SFNパッケージ

SFNという名称は、「Single (1つの接触ライン)、Flat (平坦)、No leads (リードなし)」のパッケージを表します。SFN (図3)は、チップと接触パッドを標準のICパッケージングプロセスに適合したエンクロージャに一体化しています。SFNでは、回路基板は不要で、周辺機器のくぼんだ部分にスナップ方式または接着剤でそのまま実装します。2つの接触パッドによって、SFNは寄生的に駆動される1-Wire®デバイスのみを収容しています。ESD上の理由で、接触を最初に行うため、また極性の測定のために、GNDパッドはIOパッドより大きくなっています。

従来型ICパッケージとは異なり、SFNは接点用途にのみ対応するよう設計されています。パッケージは、パッドのサイズが大きいため層間剥離(パッドが成形材から剥離する)の危険があり、SMTのはんだ付けには適していません。したがって、SFNは、はんだ付け用としては認められていません。

図3. SFNパッケージの小さいパッドはIOで、大きいパッドはGND (目盛りはセンチメートル)
図3. SFNパッケージの小さいパッドはIOで、大きいパッドはGND (目盛りはセンチメートル)

SFNパッケージの主要なアプリケーションは、対象物の識別と認証、およびメモリチップに保存したデータを使用する自動キャリブレーションです。認証によって信頼性と品質が保証されます。その他の低品質のクローン製品ではその機能が損なわれるおそれがあります。SFNの理想的なアプリケーションの範囲は、プリンタの消耗品や医用センサから試薬瓶にまで及びます。

パッケージの特性

SFNパッケージの物理的寸法は、6mm x 6mm x 0.9mmで、許容誤差は±0.05mmです。リードフレームはCDA194銅合金です。接触パッドは0.3mm間隔の2.6mm幅で、長さは、GND用が5.05mmでIO用が3.55mmです。パッドは、1.02µmのニッケル、0.02µmのパラジウム、および0.005µmの金によるめっき仕上げです。成形材は、Sumitomo® G600またはG770、またはその類似製品です。その他の機械的データについては、SFNパッケージの外形図(PDF)を参照してください。SFNパッケージの4mm x 4mm x 0.9mmバージョンも技術的には実現可能です。詳細については、マキシムにお問い合わせください。

SFNは、その目的を達成するため、かなり大きくなっており、したがって、伝統的なICマーキング用のスペースが設けられています(図4)。接触パッドは、この図では見えません。正確に言えば、パッドは点線で描かれており、このパッドを基準にしてマーキングの配置を示しています。マーキングは、1行目は製品番号、2行目は製造日コードとチップの改訂コード、3行目は製造ロットコード、および4行目はオプションとしてデバイスが組み立てられた国名を示しています。左下隅のプラス符号(+)は、製品がPbフリーであることを示します。

図4. SFNパッケージの上面のマーキング。これは上面図であり、接点は見えません。
図4. SFNパッケージの上面のマーキング。これは上面図であり、接点は見えません。

SFNパッケージ製品は、テープ&リールでのみ提供いたします。図5は、テープ上での製品の方向を示しています。テープは、幅が16mm、キャビティピッチ(「部品ピッチ」または「テープピッチ」)は12mmです。直径13インチの1つのリールに2500のデバイスが収められています。

図5. テープ上のSFNの方向。リードは図に示す方向で表が上を向いています。
図5. テープ上のSFNの方向。リードは図に示す方向で表が上を向いています。

取り付け方法

接触パッドを取り扱えるようにするためには、SFNの上面を対象物に向けた状態で周辺機器に取り付ける必要があります。したがって、取り付けると上面マーキングは見えなくなります。対象物にSFNを取り付ける2つの最善の方法は、1)機械式のクリップおよび2)接着テープです。適切な液状の接着剤がありますが、使用するには不便なためここでは取り上げません。

優先される取り付け方法は、図6に示すクリップです。当然ですが、クリップのキャビティはSFNパッケージを保持できるだけの大きさが必要です。SFNを正しい位置に固定するフレキシブルフックの正確な寸法は、クリップの材質によって決まります。図7は、認証される周辺機器の対象物の設計に組み込まれた類似のクリップを示します。SFNパッケージは、射出成形によりプラスチックの物体内に実装することもできます。詳細についてはアプリケーションノート4717 「コネクタまたは家電品へのICの射出成形」をご参照ください。

