アプリケーションノート 3810

発展する電子産業を反映するオペアンプの傾向


要約: オペアンプはアナログ回路設計の基本構成要素であり、小型化と性能向上を兼ね備えることが常に目標となっています。このアプリケーションノートでは、オペアンプが目指す方向、および克服すべきトレードオフを明らかにします。

はじめに

現在の電子デバイスの成長市場では、高性能オペアンプには一定した需要があります。高帯域幅、低電力、および高精度は、新製品に必要な主要パラメータの一部です。ただし、これらの仕様が改善されているにもかかわらず、いまだに理想的なオペアンプは神話のままです。つまり、オペアンプの設計はトレードオフのゲームが続いているということです。幸い、ほとんどのアプリケーションには、他に比べて重要なパラメータが1つ備わっており、妥協点を見いだすことができます。したがって、目標は、理想的なオペアンプを開発することではなく、特定のアプリケーションにとって最良のオペアンプを開発することです。

さまざまなアプリケーションに合わせたオペアンプの最適化

バッテリ駆動の製品が増えるとともに、消費電力の少ないオペアンプへの需要が増大しています。これらのポータブルアプリケーションで使用されるオペアンプは、多くの場合、より低い(および一般に単一の)正の電源電圧で動作する必要があり、同時に消費電流が少なくなければなりません。消費電流を低減するという顧客の要望は、設計者にとって相当困難な課題になります。オペアンプによっては、消費電流を低減する必要があるにもかかわらず、高周波または低ノイズで動作する必要があるからです。

これらのポータブル機器が小型化されるにつれて、基板の占有スペースが重要な要因になります。このため、パッケージの小型化がますます必要になります。よく使われる、古い表面実装パッケージの1つにスモールアウトライン (SO)パッケージがありますが、このパッケージは、SOT23やSC70などの新しいパッケージの一部と比較しても、あるいはUCSP(図1)などのウルトラチップスケールパッケージと比較しても、それほど小型ではありません。これらの小型パッケージの寄生インダクタンスおよび容量が減少することによって、AC性能が改善されますが、これらのパッケージを使用するとシリコンダイへのストレスが増大するため、ほとんどの場合、オフセット誤差が大きくなります。幸い、この大きなオフセットは、ICを巧妙に設計することによって低減することができます。

図1. MAX4292は、ウルトラチップスケール(UCSP)パッケージの、高精度デュアルオペアンプです。
図1. MAX4292は、ウルトラチップスケール(UCSP)パッケージの、高精度デュアルオペアンプです。

プロセス技術の向上によって、高性能で低コストのオペアンプの開発が促進されました。古いオペアンプは、純粋にバイポーラプロセスのみを使用して製造していましたが、新しい設計では、CMOS、BiCMOS、または相補型バイポーラ(CB)などのいくつかのプロセスを任意に組み合わせて利用することができます。オペアンプの場合、コストの観点からCMOSが主要なプロセスとして浮上するようになりました。プロセス技術が向上するにつれて、かつてCMOSプロセスによってもたらされた性能に関する制限事項(すなわち、ノイズ)が徐々に少なくなっています。高性能デバイスは一般に、さまざまなプロセスの組み合わせが必要となります。

標準的なオペアンプは、さまざまなアプリケーションに適合するよういろいろな方法で修正されてきました。現在、設計者は、高精度、計装、電流検出、高速、および場合によってはオーディオとビデオなど、さまざまなタイプのオペアンプから選択する必要があります。デバイスの改善は、ますますアプリケーションに固有なものになっています。

高精度オペアンプは一般に、高帯域幅ではありませんが、オフセット電圧とオフセットドリフトの仕様は通常、優れた性能を示します。保証オフセット電圧は、1マイクロボルト程度の低い値にすることが可能です。自動ゼロ設定テクニックとチョッパ安定化テクニックは、オフセットドリフトの影響を最低限に抑えることによって、温度に対するこれらの仕様を維持することができるようにしています。一般にチョッパ安定化オペアンプには、オペアンプ固有のオフセット電圧を絶えず補正するゼロ設定(または「チョッパ」)アンプが信号経路に含まれています。したがって、温度に対しても、優れたオフセット電圧の仕様を達成することができます。

