アプリケーションノート 4046

2.1 (サテライト/サブウーファ)スピーカシステムの概要


要約: このアプリケーションノートは、ポータブルコンピュータ用の従来型2.1オーディオ設計の概要を提供し、サテライトスピーカとサブウーファで異なる出力要求に対処する方法について考察します。次に、この記事は、2 x 2Wおよび1 x 7W出力電力を提供する、マキシムの高効率、低コスト2.1ソリューションについて詳述します。

はじめに

ポータブルコンピュータのオーディオ設計者は、システムのサウンドの向上に絶えず取り組んでいます。スペースが制約された設計において、優れたソリューションの1つは、中高周波数(ポータブルコンピュータシステムでは通常500Hz以上)用のステレオサテライトと低周波数(ポータブルコンピュータシステムでは通常500Hz以下)用の1個のサブウーファを使用する2.1構成です。

このアプリケーションノートには、2 x 2Wおよび1 x 7Wの出力パワーを提供する高効率、低コスト2.1ソリューションについて書かれています。広い電源範囲(8V~28V)を備え、いかなる電圧レギュレータも必要としないD級アンプMAX9737を紹介します。

従来型ソリューションの概要

オーディオシステムの設計者が直面している主な問題の1つは、サテライトスピーカとサブウーファで出力要求が異なる問題です。通常、サブウーファは、適切なサウンドバランスを得るため4~5倍大きい出力を必要とします。5Vの電源のみが使用可能な場合、さまざまなオーディオパワーアンプソリューションが採用されていますが、それぞれに不利点があります。
  1. 最も一般的なソリューションは、同じ出力レベルの2つのステレオパワーアンプを使用した方法でした。1つのアンプがサテライトを駆動し、もう1つのアンプがサブウーファを駆動します。サテライトは8Ωのスピーカを使用し、サブウーファは4Ωのスピーカを使用します。これによって、2 x 1Wサテライトと1 x 2Wサブウーファを搭載した2.1ソリューションが構築されます。このソリューションはシンプルですが、サブウーファに豊かな低音域を生み出す十分なパワーを提供しません。また、サテライトに8Ωのスピーカを使用すると、サテライトの音圧レベル(SPL)が最大化されません。そのため、このアプローチの全体的なサウンドレベルが制限されます。

  2. 上記のソリューションのスピーカインピーダンスを変更すると、サテライトに4Ωのスピーカ、サブウーファに2Ωのスピーカを使用することが可能になります。これによって、サテライト用の2 x 2Wとサブウーファ用の1 x 4Wを搭載した2.1ソリューションが構築されます。このソリューションは、出力を倍増してサウンドレベルを上げます。ただし、2Ωのスピーカとこれらのスピーカを駆動するパワーアンプに電力を供給することは困難でコストが高くなります。さらに、消費電流の要求は約2倍になり、ソリューションの効率が悪くなるため、特に、スペースに制約のあるシステムの場合に、放熱問題が生じる可能性があります。

  3. 上記2つのソリューションよりも優れたソリューションは、サテライト用に2 x 2Wアンプ、およびサブウーファ用に1 x 7Wアンプを使用する方法です。この構成では、サテライトは4Ωで、5Vの電源供給能力を十分に利用し、サブウーファは8Ωで、7Wの豊かな低音域を提供します。ただし、この7Wサブウーファアンプは、12Vの電源を必要とし、このソリューションは複雑化します。5Vの電源のみが使用可能な場合、12Vの電源が生成される必要があります。

従来型ソリューションの分析

2.1スピーカシステムを使用する利点は、このシステムが小型スペースから「大」音量を提供する点にあります。これを達成するには、サブウーファアンプは、サテライトの3~4倍以上のパワーを持っている必要があります。2Wサテライトの場合、サブウーファアンプは少なくとも6W~8Wにする必要があります

上記のソリューション1と2は、5Vの単一電源しか必要でないため、実装がシンプルです。ただし、これらのソリューションは、どちらもサブウーファの駆動に適したパワー量を持たないため、これらの問題を解決しません。

