アプリケーションノート 3990

PINダイオードと電流ソースDACがRF減衰および温度補償を提供


要約: RF減衰は無線設計において共通の回路です。このアプリケーションノートは、電流ソースDACとPINダイオードによってRF減衰を制御するのに用いられる複数の方法を詳述します。

PINダイオードは、TVチューナのRF信号や固定機器の広帯域RF用の可変減衰器としてよく使用されます。これらのダイオードはボード上にディスクリートデバイスとして実装するか、またはハイブリッドGaAsモジュールに集積化することができます。高いRF周波数では、PINダイオードの順方向抵抗は、ジャンクション(図1)に流れるDC電流が増加すると小さくなります。

Figure 1. Resistance vs. forward current for a typical PIN diode.
図1. 標準PINダイオードの抵抗 対 順方向電流

PINダイオード減衰器は、直列またはシャント構成で動作可能です。直列減衰器(図2a)には通常、ダイオードに10mA~20mAが必要です。その減衰量は、以下の通りです。

20log(1 + RPIN / 2Z0)(in dB)

シャント減衰器(図2b)の場合は、必要なバイアス電流は2mA~3mA (typ)です。シャント減衰器の減衰量は、以下の通りです。

20log(1 + Z0 / 2RPIN)(in dB)

Figure 2. An RF signal can be attenuated by a series (a) or shunt (b) PIN diode.
図2. RF信号を直列(a)またはシャント(b) PINダイオードによって減衰可能

システムコントローラは、ダイオードに流れる電流を変化させて、減衰を調整します。

また、場合によってはシステムには温度補償も必要です(図3)。この簡略回路では、ディジタルポテンショメータIC (デジポット)が固定または可変バイアスレベルを設定し、サーミスタは温度データを提供します。これらの入力はオペアンプ回路に統合され、出力は抵抗を通じてPINダイオードを駆動する電流に変換されます。

Figure 3. A simplified bias circuit for the PIN diode.
図3. PINダイオードの簡略バイアス回路

この実装は簡単ではありません。サーミスタ応答はPINダイオードにマッチングさせる必要があり、またバイアス電流の変化によってPINダイオードのDC順方向電圧が変化する場合があり、その結果バイアス電流が非線形になります。サーミスタおよびデジポットを電圧出力DACに置き換え、回路をディジタル補償することができますが、その方法ではダイオードの順方向電圧は排除されません。これよりはるかに適切な代替方法は、電流ソースDACを採用する方法です(理想例については、「付録」を参照)。

図4の回路は、ハイブリッド直交化整合シャント減衰器とペアの整合PINダイオードを内蔵し、このダイオードは単一DAC出力で駆動されます。周囲温度は、ホストマイクロコントローラに接続されるアナログまたはディジタルセンサによって測定されます。このコントローラはルックアップテーブル(LUT)またはアルゴリズムを使って、温度補償を実施します。希望する減衰量がLUTまたはアルゴリズムを経由し、必要なPIN電流をもたらし、そしてPIN電流はDACで設定されます。PINダイオードジャンクションに流れる電流はDACのみで設定され、ダイオードの順方向電圧や関連するその他のDCインピーダンスから独立しています。

Figure 4. This RF attenuator is driven by a current-output DAC (MAX5548 or MAX5550), which compensates for temperature by adjusting its output current according to correction signals from the host processor.
図4. このRF減衰器は電流出力DAC (MAX5548またはMAX5550)によって駆動されます。このDACは、ホストプロセッサからの訂正信号に応じてその出力電流を調整することによって温度を補償します。

出力のフィルタ

(不要なDCパスを排除するために) RFブロッキングインダクタおよびコンデンサを内蔵する回路の場合は、出力は100nH以上の直列インダクタンスと10nFの接地キャパシタンスで安定状態を維持します。(電圧と比べた)電流出力の1つの利点として、電圧降下結果がDACの出力コンプライアンス電圧の範囲内にある限り、フィルタで発生する直列抵抗は精度に影響を及ぼしません。

付録—DAC例

MAX5548/MAX5550は、電流ソース出力および30mAで4Vのコンプライアンス範囲を備えるデュアル、8/10ビットDACです。両出力は最大30mAまでソース可能で、最大60mAの大電流アプリケーション用に並列化することができます。これらのデバイスは+2.7V~+5.25Vの単一電源で動作し、通常動作での標準消費電流はDAC当たり1.5mAで、シャットダウンモードでは1µA (max)以下です。シャットダウンモードでは、出力漏洩電流はわずか±1µA (max)です。

高精度と低ノイズ性能を確保するために、各ICは+1.25Vのバンドギャップリファレンスと制御アンプを内蔵しています。また、外部リファレンス(REFIN)を接続するオプションも備え、利得精度を向上させることもできます。これらの製品はI2CおよびSPIシリアルインタフェースに対応し、インタフェースはパッケージのピンで選択します。SPIモードでは、これらの製品をデイジーチェーン接続してプロセッサI/Oピンを節減することができ、I2Cインタフェースの場合は、ピンで選択可能な4つのアドレスを利用可能です。ソフトウェアと各出力の外付け抵抗で、プログラマブルな出力電流の最大値を設定します。

同様の記事が、2006年5月31日のPlanet Analog.comに掲載されています。