アプリケーションノート 3716

折返し周波数計算表


要約: 以下のアプリケーションノートでは、標準周波数スペクトルにおけるイメージ信号および高調波の真のエイリアシングされた周波数位置を決定する敏速な使いやすいツールを提供します。このようなデータを使って、アナログ-ディジタル(ADC)およびディジタル-アナログ(DAC)コンバータのダイナミック性能を分析することができます。この計算表ツールはExcelで作成され、このアプリケーションノートに提供されたリンクを通じてダウンロードすることができます。

このExcel®ベースの使いやすい折返し周波数計算表によって、サンプリングされたデータシステムの1次ナイキスト領域において、基本周波数から発生した高調波を迅速に検出することができます。この計算表はサンプリングプロセスに依存せず、ナイキストサンプリング、オーバサンプリング、およびアンダサンプリングに対応しています。このツールは、ADCおよびDACの重畳周波数スペクトルの1次ナイキスト領域における各高調波の検出に関心があるユーザに便利です。

このアプリケーションノートは、1次ナイキスト領域における折返し周波数位置の計算に使用されるアルゴリズムについて説明し、折返し周波数計算表のステップごとのガイドも記載されています。さらに、考察を深めるために、このアプリケーションノートでは一般的なサンプリングされたデータシステムと個別のデータコンバータにおけるエイリアシグおよびナイキストのコンセプトについても簡単に説明します。

エイリアシングおよびナイキスト

サンプリングされたデータシステムでのエイリアシングはよく知られた現象です。信号がナイキストレート(すなわち信号周波数帯域幅の2倍)を下回るレートでサンプリングされるごとにエイリアシングが発生します。現実世界の信号周波数スペクトルは、帯域内および帯域外ノイズ周波数だけでなく、基本周波数の高調波も含んでいます。固有のデバイスおよびサンプリングプロセスの非直線性は、出力波形における希望の基本周波数の高調波の形で出現します。周波数がfSAMP/2を上回り、fSAMPがサンプリング周波数である高次高調波は、エイリアシングが原因で1次ナイキスト領域(図1aおよび1b)にフォールドバックします。

図1a. 時間領域でのエイリアシング
図1a. 時間領域でのエイリアシング

図1b. 周波数領域でのエイリアシング
図1b. 周波数領域でのエイリアシング

離散時間信号の高速フーリエ変換(FFT)周波数スペクトルは、無数のfSAMP/2の周波数帯(別名ナイキスト領域)から構成されています。DCとfSAMP/2の間の周波数スペクトルは、1次ナイキスト領域と呼ばれています。周波数スペクトルが、各ナイキスト領域で繰り返されます。なお、偶数のナイキスト領域は奇数のナイキスト領域の鏡像として示されます(図2)。

図2. 各ナイキスト領域の表示
図2. 各ナイキスト領域の表示

ADCおよびDACにおけるエイリアシング

ADCでのエイリアシングは、入力段でのアナログ信号のトラック/ホールド(T/H)処理の結果です。ディジタル信号処理(DSP)領域では、T/H処理は、アナログ入力の周波数スペクトルとともに、(サンプリングクロックに起因する)インパルス列の周波数スペクトルの畳込み(コンボリューション)に相当します。この畳込みによって、前述したように各ナイキスト領域で観察される周波数スペクトルの周期性がもたらされます。入力信号がナイキスト周波数(fSAMP/2)を上回る周波数成分を含んでいる場合は、隣接するナイキスト領域が重複を開始し、エイリアシングをもたらします。

DACでのエイリアシングは、出力段の離散時間サンプルの(コード依存の出力グリッチを回避するために用いられる)ゼロ次ホールド(ZOH)処理の結果です。DSP領域におけるZOH処理は、DACコアの出力インパルス列の(通常、変動振幅の)周波数スペクトルとともに、(離散時間サンプルの保持に起因する直交関数の)周波数スペクトルのsin(x)/xタイプの畳込みに相当します。ADCの場合と同様に、各ナイキスト領域における出力スペクトルの周期性は、この畳込みの結果であると考えることができます。

計算表

数学的には、fSAMP/2を下回る周波数成分はエイリアシングを伴わず周波数スペクトルに存在します。ただし、エイリアシングによってfSAMP/2を上回る高調波成分(fHARM)も、± K x fSAMP ± fHARMにおいてイメージ周波数として発生します。ここで、K = 1、2、3であり、以下同様に続きます。

以下のアルゴリズムを使って、1次ナイキスト領域における各高調波を検出することができます。
fNYQ = fSAMP/2;
fHARM = N x fFUND; //N is an integer
If (fHARM lies in an odd Nyquist zone) then
fLOC = fHARM % fFUND; //% is the modulus operator
else
fLOC = fFUND - (fHARM % fFUND);
End;
ここで、fNYQはナイキスト周波数、fSAMPはサンプリング周波数、fFUNDは信号の基本周波数、fHARMは信号の高調波周波数、およびfLOCは1次ナイキスト領域における高調波の位置です。

簡単な電卓を使って、各高調波周波数(fHARM)の位置(fLOC)を検出するには、特定の繰返しが必要な場合もあります。このプロセスを容易にするために、「Folded-Frequency Calculator (折返し周波数計算表)」という名のExcelスプレッドシートをダウンロードすることができます。

この折返し周波数計算表には、サンプリング周波数(fSAMP)と信号の基本周波数(fFUND)の2つの入力変数が必要です。これら2つの変数を使って、折返し周波数計算表は、ナイキスト周波数(fNYQ)の値、各高調波周波数(fHARM)の絶対値、および折返し周波数スペクトルの1次ナイキスト領域における各高調波の位置を計算します。表1は、折返し周波数計算の一例を示しています。

表1. 入力fSAMP = 500.000000、fFUND = 29.96826172の場合の折返し重畳周波数計算
N fNYQ (MHZ) fHARM (MHz) fLOC (MHz)
1 250.000000 29.96826172 29.96826172
2 59.93652344 59.93652344
3 89.90478515 89.90478515
4 119.8730469 119.8730469
5 149.8413086 149.8413086
6 179.8095703 179.8095703
7 209.777832 209.777832
8 239.7460937 239.7460937
9 269.7143555 230.2856445
10 299.6826172 200.3173828
11 329.6508789 170.3491211
12 359.6191406 140.3808594
13 389.5874023 110.4125977
14 419.5556641 80.44433595
15 449.5239258 50.47607423

参考資料

Downloadable version of Application Note Coherent Sampling Calculator