アプリケーションノート 4114

DS278x残量ゲージICファミリのRSGAINの較正


要約: DS278xスタンドアロン残量ゲージICファミリは、充電型のリチウムイオンまたはリチウムポリマ電池の利用可能な残容量を正確に算出します。これらの残量ゲージは、データシートに記載された精度を提供するよう工場出荷時に較正が行われます。しかし、モジュールまたはパック製造後の電流測定精度を向上させるため、ユーザによる電流測定値ゲインファクタ(RSGAIN)の再プログラムが可能になっています。RSGAINを調節して外付け検出抵抗の公称値の変動を補正することによって、低コスト/低精度の電流検出抵抗を使用することが可能になります。このアプリケーションノートでは、DS278xスタンドアロン残量ゲージのRSGAINを較正する手順について詳しく説明します。

はじめに

DS278xスタンドアロン残量ゲージファミリ(DS2780DS2781DS2782DS2784、およびDS2788)は、充電型のリチウムイオンまたはリチウムポリマ電池の利用可能な残容量を正確に算出します。残量ゲージの精度は、電池セルの特性およびEEPROMに格納されたアプリケーションパラメータに加えて、電流測定値の精度で決まります。

データシートに記載された電流の精度を満たすように、個々のデバイスが工場出荷時に較正されます。しかし、モジュールまたはパック製造後の電流測定精度を向上させるために、電流測定値ゲインファクタ(RSGAIN)に対するユーザのアクセスと再プログラムも可能になっています。ユーザがRSGAINを調節して外付け検出抵抗の公称値の変動を補正することによって、低コスト/低精度の電流検出抵抗を使用することが可能になります。

解説

RSGAINは、検出抵抗を流れる電流の測定値を正確にスケーリングするためにDS278xファミリのデバイスが使用するスケーリングファクタです。各デバイスは電流を測定し、その値にRSGAINスケーリングファクタを乗じて正確な電流測定値を算出します。その値が電流レジスタで通知され、積算電流レジスタ(Accumulated Current Register:ACR)に積算されます。

Reported Current (mA) = Measured Current (mA) × RSGAIN(Eq. 1)

図1に、RSGAINレジスタのフォーマットを示します。RSGAINは、パラメータEEPROMメモリブロック内の2バイトに格納される11ビットの値です。RSGAINレジスタの値は、0から1.999まで0.001 (正確には2-10)ステップで調節可能です。MSbの値の重みは1であり、LSbの値の重みは1/1024 (すなわち2-10)です。

Figure 1. The calculated RSGAIN value should be written to addresses 78h and 79h using the above RSGAIN Register format.
図1. 算出したRSGAINの値を、上に示すRSGAINレジスタのフォーマットを使用してアドレス78hおよび79hに書き込みます。

ゲイン調整を必要としない正確な電流測定を行うために、デバイスのRSGAIN値として1.000が必要になります。一般的に、DS278xファミリのデバイスは工場出荷時にRSGAINとして0.990~1.100の範囲の値が設定されます。

表1. RSGAINの値とそれに対応するレジスタ値の例
RSGAIN レジスタ値
0.000 XXXX X000 0000 0000
0.001 XXXX X000 0000 0001
0.990 XXXX X011 1111 0110
1.000 XXXX X100 0000 0000
1.010 XXXX X100 0000 1010
1.020 XXXX X100 0001 0100
1.030 XXXX X100 0001 1111
1.040 XXXX X100 0010 1001
1.050 XXXX X100 0011 0011
1.999 XXXX X111 1111 1111

RSGAINの計算

正確な電流測定値を保証するために、ユーザはRSGAINのプログラムを慎重に行う必要があります。工場出荷時に、パラメータEEPROMブロック内の独立した2カ所、RSGAIN (再プログラム可能)とFRSGAIN (読取り専用)にゲイン較正値が格納されます。RSGAINは電流測定に使用するゲインを決めるものです。読取り専用のFRSGAINは、工場設定値を保存するためだけに提供されているもので、電流測定には使用されません。誤って不正な値をRSGAINレジスタに書き込んでしまった場合に、FRSGAINの値を使って最初のRSGAINの値を復元することが可能です。

RSGAINの値を計算するためには、正確な基準電流を検出抵抗に流す必要があります。この基準電流を、デバイスから通知された電流値で割ります。そして、この基準電流と通知された電流値との比に既存のRSGAINの値をかけて、新しいRSGAINの値を算出します。

Equation 2

たとえば、正確に500mAを検出抵抗に流したとき、RSGAINの値が1.02637に設定されているDS278xから495mAという電流値が通知されたとすると、新しいRSGAINの値は1.03674になります。

Equation 3

算出したRSGAINの値は、図1に示すようにアドレス78hおよび79hに書込みを行い、その後EEPROMへコピーします。これによって、DS278xデバイスによって通知される電流が、検出抵抗に流している基準電流と一致することが保証されます。

結論

RSGAINの値をお客様が再プログラムして、モジュールまたはパック製造後の電流測定精度を向上させることが可能です。この較正機能によって、DS278xスタンドアロン残量ゲージICファミリは、電流測定値が可能な限り正確なものであることを保証しながら、低コスト/低精度の電流検出抵抗を使用することが可能になっています。