アプリケーションノート 1140

スペクトラム拡散システムにおけるレシーバ感度方程式

筆者: Daniel Terlep

要約: 以下のアプリケーションノートでは、スペクトラム拡散アプリケーションの感度の定義方法、およびデジタル通信レシーバの求める感度レベルの計算方法について検討しています。このテクニカルペーパーでは、レシーバ感度の方程式を段階的に展開して説明し、最後に数値例を挙げて、テストに対する数学的な定義を行います。

スペクトラム拡散のデジタル通信レシーバでは、リンクメトリックのEb/No (ビットエネルギー対雑音電力スペクトル密度比)と、目的のレシーバ感度を得るためのRF電力レベルとの関係式は、標準ノイズ指数の定義Fから求められます。この関係式はレシーバ感度方程式といい、CDMA、WCDMAセルラレシーバ、およびその他のスペクトラム拡散システムのためにRF設計者が使用しています。この関係式を使用すると、設計者は、任意の入力信号レベルについて、スペクトラム拡散リンクバジェットにおけるレシーバパラメータのトレードオフを求めることができます。

ノイズ指数FからEb/No関係を求める方法

定義では、Fはデバイス(シングルステージ、マルチステージ、または完全レシーバ)入力時の信号対ノイズ比と、同じデバイスの出力時の信号対ノイズ比の比率です(図1)。ノイズは、時間によってある点から次の点に予告なく変わるので、自乗平均の信号対自乗平均のノイズ比を用いると、信号対ノイズ比(SNR)が求められます。

図1.
図1.

図1で使用しているパラメータと感度方程式の定義を以下に示します。

Sin = 有効な入力信号電力(W)
Nin = 有効な入力熱雑音電力(W) = KTBRF

ここで、

K = ボルツマン定数 = 1.381 × 10-23 W/Hz/K
T = 290K (常温にて)
BRF = RFキャリア帯域幅(Hz) = スペクトラム拡散システムのチップレート

Sout = 有効な出力信号電力(W)
Nout = 有効な出力ノイズ電力(W)
G = デバイスの利得(数値)
F = デバイスのノイズ指数(数値)

Fは、以下のように定義されます。
F = (Sin / Nin) / (Sout / Nout) = (Sin / Nin) × (Nout / Sout)
入力ノイズNinに関してNoutを解くと次のようになります。
Nout = (F × Nin × Sout) / Sin (ここで、Sout = G × Sin)
結果は次のようになります。
Nout = F × Nin × G
変調信号の平均電力は、S = Eb / Tとして定義されます。ここで、Ebはビット間隔のエネルギー(W)で、Tはビットの時間間隔(秒)です。

変調信号の平均電力とユーザのデータレートとの関係式は、次のように計算されます。
1 / T = ユーザのビットレートRbit (Hz)であり、結果としてSin = Eb × Rbitとなります。
前述の方程式に基づくと、Eb/Noに関する、デバイスの出力時の信号対ノイズ比は次のようになります。
Sout / Nout = (Sin × G) / (Nin × G × F) =
Sin / (Nin × F) =
(Eb × Rbit) / (KTBRF × F) =
(Eb / KTF) × (Rbit / BRF)
ここで、KTFは、1ビット間隔でのノイズ電力(No)を表します。

したがって、
Sout / Nout = Eb/No × Rbit / BRF
RF帯域幅では、BRFはスペクトラム拡散システムのチップレートWと等しくなり、処理利得(PG = W / Rbit)は、次のように定義できます。
PG = BRF / Rbit
したがって、Rbit / BRF = 1 / PGとなり、これは出力信号対ノイズ比となります。
Sout / Nout = Eb/No × 1 / PG.
注:帯域幅(つまりW = Rbit)で拡散しないシステムでは、Eb/No値は数値的にSNRに等しくなります。

