アプリケーションノート 4102

SONET/SDHネットワークにおけるEthernet over PDHの使用

筆者: Arthur Harvey

要約: このアプリケーションノートでは、Ethernet over PDH over SONET/SDH (EoPoS)、EoPDH、およびEthernet over SONET/SDHについて解説します。1990年代に登場したNGS (Next-Generation SONET/SDH)機器の歴史を示し、NGSがレガシーシステムとのユビキタスな相互運用性を提供することができず、そのため広く導入されるには至らなかったことを説明します。最後に、現在台頭している新テクノロジであるEthernet over PDH over SONET/SDH (EoPoS)について解説します。EoPoSは、国際電気通信連合(ITU)規格のEthernet over PDH (EoPDH)をSONET/SDHと組み合わせて使用することによって、レガシーシステムを効率的な伝送テクノロジと結合させるものです。

はじめに

キャリアEthernetは、「キャリア」と呼ばれる電気通信サービスプロバイダ各社が競争力を維持するために導入しなければならない、数多くの潜在的な収益を生むサービスへの道を開きます。しかし、Ethernetが接続監視、障害分離、および診断テストをネイティブサポートしていないため、ほとんどのキャリアは、純粋なEthernetネットワークへの移行が準備できていません。サービス品質を強化するこれらの3つの属性は、PDH (Plesiochronous Digital Hierarch)および同期SONET/SDHネットワークがネイティブに備えているものです。そのため、キャリア各社は十年以上にわたって、要求の厳しい顧客に重要なサービスを届けるための確実なプラットフォームとして、PDHおよびSONET/SDHネットワークへの信頼を高めてきました。

ネイティブなEthernetフレームをネットワークのエッジ間で透過的かつ効率的に伝送するというのは、難しい課題です。かつては、この課題を克服するために高いコストが必要でした。1990年代の終わり頃に、多くのキャリアが自社ネットワークの一部を取り出して、当時「次世代」SONET/SDH (NGS)と呼ばれていた機器に置き換えました。それらの次世代機器は、インフラの使用率が100%に近づいた状態でもEthernetおよびTDMサービスを効率的に伝送可能でした。しかしNGS機器には、レガシーシステムとのインタフェースが存在しないという固有の弱点がありました。サービスの終了またはハンドオフを行うすべてのノードを、新しいシステムに置き換える必要があったのです。この置き換えおよび更新という重荷は、機器メーカにとってはビジネスの活性化につながりましたが、レガシーノードの置き換えはキャリアの資本の使い道として効率的なものではありませんでした。

しかし今日では、新しいプロトコルによってレガシー機器の再利用が可能になっています。新しいキャリアEthernetサービスの展開に必要な全体コストを最小化するので、これらの新プロトコルは極めて大きな重要性を持っています。

NGS (Next-Generation SONET/SDH)についてのコメント

最新の方法論の優位性を理解するためには、その前にNGSの詳細について少し理解しておくことが重要です。Ethernetの伝送に当たって、NGSソリューションはGFP (Generic Framing Protocol)でカプセル化したEthernetフレームを可変帯域のconcatenated SONET/SDH仮想コンテナに直接格納します。この交換は、主として国際電気通信連合のITU-T G.707で定義されている方法を使用して行われます。NGSネットワーク上の各サービスに極めて細かい粒度の帯域を与えることによって、この伝送方式は最大容量付近で稼動しているSONET/SDHリンク上での最適な帯域使用率の提供を約束します。多くのキャリアは、このクラスの機器を当時における理想の技術的ソリューションであると判断しました。

しかし、サービスの終了またはハンドオフを行う際には、これらの連結仮想コンテナをOC-3、STM-1、T1、E1、DS3などの物理インタフェースに変換する必要があります。しかし、レガシーSONET/SDHシステムによってNGSノード発のconcatenated仮想コンテナを標準的な物理インタフェースに変換することはできないため、NGSシステムとレガシーシステムとの相互運用性は不十分でした。レガシーSONET/SDHシステムがこの作業を行うことができない以上、これらのノードにはNGS機器が必要になります。さらに、レガシーネットワークを使用してNGSノード発のサービスを伝送する場合、一般的にはレガシーSONET/SDHコンテナ全体がその経路に割り当てられるため、NGSの使用によって得られるファイバーの帯域効率が打ち消されます。要するに、NGSシステムは既存の伝送方式との相互運用性を無視し、代わりにほとんど達成されることのない帯域使用率を約束していたのです。