ソリューション3は、追加の12V電源の生成によってもたらされる複雑性がなければ、最適なソリューションになります。

図1. 2.1スピーカシステムのマキシムの完全ソリューション
図1. 2.1スピーカシステムのマキシムの完全ソリューション

マキシムのソリューションとその利点

図1は、2.1スピーカシステムのマキシムの完全ソリューションを示しています。このソリューションは、ステレオヘッドフォンドライバを搭載したWindows Vista®対応の2 x 2WステレオアンプのMAX9791、およびノートブックコンピュータバッテリに直接接続された1 x 7WモノラルD級アンプのMAX9737を使用します。

MAX9791は、2.1システムのサテライトを駆動するステレオ2WのD級スピーカアンプと、ステレオ180mWのDirectDrive®ヘッドフォンアンプを単一デバイスに統合しています。MAX9791は、Windows Vistaオペレーティングシステムを使うポータブルコンピュータシステム用に設計され、Windows Vista仕様に完全対応しています。このヘッドフォンアンプは、単一電源からグランドを基準にした出力を生成するマキシムのDirectDriveアーキテクチャを採用しているため、出力ブロッキングコンデンサが不要です¹。このDirectDriveアーキテクチャは、コストとボード面積を削減し、部品の高さを縮小し、出力ブロッキングコンデンサに関連したクリック/ポップを解消します。また、MAX9791は、 3.3Vまたは4.75V可変出力LDOを内蔵し、オーディオコーデックまたは他のアナログ回路にクリーンな電源を供給します。

MAX9737は、フィルタレス出力D級アンプで、12V電源から10%のTHD+Nで7Wを8Ωに供給します。システム内のサブウーファの必要電力が低い場合はMAX9737の出力は、必要な場合は、低減することが可能であることに注意してください。MAX9737は広い電源電圧範囲(8V~28V)を備え、ノートブックコンピュータのバッテリ(通常16V~21V)に直接接続することができます。これにより、サブウーファアンプを駆動するための12V電源を生成するためにいかなる電圧レギュレータもDC-DCコンバータも不要になります。MAX9737のD級変調方式は、出力フィルタを必要としないため、コストを減らし、2.1システムのサブウーファ用に高効率の7Wパワーを提供します。90%の効率で、MAX9737はヒートシンクを必要としません。さらに、そのスペクトラム拡散変調方式によって、デバイスは、各出力で低コストのフェライトビーズとコンデンサのみを使用して、1mのスピーカケーブルでFCCおよびCE EMI制限値に適合することが可能です² (ピンクノイズ入力と1mのスピーカケーブルを使用するMAX9737のお客様用評価キットのCE放射スキャンについては、以下図2をご参照ください)。

図2. 1mのスピーカケーブルを使用したMAX9737のフィルタレスEMI測定
図2. 1mのスピーカケーブルを使用したMAX9737のフィルタレスEMI測定

サテライトとサブウーファのハイパスおよびローパスフィルタリング

図1で示したような2.1ソリューションでは、サテライトスピーカ用にMAX9791の入力ではハイパスフィルタを、サブウーファ用にMAX9737の入力ではバンドパスフィルタを必要とします。図3ではオペアンプは、サテライトスピーカの駆動にMAX9791の前に使用される2次マルチフィードバックハイパスフィルタを生成するために使われます。

図3. サテライト用、2次マルチフィードバックハイパスフィルタ
図3. サテライト用、2次マルチフィードバックハイパスフィルタ

図3のハイパスフィルタの伝達関数は以下のようになります。
式1.
次に:
式2.
代入すると:
式3.
ここでf0はハイパスフィルタの3dBのロールオフ点で、AはV/Vの利得です。

図4はユニティゲイン用にf0 = 500Hzでハイパスフィルタを実現する回路を示しています。フィルタ段により生じる容量負荷を最小限するために抵抗Rが必要である点に注意してください。R = 470Ωであることが望まれます。この設計ではオペアンプは単一5V電源から駆動され、DC電圧にバイアスされる必要があります。最大の電圧振幅を得るには、この電圧を2.5Vにバイアスすることが推奨されます。この場合、2.5VであるMAX9737からのバイアス電圧(VREF)が使われました。MAX9737からのバイアス電圧はCOMピンに接続され、MAX4234オペアンプでバッファされました(図11を参照)。デュアル電源がMAX4234オペアンプで使用されると、VREFはグランドになります。

図4. f0 = 500HzおよびA = 1V/Vの2次マルチフィードバックハイパスフィルタ
図4. f0 = 500HzおよびA = 1V/Vの2次マルチフィードバックハイパスフィルタ

