アプリケーションノート 3775

低コストセンサとA/Dインタフェースに関する設計上の検討事項


要約: ほとんどのセンサは本質的にはアナログであり、今日の電子システムで使用可能にするには、信号をディジタル化する必要があります。このアプリケーションノートでは、レシオメトリックセンサの基礎、およびレシオメトリックセンサとアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)との相互作用について説明します。特に、センサとADCのレシオメトリック特性を活用して精度を向上すると同時に、部品数を削減、コストを低減、および基板スペースを低減する方法について説明します。

注:このアプリケーションノートでは、レシオメトリックとは、デバイスの出力が、測定対象の特性やその他の電圧/電流の比率に依存することを意味しています。

センサおよび抵抗検出素子

多くのセンサ出力は、電源電圧に比例、すなわちレシオメトリックになります。これは通常、出力の抵抗検出素子がレシオメトリックデバイスであるためです。最も一般的なレシオメトリック素子は、測定対象の強度が変化するにつれて抵抗の値が変化する特性の物です。測温抵抗体(RTD)や歪みゲージは抵抗検出素子がその例です。

抵抗素子がレシオメトリックであるのは、抵抗が直接的にに測定されないためです。抵抗は、「抵抗を流れる電流」に対する「抵抗両端の電圧」の比によって求められます。

R = V/I 式1 (オームの法則)

抵抗素子を使用するセンサは通常、抵抗に電流を流し、結果として生じた電圧を測定します。この電圧は、センサの出力に到達する前に増幅してレベルシフトすることができますが、依然として抵抗を流れる電流を頼りとしています。この電流を電源電圧から得る場合、センサの出力は電源電圧に対してレシオメトリックになります。式2は、一般的なレシオメトリックセンサ(図1)の出力を表します。ここで、Vsは出力信号、Veは励起電圧、Sはセンサの感度、Pは測定対象の特性の強度、およびCはセンサのオフセットです。

Vs = Ve (P x S + C) 式2

図1. 一般的なレシオメトリックセンサ。
図1. 一般的なレシオメトリックセンサ。

Honeywell™[1]のMLxxx-Cシリーズの圧力トランスデューサは、多くのレシオメトリック自動車センサの代表製品です。5Vの公称電源電圧で動作するとき、オフセット電圧は0.5V、フルスケール出力は4.5Vです。励起電圧が変化した場合、それに比例して、オフセット電圧とフルスケール出力も変化します。

出力信号を使用するのに励起電圧を知る必要があるということは、多くのアプリケーションにおいて非常に不便です。この問題を解消するため、製造業者は回路に電圧リファレンスを追加しています。このデバイスによって、温度と電源電圧に左右されない、非常に正確な電圧が得られます。検出抵抗を流れる電流を電圧リファレンスから得る場合、式2のVeを定数に置き換えます。これによって式3が得られます。式3では、新しい定数がS2とC2に組み込まれています。

Vs = P x S2 + C2 式3

出力信号は測定対象の特性の関数にすぎないため、式3はレシオメトリックではありません。HoneywellのMLxxx-R5シリーズの圧力トランスデューサは、非レシオメトリックセンサの例です。7V~35Vの電源電圧で動作するとき、オフセットは1V、フルスケール出力は6Vです。

抵抗デバイスとしてのアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)

センサ信号のディジタル化に使用するADCもレシオメトリックデバイスです。内部アーキテクチャに関係なく、すべてのADCは、未知の入力電圧を既知のリファレンス電圧と比較することによって動作します。ディジタル化されたコンバータの出力は、リファレンス電圧に対する入力電圧の比にADCのフルスケール読取り値を乗じたものです。内部増幅と設計の変動に対処するため、倍率Kが必要となる場合もあります。Kの値が何であれ、ADCの構成が変更されない限り、その値は固定されたままです。式4は、入力信号(Vs)、リファレンス電圧(Vref)、フルスケール読取り値(FS)、および倍率(K)を用いて一般的なADC (図2)のディジタル読取り値(D)を表しています。

D = (Vs/Vref)FS x K 式4

図2. 一般的なアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)
図2. 一般的なアナログ-ディジタルコンバータ(ADC)

