アプリケーションノート 3693

マキシムがシングルピースNV SRAMモジュールの設計を選択する理由


要約: マキシムの新しいシングルピースのモジュールパッケージを定義する設計基準を理解するには、まずバッテリバックアップ式メモリ製品の歴史を少し把握する必要があります。

NV SRAM開発の当初から、開発目的は、ICと全く同様に処理可能なハイブリッドメモリ製品を製造することでした。リチウムコインセルバッテリ付き低電力SRAM製品を採用することによって、CMOSウェハ技術と長期メモリバックアップ電源用の電圧安定コモンソースが結合しました。

マキシムの新しいシングルピースモジュール(SPM)パッケージを定義する設計基準だけでなく、エネルギー源にマンガンリチウム(ML) 2次(充電式)バッテリを選択したことを理解するには、まずバッテリバックアップ式メモリ製品の歴史を少し把握する必要があります。このバッテリの化学的性質の選択を導いた数多くの問題を理解すると、その答えはより明白になり、技術的に正当化されます。

アプリケーションノート505「Lithium Coin-Cell Batteries: Predicting an Application Lifetime」に概説されているような、不揮発性アプリケーションで使用される1次(非充電式)リチウムコインセルバッテリの特性を把握することを推奨します。

「ブリック」 ― スルーホール部品

そのマーケティング課題が、製品ソリューションがアプリケーションにより柔軟なEPROMソケットを取り入れることであったため、初期のハイブリッドモジュールパッケージングコンセプトは、従来のデュアルインラインパッケージ(DIP)実装面積を採用しました。このモジュールは、製造プロセス時に適切に処理されると接続や使用が容易で、高い信頼性があります。

1次リチウムコインセルバッテリを内蔵する製品の基本的な制約は、これらのコインセルは+85°C (+185°F)を超える温度に露出することができないことです。大量生産の回路基板の組立作業に関するこの処理制約によって、製造メーカーはバッテリバックアップ型モジュールを処理する際に特別な処理手順を採用せざるを得ませんでした。バッテリメーカーはICアプリケーションやプリント基板組立の要件に対してあまり精通していなかったため、電子機器製造に関する環境問題はバッテリメーカーにとって基本的に不慣れで未知なことでした。より温度耐性に優れたコインセルの設計は、当時のバッテリメーカーの開発ロードマップにおいてあまり重要ではありませんでした。

多くのユーザにとってDIPモジュールパッケージは「ブリック」という愛称で知られていますが、モジュールの物理的サイズにより多くの潜在的ユーザはこのモジュール用の空間を見つけるのが困難でした。

DIPモジュール製品は従来の600mil幅のピン配置に基づいてかなり大きな基板面積を占め、パッケージの高さは極めて高くなっています。メモリ密度のアップグレードごとに、端子を追加し、必要な基板面積をさらに拡大して、回路レイアウトを変更する必要があります。いっぱい詰め込まれた構造のために、この質量の増大が最終基板振動特性に影響を及ぼすおそれもあります。

耐温性の制約に対する一般的なソリューションはソケットの使用か、またはモジュールの手半田付けのいずれかでした。ただし、これらのソリューションのどちらでも、コストや不便性が増大します。また、ソケットの接続問題の発生はシステム信頼性の懸念事項として表面化しました。

その結果は、かなりの温度露出からの保護を条件とした、大型ですが信頼性が高い内蔵型のメモリサブシステムです。

薄型モジュールにはカスタムソケットが必要

DIPモジュールの基板面積と高さの短所に対処するために、一部パッケージングの開発によって直接半田付け作業に依然として耐えられない薄型化されたハイブリッド構造が生み出されました。高さは半分に短縮され、基板面積は縮小されましたが、カスタムソケットを使用する必要があるため、システムのピース部品コストが増大し、ソケットの半田付け後にモジュールを取り付ける追加の最終組立作業も必要でした。

薄型モジュール(LPM)は基本構成部品にブリックと同じ現場で実証された信頼性を備えていましたが、顧客のアプリケーションで直接半田付けすることができませんでした。コネクタの完全性は、主要なフィールド信頼性の問題になりました。

PowerCap ― ほぼSMTに対応

ソケットの信頼性問題に応じて、さらなるパッケージ開発作業はSMT対応のLPMの代替品の実現に集中しました。温度露出からバッテリを保護するために、「製品」は実際には、リチウムセルがコンポーネントベースとは独立した部品として販売、仕入、組立が行われたツーピースのソリューションでした。ツーピースの製品は大量生産のSMT対応製品を供給するという目標を達成しましたが、両方のピースを調達し、組み立てるために増大した物流と作業はLPM製品とあまり違いはありません。

また、バッテリ回路へのコネクタの導入によって、フィールド信頼性の懸念は外部ソケットから製品自体へと移りました。現場での不適切なバッテリキャップの取り付けまたは振動暴露による接触完全性の問題は、完全に半田付けされたシングルピース構造では遭遇しなかった短所を明らかにしました。

PowerCapモジュールは、対流リフローアセンブリプロセスに耐える能力の追加によってブリックと同じ機能を果たします。LPMのカスタム実装面積に基づいて、密度増大による利用可能な端子の不足はこのパッケージでの製品開発をさらに制限します。