図6. SFNパッケージの保持クリップ。SFNの挿入前と挿入後を示します。
図6. SFNパッケージの保持クリップ。SFNの挿入前と挿入後を示します。

図7. 最終製品のSFNクリップ式の実装例
図7. 最終製品のSFNクリップ式の実装例

クリップに代わる実現可能な案は、両面接着テープです。SFNパッケージに使用される成形材に十分接着する接着剤がいくつかあります。3M® Companyは、多くの種類の感圧接着剤を製造しており、多様な環境で動作するように設計されています。

2つのグループの接着剤製品を考慮する必要があります。1)両面フォームテープ、および2)両面テープです。3つ目の製品グループである電子機器用接着剤には、導電性を備えた製品、熱や溶剤による活性化が必要な製品、あるいはSFNの取り付けとは明らかに異なる目的で開発された製品があります。SFNアプリケーションには導電性は不要であるため、また熱や溶剤による活性化は特別な手順が必要なため、3つ目の製品グループの接着剤製品は無視することができます。

3Mのウェブサイトwww.3m.comに移動し、「adhesive transfer and double coated tapes(接着剤転写および両面テープ)」を検索してください。Double Coated Foam Tapes (両面フォームテープ)またはDouble Coated Tapes (両面テープ)の見出しに従って、各カテゴリの製品を検索します。両面フォームテープから、SFNを取り付ける対象物の材料に適合する製品を選択します。接着フォームテープは、厚さ0.8mm~6.4mmで、かつ最大温度+49℃、+70℃、+104℃、および+152℃で利用可能です。両面テープ区分の製品は0.03mm~0.26mmと非常に薄く、ほとんどが動作温度+70℃以上で適しています。:ゴム系テープは温度範囲が制限されるため(屋内温度および室温の両方について)、対象にする必要はありません。

接点の選択

SFNパッケージを保持する周辺機器の対象物のデータにアクセスするには、ホストシステムで1対の適切な電気接点を必要とします。このような接点については、Suyin Corporationのカテゴリ「Battery connectors (バッテリコネクタ)」にあります。図8図10は、SFNで正常に評価されたSuyin製品を示します。単純化のため、これらのコネクタはこのアプリケーションノートでは接点A、B、およびCと呼びます。製造業者の製品番号と元の製品の説明は、各図の下に記載します。

図8. 接点A - Suyin 060191MAシリーズ。図の製品番号:060191MA002_02ZR (_は、めっき仕様のためのプレースホルダ)。説明:3.90mmピッチのバッテリコネクタオスSMDタイプ(インサート成形タイプ)。
図8. 接点A - Suyin 060191MAシリーズ。図の製品番号:060191MA002_02ZR (_は、めっき仕様のためのプレースホルダ)。説明:3.90mmピッチのバッテリコネクタオスSMDタイプ(インサート成形タイプ)。

図9. 接点B - Suyin 060121MRシリーズ。図の製品番号:060121MR002G_00ZU (_は、めっき仕様のためのプレースホルダ)。説明:3.60mmピッチの2ピンバッテリコネクタスプリングDIPタイプ。注:製品は上下が逆になっています。ピンとセンタポストは回路ボードのスルー実装用に設計されています。
図9. 接点B - Suyin 060121MRシリーズ。図の製品番号:060121MR002G_00ZU (_は、めっき仕様のためのプレースホルダ)。説明:3.60mmピッチの2ピンバッテリコネクタスプリングDIPタイプ。:製品は上下が逆になっています。ピンとセンタポストは回路ボードのスルー実装用に設計されています。

図10. 接点C - Suyin 425122MAシリーズ。図の製品番号:425122MA002G_00Z_ (_は、めっき仕様、およびチューブまたはリールのためのプレースホルダ)。説明:4.25mmピッチの2ピンバッテリコネクタSMTタイプ。
図10. 接点C - Suyin 425122MAシリーズ。図の製品番号:425122MA002G_00Z_ (_は、めっき仕様、およびチューブまたはリールのためのプレースホルダ)。説明:4.25mmピッチの2ピンバッテリコネクタSMTタイプ。