リファレンス電圧源は、ADCの設計によって決まります。リファレンスが電源電圧のADCもあれば、内部の電圧リファレンスを使用するADCもあり、またユーザがADCのVref入力にリファレンス電圧を接続しなければならないADCもあります。内部または外部電圧リファレンスを使用するときにリファレンス電圧を一定にした場合、式4は式5に簡素化することができます。ここで、K2はFS x K/Vrefに等しい新しい定数です。

D = Vs x K2 式5

センサの測定

非レシオメトリックセンサと固定電圧リファレンスのADCで構成される小規模なシステムの出力は、式5のVs (ADCの入力)に式3 (センサの出力)を代入することによって求めることができます。この結果、式6が得られます。

D = P x S2K2 + C2K2 式6

式6によって、まさに必要なものが得られます。ディジタル値(D)はPの変化に比例し、Pの変化にのみ影響を受けます。Dは温度または電源電圧の変化による影響を受けません。

電圧リファレンスの排除

電圧リファレンスを使用してセンサおよびADCを安定化することは、有効かつ必要な手法です。ただし、必ずしも最良の手法とは限りません。

このアプリケーションノートでは、ADCのリファレンス電圧入力を独創的に使用することによって、多くのセンサ回路で使用されている電圧リファレンスと電流源を排除する方法について示します。この設計によって、部品のコスト、基板スペース、およびオーバヘッド電圧が節減されます。電圧リファレンスを排除すると、不完全なリファレンスに伴う誤差がなくなるため、若干の精度の向上も実現することができます。自動車産業は長年にわたって、この手法を利用してきました。電源電圧に対してレシオメトリックなセンサとADCの両方を指定することによって、高精度な電圧リファレンスの必要性がなくなります。

電流駆動センサおよびRTDなどの単一素子の抵抗センサを用いて類似の手法を使用することは、あまり一般的ではありません。これらの回路はすべて、ADCの感度が温度または電源電圧によって変動します。とはいえ、ADCとセンサ入力の組み合わせは極めて安定しています。

電源電圧に対してレシオメトリックなセンサ

式4の入力信号(Vs)に式2を代入することによって、レシオメトリックセンサを測定するADCを求めることができます。これによって、式7が得られます。式7では、DはP、Ve、およびVrefの関数として表されます。

D = P(S x FS x K x Ve/Vref) + C(FS x K x Ve/Vref) 式7

一見したところ、出力(D)はPだけでなく、3つの変数の関数であるため、式7の手法は望ましくないように思われます。ただし、よく見ると、出力(D)は個々の値ではなく、最も重要なVe/Vrefの比であることがわかります。両方の電圧を同じ電圧源から得ることによって、あまり費用をかけずにVe/Vrefの比を一定にすることができます。これを実行すれば、DはPの変化に比例し、しかもPの変化にのみ比例します。Ve/Vrefを定数に設定すると、式7は簡素化されて、式6に匹敵する形になります。したがって、このことから、電圧リファレンスを使用しなくても同等の性能が達成可能であることがわかります。

実用的な観点から、VeとVrefは、ノイズが問題にならない程度に十分に大きくなければなりません。また、VeとVrefは、ADCとセンサの規定範囲内になければなりません。VeとVrefの両方の電圧源として正の電源電圧を使用すると、これらの条件のすべてに適合し、また図3[2]に示すように、多数のセンサに同時に電力を供給することができます。

図3のMAX1238は、フロントエンドに12入力のマルチプレクサを備え、また電圧リファレンスを内蔵しています。この場合、ADCにリファレンスを追加するためのコストは余分にかかりませんが、10個のセンサのそれぞれにリファレンスを追加するために、かなりのコストが必要となります。また、MAX1238を使用すると、AN11入力をリファレンス電圧として使用することもできます。AN11をリファレンス入力として使用して、5V電源に接続すると、ADCのフルスケール入力が5Vに設定され、レシオメトリックセンサとともに使用することができます。図3では、MAX1238の内部電圧リファレンスは消費されません。ソフトウェア制御によって、内部電圧リファレンスを選択し、電源電圧の測定などの診断目的で使用することができます。これは、入力AN10に分圧器を接続することによって行うことができます。

