なぜパンデミックにならないとリモート患者モニタリングの価値が理解されないのか?

2020年4月21日

Andrew Baker 筆者:Andrew Baker
マキシム・インテグレーテッド、高度センサー製品担当マネージングディレクター


私たちが毎日目にするCOVID-19パンデミックの恐ろしいニュースによって、リモート患者モニタリングの有効性に注目が集まっています。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国の成人10人中6人が少なくとも1つの慢性疾患を抱えており、成人10人中4人は2つまたはそれ以上を患っています。心臓病、癌、呼吸器疾患、糖尿病、および腎臓病などの病気は米国における死亡と身体障害の主な原因であり、年間3兆5000億ドルに上る米国の医療費の最大の要因ともなっています。

現代において私たちが経験したことのない形で医療リソースが酷使されるという、このような前例のない状況で、これらの患者は従来中央集中化されていた医療サービスへのアクセスに支障をきたす可能性があります。場合によっては、治療の遅れによって苦痛を感じたり、もし通院先の施設がCOVID-19患者も治療しているとリスクに直面することになります。

今こそ、リモート患者モニタリングを採用し導入を促進して、治療成果を向上させ定期的な医療施設への通院の必要性を低減するような形で慢性疾患が管理されるべきです。COVID-19のようなパンデミックが発生した場合、リモート患者モニタリングは、医療専門家が各患者の状態に基づいてトリアージを行うために役立つ貴重なツールとなります。もちろんマキシムには、より分散化され、かつパーソナライズされた医療モデルに対応する技術があります。精巧なセンサーから高度なアルゴリズムや人工知能(AI)まで、基盤となる技術が利用可能で、データを収集および送信してリモート患者モニタリングに対応する高精度のウェアラブル医療機器を実現することができます。

使用される場所への技術の配備には当然さまざまな課題がありますが、社会はより技術志向になっているため、個人が自分自身にソリューションを適用することができなくても、多くの場合は支援してくれる家族や専門家のケアネットワークがあります。接続性の課題および機器によってデータが高信頼性で収集されていることの確保は、注意深い製品設計と簡素なセットアップ要件によって解決することができます。最近、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)はリモート患者モニタリング(RPM)の償還用の4つの現行医療行為用語(CPT)コードを承認しました(CPTは、償還のために医師、健康保険会社、および認定機関などの団体への内科、外科、および診断の処置とサービスの報告に使用される医療コードセットです)。そのため、リモートモニタリングの増加に向かう動機は整っています。

図1. 仮想往診などの遠隔医療ツールの使用は現在のCOVID-19パンデミック中に増加しています。図1. 仮想往診などの遠隔医療ツールの使用は現在のCOVID-19パンデミック中に増加しています。

ウェアラブルリモート患者モニタリングの新しい使用例

リング、リストバンド、イヤホン、パッチなどのさまざまな形状のウェアラブル機器は、便利で邪魔にならない形で継続的リモートモニタリングを提供することができます。私たちの多くは、日常の活動を追跡して一般的な健康指標を提供するスマートウォッチを身に付けることに慣れています。現在、これらのスマートウォッチが心拍数、血中酸素濃度(SpO2)、および体温などの主要な生体信号を監視することは、ごく当たり前になっています。将来的には、血圧および血糖値レベルもこのリストに加わるでしょう。このデータの監視によって、睡眠の質の評価から、睡眠時無呼吸や心房細動(Afib)などの各種の疾病や慢性疾患の検出まで、新しい使用例の扉が開かれました。これは、かかりつけ医によって指示された医療グレードのウェアラブルが広く受け入れられる道を開いています。

すでに、現在のパンデミックが拡大する中で、ヘルスケア技術企業は切迫したニーズに対処する中心的役割を果たしています。それらの企業はリモート患者モニタリングに必要なインフラストラクチャの配備を促進するとともに、ヘルスケアプロバイダの電子カルテ(EMR)システムへの自社ソリューションの統合を進めています。リモートモニタリングパッチを開発している企業は、COVID-19と診断されたより高リスクの人々の心臓および呼吸器に関するパラメータを測定する製品の調達と配備への協力を地方政府から求められています。ECGパッチは、生体インピーダンス(呼吸を評価するための臨床的に認められた方法)の測定値も提供する超低電力、医療グレードアナログフロントエンドデバイスを使って設計することができます。同様に、睡眠時無呼吸検出装置の製造業者には、COVID-19の患者の血中酸素濃度(SpO2)の監視に使用されるユニットが要求されています(SpO2は、心拍数および心拍変動とともに、睡眠時無呼吸監視で使用される主要な指標です)。さらに、高熱は新型コロナウィルスの(言うまでもなく感染を示す)指標であるため、体温監視を備えた機器は必須のツールとなります。

