アプリケーションノート 3080

MAX3740Aレーザドライバの正確なパワーコントロール


要約: MAX3740Aレーザドライバのレーザパワーを正確にコントロールするための3つの回路による方法の説明と解析をします。回路図およびシミュレーション結果は、各方法の利点/欠点と共に示されます。

VCSELレーザドライバのMAX3740Aの動作パワーレベルは、ソフトウェアコントロールによって設定することができます。これは一見手の込んだものに見えますが、DS1859ディジタルポテンショメーターで遂行することができます。このアプリケーションノートでは、2つの異なる方法DS1859およびディスクリート抵抗による動作パワーを制御する構成(解決策#1と解決策#2)の挑戦課題を明らかにし、ディスクリート抵抗解決策の欠点を解決するオペアンプによる新回路(解決策#3)を提示します。シミュレーション結果は、各オプションに対してフォトダイオード電流対ポテンショメーター電圧の関係として示されます。最後に、各オプションの利点および欠点が要約されます。

個々のアプリケーションの最良の回路は、設計者の必要条件によって決まります。考慮すべき事項は、所望のレーザパワーレベルを達成するためのフォトダイオード電流、調整範囲、および必須とされる分解能です。ここに記述されている情報を使えば、設計者は個々のアプリケーションのための最良のオプションを決定することができるでしょう。

挑戦課題

MAX3740Aのデータシートは、Reference端子(REF)とパワーモニタフォトダイオード(MD)間に、フォトダイオード電流を設定するための抵抗器を使うよう指定しています。パワー制御ループは、レーザダイオードをこのフォトダイオード電流をもたらす強さまで駆動します。従って、平均動作パワーレベルを制御します。問題は、MDの公称電圧が1.6Vで、REFの公称電圧が1.8Vであるということで、これはフォトダイオード電流を設定するための抵抗器間電圧が0.2Vしかないことになります。DS1859の内部にあるようなディジタルポテンショメーターは最小抵抗値が1K以上です。これは、最大電流はたったの200µAになります。固定抵抗器の追加でこの電流レベルを引き上げられますが、調整範囲の制限、非線形および高電流領域での低い分解能を変更することはできません。

DS1859を使った別の挑戦課題は、MAX3740A上のMDおよびREF電圧が広い変化をすることです。これら2ポイント間の差は0.2Vで安定しておりますが、コモンモード電圧は±0.5Vまで上下に変化することがあります。このグランドからのMD電圧の大きな変化は、このノードとグランド間の抵抗によって決められる電流が、同じ大きな変化を持っていることを意味します。

解決策#1

この解決策では、DS1859の可変抵抗器と806Ωの固定抵抗器がREFとMDの間に配置されています(図1を参照)。固定抵抗器には 0.2V / 806 = 248µAの電流が流れます。可変抵抗器には、0.2V / 50K (DS1859の最大値) = 4µAから 0.2V / 1K (DS1859の最小値) = 200µAの電流が流れます。固定抵抗器と可変抵抗器に流れる電流の合計が、フォトダイオードに流れる全電流を決定します。この技法では、低い電流領域においてよい分解能を備えた非線形の応答になります。このフォトダイオード電流は、MDの電圧変化による影響を受けません。

図1. 解決策#1の回路図
図1. 解決策#1の回路図

図2. 解決策#1のシミュレーション結果(X軸のDS1859はオーム単位の抵抗値)
図2. 解決策#1のシミュレーション結果(X軸のDS1859はΩ単位の抵抗値)

図3. 解決策#1の要約
図3. 解決策#1の要約

解決策#2

この解決策では、DS1859可変抵抗器は、MDとグランドの間に置かれ、固定抵抗器243ΩがREFとMDの間に置かれます(図4を参照)。固定抵抗器に流れる電流は、0.2V / 243 = 823µAです。可変抵抗器に流れる電流は、1.6V (MD公称値) / 50K (DS1859最大値) = 32µAから1.6V (MD公称値) / 1K (DS1859最小値) = 1600µAです。フォトダイオードに流れる全電流は、固定抵抗器に流れる電流から可変抵抗器に流れる電流を引いた電流です。この技法では、高い電流領域においてよい分解能が得られます。電流値は、MDの電圧に強く依存します。フォトダイオード電流が、抵抗値が低い値では負になり得ることに注意してください。図5は、MDおよびREFの変化が±0.5V範囲に対するフォトダイオード(電流)の変化を示します。

