アプリケーションノート 3761

DS1922/DS1923バッテリガスゲージ


要約: 有効エネルギーの残量追跡は、電池式の機器にとっては重要です。エネルギー消費は、製品の温度や使用履歴によって決まります。温度ロガーに関しては、このデータは主として通常使用の副産物です。このアプリケーションノートは、ミッション中に消費したエネルギーを見積る方法と、OneWireViewerがロガーのメモリにあるバッテリの「ガスゲージ」を保持する方法を紹介しています。

動機 - 知る必要性

ポータブル機器の信頼性は、エネルギー源の状態によって決まります。最良の機器は、低バッテリでは適切に機能することができません。携帯電話の充電式電池については、現在では精巧なバッテリ監視があたりまえです。普通のバッテリの残容量を決める方法があるのでしょうか? 温度ロガーの場合には、次のミッション用に十分な電力があるかどうかをどのように知ることができるのでしょうか?

前提条件

バッテリは、自己放電(老朽化)によって、また、機器の電源が入った時の通常の使用によって、時間と共にエネルギーを失います。バッテリの自己放電率とシリコンチップのエネルギー消費の両方は、温度に大きく依存します。温度が高いほど、より大きいエネルギー消費になります。新しいバッテリの電荷量、温度履歴、および普通に使用している間の放電率を知っていると、バッテリの残容量を見積るのに必要な全てのデータを持っていることになります。mAhで測定される初期のバッテリ容量は、バッテリのデータシートで知ることができます。難題は、電池駆動式機器の温度履歴データと電流消費特性を取得することになります。

温度ロガーが非常に小型である場合、バッテリの温度は、ミッションの間に示された温度とほぼ同じになります。DS1922/DS1923温度ロガーiButton内部のチップの電力消費と、温度変換のために必要な消費量の両方は、メーカの製品特性によって決定されます。この情報とともに、以下の追加の必要条件が満たされると、バッテリ容量の残量を見積ることができます。

要求 説明
温度アラームを使用しないで開始。 この機能は温度変換を行いますが、データをまったく記録しません。デバイスサンプルカウンタは各変換に対して増加しますが、温度は記録されず、これらの変換によって消費されたエネルギーは、定量化することができません。
動作の続行をディセーブルする。 動作の続行がイネーブルされると、デバイスは、新しいデータを温度記録データに重ね書きをし、そのために、消費されたエネルギーを計算するのに必要な温度履歴の部分を削除します。
ロガーを使用しないときにRTC発振器を停止する。 DS1922/DS1923のリアルタイムクロック(RTC)は、室温で3分間に、ほぼ8ビットの温度変換と同程度のエネルギーを消費します。このエネルギー消費は、明らかに非常にわずかです。そうであっても、RTCが1ヶ月間動作すれば、ほぼ15000回の変換と同程度のエネルギーを消費します。
使用しないときにロガーを25°C以下に貯蔵しておく。 バッテリの自己放電とロガーの漏れ電流は、45°C以上の温度で増加します。
強制変換をしない。 デバイスサンプルカウンタは増加し、消費されたエネルギーは計量できません。RTC発振器をオンにしたままにしたり、あるいはデバイスを高い温度で保存したりすることと比べると、一回の強制変換により消費される電荷は非常に小さくなります。

数学的背景

ミッション用にセットアップされた後、温度ロガーはミッションの開始時間を記録し、サンプリング間隔を制御する内部のタイマを設定します。サンプリング間隔が終わった後に温度変換が行われ、その結果はデータ記録メモリに蓄えられます。このインターバルタイマは、次のサンプリング間隔用に自動的に設定され、そのミッションが終了するまで、この過程は繰り返されます。図1は動作状況を図示しています。全てのサンプリング間隔は、同じ期間を持っています。

図1. 温度記録の過程
図1. 温度記録の過程

ミッションの間に消費されたバッテリの電荷は、このアルゴリズムを用いて見積ることができます:

ミッションの全てのサンプルについて、また
各サンプリング間隔について、
記録された温度値を取得し、そして

  • その温度でDC負荷電流を調べ、サンプリング間隔の期間に合わせてそれを増加させます(図2)。これは、RTCと自己放電(DC負荷)によって消費されたエネルギーを厳密に調べます。
  • その温度での温度変換の電荷を調べ(図3)、サンプリング間隔の間のDC負荷で消費された電荷にそれを加えます。
全てのサンプリング間隔の電荷を加算します。

図2. サンプリング間隔の間の推定DC負荷
図2. サンプリング間隔の間の推定DC負荷

図3. サンプリング点での変換電荷
図3. サンプリング点での変換電荷

上の図2で見られるように、DC負荷は、サンプリング間隔の間は一定であるとみなされます。この方法は、数学的には推定積分/正しい長方形を用いた面積(各小区間の右の端点によって決まる高さ)に相当します。2つのサンプルの平均(中間点)、台形、またはシンプソンの法則を使用するなどの他の積分法があり、これは数値的にさらに正確な結果1をもたらします。温度がサーモスタット的な設定点の周辺を上下した場合、長方形法に起因する正負の誤差は、平均的にゼロになります。従って、この簡単な方法は、このアプリケーション用には適しています。

