アプリケーションノート 3702

MAX2235 ― レイアウトを最適化する手法


要約: MAX2235は、800MHz~1000MHzの範囲で動作する3段のパワーアンプで、GSMとISMのアプリケーションで最大30dBmの出力が確認されています。この最大性能を達成することは容易ではなく、それには何よりもまずプリント基板のレイアウトが良好でなければなりません。この記事では、実績のあるレイアウト例を評価するとともに、PAの特性、および提案される手法の根拠を理解することができるようにしています。

概要

MAX2235は、800MHz~1GHzで動作する3段のパワーアンプで、GSMとISMのアプリケーションで最大30dBmの出力電力を生成します。この種の性能を達成することは容易ではなく、それには何よりもまずプリント基板のレイアウトが良好でなければなりません。逆に、さらに重要なことですが、プリント基板のレイアウト設計が貧弱であると、最適性能の達成を完全に妨げることになります。

この記事では、実績のあるレイアウト例を評価するとともに、このICの特性、および提案される手法の根拠を理解することができるようにしています。MAX2235を利用する設計者は、新しいレイアウトのガイドラインとしてこれを使用することによって、一般的に陥りやすい過ちを回避し、設計の性能を最大限に引き出せるようになります。

電源のバイパスと段間マッチング

このICで最も理解されておらず、ただし最も重要な面の1つが、おそらく段間マッチングです。アンプは、実際には独立した3つの段で構成されており、各段のインピーダンス特性はわずかに異なるため、最大電力を伝達することができるように、これらの段を互いにマッチングさせる必要があります。

デバイス上のVCCピン3、5、8、および9は、バイパスを必要とする単なる電源入力ではありません。これらのピンに加えられる集中定数の容量(および寄生)が内部的にデバイスとやりとりすることで、段間マッチングの特定の基準が提供されます。これによって、設計者は、特定のアプリケーション用のマッチングをカスタマイズすることができます。

この設計の柔軟性を活用するためには、VCCビアとデバイスピンの間にコンデンサを配置した状態で、VCCトレースに沿ってバイパスコンデンサの位置を多少調整する必要があります。VCCのトレースに沿ってコンデンサをスライドすることによって(図1を参照)、段間コンデンサとICピン間の最適なトレース長さを経験的に決定し、所望の動作周波数を得ることができます。これらの位置で高Qコンデンサを使用すると、通常、最適なマッチングが得られ、また、0402サイズの部品によって、物理的なチューニングプロセスを管理しやすくなります(0402とは対照的に、0603は調整の余裕がほとんどなく、また0201は物理的な操作がより困難です)。このアプリケーションでは、Murata GJM1555シリーズ(旧GJ615)を使用することで、良い結果が得られました。GJM1555シリーズは、900MHzで100を超えるQ係数を示します。

図1. VCCトレースに沿って調整可能なバイパスコンデンサの位置
図1. VCCトレースに沿って調整可能なバイパスコンデンサの位置

PAの電源ピンが段間マッチングとして機能している場合、できるだけ互いのラインからアイソレートすることが重要です(注:「アイソレートする」という用語は、ここではRFという意味でのみ使用しています。当然、ラインはDC結合です)。アイソレートを達成することができなければ、ある段から別の段にRFエネルギが結合されるおそれがあり、性能が損なわれることになります。「スター型トポロジ」の使用が、各段の電源ラインを効果的にアイソレートする1つの方法です。この構成では、各電源ラインは1つのポイントから開始され、この箇所で、大きなコンデンサによってバイパスされます。このラインは、プリント基板の最下層に引かれており、可能な限り互いが物理的に分離されています。VCCライン間の結合が最下層で減少するのは、中間層の誘電体とは対照的に、このラインがグランドプレーンによって分離されているからです。分離された各ラインは、段間マッチングコンデンサによって局所的にバイパスされます。これによって、同時に、中間段のノードがマッチングされます。非常に密接した配置と最大限のマッチング制御を可能にするために、コンデンサは上面に配置することが望まれます。図2は、推奨される部品の配置と向きを示しています。