レガシーSONET/SDHおよびEoPDHの基礎知識

新しいEthernet over PDH over SONET/SDH (EoPoS)アプローチは、伝統的な伝送方式から逸脱するのではなく、それらを活用するものです。このアプローチの重要性を把握するためには、最初にレガシーSONET/SDHシステムの基礎を理解する必要があります。

すべての電気通信機器は、その作業の大半をシリコンとソフトウェアによるプロトコル処理に依存しています。レガシーSONET/SDHのADM (Add-Drop Multiplexer)の基本的プロトコルスタックを図1のSTACK Aに示します。このプロトコルスタックは、長年にわたってT1、E1、およびDS3の各専用線などのPDH TDM (Time Domain Multiplexed)サービスの搬送に使用されてきました。

Figure 1. Protocol comparison of legacy SONET/SDH with Ethernet over PDH over Sonet (EoPoS).
図1. レガシーSONET/SDHとEthernet over PDH over Sonet (EoPoS)のプロトコル比較。

これらのPDHサービス(T1、E1、およびDS3)は、十分に理解され、地球規模で展開され、信頼されています。したがって、ITUが新しいEthernetサービスのトランスポート層としてこれらのPDHテクノロジを採用するのも理解できます。最近、ITUは単一および複数のPDHリンク上におけるEthernet伝送に関する新しい勧告を策定しました。該当する規格は、ITU-T G.7041、G.7042、およびG.7043です。これらの勧告が一体となって、Ethernet-over-PDH (EoPDH)テクノロジの基本要素を構成しています。EoPDH機器で使用されるプロトコルスタックについて、図1のSTACK Bの上半分にそれぞれの名称と位置を示します。

EoPDHは、キャリア各社が広範な既存の電気通信/銅線インフラを使用して、新しいEthernet中心のサービスを提供することを可能にするテクノロジと新しい規格の集合です。EoPDHの各規格は相互運用性を実現し、キャリア各社が徐々に純粋なEthernetネットワークに移行することを可能にします。EoPDHで使用される標準化されたテクノロジには、フレームのカプセル化、マッピング、リンクアグリゲーション、リンク容量調節、および管理メッセージングが含まれます。また、EoPDH機器で一般的に行われる処理として、複数の仮想ネットワークに分割するためのトラフィックのタギング、ユーザトラフィックの優先順位付け、および幅広い上位層アプリケーションがあります。EoPDHは物理PDHトリビュタリ上におけるEthernetのポイントツーポイント配送用に作成されましたが、レガシーSONET/SDHと組み合わせたとき、EoPDHはEthernetサービス提供のための重要な要素になり、高いコスト効率を持つツールになります。

Ethernet over PDH over SONET/SDH (EoPoS)のメリット

新しいクラスのSONET/SDH機器は、EoPDHの規格群を使用してEthernetフレームを仮想的に連結されたPDHトリビュタリにマッピングするとともに、従来のマッピング技法を使用して既存のSONET/SDHネットワーク上でPDH接続の伝送を行います。この機器のプロトコルスタックを、図1のSTACK Bに示します。EoPDHとPDH-over-SONET/SDHを組み合わせていることから、この最新テクノロジはEthernet over PDH over SONET/SDH、またはEoPoSと呼ばれています。

この2つのプロトコルが一体化されるポイントは、レガシープロトコル処理がT1またはE1ポートのような物理PDHインタフェースにデータを送り出すポイントでもあります。この小さな事実によって、任意のPDHリンクで接続された2つの機器間でEoPoSのプロトコル処理を分散することが可能になっています。複数の機器間にわたるプロトコル処理の分散を許すことで、EoPoSはレガシー機器と新しい機器が混在する環境を可能にします。しかしEoPoSの真の強みは、システムの既存インフラとSONET/SDHネットワーク上でのPDHトリビュタリ伝送に関する知識が活用される点です。コストを度外視して帯域幅の最適化を試みたNGSのアプローチとは異なり、EoPoSは帯域の効率的使用を維持しつつコストを最小化します。これらの優位性を理解するため、実際のアプリケーション例を考えてみましょう。