レシーバ感度方程式

任意の入力信号レベルにおけるSNRを決定するには、ノイズ指数方程式をSinについて解きます。
F = (Sin / Nin) / (Sout / Nout) or F = (Sin / Nin) × (Nout / Sout)
Sin = F × Nin × (Sout / Nout)
Sinは、次のように表すこともできます。
Sin = F × KTBRF × Eb/No × 1 / PG
各項の10 × logを計算することで、より便利な対数の形として、dBまたはdBmの単位となります。ノイズ指数NF (dB) = 10 × log (F)により、次のレシーバ感度方程式が導かれます。
Sin (dBm) = NF (dB) + KTBRF (dBm) + Eb/No (dB) - PG (dB)

数値例

以下に示す例は、スペクトラム拡散WCDMAのセルラベースステーションのレシーバを対象としたものです。レシーバ感度方程式は入力信号レベルのすべてのレベルに当てはまりますが、この例では、任意のEb/Noに対するビットエラーレートをパーセント(%BER)で表した最小規定感度での最大規定入力信号電力を使用しています。以下は、この数値例の条件です。
  • 最大規定入力信号レベルは、-121dBmでの12.2kbpsデジタル音声データレート信号に対する最小規定システム感度を満たす必要があります。
  • 規定のBER (0.1%)は、QPSK変調信号での5dBのEb/No値について得られます。
  • RF帯域幅は、チップレートと同じ3.84MHzです。
  • KTBRF (log) = 10 × log (1.381 10-23 W/Hz/K × 290K × 3.84MHz × 1000mW/W) = -108.13dBm
  • Rbitの規定ユーザデータレート(12.2kbpsに等しい)では、PGは、PG = Rchip / Rbit = 314.75numericすなわち25dBlogとなります。
  • これらの値を代入して、Sout / Nout = Eb/No × Rbit / BRFを解くと、5dB - 25dB = -20dBとして出力信号対ノイズ比が求まります。これは、スペクトラム拡散システムが、拡散帯域幅に対して実際には負のSNRで動作することを表しています。
最小規定感度を満たす最大許容レシーバノイズ指数は、レシーバ感度方程式を使用してNFmaxを解くだけで簡単に求まります。
Sin (dBm) = NF (dB) + KTBRF (dBm) + Eb/No (dB) - PG (dB)
以下の手順と図2は、NFmaxを求めるための追加の手引きを示すものです。

手順1:目的の感度での最大規定RF入力信号は、WCDMAについて-121dBmです。

手順2:5dBのEb/No値を減算して、-126dBmのユーザ帯域幅(12.2kHz)での最大許容ノイズレベルを求めます。

手順3:25dBの処理利得を加算してRFキャリア帯域幅での最大ノイズレベルを求めると、これが-101dBmの最大許容ノイズレベルになります。

手順4:デバイスの入力ノイズレベルから最大許容ノイズレベルを減算すると、NFmax = 7.1dBになります。

図2.
図2.

注:5dBの代わりに3dBのEb/No値しか必要としないレシーバ設計で、より高効率の検出器を使用した場合、同じレシーバの7.1dBのNFmaxについて、-123dBmのレシーバ感度レベルが得られます。一方、低減されたEb/No値に対する感度では、より高い9.1dBのNFmaxがそのまま許容されるので、-121dBmの最大規定入力信号レベルを満たすことができます。

結論

次のレシーバ感度方程式は、ノイズ指数の定義から得られます。
Sin (dBm) = NF (dB) + KTBRF (dBm) + Eb/No (dB) - PG (dB)
これを使用すると、設計者は、任意の入力信号レベルについて、スペクトラム拡散リンクバジェットにおけるレシーバパラメータのトレードオフを求めることができます。これは特に、システム感度を求める場合に役立ちます。

参考資料

  1. CDMA Systems Engineering Handbook, Jhong Sam Lee & Leonard E. Miller, Artech House Publishers, 1998.
  2. CDMA RF System Engineering, Samuel C. Yang, Artech House Publishers, 1998.

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