図3. MAX1238のADCを使用すると、AN11の入力をリファレンス電圧として利用することができるため、ADCをレシオメトリックセンサとともに使用することができます。
図3. MAX1238のADCを使用すると、AN11の入力をリファレンス電圧として利用することができるため、ADCをレシオメトリックセンサとともに使用することができます。

図3のトポロジは、車載アプリケーションやその他のアプリケーション(電力が単一電圧源から与えられ、電力線に沿った電圧降下が小さいアプリケーション)で有効に機能します。このトポロジは、非常に長いリード線を用いてセンサを動作させる必要のあるアプリケーションや、ADCとセンサが異なる電源から電力を供給されるアプリケーションには適していません。

電流駆動ブリッジ

低ノイズ環境、または圧力センサがADCの極めて近くにあるシステムでは、センサに信号増幅を使用する必要がない場合があります。これらのアプリケーションでは、低コストのブリッジ出力センサの方が適切と考えられます。センサのコストを削減すると同時に全温度にわたって良好な性能を提供するため、NovaセンサのNPI-19シリーズ[3][$]などの圧力センサの多くは、電圧源ではなく電流源から電力を供給されます(詳細については、付録1を参照)。一般的な電流駆動センサの出力は、式8で与えられます。ここで、Ieは励起電流です。

Vs= Ie (S x P+C) 式8

図4には、一般的に、ブリッジ出力センサとともに使用される電流源を示しています。電流源は、低TCR (抵抗温度係数)の抵抗、オペアンプ、および電圧リファレンスを使用することによって作成されます。ADCと圧力センサが一体型ユニットとして製造されている場合、電流源の電圧リファレンスはADCのリファレンス電圧にもなります。図4の回路では、電圧リファレンスによって、温度と電源電圧の変化に対してセンサとADCを安定化しています。

図4. この設計では、電流駆動センサの電流源は抵抗、オペアンプ、および電圧リファレンスで構成されます。
図4. この設計では、電流駆動センサの電流源は抵抗、オペアンプ、および電圧リファレンスで構成されます。

図4の代わりとなる手法を図5の回路に示します。この手法では、電流源と電圧リファレンスは不要です。留意すべき重要なことは、センサとADCの組み合わせは全温度にわたって安定していますが、ADCとセンサはどちらにも大きな温度ドリフトがあるということです。単独で測定した場合、温度の上昇につれて、センサの感度は低下しますが、ADCの感度は増大します。ADCの出力は全温度にわたって安定しているわけではないため、ADCの入力が複数個の回路にこの手法を適用するときには注意が必要です。

図5. センサとADCの組み合わせ。この代替設計では、個別の電流源と電圧リファレンスは不要です。
図5. センサとADCの組み合わせ。この代替設計では、個別の電流源と電圧リファレンスは不要です。

図5から式9が導かれます。

Vref = Ie x R1 式9

前記の式4に対し、Vrefに式9を、Vsに式8を代入すると、式10が得られます。

D = [Ie (S x P+C)/(Ie x R1)](FS x K) 式10

励起電流(Ie)は分子と分母の両方に共通して存在するため消去されます。これによって式11が得られ、出力は励起電流と無関係であることがわかります。式11の定数を結合した場合、結果はやはり式6 (電圧リファレンスを使用するシステム)に相当したものになります。

D = P(S x FS x K/R1)+C(FS x K/R1) 式11

R1を定数として機能させるためには、R1は低温度係数でなければなりません。温度に対する十分な安定性をR1に求めることは、図4と比べたときでも図5の欠点にはなりません。図4の抵抗もまた十分な温度の安定性が必要だからです。

R2は式11には見られず、この回路では不要です。ただし、R2は、ADCの読取り値に影響を及ぼさないことを示すために、この分析には含まれています。R2を、ADCの読取り値に影響を及ぼさない、別の電流駆動圧力センサ、RTD、ソリッドステートスイッチの抵抗に置き換えることができます。

理論的には、複数の電流駆動センサを直列に駆動して、複数入力のADCを使用することができます。ただし、センサを直列に配置すると、励起電流(Ie)、センサ信号(Vs)、およびリファレンス電圧(Vref)が低下します。センサを直列に配置するときには、ADCのVrefの要求仕様とシステムノイズの影響に特に注意を払う必要があります。

