はじめに
機能動作を検討する場合、電流検出アンプはフローティング入力段を備えた計測/差動アンプと考えることができます。すなわち、たとえデバイスがV
CC = 3.3Vまたは5Vの単一電源から給電される場合でも、これらの電源レイルをはるかに上回るコモンモード電圧で入力差動信号を増幅することができるということです。電流検出アンプにおけるコモンモード電圧は、たとえば28V (
MAX4372および
MAX4173)や76V (
MAX4080および
MAX4081)まで可能です。
電流検出アンプが持つこの性能特性は、高電圧レイル上の検出抵抗にかかる小さな電圧を増幅して、低電圧ADCまたは低電圧アナログ制御ループに供給する必要があるハイサイド電流検出アプリケーションに極めて有効です。これらのアプリケーションでは、多くの場合ソースで、すなわち検出抵抗の両端にかけて電流検出信号のフィルタを行う必要があります。これには、差動フィルタ(
図1)を使用して「スパイクの多い」負荷電流および検出電圧を平滑化するか、またはコモンモードフィルタ(
図2)を使用して、コモンモード電圧スパイクと一時的過電圧に対するESD動作/耐性を強化する設計が考えられます。これらのフィルタは、適切な部品の値を選択することによって正しい動作を実装することができます。しかし、誤った値の部品を選択すると、予想外の入力オフセット電圧および利得誤差が発生する可能性があり、回路性能の劣化につながります。
図1. スパイクの多い負荷電流を平滑化する差動フィルタの回路図。
図2. ESDスパイクとコモンモード過電圧に対する耐性を改善するためのコモンモードフィルタの回路図。
どちらのフィルタを使うかの判断
ここで
図3に示すMAX4173電流検出アンプを考えます。このデバイスは、チップのR
S+およびR
S-端子に検出抵抗が直接接続されています。検出抵抗両端の差動電圧は、内蔵のオペアンプ機能によって、I
LOAD x R
SENSE = V
SENSE = I
RG1 x R
G1という形でR
G1の両端に現れます。次にこの電流(I
RG1)が、内部の電流ミラーによるレベルシフトと増幅を受けて、出力電流I
RGDが生成されます。MAX4173の内部回路は、R
GD = 12kおよびR
G1 = 6kを実装しています。
したがって、次式が成り立ちます。
V
OUT = R
GD x I
RGD = R
GD x 利得 x I
RG1 = R
GD x 利得 x V
SENSE/R
G1
R
GDとR
G1はオンチップ抵抗であるため、それらの実際の値は半導体プロセスの変動が原因で最大±30%も変化するのが普通です。しかし、最終的な利得の精度を決めるのはR
GDとR
G1の比率であるため、最終的な利得は十分な制御下にあり、製造過程で容易に調整することができます。
図3. MAX4173の内部機能ブロック図。
しかし、(図1および図2に示すように)検出抵抗のR
SENSE+端とR
SENSE-端の間、およびデバイスのR
S+端子とR
S-端子の間に直列抵抗を挿入して差動/コモンモードフィルタを実装した場合、チップはR
G1とR
G2が変更されたような挙動を示します。先ほどの等式から、調整済みのR
G1を変更すると利得誤差が生じるのは明らかです。さらに、R
G1の絶対値は最大±30%も変化する可能性があるため、この利得誤差も±30%変化する可能性があり、複数のデバイス間での制御や予想は不可能です。したがって、この利得誤差を管理するためには、入力直列抵抗R
SERIES+がR
G1と比較して小さな値であることを保証するのが唯一の方法となります。
さらに、抵抗R
G1とR
G2の間の不整合が、デバイスの入力バイアス電流によって入力オフセット電圧に「変換」されます。MAX4173およびMAX4372のデータシートに示されているように、バイアス電流I
RS-はI
RS+の2倍であり、したがってR
G1と直列なすべての抵抗(R
SERIES+)を、R
G2と直列な抵抗(R
SERIES-)の2倍にして、入力オフセット電圧を打ち消す必要があります。同様のバイアス電流特性が次の電流検出アンプにも見られます:MAX4073、MAX4172、MAX4373~MAX4375およびMAX4376~MAX4378。したがって、同様の技術を使用して入力抵抗のサイズを変更し、適正な差動/コモンモードフィルタ設計を実現することができます。
まとめと証明
まとめると、検出抵抗およびR
S+/R
S-両端子間に直列抵抗を用いた入力フィルタから理想的な性能を得ることができるのは、次の条件が満たされている場合です。
- RSENSE+とRS+の間の直列抵抗が、RG1に比べて小さな値に抑えられている。
- RSENSE+とRS+の間の直列抵抗が、RSENSE-とRS-の間の直列抵抗の2倍である。
最後に、R
SERIES+はR
SERIES-の2倍であるため、コモンモードフィルタのコンデンサも、目標とするACおよび過渡性能に応じて適切に拡大する必要があることに注意してください。
表1のベンチテスト結果はMAX4173Tを使用して得られたものであり、以上の議論の正しさを示しています。V
OSの最小値と最大値は、データシートの最小および最大バイアス電流を使って算出したものです。最小および最大利得誤差は、R
G1 = 6kの±30%を使用して算出しました。
表1. MAX4173についての直列抵抗のテスト結果

同様に、MAX4372Fを用いて得られたベンチ結果を下の
表2に示します(R
G1 = 100k)。
表2. MAX4372についての直列抵抗のテスト結果

最小および最大利得誤差と最小/最大V
OSの計算値の導出方法を下に示します。
元の利得
= 定数 x RGD/RG1
= 20 (MAX4173のTバージョンの場合)
新しい利得
= Constant x RGD/RG1new; RG1new = RG1 + RSERIES+
= 元の利得 × RG1/RG1new
= 20 x RG1/(RG1 + RSERIES+)
利得誤差
= (20 - 新しい利得)/20%
= RSERIES+/(RG1 + RSERIES+)
最小利得誤差
= RSERIES+/(1.3 x RG1 + RSERIES+)
最大利得誤差
= RSERIES+/(0.7 x RG1 + RSERIES+)
R
G1 = 6k (MAX4173の場合)
V
OS = I
BIAS2 x R
G2new - I
BIAS1 x R
G1new
= IBIAS1 x ((2 x RSERIES-) - RSERIES+); where IBIAS2 = 2 x IBIAS1
IBIAS1(min) = 0
IBIAS1(max) = 50µA (MAX4173の場合)
同様の記事が、2007年9月26日の「Planet Analog」 (ウェブサイト)に最初に掲載されています。
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