アプリケーションノート 3484

メカニカルポテンショメータをディジタルポテンショメータにアップグレードする方法

筆者: Greg Sutterlin

要約: ディジタルポテンショメータには、システムコストの低減、信頼性の向上、システムの柔軟性の向上など、機械的な同等品に比べて多くの長所があります。この記事では長所と短所を説明し、その比較の概要について記述します。

メカニカルポテンショメータは、オフセットや利得の調整、LCDのコントラスト電圧の設定、電源の調整をはじめとする多くのアプリケーションに長年にわたって使用されている可変抵抗器です。ねじ回しを用いてアナログ的に調整を行うというこの方法は、急激に古い形態となりつつあります。メカニカルポテンショメータは、実装にコストがかかり、人為的なミスの影響を受けやすい傾向にあります。今日の競争の激しい市場において、メカニカルポテンショメータの代わりにディジタルポテンショメータを使用することによって、大きな利点が得られるようになります。ディジタルポテンショメータを利用すると、製品の堅牢性が向上し、また高価で不確定な手動による生産調整がなくなることによって、製造工程が簡素化されます。この結果、コストの削減や組み立てスループットの改善を容易に達成することができます。ディジタルポテンショメータは、ほとんどの場合、完ぺきな代替品となりますが、設計がこのようなアップグレードに適しているかどうかを判断する場合に、いくつかの点を考慮する必要があります。

分解能

メカニカルポテンショメータの分解能は理論的には無限です。ただし実際に有効な分解能はポテンショメータを調整する人のスキルレベルによって決まります。スキルレベルは人によって、また日によって変わるため、実際に有効な分解能は、かなり貧弱な値になる可能性があります。1回転ポテンショメータは、調整者の震えの影響を大きく受けますが、10回転ポテンショメータでは、その心配はほとんどありません。

ディジタルポテンショメータでは、無限の分解能を得ることはできませんが、特定のアプリケーションに合わせて十分に高い分解能を選択すれば、あたかも連続的な分解能を得ることができます。さらに、この分解能は、完全に規定され、再現可能で、保証されたものです。

制限事項

メカニカルポテンショメータでは、抵抗体に接触したワイパーが抵抗体の長さ方向に移動することで抵抗値を変化させています。信頼性のある動作を保証するためには、製品の寿命の全体にわたって、ワイパーの接触性と抵抗体全体の接続性を維持する必要があります。メカニカルポテンショメータは、パッケージを封止してワイパーを保護した状態であれば何の問題もなく利用することができますが、この状態を確保するためには、必然的にコストが上昇することになります。また、機械的な結合が実際に伴うため、ポテンショメータは、根本的に振動、衝撃、湿気、および圧力の影響を受けやすくなります。

ディジタルポテンショメータは、より信頼性の高い高品質のソリューションを提供することができます。ただし、考慮すべき制限事項がないわけではありません。

ディジタルポテンショメータでは、ワイパーとポテンショメータの接続は、電源レイルの範囲に制限されます。2.7V~5.5Vの電源に対応する設計もあれば、±15Vに対応する設計もあります。いずれの場合でも、ポテンショメータの接続は、ICの動作レイル内でなければなりません。多くの場合、ポテンショメータの接続が確実に電源レイル内になるように設計を変更することが可能です。あるいは、単純な抵抗分圧器を使用することも可能です。

ディジタルポテンショメータは、揮発性と不揮発性のいずれでも選択することができます。揮発性の場合、いったん電源をデバイスから取り除くと、ポテンショメータの調整は失われてしまいます。このため、外付けのEEPROMやフラッシュなどの不揮発性メモリ内に設定情報を保存することが必要です。これに対して、不揮発性ポテンショメータには、通常EEPROMの形態でメモリがオンチップで実装されているため、電源が切断された後も設定値を保存することができます。

さらに、ディジタルポテンショメータには、調整と動作のための電力を供給することが必要となります。電力が切り離された状態で抵抗体を使用することはできません。

メカニカルポテンショメータのコストとディジタルポテンショメータのコストを比較するときには、実際にかかるすべてのコストを考慮することが重要です。組み立てコスト、物理的な調整に伴う人件費、および潜在的な保証コストを加えると、ディジタルポテンショメータは、ほとんどの場合において、メカニカルポテンショメータより低価格なソリューションとなります。複数のディジタルポテンショメータを必要とするアプリケーションでは、コストの優位性はさらに大きくなります。ディジタルポテンショメータとメカニカルポテンショメータの比較の詳細については、表1を参照してください。

表1. ディジタルポテンショメータ対メカニカルポテンショメータ
Feature Digital Pot Mechanical Pot
Resolution 32 to 256 steps are available at this time. Theoretically, this is infinite, though limited by the skill level of the pot adjuster.
Common-mode limitations This is presently limited to the power-supply rails. This is limited to the breakdown voltages of the wiper/dielectric.
Unpowered operation This only functions when power is applied to the device. These are functional without power, though utility may be limited.
Durability The number of adjustment cycles is infinite, though nonvolatile devices may have EEPROM-write limitation. The number of adjustment cycles is finite, and depend on the manufacturer/design.
Environmental concerns Generally, these are very durable. Depending on the design, some are very susceptible to vibration, shock, humidity, and pressure.
Setting retention The setting is retained with the use of either external or included EEPROM/flash memory. The setting is retained without power. More permanent retention can be obtained by the use of a glue dab, which is difficult to remove for subsequent adjustments.
Adjustment procedure A 2-or 3-wire serial digital interface typically allows a MCU (or user) to adjust the pot. Also available are increment/decrement interfaces that do not require MCU intervention. Typically a screwdriver is used to adjust the pot until the desired set point is read on a voltmeter or similar.
In-use pot adjustment The MCU or user can adjust the pot as desired during operation. This can be helpful in automatically adjusting references, thresholds, etc. If the set screw is not glued, a screwdriver may be used to adjust the pot manually.
Scaling Linear and log are available. Linear and log are available.
Temperature correction Several digital pot designs include a temperature sensor and NV memory to provide a lookup-table-adjusted pot output over temperature. Temperature-based adjustment is not possible.
Cost The cost of the pot, plus the savings from eliminating a manual adjustment procedure and from lower rework/lower warranty repair cost, results in an overall cost savings. Mechanical pots are inexpensive. However, the total overall cost will be higher due to the labor needed to make the adjustment, the possibility of adjustment error, and the cost of warranty repairs.

結論

ほとんどすべての場合において、メカニカルポテンショメータの代わりにディジタルポテンショメータを使用することで、最終製品の利点と性能が強化されます。また、信頼性が向上し、製造工程がより安定化することによって、ソリューションの全体コストが削減されます。さらなる利点は、ソフトウェア(したがって自動化も可能になる)によってシステムの調整や設定を管理できるということです。これによって、柔軟性が増大し、特長が増大し、さらに新たな機能が追加されます。


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