RTD

RTDは、第2のタイプのセンサとして、頻繁に電流源に係わってきます。RTDは一般に白金をベースにしており、約3,800 ppm/°Cの正の温度係数を持ちます。RTDを測定する従来の方法は、RTDを抵抗ブリッジの1つの脚として使用することです。ただし、実際には、ブリッジを使うことはまれです。低コストの高分解能ADCを使えば、単にRTDに電流を流して、RTDの両端の電圧を測定することが可能になるのでコストを節減することができます。この手法によって、不平衡ブリッジの非直線性がなくなり、またブリッジを完全なものにするための3つの精密抵抗も不要となります。

図6の回路も、ブリッジを使用せずに、また安定した電流源を必要とせずにRTD (Rt)を測定します。この回路には、1つの安定したリファレンス抵抗(R1)と1つのローグレードの電流制限抵抗(R2)が必要です。

図6. この回路では、Rtを測定するためにブリッジや安定した電流源を必要としません。
図6. この回路では、Rtを測定するためにブリッジや安定した電流源を必要としません。

図6の回路から次式が導かれます。

Vs = (V+) x Rt/(R1+R2+Rt) 式12

Vref = (V+) x R1/(R1+R2+Rt) 式13

式4に対し、Vsに式12を、Vrefに式13を代入すると、図6のADCの出力が得られます。この代入の結果を簡素化すると、式14が得られます。式14は、R1が安定している場合、Dの変化がRtの変化に正比例し、またこの変化にのみ依存することを示します。これは望ましい結果です。

D = FS x K x (Rt/R1) 式14

式14からわかるように、R2は読取り値に影響を及ぼしません。R2はRtによって消費される電力を低減します。R2にこの効果がなければ、Rtの自己発熱によって温度の読取り値に大幅な誤差が生じます。R2は、ADCに対するコモンモード入力電圧も降下させます。これは、コモンモード入力電圧範囲が電源電圧より低い一部のADCには必要になります。

MAX1403に代表されるADCには、RTDを駆動するための電流源があります。ただし、これらは高精度の電流源ではないため、何らかのキャリブレーションが必要です。キャリブレーションは一般に、ADCの追加入力を使用し、同じ電流源で駆動されるリファレンス抵抗を測定することによって行われます。次に、ソフトウェアを使用し、未知の抵抗の測定値を既知の抵抗の測定値に合わせてスケーリングします。この手法は極めて有効に機能しますが、R1をリファレンス抵抗として使用する方が簡単で、追加のADC入力が不要です。オンボードの電流源を引き続き使用してRTDとリファレンス抵抗を励起することができます。図6のR2を電流源に置き換えても、式14に影響はありません。

リモートRTDを正確に測定するため、一部のADCには、2つの同等の電流源が用意されています。これらのアプリケーションで使用される長いリード線の抵抗がRTDの抵抗に追加されるため誤差が生じます。この誤差は除去する必要があります。最も低コストのソリューションは、三線式RTDを使用することです。図7に示すように、電流源1を使用すると、RTD両端に電圧降下が生じます。また、この電流によって、RTDに接続される上側リード線に望ましくない電圧降下も生じます。この望ましくない電圧を補償するため、電流源2を使用して、中央のリード線に電圧降下を発生させます。どちらの電流も、RTDの下側リード線によってグランドに流れます。RTDの3本のリードはすべて同じ長さで、同じ材質でできているため、リードの抵抗は厳密に一致します。同等の電流を伝える同等の抵抗は、同等の電圧降下を示します。結果として、上の2つのリードに沿った電圧降下は互いに相殺され、ADCの差動入力電圧は、RTD両端の電圧と同じになります。

図7. MAX1403のADCには、整合された2つの電流源があります。この回路では、電流源1を使用ってRTD両端に電圧降下を生じさせ、電流源2を使用することで中央のリード線にも電圧降下を生じさせます。
図7. MAX1403のADCには、整合された2つの電流源があります。この回路では、電流源1を使用ってRTD両端に電圧降下を生じさせ、電流源2を使用することで中央のリード線にも電圧降下を生じさせます。

