アプリケーションノート 2873

MAX2902を外付けの周波数シンセサイザと組み合わせる

筆者: Roger Bremer

要約: MAX2902 ISMトランスミッタは、外付けのシンセサイザICと組み合わせて完全なTXパスのソリューションを実現できるように設計されています。システム要件に応じて、フラクショナルNまたは整数NのいずれかのシンセサイザICを利用することができます。特定のアプリケーションについて2つのタイプのシンセサイザのどちらが適切かを決定するためには、この2つのタイプのシンセサイザの間で、チャネルのステップサイズ、位相ノイズ、およびPLLロック時間がどのように違うかを把握しておくことが必要です。このアプリケーションノートでは、適正なシンセサイザを選択できるよう、主要な違いを示しています。

MAX2900~MAX2904は、868MHz/915MHzの周波数帯域で使用できるように設計された、シングルチップの200mWトランスミッタです。ベースバンドPNシーケンスローパスフィルタ、送信復調器、パワーアンプ、及びRF VCOが各ICに集積されています。また、MAX2900、MAX2901、及びMAX2903は完全なシンセサイザも内蔵しているので、これらの部品はスタンドアロンRFトランスミッタの完全なソリューションとして動作することが可能です。MAX2902とMAX2904は、外付けシンセサイザと組み合わせることで、極めて柔軟に周波数計画やチャネル設定を行えるように設計されています。

シンセサイザICを選択するときには、最初に整数NまたはフラクショナルNのどちらのモデルを使用するのかを決定することが必要となります。適切に設計されたシグマ-デルタ型フラクショナルNシンセサイザは、位相ノイズ、PLLロック時間、及び比較スプリアス抑制の面で最高の性能を提供することができます。ただし、フラクショナルNシンセサイザのコストは下がり続けているとはいうものの、依然、整数NシンセサイザICの方がより安価でソリューションを提供しています。性能パラメータをどの程度犠牲にできるのかを把握することによって、より多くの情報を得た上で使用すべきシンセサイザを決定できるようになります。

比較周波数

フラクショナルNシンセサイザとともにMAX2902を使用する場合と、整数Nシンセサイザとともに使用する場合の主な違いの1つは、同じ(あるいは、ほとんどの場合、より小さな)周波数分解能すなわちステップサイズ(FSTEP)を維持しながら、より高い比較周波数(FCOMP)を使用できるということです。整数Nシンセサイザでは、ステップサイズは比較周波数と同じです。しかし、フラクショナルNの手法では、ステップサイズはという式によって比較周波数に関連付けられます。ここで、BITSはシンセサイザ内のフラクショナルビットの数です。

比較周波数を高くすると、生成されるLO信号のインループ位相ノイズは大幅に低減します。位相ノイズは、主シンセサイザ分周器の値(N)に比例します。比較周波数を増やすことで、同じRF周波数を得るのにNの値をより低くする必要があるため、分周器のノイズ寄与分が減少します。位相ノイズの減少は、以下の式で計算することができます。

ループ帯域幅

シンセサイザの比較周波数が増えるにつれ、比較スプリアスの抑制を劣化させることなく、より広いループ帯域幅の使用が可能になります。比較スプリアスは、比較周波数が増大するにつれて外側にプッシュされるため、主信号に対して十分な減衰を保ったままループフィルタの3dBポイントも外側に移動させることができます。

ループ帯域幅を増やすと、ロック時間が短くなるという利点があります。ロック時間はループフィルタのカットオフ周波数に反比例するため、ループ帯域幅を増やすと、PLLがロックするのに必要な時間が短縮されます。多くのアプリケーションで、ロック時間は非常に重要なパラメータであり、フラクショナルNシンセサイザに対応する広ループ帯域幅は、極めて貴重であることがわかります。

ループ帯域幅を増加させることのマイナス面は、位相ディテクタのノイズが、より広い帯域幅にわたって集積されることになるということです。位相ノイズは、ループフィルタのコーナー周波数まで一定で、その後減衰し始めます。したがって、ループフィルタのコーナーがさらに外側にプッシュされ、LO信号の集積位相誤差は、という式に従って増大します。ここで、F1とF2は、それぞれ狭ループ帯域幅と広ループ帯域幅です。

カップリングについて

MAX2902は、最大+23.5dBm (標準)を出力するオンチップのパワーアンプを備えています。この電力では、変調されたRF出力信号はMAX2902とシンセサイザICの間のVCO経路に容易にカップリングされます。トレースの引き回しや接地を慎重に考慮すれば、どのようなカップリングも最小限に抑えることができますが、レイアウトのサイズに制限があることが多いため、カップリングの影響を完全に排除することは不可能です。VCOライン上に不要な信号があると、MAX2902のLO位相ノイズがさらに悪くなります。ループ帯域幅の設定が広くなればなるほど、回路はRFカップリングの影響を受けにくくなりますが、これは、閉ループがカップリングノイズを減少させるためです。ただし、前述したとおり、ループ帯域幅が広くなると、システムの集積位相誤差が増大することになります。

アプリケーション例

ここでは2つの例を紹介します。1つは整数Nトポロジを使用し、もう1つはフクラショナルNを使用します。整数モードとフラクショナルモードの両方で同じシンセサイザICを使用し、閉ループにおけるMAX2902の標準的な性能を示します。この両方の構成について、セットアップのパラメータを位相ノイズのグラフとともに以下に掲載します。どちらの組み合わせも、全体的なシンセサイザ要件に応じた、実行可能で実際的なソリューションを提供します。

使用されているフラクショナルNシンセサイザは4bitで、16を法とするフラクショナル成分を与えます。これによって、比較周波数は整数の場合よりも8倍大きくなると同時に、50%小さなステップサイズを実現しています。これよりも大きな法のフラクショナルシンセサイザを使用すれば、この違いはさらに大きくなると思われます。

位相ノイズのグラフからわかるように、帯域内の位相ノイズの違いは、(-73.00 - -82.83) = 9.83dBです。これは、各N分周器の値に基づいた理論的な差10 × log(5856/732) = 9.03dBに非常に近いです。このように、フラクショナルシンセサイザは、帯域内の位相ノイズの改善を実現しています。ただし、集積位相ノイズを計算すると、整数の方法では-29dBc、フラクショナルの方法では-30dBcという2つの値に収束します。フラクショナルの場合に使用されるより広い帯域幅によって、初期の位相ノイズの長所がなくなるものの、PLLロック時間は約5倍改善します。

結論

MAX2902は、整数NまたはフラクショナルNのいずれかのシンセサイザと組み合わせることによって完全なトランミッタソリューションを実現できる、高度に集積されたトランスミッタICです。MAX2902とともに使用するシンセサイザのタイプを選択する時は、必要な性能の仕様とトレードオフを最初に評価して把握しておく必要があります。位相ノイズ、ロック時間、チャネル間隔、及びコストはすべて変更可能であり、これによって適切なシンセサイザソリューションを見つけることができます。