ほとんどのキャリアのメトロポリタンネットワークでは、相互接続された複数のSONET/SDHリング上でサービスが配送されます。そうしたネットワークリングの1つを図2に示します。この図では、レガシーADMを単一のノード(ノードC)として図示していますが、実際には当該フィールドに配備された大量の通信機器を表しています。このファクターが持つ重みを適切に強調しておくと、レガシーSONET/SDH機器のインストールされたベースは数千億ドルに相当します。この機器の大部分は完全に減価償却済みであり、今後かかるのは運用経費だけであるという点が非常に重要です。新しい機器によって総運用コストを削減するためには、その資産の減価償却費と維持費の合計が、完全に減価償却済みの古い機器の運用経費よりも低くなければなりません。この一点だけでも、レガシーSONET/SDH機器の運用を継続すべきだというコスト上の有力な論拠になります。

Figure 2. Example Metro SONET/SDH application diagram.
図2. メトロSONET/SDHのアプリケーション例を示す図。

図2のノードAが、EoPoSテクノロジを使用した新しい機器を表しています。相互運用性の原則に従って、この機器は一般的に従来のEthernet-over-SONET/SDH (EoS)とNGSの両プロトコルをサポートしています。したがって、Ethernetトラフィックは新しいEoPoSノードからノードBのNGSシステムに、そしてEoPoSノードからレガシーノードに流れることが可能です。すでに述べたように、レガシーノードのプロトコルスタックにはNGSプロトコルが含まれていません。NGSプロトコルは物理PDHインタフェースを提供していないため、レガシーノードはNGSノード発のEthernetフローを終了することができません。ノードCのレガシーADMは、ノードAからのEoPoSフローを伝送およびハンドオフすることが可能です。このレガシーADMは、図1のSTACK Bの下半分を処理し、低コストの機器に対する物理PDH接続を提供します。EoPDHをサポートするCPEが、図1のSTACK Bの上半分を処理し、それによってEoPoSフローを完全に終了させます。既存の顧客がレガシーTDMサービスからEthernetサービスに移行する場合、レガシーノードにおけるコスト増は、高価なNGS SONET/SDHボックスではなく、EoPDH規格に準拠した低コストの機器だけです。

PDH層におけるこの自然なプロトコル処理の分離は、EoPDH機器が存在する顧客サイトへの接続にPDH専用線が要求されるアプリケーションでも有効です。さらに、ノードA-C間のSONET/SDHネットワークが、複雑に相互接続されたレガシー機器群で構成されている場合にも、レガシー機器は構成要素のEoPoSフローをあたかも単純なPDHトリビュタリであるかのように処理することができます。この例ではADMを使用していますが、EoPoSテクノロジの恩恵を受けるキャリアEthernet機器には、MSPP、デマケーション装置、ROADM、メディアゲートウェイ、IP DSLAM、マイクロ波無線など、幅広い機器タイプが含まれます。

まとめ

EoPoSテクノロジに対応SONET/SDH機器は、NGS機器が約束していたメリットの多くを提供するだけでなく、EoPoSによって配備の経費も最適化されます。標準化された仮想連結手法を使用することで、キャリアEthernetサービスが消費する帯域幅を最小1.5Mbpsステップで動的に調節することが可能です。ITU-T G.7042 VCAT/LCASプロトコルは、SONET/SDHの帯域幅全体を効率的に使用するための動的割当てと柔軟性を提供します。それによって、キャリアEthernetサービスの加入者に対する必要な帯域幅の割当てが可能になります。システムの帯域幅はほとんど無駄になりません。SONET/SDH機器と組み合わせてEoPDHプロトコルを賢く使用することによって、コストを最小化しながら新しいキャリアEthernetサービスをサポートするネットワークに移行することができます。

同様の記事が「Electronic Design」誌の2007年4月12日号に掲載されています。

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