ヘルスモニタリング用のウェアラブルは、言わばもう1組の目と耳を医療専門家に提供し、患者の状態をリモートからモニタリングすることを可能にします。これは、現在のような遠隔治療が恩恵をもたらす状況で役に立ちます。最近のニュースで、誰もがソーシャルディスタンスのガイドライン遵守を心がけている中、医者は可能な限り患者に電話およびビデオ受診を行うように要望していると伝えていました。医師はある程度の指導を実際には提供することができますが、彼らの判断のベースになるのは主として個々の患者の話であり、かなり主観的なものです。特定の病気はデータの継続的な記録がある場合に最も高精度の診断が可能であり、そこでウェアラブルが真価を発揮します。例として、高血圧を考えてみましょう。臨床的に認められた方式は、理想的には毎日同じ時刻に、安静状態で血圧を測定することです。しかし、さまざまな要因(不安など)によって、診察室で血圧が急上昇する場合(「白衣高血圧」)や、自宅で上昇する場合もあります(「仮面高血圧」)。ウェアラブル医療機器は、血圧およびその他のバイタルサインデータを継続的かつリアルタイムで収集することによって、医師の定期的な往診時に行われる定期的な測定で分かることよりも、より有効な知見を提供することができます。電話/ビデオ受診の後で、医師は血圧を含むバイタルサインを監視するパッチを処方するとします。患者はこのパッチを郵送で受け取り、自分で装着するか、または介護者に装着してもらいます。1週間~10日ほど装着した後で、郵送で送り返すか、理想的には、ヘルスケアプロバイダのEMRシステムにリアルタイムデータをアップロードします。

図2. ウェアラブル医療機器は在宅の患者による使用が可能で、血圧を監視することができます。
図2. ウェアラブル医療機器は在宅の患者による使用が可能で、血圧を監視することができます。

慢性疾患管理の場合、ウェアラブル医療機器は患者が病院に行く必要があるか、それとも自宅で状態を管理することが可能かどうかを医者に通知してくれます。それらの機器は処方薬の監視にも同じように使用することが可能で、患者が処方どおりに薬を飲んでいるか、薬による副作用が生じていないか、あるいは薬の量を調整する必要があるかなどを管理することができます。さらに一歩進めて、専門家ではなく一般開業医が継続的なウェアラブルモニタリングを処方するのがより一般的になったらどうでしょう?それによって、より早期に知見を得ることが可能になり、患者が心配のない状態か、それとも本当に専門家の診察を受ける必要があるかが、データから明らかになります。これは、ヘルスケアプロバイダがケアの質に影響を与えずに施設の使用を管理するために役立ちます。もちろん、私たちが今経験しているようなパンデミックでは医療施設が飽和状態になるため、トリアージがさらに重要な活動になります。医療施設に来院する患者の大部分が基本的なバイタルサインウェアラブル医療機器を身に付けているとしたらどうでしょう。収集されたデータを調べることによって、医療専門家は各患者の状態を迅速に判断し、ケア現場での優先順位付けをより高精度で行うことが可能になります。

まとめ

リモート患者モニタリングをより一般的なものとするには、従来中央集中化されていた医療モデルを変化させる必要がありますが、これを行う時が来ています。低電力と小型サイズを提供し、各種のバイタルサインを監視する能力を備えた医療グレードのセンサーICは、ウェアラブル医療機器による高精度、リアルタイム、および継続的なモニタリングの提供を可能にしています。この貴重なデータに高度なアルゴリズムとAIを適用することで得られる知見は、分散型のケアモデルを促進し、予測的/予防的ケア、慢性疾患の管理、その他多くのことについて患者と医師がより事前予防的に取り組むことを可能にします。最終的には、治療成績を向上させるために、よりパーソナライズされた医療を、より低いトータルコストで提供することが重要であり、より健康な世界を作ることが目標です。

安全と健康にお気をつけてお過ごしください!

その他のリソース

リモート患者モニタリングの詳細については、以下のお客様の声をお読みください。

  • 富士通コネクテッドテクノロジーズ社:ヘルスモニタリング機能を備えた使いやすいスマートフォンを作成
  • Spire社:活動レベル、心拍数、睡眠の質、呼吸パターン、およびストレスレベルを監視するウェアラブル機器を製造