アプリケーションノート 4126

iButtonデータロガーとカプセルのIP (Ingress Protection)規格の理解


要約: Thermochron® (DS1922L、 DS1922T、 DS1921G)とHygrochron™ (DS1923) iButton®データロガーは幅広い用途に理想的です。これらの装置はステンレス製筐体に入れられているために特に過酷な環境において有益です。ただしユニットをそれらの指定された保護レベルを越える環境の下にさらす事が無い様な注意が必要です。このアプリケーションノートはIP (Ingress Protection)規格について定義し、解説します。また、ThermochronとHygrochron iButtonは、IP56 (防塵と強い噴射水)の認定について述べますが、冠水については行っておりません。冠水する用途のためには、DS9107 iButtonカプセルなどの防水性筐体を使用しなければなりません。

IP定格とは何か?

IPとは、あらゆる機器の筐体に侵入する物質に対するIngress Protection (侵入の保護)の頭字語です。IP定格はIEC 60529で定義され、IEC (lnternational Electrotechnical Commission)が開発しました。特に、IEC 60529はある外部からの影響と、直接接触する部分に対して直接保護する部分の筐体を定義しています。¹

IEC 60529は、耐食性、構造条件、および冷却と冷却剤の範囲の効力は含みません。 これらと追加の側面については、NEMA (National Electrical Manufacturers Association)が開発したNEMA250製品基準の中で扱います。更に制限した範囲で、IP規格はNEMA品質基準への補足とみなすことができますが同等とみなすことはできません。従って、インターネット上で出版されたIP/NEMA基準相互参照表を使う時には注意が必要です。詳細についてはNEMA出版物、「A Brief Comparison of NEMA 250—Enclosures for Electrical Equipment (1000 Volts Maximum) and IEC 60529—Degrees of Protection Provided by Enclosures (IP Code)」を参照して下さい。²

IP格付けは2桁で書式設定しています。最初の桁は塵などの固体に対する保護レベルを示し、2桁目は液体に対する保護レベルを示します。図1はIP書式を示し、例としてIP56を使用しています。

Figure 1. IP rating format.
図1. IP定格書式

iButtonデータロガー筐体

Thermochron温度ロガーと、Hygrochron温度および相対湿度ロガーを含むiButtonデータロガーは小型化と信頼性において重要な進歩を提供しました。 各データロガーが使用する単接点1-Wire®通信プロトコルは単純で堅牢です。 iButtonステンレス製パッケージは固体と液体の両方に対して丈夫で、侵入に対する抵抗力があります。しかし、iButtonがアプリケーションの中で、高い信頼性で機能を果たすためにこの筐体の能力の限界を理解する事が重要です。

DS1921G、DS1922L、DS1922T、DS1923はIP56認定

iButtonデータロガーの紹介、特長、および使い方についてはアプリケーションノート3892 「iButton®センサと温度/湿度データロガーの概要」をご覧ください。iButtonデータロガーは耐水性ですが防水性ではありません、独立した認定試験所³がいくつかのデータロガーをIP56に適合していると認定しました。 DS1921G (2kBメモリ、±1℃の精度、-40℃から85℃)、DS1922L (8kBメモリ、±0.5℃の精度、-40℃から85℃)、DS1922T (8kBメモリ、±0.5℃の精度、0℃から125℃)、更にDS1923 (8kBメモリ、±0.5℃/5%のRH精度、-20℃から85℃)。

DS1921G、DS1922L、およびDS1922T Thermochronsの製造時の初期密閉レベルはIP56を達成しています。図1からIP56は塵と高圧の噴流水からの保護と翻訳できます。しかし経年変化と使用条件は時間とともにシールの完全性を低下させます。従って、液体、スプレー、または同様な環境への重要な露出用途には、Thermochron機器をDS9107 iButtonカプセルの中に置くことを勧めます。

DS1923 Hygrochronは湿度を記録するのでそれが機能する事を妨げる防水性のコンテナの中に設置すべきではありません。従ってそれが空気にさらされ、直接水にはさらされない場所にHygrochronを設置するように考慮して下さい。遮蔽筐体を勧めます。

