アプリケーションノート 3700

MAX3580のためのフロントエンドダイプレックスフィルタ


要約: このアーティクルでは、オプションのダイプレックスフィルタについて説明します。このフィルタは、わずか5つのチップコンデンサと2つのチップインダクタで構成されており、ダイレクトコンバージョンDVB-TチューナMAX3580とともに使用することができるように設計されています。これにより雑音指数0.8dB以下の悪化が伴いますが、2次インターセプトポイント(IIP2)は最低でも25dBの改善になります。この改善を行うために、ダイプレックスフィルタは、VHFチャネルを選局するとUHFチャネルに対して15dB (typ)のアイソレーション、UHFチャネルを選局するとVHFチャネルに対して32dB以上のアイソレーションを確保します。

はじめに

MAX3580は、地上波ディジタルビデオ放送(DVB-T)アプリケーションのための集積化ダイレクトコンバージョンチューナです。このアプリケーションノートでは、MAX3580の入力にオプションのダイプレックスフィルタを追加することによるIIP2の利点について説明します。内蔵の入力スイッチを使用すると、MAX3580は2つのダイプレックスフィルタの帯域のうち1つを選択することによって、所望の帯域を通過させ、不要な帯域の信号を除去することができます。この機能は特に、割り当てられた周波数範囲に2つの個別の帯域を含んでいるDVB-Tアプリケーションにとって有益です。これらの2つの帯域を分離することによって、ダイプレックスフィルタの特定の帯域のみを選択し、もう一方の帯域を除去することができます。2次歪みを引き起こす要因は不要な帯域信号が引き金になっているため、この不要な帯域の信号を除去することによって、2次歪み性能が改善されます。

動作概要

高集積ダイレクトコンバージョンチューナMAX3580は、DVB-Tアプリケーション用として設計されています。この高集積チューナは、170MHz~230MHz (VHF-Ⅲ)および470MHz~878MHz (UHF)の入力周波数範囲をカバーしています。MAX3580は、RF入力スイッチとマルチバンドトラッキングフィルタを内蔵しており、デュアルコンバージョンチューナのソリューションに対してコストや電力損失の問題が生じることなく、低消費電力のオンボードチューナのアプリケーションを実現します。ゼロIFアーキテクチャであるため、復調器にベースバンドのIとQの出力を直接に供給することによって、すべてのSAWフィルタが不要になります。

図1. MAX3580の機能ブロック図
図1. MAX3580の機能ブロック図

ダイプレックスフィルタ

DVB-Tアプリケーションには2つの離れた周波数帯域(VHFとUHF)が使用されているため、ダイプレックスフィルタをMAX3580の入力スイッチと共に使用することで、IIP2を向上させ、また強力な帯域外信号除去性能を改善することができるようになります。内蔵の入力スイッチを図1に示します。図2および表1に、推奨するダイプレックスフィルタを示します。2つのダイプレクサ入力はどちらもシングルコネクタのアンテナ入力J35に接続されます。VHFフィルタの出力はMAX3580のRFIN2ピンに接続し、UHFフィルタ出力はRFINピンに接続します。

図2. MAX3580ダイプレックスフィルタの回路図
図2. MAX3580ダイプレックスフィルタの回路図

表1. MAX3580ダイプレックスフィルタの部品表
Reference Designator Qty Value Tolerance Description Vendor Part
C145 1 33pF 5% 0603 capacitor Murata GRM1885C1H330J
C143 1 1.2pF 0.1pF 0603 capacitor Murata GRM1885C1H1R2B
C159, C138, C144 3 4.7pF 0.25pF 0603 capacitor Murata GRM1885C1H4R7C
L15 1 47nH 5% 0603 inductor Murata LQW18AN47NJ00
L16 1 18nH 5% 0603 inductor Murata LQW18AN18NJ00

VHFチャネルに合わせてレシーバをチューニングすると、入力スイッチはローパスフィルタを介して受信するように設定されます。ローパスフィルタはVHF帯域を通過させ、UHF帯域を除去します。同様に、UHFチャネルに合わせてチューニングすると、入力スイッチはハイパスフィルタを介して受信するように設定されます。ハイパスフィルタはUHF帯域を通過させ、VHF帯域を除去します。選択されていないフィルタは、MAX3580内部で終端されます。MAX3580のEVキットのソフトウェアを使って、VHFチャネルを受信するためにRFIN2ピンを選択するには、Block ViewウィンドウでRF Input SelectボックスをクリックしてRFIN2を選択します。同様に、UHFチャネルを受信するためにRFIN入力を選択するには、RF Input SelectボックスをクリックしてRFINを選択します。図3は、MAX3580のEVキット(Rev 1)で測定したときの2つのフィルタの周波数応答を示しています。

図3. ダイプレックスフィルタの除去と挿入損失の測定値
図3. ダイプレックスフィルタの除去と挿入損失の測定値

同一EVキットにおいて、ダイプレクサとMAX3580の組み合わせによって確認された不要帯域からのアイソレーションの測定値を図4に示します。VHFチャネルに合わせてチューニングすると、不要なUHFチャネルは通常15dB減衰します。同様に、UHFチャネルに合わせてチューニングすると、不要なVHFチャネルは少なくとも32dB減衰します。

図4. ダイプレクサソリューションとMAX3580を使用した場合の、選択されていない信号経路でのアイソレーション
図4. ダイプレクサソリューションとMAX3580を使用した場合の、選択されていない信号経路でのアイソレーション

この独自のソリューションは、全体的なノイズ指数に及ぼす影響はわずかであるのに、IIP2を増大させる事が出来ます。VHF帯域では、UHFチャネルが減衰するためにIIP2が増大し、これによってVHF帯域でのA-Bの歪成分が生成されます。同様に、UHF帯域では、VHFチャネルが減衰するためにIIP2が増大し、これによってUHF帯域でA+BとA-Bの歪成分が生成されます。

表2は、入力周波数とLOを選択して組み合わせた場合に、ダイプレクサソリューションによって、IIP2が30dB以上改善されていることを示しています。表2のシナリオの場合、NFの悪化は0.8dB以下です。その他のシナリオの場合のIIP2の改善は、図4から予測できます。IIP2は、帯域外入力周波数のアイソレーションによって改善されます。両方の入力周波数が帯域外のとき、両方のアイソレーションの合計からIIP2の改善が予測されます。したがって、ワーストケースで予測されるIIP2の改善量は25dBになります(入力周波数が707.5MHzと878MHzで、LOが170MHzのとき)。

表2. ダイプレックスフィルタを用いた場合の、MAX3580のIIP2の改善とNF悪化の測定値
LO (MHz) F1 (MHz) F2 (MHz) IIP2 (dBm) IIP2 Improvement (dB) NF Degradation (dB)
200 470 670.5 49.6 35 0.2
470 230 700.5 46.3 31 0.8
700 230 470.5 56.1 38 0.2

結論

オプションであるディスクリートのダイプレックスフィルタをDVB-T集積チューナICのMAX3580に組み込むことで、IIP2は少なくとも25dB改善され、帯域外信号除去性能が大きく向上します。これらの利点は、わずか0.8dB以下の雑音指数の損失で実現出来ます。