低オフセット電圧に加えて、低電源電圧の動作によって、レイルトゥレイルまたはBeyond-the-Rails™の入力段とレイルトゥレイルの出力段の重要性が増大します。レイルトゥレイル入力を使用すると、入力電圧は負電源から正電源の範囲が可能となり、Beyond-the-Rails入力を使用すると、入力電圧はデバイスのレイルを超えることが可能となります。さらに重要なことには、レイルトゥレイル出力を使用すると、出力の振幅が一方のレイルのミリボルト範囲内であることが保証されます。この後者の点は、低電圧で駆動されるオペアンプの縮小ダイナミックレンジのあらゆるビットを最大化しようとするときに、極めて重要です。入力コモンモードレンジおよび出力電圧レンジのあらゆるビットは、1V以下の電源電圧を処理するときに極めて重要になることがあります。

高速信号処理が急速に発展したことによって、シングルエンド入力と差動入力の両方を備えた高精度の高速オペアンプの必要性が増大しました。新しい高速データコンバータの多くの設計者は、消費電力と電源電圧の低減にも注力しています。どのようなタイプのICであっても、速度と電力は常にトレードオフになります。高速オペアンプは、最大で1GHzレベルの帯域幅を提供することができますが、このような性能は、低電源電圧でデバイスを駆動するときには実現が困難です。今日では、3Vの電源電圧で容易に何百メガヘルツを得ることができますが、IC製造業者はさらに最大限のスレッショルドを目指しています。

また、オーディオとビデオのアプリケーションのためのオペアンプは特化されつつあります。オーディオアンプは、従来の高精度アンプとは異なり、特に、可聴周波数範囲内で優れたダイナミック性能を発揮するように設計されています。オーディオアンプの新しい傾向として、マキシムのDirectDrive™アンプに見られるように、チャージポンプを内蔵することによって、単一電源で動作すると同時に、大きな出力コンデンサ(一般に大幅に電解が変動する)が必要でなくなります。DirectDrive技術を使用すると、アンプの周波数応答はDCにまで広がるため、低周波での高調波歪みの全体性能が向上します。DirectDrive手法によって、コストと基板スペースが低減されます。これは、競争の激しいポータブルオーディオ市場における重要な利点です(図2)。

図2. オンボードチャージポンプを搭載した単一電源のヘッドフォンアンプによって、大きな出力コンデンサが必要でなくなります。
図2. オンボードチャージポンプを搭載した単一電源のヘッドフォンアンプによって、大きな出力コンデンサが必要でなくなります。

ビデオアンプはますます特化されており、台頭しつつある広範囲のビデオアプリケーションを処理するための統合がますます進んでいます。±5Vのデュアル電源を使用した製品はまだ存在しますが、ほとんどの新しいビデオアンプは単一電源で動作するように設計される一方、引き続き1つまたは2つの150Ωの負荷を駆動しています。ポータブルディジタルビデオ製品は成長市場であるため、ビデオアンプは低電源電圧(3Vなど)への移行を開始していますが、これがまたIC設計者にとってもう1つの課題になっています。単一電源での動作に加え、多くのビデオアンプには、アンチエイリアシングやDACスムージングのアプリケーションのための再構築フィルタがあります。また、ブラックレベルクランプまたはバックポーチクランプを内蔵しているビデオアンプもあり、外部バイアスやクランピング回路をなくしています。オーディオアンプと同様、ビデオアンプもDirectDrive技術を使用し始めており、アンプはビデオ信号の負の同期パルスに対応することができるようになり、このため外部バイアスが必要でなくなっています。

結論

オペアンプは、アナログ回路設計で使用される最も基本的な構成要素の1つです。このため、オペアンプは急速に発展する電子産業の歩調に合わせる必要があります。低電力で小型のパッケージには普遍的な需要があるため、裸眼ではほとんど見えないパッケージ、すなわちUCSPパッケージで提供されるマイクロパワーオペアンプがすでに開発されています。にもかかわらず、オペアンプのさらなる開発が引き続き行われています。設計とプロセスの技術が着実に向上するにつれて、製造業者は、増大する業界の要件に適合したオペアンプを継続して開発することになります。