図2. 「スター型トポロジ」の部品配置
図2. 「スター型トポロジ」の部品配置

接地

MAX2235は、底面に接地用エクスポーズドパッドを設けたTSSOP-EPでパッケージされています。必ずこのパッドをグランドに接続し、PAの出力段がこの接続からグランドを得るようにしてください。グランドへの低インダクタンス経路がなければ、望ましくないエミッタ負帰還が行われ、利得性能を低下させる原因となります。ICからプリント基板までの熱伝達も、この物理接続を介して行われます。エクスポーズドパッドを半田付けすることができるような表面積の広い設計が最適です。組み立ての間に半田が流れるための経路を設ける(すなわち、プリント基板のパッドそのものに複数のスルービアを設ける)ことが可能なことも重要です。ICのGNDピンはすべて同じパッドの背面にじかに引き回す必要があります。これによって、他のPA段にとっても最短のグランド経路が確保されます(図3を参照)。

図3. エクスポーズドパッドをグランドに接続する必要があります。
図3. エクスポーズドパッドをグランドに接続する必要があります。

出力ネットワーク

現在の評価キットは、この領域において誤った認識を招くおそれがあります。評価キットは、非常に限られた性能帯域のために設計されたものです。機能はしますが、必ずしも他のアプリケーションでこれを真似る必要はありません。EVキットは、ピン16からVCCまで引かれた0Ω抵抗器に並列に30AWGのワイヤを使用しています。現在、マキシムは、新しい設計の出力について、短いワイヤとプルアップ抵抗器を使用することを推奨していません。代わりに、VCCにプルアップしたL||Cの組み合わせを使用することで、良好な性能が得られました。LCの並列共振を慎重に選択すれば、この共振は、対象の周波数においてハイインピーダンスのように見えますが(したがって、マッチングに影響しません)、高調波を減衰するのに非常に役立ちます。915MHzの設計において、10nHと3.3pFの値を使用することで、極めて良好な高調波抑制が得られ、出力マッチングにほとんど影響しません。

出力マッチングを設計する場合、段間の手法とよく似た手法を使用することができます。伝送ラインに沿って出力シャントコンデンサをスライドすることで、PA出力に提示されるインピーダンスを正確に調整することができるようになります。EVキットは、2素子マッチングを使用して、この手法を実証しています。さらなる調整能力については、4素子マッチング(直列L、シャントC、直列L、シャントC)が十分に機能することを確認しました(図4を参照)。インピーダンス変換の手法とは関係なく、隣接する多数のグランドビアに囲まれた、インピーダンス制御の伝送ラインを使用することをお勧めします。これによって、プリント基板の損失が最小限に抑えられ、また遮られていないRFグランドリターン経路をラインに沿って設けることで高調波抑制を改善します。さらに、試作と生産で最高性能を得るためには、マッチングにおいて高Q部品(対象の周波数で100を超える)を使用することが不可欠であることに留意してください。この場合も、Murata GJM1555シリーズ(または、同等品)をお勧めします。

図4. 高Qインダクタとコンデンサを用いた4素子出力マッチング
図4. 高Qインダクタとコンデンサを用いた4素子出力マッチング

まとめ

すべてのRFパワーアンプの場合と同様、MAX2235を用いて最適性能を達成することができるかどうかは、プリント基板のレイアウト工程のときに注意深く慎重な決断を下せるかどうかにかかっています。最初のプロトタイプを作成する前に、以下の項目を徹底的に検討する必要があります。

段間マッチング VCCバイパス/段間マッチングコンデンサは、できるだけICピン(3、5、8、および9)の近くに配置し、また初期チューニング時に位置を調整可能なようにします。最高の結果を得るために高Q部品を使用します。

VCCの引き回し 異なるPA段の電源ライン間の最大距離(したがって最小結合)を考慮したトポロジを使用します。プリント基板の最下層で「スター型トポロジ」を使用するのが、ここでは非常に効果的です。VCCを全体的にバイパスします。

接地 ICピンのグランドへの経路は、最短で最小インダクタンスとなるようにします。半田の流れ、およびIC底面のエクスポーズドパッドの生産能力を考慮します。これを確実にグランドプレーンに接続する必要があります。

出力マッチング 高Q部品と4素子マッチング、およびその後にインピーダンス制御の伝送ラインを使用します。マッチングの前に、インピーダンス変換に影響を及ぼすことなく、プルアップインダクタにて高調波トラップを実装することができます。

図5は、これら主要項目の実装を示しています。さらに図6は、マキシムの別のEVキットでの「スター型トポロジ」の実例を示しています。

図5. 最初のプロトタイプを作成する前に検討すべき主要項目の実装
図5. 最初のプロトタイプを作成する前に検討すべき主要項目の実装

図6. マキシムEVキットでの「スター型トポロジ」の例
図6. マキシムEVキットでの「スター型トポロジ」の例


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