リチウムコインセルバッテリの問題点

バッテリを処理しようとした請負組立メーカーは、ICを処理するようにバッテリを扱うことができないことにすぐに気付きました。金属加工面および接地した作業員はすべて、製造バッテリを放電する潜在的な経路になります。金属ピンセットや金属トレイを安易に使用すると、原因不明のライン歩留まりに関して散々たる結果をもたらすおそれがあります。

露出したリチウムバッテリ内蔵の製品は、水洗浄作業に耐えることができません。バイアスとともに水は、デンドライト成長(金属マイグレーション)とセルの早期放電をもたらすおそれがあります。

現場から絶え間ない質問はバッテリ残容量の予測方法であり、これはアプリケーションノート505の主要ポイントです。1次リチウムコインセルバッテリはワンショットエネルギー源であるため、現場に実装されたモジュールの累積バックアップ時間を予測することはどうしても困難です。

半田付け温度露出に関する前述の制約とは別に、リチウムコインセルバッテリには段階的な充電損失や自己放電があり、年間に損失する電荷のパーセントで規定されます。保管状態が不適切な場合は、コインセルの能力が大幅に低下するおそれがあります(アプリケーションノート505を参照)。

シングルピースモジュール

シングルピースモジュール(SPM)パッケージは、前世代のNV SRAM製品で確認された批判と短所に対処することを特に目標にしました。技術的制御の下で設計、開発され、以下の項目のどれもユーザの要望に応えるという点で他よりも多少クリティカルであると見なされませんでした。

ブリックと同様に、SPMは完全に半田付けされたワンピースのハイブリッドモジュールです。多くの点で、バッテリをユーザと外部環境から保護するというパッケージの主要機能は変わっていません。特にバッテリ経路からのコネクタの排除は、この設計作業の第一の設計要件でした。付け加えられた利点として、ユーザはこの場合も1つのアイテムのみを調達し、仕入れることができます。

SPM製品はすべて、業界標準の27mm x 27mmの256ボールPBGA実装面積を採用しています。CAD設計者は、カスタム実装面積からの脱却を歓迎すると期待されます。

SPM製品には、PowerCapと比べて最小限の基板面積(約1平方インチ)が必要です。バッテリキャップへのアクセス用の隣接する「立ち入り禁止」領域は、この表面実装パッケージでは適用されません。

SPM製品はすべて、標準化された信号レイアウトに基づいています。あらゆる信号は冗長ボール接続を通じて転送され、組立ラインの歩留まりを最大にします。最大4MBまでのメモリ密度を備える既存のLPMまたはPowerCap基板レイアウトは、簡単なパッド変更を行い、等価密度のSPMに変換することができます。

SPM製品を自動部品実装機器で処理し、完全自動基板組立作業に対応することができます。

SPM製品はすべて、JEDEC J-STD-020規格の半田付け勧告に準拠して、対流リフローに対応しています。顧客のプロセスをエミュレートするために、あらゆるSPMの信頼性調査が2プロセスの対流リフロープリコンディショニングフェーズから開始されました。

SPM製品は水洗浄ソリューションを許容可能で、MSL 3の耐湿性に完全適合しています。SPM製品はドライパックされ、トレイで出荷されて、すぐに基板組立が可能です。

SPMのキャビティパッケージによってポッティングが不要になり、構成部品の質量が減少します。これによって、システム振動特性に対する製品の影響も低下します。DS2065W (8MB SPM)の構成部品の標準重量は、DS1265W (8MBブリック)の重量13.3gと比べると、7.5gです(約45%の重量減)。

SPMパッケージは将来的な製品拡張にも対応します。追加のボール接続が、密度増大やカスタム製品定義用にすでに用意されています。

SPMの中心部はマンガンリチウム2次バッテリです。これまでのNV SRAMモジュールの場合は、1次リチウムバッテリは充電容量が固定で、電荷がなくなるとバッテリを取り替える必要があります。アプリケーションノート505に記載されているように、耐用寿命は多くの要素に基づき、現場に実装されたモジュールの残りのバッテリ寿命を予測することはどうしても困難ですMLバッテリの場合は、バッテリ充電を時々補充する機能によってシステム耐用寿命を数十年まで延長することができます。

バッテリバックアップ式メモリ製品の従来の耐用寿命は、長年にわたる累積バッテリバックアップに基づいています。実際には、製品は現場に実装され、まず実用的な目的に適合した場合は、大部分のシステムは、数年間連続して電源をオフにされることはありません。外部VCC電源がSPM製品に印加されるごとに、不揮発性コントローラ/チャージャデバイスはMLバッテリを補充します。再充電サイクルはそれぞれ、最大3年の連続バッテリバックアップを行います。コントローラが提供する高度に安定化されたフロート充電機能によって、バッテリ放電計算における大きな要素としての自己放電現象はほぼ排除されます。

結論

SPM製品は、顧客ベースで述べられたように製造と不揮発性SRAMの使用に関する各種問題に対処するように設計されてきました。充電式リチウムコインセルバッテリの現場への適用でもたらされる技術の飛躍のほかに、あらゆる側面でSPMはこれまでに採用されたパッケージングコンセプトよりもはるかに優れています。複数の再充電サイクルを受け入れるだけでなく、半田付け温度に耐える能力によって、MLコインセルは大部分のメモリアプリケーションにおいて1次コインセルに比べ大幅に向上しています。

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