温度と圧力

図8は、図5と図6の概念を組み合わせたもので、リファレンスとして単一の抵抗を備えた簡単な回路を使用して、温度と圧力の両方を測定することができるようにしています。Vs1とVs2の大きさが非常に異なることがあります。この差は、MAX1415のようなADCに内蔵されたプログラマブル利得アンプ(PGA)の利得を変更することによって簡単に吸収することができます。これらのコンバータを使用すると、各チャネルにさまざまな利得をPGAに設定することができます。利得を変更すると式4のKの値が変化するため、広範囲の入力電圧を単一のリファレンス電圧とともに使用することができます。

図8. リファレンスとして単一の抵抗を備えた簡単な回路によって、温度と圧力を測定します。
図8. リファレンスとして単一の抵抗を備えた簡単な回路によって、温度と圧力を測定します。

ホイートストンブリッジ

ホイートストンブリッジは、電子工学の初期にSir Charles Wheatstone (1802~1875)によって発明されました。ホイートストンブリッジは、3つの既知の抵抗の値を1つの未知の抵抗と比較することによって抵抗を測定します。ブリッジの平衡が適切に保たれていると、抵抗の測定値は励起電圧、計器の精度、または計器が回路に加える負荷とは無関係になります。これらは、電圧の規格や高品質の計器を簡単に入手することができなかった時代には重要な要素でした。ただし、ブリッジ回路は現在もよく使われています。すべてのブリッジ抵抗が同じ温度係数であれば、大きなオフセットをなくすことが可能で、また温度の影響を除去することができるからです。

図9は、同じ電圧源から電力を供給される2つの電圧分圧器で構成されるホイートストンブリッジです。ホイートストンブリッジはダイヤモンド形状のブリッジを描くのが慣例になっています。その形状によって、同じ電圧を各分圧器に供給することの重要性を強調することができるからです。ブリッジの出力(Vo)は、2つの分圧器の出力電圧の差です(式15)。Voが0のとき、ブリッジの平衡が保たれていると言われます。この状況では、励起電圧(Ve)に値が0の項が乗じられるため、Veの正確な値は重要ではありません。式16によって、平衡したブリッジの未知の抵抗(Ru)の値が得られます。実際には、Ra = Rbとするのが一般的であるため、式16はRu = Rcに簡素化されます。

図9. 同じ電圧源から電力を供給される2つの電圧分圧器から構成されるホイートストンブリッジの図
図9. 同じ電圧源から電力を供給される2つの電圧分圧器から構成されるホイートストンブリッジの図

Vo = Vb(Rc/(Rc+Ru) - Rb/(Ra+Rb)) 式15

Vo = 0の場合、Ru = Rc x Ra/Rb 式16

現在、平衡ブリッジ回路が抵抗の測定に使用されることはまれですが、センサで不平衡ブリッジを使用することは極めて一般的です。工場でのキャリブレーション時には、通常、特定の点でブリッジの平衡が保たれます。この点からの偏差は、ブリッジの不平衡を測定することによって求められます。この方法でブリッジを使用する利点は、以下の例を見れば容易にわかります。

シリコン歪みゲージをダイヤフラムに接合して圧力センサを形成し、0.1%の圧力分解能を所望するものと想定します。抵抗の値は、0psi、25°Cで5000Ωです。100psi (フルスケール圧力)、25°Cでは、抵抗の値は2%上昇し、5100Ωになります。歪みに敏感なことに加えて、抵抗は温度に敏感で、抵抗温度係数(TCR)は2000ppm/°Cです。

抵抗は全圧力範囲にわたって100Ω変化するため、0.1psi (0.1%)の圧力分解能を実現するには、0.1Ωの抵抗の分解能が必要です。5000Ωに対して0.1Ωを測定するということは、50,000分の1、すなわち約15.6ビットの分解能になります。分解能の要件よりも大きな問題は、温度変化による影響です。抵抗のTCRが高いために、温度が1°C変化すると、10psiの圧力変化と同じ抵抗変化が発生します。これは、1°C当りフルスケールの10%に変換されます。

ここで、励起が2Vの、ブリッジ回路で使用される同じ抵抗を考えてみます。他の3つの抵抗はそれぞれ5000Ωで、検出抵抗と同じTCRを持ちます。抵抗は等温的に取り付けられます。この手法には、2つの大きな利点があります。

このアプリケーションにおけるブリッジの最大の利点は、温度に起因する変化を除去することです。式15を検討すると、TCRは重要ではなくなっていることがわかります。ブリッジの抵抗値は2倍になる可能性がありますが、出力は同じです。すべての抵抗が同じ割合で変化する限り、出力は変化しません!

