アプリケーションノート 1756

高周波数での安定性のためMAX2648 5GHz LNAを用いた設計


要約: RF入出力マッチングネットワークは、5GHz LNAの性能を左右する重要な要素です。このアプリケーションノートでは、あらゆる周波数でのMAX2648の動作を安定させるため、出力マッチングの一部としてマイクロストリップの容量成分を使用する簡単な方法を説明します。個々のアプリケーションでの必要なマッチングネットワークは若干異なりますが、大部分のケースで一般原則を適用できます。小型の容量スタブによって安定性を確保しています。

追加情報: MAX2648 LNAは、5GHz~6GHzの帯域で、17dBの利得と1.8dBのノイズ指数を備えています。良好なあらゆるマイクロ波デバイスと同様、MAX2648 LNAも、高動作周波数(最大20GHz)で優れた高利得を有しています。よく知られているように、このクラスのアンプは、適切なマイクロ波の設計手法を用いなくても、おそらく10GHzを超える周波数で発振させることが可能です。このアプリケーションノートでは、MAX2648 LNAを用いてマイクロ波マッチングを実行し、最大限の性能と安定した動作を達成する方法について説明します。

設計上の検討事項

この高性能マイクロ波LNAを用いて設計を行う際に考慮すべき要素について以下に示します。
  • PCBの材質の選択
  • 部品の選択
  • 電源のバイパス
  • 入出力マッチング

PCBの材質の選択

5GHzでは、LNA前後の伝送ラインの損失がかなり大きくなります。LNA入力でのライン損失は、その損失が直接LNAのノイズ指数に加算されるので、特に重要となります。PCBの材質としては、低損失の誘電材料をお勧めします。たとえば、MAX2648のEVキット(評価キット)では、厚さ10ミル(0.254mm)のRogers 4350 「FR4コア上ラミネート」材質を使用しています。このラミネートによって安定した損失タンジェントをマイクロストリップにもたらすと同時に、下側のFR4ボードによって低コストで強固な裏板を実現しています。

コンデンサの選択

最適なノイズ指数を得るには、入出力マッチング回路に高Qコンデンサを使用することが重要となります。低Q部品を使用すると、ノイズ指数の低下を招きます。MAX2648 EVキットでの実験では、このノイズ指数の低下は、高Qコンデンサ(ATCやVitramonなど)の代わりに普通の損失の多いコンデンサ(低品質のNPOタイプなど)を使用した場合に、0.2dBにもなり得ることが示されています。これらの高Q磁器コンデンサは、大量生産の製品設計に使用するには高価すぎる場合があります。コストと性能の間のバランスのよい妥協点としては、MurataのGJ615シリーズが挙げられます。

電源のバイパス

電源のバイパスは、高周波数動作を安定させるために、マイクロ波周波数において必要不可欠です。デカップリングしようとする周波数でインピーダンスが最低となるようなコンデンサを選択することが重要です。たとえば、1000pFのコンデンサは、そのコンデンサの最低インピーダンスが数百MHz未満となる可能性があるため、高周波数のデカップリングとしてはよい選択とはいえません。5GHzでは、自己共振周波数により、コンデンサはむしろ破損したインダクタのように見えてしまうことでしょう。このため、高周波数のデカップリングでは通常、10pF未満のコンデンサをICの近くに配置する必要があります。また、低周波のデカップリングでは、1000pFと0.01µFのコンデンサの組み合わせがよい選択ですが、これらはICピンのすぐ近くに配置する必要はありません。

入出力マッチング

MAX2648 LNAは高利得のマイクロ波デバイスであるため、高周波数動作を安定させるには、入出力で適切なマッチングが必要となります。普通のSMTコンデンサやインダクタは通常、6GHz未満の自己共振周波数を有しています。MAX2648を用いて設計する場合には、自己共振周波数が6GHz未満の部品を使用するのは避けるよう、注意してください。

MAX2648の高周波数の安定性を確保するため、マキシムは、小型の容量スタブをマッチング回路の一部として出力に組み込みこむことを決定しています。LNAの出力に誘導性の終端器を配置すると(特にカップリングコンデンサに直列に配置すると)、高周波数の発振が生じる場合があり、レイアウトに注意にしてこれを避ける必要があります。長い伝送ラインは直列のインダクタンスとなるため、デバイスに生じる過剰のインダクタンスを補償する方法として、容量スタブを使用することをお勧めします。容量スタブは、集合部品がインダクタの特性を示すような高周波においてグランド接地するための優れたコンデンサとなります。この点について説明するため、高周波の発振を示す回路シミュレーションと、発振を示さない回路シミュレーションとを比較しています。このシミュレーションで使用する部品モデルは、目的の使用範囲を超えた周波数では障害を起す可能性があることに注意してください。このケースでは正確な高周波数の分析は困難ですが、回路シミュレーションによって傾向を把握することができるので、一般的な回路動作を予測する場合には役立ちます。

図1は、13.5GHz前後で不安定な回路を示すADSシミュレーションのグラフです。以下の図に示すように、このケースでの出力マッチングはすべて集合部品を使用しています。

図1. マッチング用集合部品を使用したADSシミュレーション
図1. マッチング用集合部品を使用したADSシミュレーション

図2. 入出力マッチングのレイアウト(50Ωラインは0.4mm)
図2. 入出力マッチングのレイアウト(50Ωラインは0.4mm)

C1 2pF
C2 0.5pF
C3 0.5pF
C4 2pF
C5 1.5pF
C6 1000pF
C7 0.01µF
L1 6.8nH

図3は、より幅の広いマイクロストリップ部分を出力トレースに設けることにより実装した容量スタブの使用結果を示しています。静電容量は、次の公式を使用して概算することができます。
図3. 出力容量スタブを使用したADSシミュレーション
図3. 出力容量スタブを使用したADSシミュレーション

図4. 2mm × 4mmのスタブを示すレイアウト(50Ωラインは0.4mmで、個々のマイクロストリップ部分の長さは上に示すとおり)
図4. 2mm × 4mmのスタブを示すレイアウト(50Ωラインは0.4mmで、個々のマイクロストリップ部分の長さは上に示すとおり)

C1 2pF
C2 0.75pF
C3 0.5pF
C4 2pF
C5 1.5pF
C6 1000pF
C7 0.01µF
L1 6.8nH

サイズが約2mm × 3.5mm、誘電率が4.1、基板の厚さが0.2mmのマイクロストリップは、静電容量がおおよそ1.27pFです(フリンジ効果を無視)。同調を容易にするため、接地用のシャントコンデンサを追加します。入出力シャントコンデンサの位置は、最適なノイズ指数および利得を得るために、必要に応じて調整する必要があります。

結論

入出力マッチングネットワークは、LNAの性能を左右する重要な要素です。このアプリケーションノートでは、あらゆる周波数でMAX2648の動作を安定させるため、出力マッチングの一部としてマイクロストリップの容量成分を使用する簡単な方法を説明しました。個々のアプリケーションでの必要なマッチングネットワークは若干異なりますが、大部分のケースで一般原則を適用できます。

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