図4. 解決策#2の回路図
図4. 解決策#2の回路図

図5. 解決策#2のMDおよびREFの変化が±0.5V範囲に対するシミュレーション結果(X軸のDS1859はオーム単位の抵抗値)
図5. 解決策#2のMDおよびREFの変化が±0.5V範囲に対するシミュレーション結果(X軸のDS1859はΩ単位の抵抗値)

図6. 解決策#2のまとめ
図6. 解決策#2のまとめ

解決策#3

この解決策では、スモールフォームファクタ(SC70パッケージ)のオペアンプMAX4245 をREFとMDの間に追加しています(図7を参照)。DS1859およびMAX3740Aと同じ電源を使っているので、オペアンプはMD、REF-MD、およびDS1859の抵抗値に比例した電圧VOを生成します。これは、R2に流れる電流をVOとMDの電圧差に比例した電流にします。MDピンの電圧変化の影響は、キャンセルされますので、R2に流れる電流は、(REF-MD)、安定な0.2V、およびDS1859の抵抗値のみに依存します。フォトダイオードに流れる電流は、{R1の電流(803µA) + R2の電流}となります。フォトダイオード電流は、ポテンショメーター値の線形関数になります。この回路は、任意のポテンショメーター値で作動でき、任意範囲の電流を供給することができます。ただ一つの制限は、MAX4245オペアンプの電流駆動能力です。

オペアンプ出力(VO)での電圧は、以下の計算で求めることができます。VOの電圧が、オペアンプの最大出力振幅を超えないようにしなくてはなりません。
VO = REF × - (DS1859/R3) + MD × (1 + DS1859/R3)
VO = -REF × DS1859/R3 + MD + MD × DS1859/R3
VO = MD + (MD - REF) × DS1859/R3
VO = MD - 0.2V × DS1859/R3
VO = 1.0V (min) - 0.2V × 1K (DS1859 min)/10K = 0.98V
VO = 1.0V (min) - 0.2V × 50K (DS1859 max)/10K = 0V
VO = 2.0V (max) - 0.2V × 1K (DS1859 min)/10K = 1.98V
VO = 2.0V (max) - 0.2V × 50K (DS1859 max)/10K = 1.0V
R2に流れる電流は、次の計算で求めることができます。
I(R2) = (VO - MD)/R2
I(R2) = VO/R2 - MD/R2
I(R2) = (MD - 0.2V × DS1859/R3)/R2 - MD/R2
I(R2) = MD/R2 - 0.2V × DS1859/R2 × R3 - MD/R2
I(R2) = -0.2V × DS1859/R2 × R3
I(R2) = -DS1859/62,000,000
I(R2) = -1K(DS1859 min)/62,000,000 = -16µA
I(R2) = -50K(DS1859 max)/62,000,000 = -806µA
図7. 解決策#3の回路図
図7. 解決策#3の回路図

図8. 解決策#3のシミュレーション結果(X軸のDS1859はオーム単位の抵抗値)
図8. 解決策#3のシミュレーション結果(X軸のDS1859はΩ単位の抵抗値)

図9. 解決策#3のまとめ
図9. 解決策#3のまとめ

まとめ

レーザドライバのMAX3740Aのパワーレベルをコントロールする3つの解決策が示されました。解決策#1および#2はシンプルで、シンプルであるがゆえに性能を犠牲にしています。解決策#3は、オペアンプを加えることによって、構成要素変化に影響されにくく非常によい線形のコントロールが得られます。したがって、設計者は求める要求に合う最適の解決策を選ぶことができます。