ブリッジの2つ目の利点は、分解能の要件が緩和されるということです。ブリッジの出力は0psiで0mV、100psiで10mVです。0.1psiの分解能を得るには、10mVに対して10µVの分解能が必要です。抵抗をじかに測定する場合に15.6ビットが必要であったのに比べ、この場合にはわずか10ビットの分解能しか必要としません。

実用的な観点から、10ビットのADCによって10µVをじかに測定することはできません。信号を増幅する必要があります。この増幅にはコストがかかるため、外付けのアンプを必要としない高分解能のADCを使用する方がより魅力的になります。より低い分解能を使用することの大きな利点は、リファレンスの要求内容に関係します。全時間および全温度に対して16ビットで安定した、電圧リファレンス、電流源、またはリファレンス抵抗を設計することは通常、非実用的です。

この例にある値は、ブリッジの重要性を誇張するために選択したものではありません。むしろ、これらの値は、多くのピエゾ抵抗式圧力センサの代表的な値です(付録2を参照)。

ホイートストンブリッジの線形化

不平衡ホイートストンブリッジを使用する1つの欠点は非直線性です。式15の分母のRu項は、ブリッジの出力がRuの線形関数でないことを意味します。直線性の誤差は小さく抵抗値としては非常に小さな変化ですが、ブリッジの不平衡が増すにつれて大きくなります。幸運なことに、ADCのリファレンス電圧をブリッジから取得すれば、この誤差を除去することができます。

図10は、ディジタル表示を備えた簡単な温度センサを示します。温度検出素子(Rt)は白金RTDです。白金を選択したのは、温度に関して線形の抵抗変化を示すからです。ブリッジ回路は0°で望ましくない信号を除去するため、これによって、ADCの読取り値は温度に釣り合うようになります。式17から、図10のブリッジ信号(Vs)が得られます。式18は、ADCのリファレンス電圧です。どちらの信号もRtの非線形関数ですが、組み合わせることで線形の結果が得られます。

図10. ディジタル表示を備えたこの簡単な温度センサでは、ブリッジ回路は0°で望ましくない信号を除去するため、これによって、ADCの読取り値は温度に釣り合うようになります。
図10. ディジタル表示を備えたこの簡単な温度センサでは、ブリッジ回路は0°で望ましくない信号を除去するため、これによって、ADCの読取り値は温度に釣り合うようになります。

Vs = (Vb)(R3/(R2+R3) - (R1/(R1+Rt)) 式17

Vfer = (Vb)(R1/(R1+Rt) 式18

ADCの出力を示す式19は、式4のVsとVrefにそれぞれ式17と式18を代入することによって得られます。式19は、このリファレンス電圧を使用することによって、ADCの出力がRtの線形関数から所望のオフセット項を引いたものになることを示します。

D = Rt(R3/(R1(R2+R3)) - R2/(R2+R3) 式19

図10では、R3bとR1bがそれぞれオフセットと感度を調整しています。これを実行すると、ディスプレイに温度が°Cまたは°Fで直接表示されます。唯一の大きな誤差は、RTDそのものの非直線性に起因するものです。この誤差は、0°C~100°Cにおいて、0.数°Cになります。

また、図10の回路は、MAX1492のADCのシリアルインタフェースを使用し、オフセット誤差と感度誤差の読取り表示値を補正することによって、ディジタル方式でキャリブレーションを行うことができます。このキャリブレーション方法は、R1aとR3aの必要性をなくすだけでなく、RTDの直線性誤差を補正することも可能となります。より分解能の高い測定が必要な場合、MAX1492をMAX1494に置き換えることができます。MAX1494を使用すると、分解能が1桁、向上します。