図11の接点D、スルー実装、カスタムスプリング設計もSFNによるテストが正常に完了しました。設計図は付録にあります。

図11. 接点D。カスタム設計
図11. 接点D。カスタム設計

4種類の接点設計(図8~図11)の重要な特徴的パラメータを表1に一覧で示します。信頼性の高い動作を確保するため、周辺機器をホストシステムに挿入するときにSFNと接点との間で何らかのワイピング動作を行う必要があります(たとえば接点の清掃)。接点A、C、およびDは、対象物をスプリングに向けてスライドさせる必要があります。接点Bのみ、対象物を接点に対して押すように設計されているため、接点にスプリング力が生じて、ワイピング動作が行われます。

表1. 接点の例の比較
  Contact A 060191MA series Contact B 060121MR series Contact C 425122MA series Contact D custom design
Design objective Object slides against the spring and wipes; high force Object pushes against the spring; spring yields and wipes; high force Object slides against the spring and wipes; high stroke Object slides against the spring and wipes; low stroke
Footprint on PCB 6mm × 6.7mm 4.5mm × 6.75mm 6.2mm × 7mm 2.3mm × 6.2mm
Height 4.65mm 6.5mm 6.8mm 2.1mm
Mounting type SMD Through-mount SMT Through-mount
Stroke 0.9mm (max) 0.6mm (2mm, abs max) 1.2mm (max) 0.2mm
Spring durability 10k cycles 10k cycles 3k cycles 1k cycles
Force per contact 500g at 0.9mm stroke 250g to 300g at 0.3mm (= half) stroke 150g to 260g at 1.2mm stroke 90g to 115g at 0.2mm stroke
Force per contact at 0.2mm stroke 111g 167g to 200g 25g to 43g 90g to 115g
PCB thickness 1.2mm 1.2mm 0.8mm 0.8mm

Suyinのドキュメントに使用されている寸法は一貫性がないため、便宜上、寸法はすべてメートル法に換算しています。力のSI単位はN (ニュートン)です。多くの機械製品のデータシートでは未だに旧式の単位「グラム重(gf)」を使用しています。換算すると、1000gf = 1kp (キロポンド) = 9.80665Nです。

信頼性テスト

SFNパッケージに対して2種類の一連の適性テストを実施しました。テストパラメータを表2に記載します。

表2. 2種類のテストによるSFNテストパラメータ
a)
  • Operating life (+125°C, 5.5V, 1000 hours)
  • Mechanical verification (X-ray, dimensions, marking, lead integrity)
  • Storage life (+150°C, unbiased, 1000 hours)
  • Temperature cycle (-55°C to +125°C, 1000 cycles)
  • Temperature humidity bias (+85°C, 85% R.H., 5.5V, 1000 hours)
  • Unbiased moisture resistance (85°C, 85% R.H., 1000 hours)
b)
  • Mechanical life (shock test 200g, 30 cycles) followed by temperature cycle (-55°C to +125°C, 1000 cycles)
  • Mechanical life (vibration 10g, 5Hz to 2kHz in X Y Z axes, 30 hours), followed by temperature humidity bias (+85°C, 85% R.H., 5.5V, 1000 hours).

両方のテストで、すべてのSFNデバイスは問題なく合格しました。詳細については、それぞれのレポートを参照してください(付録を参照)。結果として、SFNパッケージは従来型ICパッケージと同じ信頼性要件を満たしています。SFNは、-40℃~+85℃の工業用温度範囲に対応します。別のテストでは、SFNパッケージは、カスタム設計の接点Dによる1000回の接触サイクルに合格しました。

オートクレーブテストは実施しませんでした。2007年1月のJESD47Eによれば、有機基質のパッケージに対する認定テストとして推奨されなくなったからです。今では、有機基質のガルバニック腐食や直接的な化学的腐食については、+130℃で85%R.H.における96時間の、バイアスをかけた、またはバイアスなしの高度加速ストレス試験(HAST)の方が好ましいテストとされています。+85℃で85%R.H.における1000時間の試験に合格した製品では、通常、HASTは不要です。

まとめ

SFNパッケージは、識別対象周辺機器の対象物にチップを備えたモジュールを実装する場合の低コストの代案です。SFNの取り付け方法の選択肢としては、非電気の対象物に組み込むクリップ式の保持具と、両面接着テープがあります。安価なモバイルバッテリコネクタによって、ホストシステムとSFN間での電気的な接続が可能です。SFNパッケージの信頼性は、従来型ICパッケージの信頼性に匹敵します。

付録

  1. 認定テストレポートa (PDF)
  2. 認定テストレポートb (PDF)
  3. 接点Dの設計図

    接点Dの設計図