アプリケーションノート 3847

MAX2165によるDVB-Hポータブル地上波チューナ


要約: DVB-H (Digital Video Broadcast—Handheld)は、GSM、GPRS、またはUMTSなどのセルラ無線を内蔵した小型でバッテリ動作のハンドヘルド複合端末を対象としています。このアプリケーションノートは、OFDM復調器との組合せに向けて設計された高集積ダイレクトコンバージョンチューナICのMAX2165について概観します。MAX2165がDVB-Hシステムにどのように適用可能であるかを詳述します。

はじめに

MAX2165は、DVB-H (Digital Video Broadcast—Handheld)¹のOFDM復調器との組合せに向けて設計された高集積ダイレクトコンバージョンチューナICです。DVB-Hは、GSM、GPRS、またはUMTSなどのセルラ無線回路を内蔵した小型でバッテリ動作のハンドヘルド複合端末を対象とした規格です。これらの端末は、携帯電話の機能を備え、DVB-Tの物理層にあるDVB-Hを使用することによってIPベースのサービスを受信することができます。DVB-Tのアンテナとセルラのアンテナのどちらも、端末に実装されています。

このアプリケーションノートは、MAX2165の概要を、DVB-Hシステムにどのように適用されるのかを示しながら説明します。ブロック図、標準的なチューナの仕様、チャネル割当て、および変調タイプがすべて示されます。

MAX2165の概要

MAX2165は、470MHz~780MHzの入力周波数範囲を対象としたダイレクトコンバージョンのDVB-Hチューナです。この設計は、I/Qベースバンド信号のインタフェースと内蔵のローパスフィルタを備えているため、IF SAWフィルタが不要であるという特徴があります。利得制御とDCオフセット補正は完全にディジタル化され、最小限のパワーアップ遅延で、タイムスライス動作に対応します。全て集積化されたVCOを制御するフラクショナルN PLLを使用することで、VCOロック時間と近接位相ノイズが最小限になっています。近接ノイズフロアが低いため、複雑なOFDM復調器アルゴリズムを緩和します。幅広く採用されているベースバンドプロセッサのインタフェースによって、MAX2165はDVB-Hアプリケーションに魅力を持つチューナになっています。

DVB-H無線ブロック図

図1は、MAX2165と一般的なベースバンドプロセッサを用いた無線ブロック図を示しています。アンテナから入ってきたRFは、オプションのバンドパスフィルタを通過してLNAに入力されます。利得は16dBステップでディジタル的に調整、またはアナログ利得制御電圧によって設定することもできます。オプションのフロントエンドフィルタを使えば、チューナをカスタマイズし、必要なブロッキング性能を得ることができます。信号は、LNAを通過した後、調整可能なバンドパストラッキングフィルタによってフィルタリングされ干渉波が低減されます。次に、ダウンコンバータミキサが信号をIとQ経路に分離します。ミキサは、VCOが内蔵されたフラクショナルN PLLによって生成された直交局部発振器によって駆動されます。内蔵の基準発振器(水晶振動子外付け)がPLLのリファレンスクロックを提供します。またこのリファレンスクロックはチップ内でバッファリングされ、ベースバンドプロセッサに供給されます。I/Q信号は、調整可能なローパスフィルタと可変利得アンプを通過します。このアンプはベースバンド利得制御電圧によって制御されます。次に、差動のI/Q信号がベースバンドプロセッサとアプリケーションプロセッサによって信号処理され、表示または周辺機器に分配されます。ベースバンドプロセッサは、第二I²Cインタフェースを介して調整可能なすべての機能ブロックを制御します。専用プロセッサの出力は、ベースバンド/RFの利得制御電圧に加えて、チップ選択、スタンバイ、およびシャットダウン制御の各信号を供給します。RFの利得制御として、オーバーロードディテクタの出力も備えています。

図1.無線チューナICのMAX2165による無線ブロック図
図1.無線チューナICのMAX2165による無線ブロック図

MAX2165 DVB-Hチューナの仕様

DVB-HレシーバのRF性能は、一般に、DVB-Tレシーバと同じです。DVB-Hは、物理層としてDVB-Tの伝送システムを使用し、リンク層に特別な誤り訂正とタイムスライス機構を追加しています²。

表1. DVB-Hチューナの仕様*
Parameter Conditions Typical
Frequency Range (MHz)   470 to 783
RF Input Impedance (Ω)   75
Return Loss (dB) 75Ω System Impedance -7
Noise Figure (dB)   5
Input Power per Channel (dBm) VOUT (DVB-T modulated) 0.5VP-P -83
Maximum Input Power (dBm)   -30
Cellular Blocker (dBm) Single Blocker < 4MHz bandwidth in the 830MHz ... 950MHz band -5
* これらの仕様は、8MHzチャネル帯域幅について、EN 300 744 V1.4.1とIEC 62216-1を参照しています。

周波数およびチャネル帯域幅

レシーバは、チャネル帯域幅が8 MHz、7 MHz、または6MHzのUHFバンドIVおよびVを受信することができます。中心周波数は、以下で定義されます。
  • 8MHzのチャネルラスタを使用する国の場合:
    fc = 474MHz + (N - 21) x 8MHz + オフセット、ここで
    N = {21, ..., 69} (UHFチャネル番号)
  • 7MHzのチャネルラスタを使用する国の場合:
    fc = 529.5MHz + (N - 28) x 7MHz + オフセット、ここで
    N = {28, ..., 67} (UHFチャネル番号)
  • 6MHzのチャネルラスタを使用する国の場合:
    fc = 473MHz + (N - 14) x 6MHz + オフセット、ここで
    N = {14, ..., 83} (UHFチャネル番号)
オフセットを使用する国もあります。

望ましいオフセットは、±1/6MHzとなり、n = {1,2, ...}です(図2) 。

図 2. DVB-Hチャネルの定義
図 2. DVB-Hチャネルの定義

変調

DVB-Hシステムは、直交周波数分割多重(OFDM)を使用します。この場合、1つのOFDMフレーム内のすべてのキャリアは、QPSK、16QAM、64QAM、不均一16QAM、または不均一64QAMのいずれかによって変調されます。TPSキャリアは、DBPSKによって変調されます。

結論

ここでは、標準のDVB-HシステムにおけるMAX2165を説明しました。このデバイスは、高度に集積化された特性と柔軟性が組み合わさることで、このアプリケーションに最適な選択と言えます。



参考資料
¹IEC 62002-2: Mobile and portable DVB-T/H radio access-Part 1: Interface specification.
²ETSI EN 300 744: "Digital Video Broadcasting (DVB); Framing structure, channel coding and modulation for digital terrestrial television."