アプリケーションノート 3633

高差動電圧用にMAX2607のEVキットをチューニング


要約: MAX2607のEVキットの差動出力電圧は、差動プローブを使用して測定することができます。ただし、基板の寄生容量とプローブの入力容量があるため(パッシブプルアップを使用)、スイングはわずかに320mVP-Pです。このソリューションでは、誘導性プルアップを使用してこれらの容量を共振させています。この新しいアプリケーションにおいて、スペクトルアナライザの差動プローブで出力を測定したとき、2400mVP-Pの差動VOUTが得られます。ここでは、基板に加える修正について説明し、さらに計算を裏づける理論についても詳述します。

使用機器

スペクトルアナライザ―Agilent Technologies 8562EC
差動プローブ―Tektronix® P6248
プローブ電源―Tektronix 1103
電源
MAX2607 EVキット

セットアップとテスト条件

上記テストのセットアップを図1に示します。MAX2607の2つの差動出力(OUT+とOUT-)を差動プローブの2つの入力ピンに接続し、プローブの他端はプローブ電源に接続します(プローブ電源は外部からプローブに電力を供給します)。次に、プローブ電源の出力をスペクトルアナライザに接続します。テスト条件は、次のとおりです。

VCC = 3V
出力周波数 = 197MHz
VTUNE = 0.4~2.4V(このケースでは、VTUNEがチューニング範囲のほぼ中央になるように外部インダクタンスLFが選択されています。)
差動プローブは、1:1減衰に設定します。

スペクトルアナライザの設定

大きさの単位:ボルト
中心周波数:197MHz
スパン:1MHz
分解能帯域幅:10kHz

図1. テストのセットアップ
図1. テストのセットアップ

入出力のマッチングネットワークとそれぞれの測定

図2. 標準動作回路
図2. 標準動作回路

部品の初期値(上の図2を参照)

VTUNEがチューニング範囲の中心に近い状態で197MHzの出力周波数が得られるようにL3をチューニングしました。この値は100nHになります。
C1 = C4 = 1000pF
C2 = C3 = 330pF
Z = R2 = R3 = 1100kΩ

差動出力は、差動プローブの入力ピンに供給されます。差動プローブには、1pFの容量と並列に400kΩの入力インピーダンスが備わっています。これは、シングルエンドにて2pFの容量となります。したがって、この場合のRLOADは、-j400のリアクタンスを備えた2pFの容量(CLOAD)と見なすことができます。また、回路であるためにグランドに対する寄生容量があります。図2の回路を使用すると、差動電圧の測定値は320mVP-Pとなります。シングルエンド方式では、これは、2pF容量の両端で160mVP-Pに等しくなります。これによって、図3に示すように0.4mAの電流ILOADが負荷を流れます。

図3. 出力共振回路
図3. 出力共振回路

上記の結果を使用すると、寄生容量CPは約2.87pFと概算することができます。この容量を1kΩと並列に結合すると、約270Ωの大きさになります。

したがって、電流分割を使用すると、次のようになります。

したがってCPの計算は正しいということです。

この分析から、差動VOUT を増大するには、プルアップインダクタを使用してCPとCLOADの並列結合を共振させる必要があると結論することができます。このインダクタの値の計算は、次のようになります。

したがって、L = 130nHとなります。これに最も近い標準値は120nHとなります。

最終回路と結果

図1を参照

VTUNEがチューニング範囲の中心に近い状態で197MHzの出力周波数が得られるようにL3をチューニングしました。この値は100nHになります。
C1 = C4 = 1000pF
C2 = C3 = 330pF
Z = L4 = L5 =120nH
R3 = R4 = オープン

結果

VCC = 3V、Idc = 2mA、VTUNE = 1.4V
出力周波数 = 197MHz
差動出力電圧 = 860mVRMS = 2400mVP-P

注:別のアプリケーションが、上記とは異なる差動プローブを使用している場合、共振を生み出すLの値も異なります。上式1のCLOADを、使用する差動プローブの入力容量の値に置き換えてLを再計算します。同様に、MAX2607をLVDSバッファの駆動に使用する場合にも、CLOADをバッファの入力容量に置き換えてLを再計算する必要があります。

結論

MAX2607 EVキットを修正して、差動出力電圧の大きさを増大しました。パッシブプルアップの代わりに誘導性プルアップを使用して、基板の寄生容量とプローブの入力容量を共振させています。この新しいアプリケーションでは、スペクトルアナライザの差動プローブで測定したとき、2400mVP-Pの差動VOUTが得られます。

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