アプリケーションノート 3634

ビデオシステムにおけるビデオパラメータの視覚的な影響:その2 - クロミナンス-ルミナンス間の遅延の影響


要約: ビデオシステムの最終的な品質は主として、得られた映像を目で見ることによって決定されます。とはいえ、エンジニアが映像の品質を客観的に測定することができることが重要です。クロミナンスとルミナンス、すなわち光信号の色度と輝度の間の遅延による不整合は、重要なビデオパラメータですが、どちらも測定が困難で、客観的な仕様による測定が必要です。この記事は、ビデオシステムに影響する電気パラメータを論じた一連のアプリケーションノートの第2回目であり、クロミナンス-ルミナンス間の遅延による不整合(すなわち電気信号の色度と輝度の間の不整合)について設計者が理解することができるようにすることを目的としています。これらの不整合の値を測定する方法および映像の品質への不整合の影響について説明します。

はじめに

設計者は、コンポジットビデオ信号(CVBS)を処理する際に、画質を維持するため、いくつかの重要なパラメータに配慮する必要があります。クロミナンスとルミナンス、すなわち光信号の色度と輝度は、この重要な2つのパラメータです。クロミナンス-ルミナンス間の遅延による不整合のパラメータは、群遅延偏差の仕様に関連しています。この仕様は、システム全体の異なる周波数帯域の電気的遅延を定義しています。

コンポジットビデオ信号は、基本的にクロミナンス(色度)情報とルミナンス(輝度)情報の組み合わせです。このコンポジットビデオ信号は、通常のテレビ放送として配信されるRF信号の変調に使用されるもので、必要な伝送帯域幅の低減に欠かせない信号であり、ベースバンドビデオを単純な1本の線で接続可能にしています。

この記事は、クロミナンス-ルミナンス間の遅延による不整合の影響について説明し、不整合の値を測定する方法を提示します。このアプリケーションノートは、ビデオシステムに影響する電気パラメータを論じた一連のアプリケーションノートの第2回目です。第1回目の『Visual Impact of Video Parameters in Video Systems: Part 1 Differential Gain and Differential Phase』を確認されることをお勧めします。

クロミナンス-ルミナンス間の遅延

このパラメータは、ビデオ信号のクロミナンス部分がシステムを通過するのにかかる時間と、ルミナンス部分が通過するのにかかる時間の差を規定しています。この時間差すなわち遅延誤差によって、特に画像内の物体の端に色のにじみが生じ、画像が不鮮明に見えます。3.58MHz (PALでは4.43MHz)の変調を用いた12.5Tのサイン2乗パルスを使用してこの規定をテストします(図1)。遅延による不整合は、この信号のベースラインを分析することによって測定されます。ベースラインが直線であれば遅延による誤差がないことを示しています。クロミナンスがルミナンスよりも進んでいる、あるいは遅れている場合、ベースラインは直線ではなくなり、揺れ動きます。ベースラインの形状によってクロミナンスがルミナンスより進んでいるのか、あるいは遅れているのかがわかります(図2)。

図1. 12.5Tのテスト信号
図1. 12.5Tのテスト信号

図2. 遅延による不整合が12.5Tの変調パルスに及ぼす影響を図示しています。「ルミナンスから遅れたクロミナンス」と「ルミナンスより進んだクロミナンス」との違いがはっきりとわかります。
図2. 遅延による不整合が12.5Tの変調パルスに及ぼす影響を図示しています。「ルミナンスから遅れたクロミナンス」と「ルミナンスより進んだクロミナンス」との違いがはっきりとわかります。

クロミナンス-ルミナンス間の大きな遅延誤差による、ビデオシステムの視覚的な影響

図3は、クロミナンス-ルミナンス間に遅延誤差のない元の画像です。図4は、クロミナンス-ルミナンス間の遅延誤差による視覚的な影響を示しています。図4の画像の方が鮮明さに欠けることがわかります。色のにじみがボックスや文字の端に生じているのを確認することができます。図5は、拡大した画像であり、誤差の影響をよりはっきりと確認することができます。

図3. クロミナンス-ルミナンス間に遅延がない元の画像
図3. クロミナンス-ルミナンス間に遅延がない元の画像

図4. クロミナンス-ルミナンス間の遅延による不整合が、同じ画像のビデオ電気信号に及ぼす視覚的な影響
図4. クロミナンス-ルミナンス間の遅延による不整合が、同じ画像のビデオ電気信号に及ぼす視覚的な影響

図5. 図4の遅延による不整合誤差の拡大図
図5. 図4の遅延による不整合誤差の拡大図

結論

上記の例は、クロミナンス-ルミナンス間の遅延誤差が300nsの場合の結果です。表示された画像に及ぼす、この誤差の視覚的な影響が極めて明確に表われています。たいていのビデオシステムでは、遅延による不整合の誤差は一般的にこの例より少ないと思われます。通常、20ns未満の遅延誤差は起こるものであり、このような場合には、優れた品質であるものと見なされます。遅延による不整合の誤差が20nsを超えると、画質の低下が顕著になります。したがって、ビデオシステムの設計者は、再生画像の鮮明さを確保するために、クロミナンス-ルミナンス間の遅延による不整合に最大限の配慮を払うことが最も重要となります。