式19によれば、R4の値は読取り値に影響を及ぼしません。R4は、RTDの自己発熱を低下させるために回路に追加されています。これによって、ブリッジからの信号も低下し、またリファレンス電圧も減少します。MAX1492には内部PGAはありませんが、小さなリファレンス電圧に対応することができます。小さなリファレンス電圧を使用すると、増幅アンプを追加する必要性がなくなります。

結論

センサの出力とADCのリファレンス入力間の適切な関係を保つ簡単な回路によって、多くのセンサアプリケーションで必要な電圧リファレンスや電流源をなくすことが可能です。コストの削減とスペースの節約に加え、これらの回路は、不完全なリファレンスによって生じる小さな誤差を除去することによって、性能を向上させることができます。

類似の記事が2005年7月号の『Sensors』誌に掲載されています。

付録1. 電流駆動センサの組成の特性

現在、最も一般的な圧力センサは、コンピュータチップに使用されるシリコンウェハによく似た工程作られています。標準的な半導体プロセスを使用して、ストレスに敏感な4つの抵抗をシリコンに埋め込み、ブリッジ構成で抵抗が接続されるように金属トレースを加えます。次に、ウェハ背面のシリコンを選択的にエッチングすることによって、薄膜ダイヤフラムを生成します。終了したとき、ウェハの背面は、個々の圧力センサに対応して各くぼみを備えたワッフルのように見えます。大量生産すれば、これらのセンサは低コストになります。シリコンの特性によって、センサは頑強なものとなり、また、比較的大きな出力信号が得られます。

シリコンには、これらのセンサの感度を温度につれて低下させるという望ましくない特性もあります(一般に2000ppm/°Cを超える割合)。幸運なことに、感度が低下するにつれて抵抗が同じ割合で増加するブリッジ抵抗を作成することができます。これらのセンサを電流源によって電力を供給した場合、感度の低下と同じ割合でブリッジの電圧が増大します。これによって、限られた温度範囲にわたって、温度に依存しない出力信号を得ることができます。

ブリッジの回路で、温度に起因する抵抗の変化を除去するには、4つの抵抗のすべてが同じ抵抗温度係数(TCR)を持ち、同じ温度であることが重要です。シリコンセンサは、これらの要件に簡単に適合します。センサが小型であるため、一様な温度が保証されます。また、4つの抵抗をすべて同時に製造することによって、ほとんど同一のTCRが得られます。

4つの抵抗のすべてを圧力に反応させることも一般的です。圧力が増加するにつれて、2つの抵抗の値が増加し、2つの抵抗の値は減少します。これによって、ブリッジの出力が4倍に増加するだけでなく、単一のアクティブ素子を備えた不均衡ブリッジで見られる非直線性の誤差がなくなります。

付録2. 電圧レギュレータ対電圧リファレンス

ほとんどの回路には、ICを駆動するために一定の電圧を供給するレギュレータが少なくとも1つあります。これらのレギュレータの精度、電源電圧変動除去、および温度の安定性は、ICの駆動には十分ですが、高精度のアナログ測定を行うのに必要な安定性には不十分です。ただし、電圧リファレンスは広範囲の温度に対して極めて高精度であることが可能ですが、電圧レギュレータの負荷処理機能がありません。たとえば、MAX8510は低ノイズ電圧レギュレータの優れた仕様を持ち、低精度アプリケーションのリファレンスとして使用することさえ可能です。にもかかわらず、MAX8510の電圧安定性は、MAX6126のような低ノイズ電圧リファレンスよりも1桁低くなります。一方、MAX6126は優れた初期精度と安定性を示しますが、MAX8510のわずか10分の1の電流しか供給することができません。ほとんどの非レシオメトリックな測定回路は、電圧レギュレータと電圧リファレンスの両方を必要とします。

Device Function Max Load Accuracy @ 25°C Temperature Coefficient Line Regulation Load Regulation
MAX8510 Regulator 120mA 1.0% 12ppm/°C, typ 10ppm/V, typ 30ppm/mA, typ
MAX6126A Reference 10mA 0.02% 0.5ppm/°C, typ 1.2ppm/V, typ 0.4ppm/mA, typ

参考資料
1For more information on the Honeywell sensors, visit their website
2For more information on the Melexis sensors, visit their website
3For more information on the Nova Sensor products, visit their website
4For more information on this Honeywell temperature sensor, visit their website