図5は様々なコンデンサ値C1、C2、およびC3のシミュレーション結果を示します。ユニティゲインにはC1 = C2 = C3が使われ、R = 470Ω、R1 = 30.1kΩ、およびR2 = 140kΩ。

図5. 様々なコンデンサ値のハイパスフィルタのシミュレーション結果
図5. 様々なコンデンサ値のハイパスフィルタのシミュレーション結果

サブウーファ用にバンドパスフィルタが使われると、バンドパスフィルタ応答のローパスおよびハイパスフィルタを生成するためには2つのオペアンプが必要になります。標準的なコンピュータ設計は、80Hz~100Hz以下の周波数を再生するには小さすぎるサブウーファを使うため、サブウーファにはバンドパスフィルタが使われます。この場合、バンドパスフィルタはサブウーファの応答を100Hz~500Hzに制限します。

図6は、ハイパスフィルタと外部オペアンプがローパスフィルタを生成するようなMAX9737の入力オペアンプを使ったバンドパスフィルタを示しています。

図6. MAX9737のバンドパスフィルタ
図6. MAX9737のバンドパスフィルタ

図6のローパスフィルタの伝達関数は以下になります。
式4.
次に:
式5.
代用すると:
式6.
図7は100Hz~500Hzの応答でバンドパスフィルタを実装する抵抗とコンデンサ値を示しています。ローパスフィルタは外部オペアンプで実装され、ユニティゲイン付きf0 = 500Hzとなります。ハイパスフィルタはMAX9737の内部オペアンプで実装されユニティゲイン付きf0 = 100Hzとなります。図8は図7の設計のシミュレーション結果を示しています。

図7. f0 = 100Hzおよび500HzおよびA = 1V/Vで2次マルチフィードバックバンドパスフィルタ
図7. f0 = 100Hzおよび500HzおよびA = 1V/Vで2次マルチフィードバックバンドパスフィルタ

図8. 図7で示されたバンドパスフィルタのシミュレーション結果
図8. 図7で示されたバンドパスフィルタのシミュレーション結果

以下図9は図7の回路のシミュレーション結果を示しますが、R2の値が変化すると、バンドパスフィルタのローパスフィルタ部分がどう調整されうるのかを示します。

図9. ローパスフィルタを調整する可変R2のシミュレーション結果
図9. ローパスフィルタを調整する可変R2のシミュレーション結果

以下図10は図7の回路のシミュレーション結果を示しますが、C3、C4、およびC5の値が変化すると、バンドパスフィルタのハイパスフィルタ部分がどう調整されうるのかを示します。

図10. ハイパスフィルタを調整する可変C3、C4およびC5のシミュレーション結果
図10. ハイパスフィルタを調整する可変C3、C4およびC5のシミュレーション結果

図11は、サテライト用のハイパスフィルタおよびアンプ、サブウーファ用のバンドパスフィルタおよびアンプを含む回路のオーディオ部分の完全回路接続を示しています。ハイパスフィルタはユニティゲイン付きでf0 = 500Hzとなるように構成されており、バンドパスフィルタはユニティゲイン付きでf0 = 100Hzおよび500Hzとなるように構成されています。ハイパスおよびバンドパスフィルタ用MAX4234オペアンプはバイアス電圧が必要であることに注意してください。なぜならこれらのオペアンプは単一5V電源で駆動されるためです。MAX4234のバイアスはMAX9737の内部バイアス電圧から取られ、ユニティゲインバッファとして構成されるオペアンプで駆動されます。

図11. オーディオ回路図
図11. オーディオ回路図

結論

MAX9791は、Windows Vistaで動作するポータブルコンピュータシステム用の全てが統合されたオーディオソリューションを提供します。MAX9737は、ポータブル2.1システムのサブウーファを快適に駆動するための高効率および高出力を提供します。MAX9737は広い電源電圧範囲(8V~28V)を備え、ノートブックコンピュータバッテリに直接接続することが可能で、DC-DCコンバータが不要です。この広い電源電圧範囲はMAX9737にユニークな強みです。



¹マキシムのDirectDriveアーキテクチャの詳細については、アプリケーションノート3979 「DirectDrive®技術の概要」をご参照ください。

²MAX9737のスペクトラム拡散変調方式の詳細については、アプリケーションノート3881 「D級アンプの電磁波妨害を最小限にするスペクトラム拡散変調モード」をご参照ください。