より短いサンプリング間隔を使うこによっても、累積誤差を下げることできます。サンプリング間隔の下限はミッションの長さによって決められ、得られたデータをメモリに記録します。より短いサンプリング間隔は、温度変換によって消費されるエネルギーを増加します。エネルギーを節約するには、サンプリングの速度は、冷却または加熱ができない場合、監視されている対象物の温度が変化することができる最も速い速度に関連付けられなければなりません。例えば、温度が1時間以内に1°Cより速く変わることができない場合は、30分のサンプリング間隔は十分であるかもしれません。

理論の適用

上述の数学的なモデルは、ダウンロードが可能なGas Gauge Spreadsheet (ZIP、597kB)で実行されます。この表計算シートは2つの検索テーブルを持っており、DS1922L/DS1923用のものとDS1922T用の別のものを持っています。この表計算シートは、2つの計算タブも持っています。図4は、DS1922L/DS1923の計算タブの画面写真を示しています。ユーザー入力は黄色の領域に進み、青緑色の領域はその結果を示します。強調表示がない領域は、検索結果や各サンプリング間隔で消費された電荷などの、凡例(サンプル番号)あるいは中間結果です。11ビットの温度変換に対しては、検索テーブルからの変換電荷は8倍されます。湿度変換の電荷は、温度に依存しない追加の数値です。Total Mission Charge領域のµAsでの表示値は、Mission Samples領域の値で示されるのとほぼ同じ量の区間電荷の合計です。DS1922Tの計算タブは、湿度記録の機能を適用できないということを除けば、DS1922L/DS1923のものと同じです。

OneWireViewerのアプリケーションソフト[2、3]のサブ機能であるMission Viewerを使用して、次のように進めます。

  • ミッションからロガーが復帰した後、ビューアのCommandタブ上のDisable Missionボタンを使ってミッションを終了します。
  • 次に、ビューアのDevice DataタブにあるTemperatureをクリックします。これは、記録された温度ログのグラフを表示します。
  • そのグラフ上にカーソルを動かして、右のマウスボタンをクリックします。「Copy Data to Clipboard without Labels」を選択し、左のマウスボタンをクリックします。
  • そうすると、Gas Gauge Spreadsheetの利用できる計算タブが開きます。
  • 最初の温度サンプル用に入力領域を選択し、Pasteをクリックします。これは、全体の温度記録を表計算シートにコピーします。
  • ここで、ビューアのDevice DataタブにあるStatusをクリックします。
  • Sample Rate値(分に変換済み)をSampling Interval領域にコピーし、Mission Sample Count値をスプレッドシート内のMission Samples領域にコピーします。
  • Device DataタブのTemperature Logging領域が0.0625を示す場合は、温度は11ビットの分解能で記録されたことになります。この場合、表計算シートの11-bit Resolution領域でTRUEを入力します。0.5の値は、8ビットの分解能を示します。湿度が記録された場合には、スプレッドシートのHumidity Logging領域にTRUEを入力します。
現時点では、Total Mission Charge領域は、ミッションの間に消費されたエネルギーの概算の量を示しています。

図4. ガスゲージ表計算シートの一部分の例
図4. ガスゲージ表計算シートの一部分の例

Remaining Charge領域の値は、正しい値がPrevious Charge領域に入力される場合に限って有効です。新しいデバイスの最初のミッションに対しては、前の充電値は、表計算シートでプリセットされた公称値の48mAhです。ミッションで消費された電荷が計算された後、その結果は、ロガーのユーザメモリに蓄えられる必要があります。OneWireViewerのFileViewer機能を使用するのが、これをする最も容易な方法です。最初のミッションの後にファイル、たとえばCHRG.0を作成し、アスキータブ上に「バッテリ充電 47.975mAh」のような覚書を日付コードの前に入力します。このファイルをメモリに書き込みます。この手順でデータはロガーと共に移動し、次回以降とすべての後続のミッションで残容量を計算するために利用できるようになります。注意: DS1922LとDS1923については、計算された全ミッションの電荷は、全ての温度とサンプル速度に対して、データシートの寿命グラフィックの1%以内に当てはまります。DS1922Tについては、1分以上のサンプリング間隔、および+50°C以上の温度に対して、その差異は2%以下です。1分より短いサンプリング間隔と+50°C未満の温度に対する見積りは、DS1922Tのデータシートの寿命カーブより楽観的に見て最大10%になります。この差異は、Gas Gauge Spreadsheetで作られた数学的な単純化を含めて、DS1922Tのバッテリのより低い自己放電に起因しています。

結論

かなり単純な数学で、ミッションの間に消費されるエネルギーを追跡することができます。このアプリケーションノートに示されたアプローチは、自動化されたデータ管理システムに容易に取り込むことができるというコンセプトの適用性を証明しています。残容量を知り、しかも次のミッションに必要な最大の電荷を見積ることによって、ユーザーは、ロガーの全寿命を利用することが可能となり、それによって温度監視全体のコストを下げることができます。

参照文献:

  1. Bruce Pollack-Johnson and Audrey Borchardt: Excel Workbook of Integration Templates
  2. OneWireViewer application
  3. OneWireViewer User's Guide (Application Note 3358)