DS1921HDS1921Zは正式のIP56テストをしていませんが、DS1921Gと同様に構成され同様に機能すると考えています。

DS9107はIP68自己認定

重要な事は、データロガーはあらゆるタイプの液体浸漬は推奨していません。 もし、用途が液体浸漬を必要としているならば、機器は最初に防水性のコンテナに置くべきです。適当な防水性のコンテナの1例は、IP68に認定されたDS9107 (iButtonカプセル)(図2)です。IP68は圧力下で長時間にわたる浸漬を示しています。DS9107のIP68格付けは24時間(表1)の間、100ft (30.5m)に相当する圧力を定義しています。

Figure 2. DS9107 iButton Capsule.
図2. DS9107 iButtonカプセル

IP68は、「長期間」圧力下の液体に耐えることが可能なあらゆる筐体を分類しています。 追加の固有パラメータは、機器個別の筐体の特性によって定義されます。 マキシムは、以下の項目を定義してDS9107のためにIP68の自己認定を行いました。
  1. 水を、圧力容器で100ft (30.5m)をシミュレーションし、24時間漏れない事。
  2. コーラ、ワイン、海水を、圧力容器で100ft (30.5m)をシミュレーションし24時間、漏れと腐食が無い事。
  3. 温度サイクル分析は、100ft (30.5m)を水圧シミュレーションし、1時間漏れない事を確認後、続いて-40℃から85℃、1000サイクルを実施。
マキシムはDS9107の全数を、漏れの保護について各カプセルを供給業者から受け取る時に空気漏れテストによって確認しています。

表1. DS9107 IP68自己認証結果
Temperature Cycle
Description Date Code Condition (°C) Readpoint Qty Fails
Temp Cycle 0618 -40 to 85 1000 cys 77 0
    -40 to 85 1000 cys 77 0
    -40 to 85 1000 cys 77 0
      Total:   0
Unbiased Moisture Resistance
Description Date Code Condition Readpoint Qty Fails
Moisture Cycling 0618 +121°C, 2atm4 steam, unbiased 100 cys 80 0
    +121°C, 2atm steam, unbiased 100 cys 80 0
    +121°C, 2atm steam, unbiased 100 cys 80 0
Liquid Submersion—Water 0618 100ft (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 77 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 77 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 77 0
Liquid Submersion—Wine 0618 100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
Liquid Submersion—Cola 0618 100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
Liquid Submersion—Salt Water 0618 100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
    100ft. (30.5m) pressure, +25°C 24 hrs 22 0
      Total:   0

参考文献:
1 「A Brief Comparison of NEMA 250—Enclosures for Electrical Equipment (1000 Volts Maximum) and IEC 60529—Degrees of Protection Provided by Enclosures (IP Code)」NEMA250-電気機器(1000ボルト最大)用筐体と、IEC60529-筐体による保護等級(IPコード)の簡単な比較で引用されたIEC 60529標準は、2002年にNEMAによって出版されました。この文書をダウンロードするには注2をご覧下さい。 IEC60529標準は下記で購入可能です。
www.techstreet.com/cgi-bin/detail?product_id=861222

² NEMA250とIEC60529の比較は以下で見つけられます。https://www.nema.org/Standards/Pages/A-Brief-Comparison-of-NEMA-250-and-IEC-60529.aspx

³ iButtonデータロガーのIP56認証は以下で見つけられます。 www.maximintegrated.com/products/ibutton/images/ip56_loggers_cert.pdf

全てのiButtonとiButtonアクセサリの認証はここで見つけられます。

4下記の、圧力測定、測定単位、および水の様相図の詳細については、Stephan R. Turns著、「Thermal-Fluid Sciences, An Integrated Approach」の第2章、「Thermodynamic Properties, Property Relationships, and Processes」をご覧ください。 www.cambridge.org/us/engineering/turns/assets/0521850436c02_p046-171.pdf