ウェアラブルヘルスケア設計の将来を考える

2017年4月13日

Andrew Baker 著者:Andrew Baker
インダストリアル&ヘルスケア製品事業部エグゼクティブディレクター、マキシム・インテグレーテッド


シアトルで最近開催された「レトロウイルスと日和見感染に関する会議」 (CROI)の場で、私は数人の医師や臨床家と会合を持ち、非常に実り多い議論を交わす機会に恵まれました。とりわけ意義深かったのは、彼らとの議論を通じて、マキシムの生体センサー技術の背後にあるテクノロジーが、バイタルサインをモニタする比較的安価な手段の土台として、臨床の現場で役立つという確認が得られたことです。マキシムのhSensor Platformは、私たちが開発しているそうした実現力のあるテクノロジーの一例です。

こうして医療関係者から確かな支持が得られたことには胸の躍る思いですが、それにも増して刺激的なのは、人びとがより健康な生活を送れるようにするために、当社のセンサーソリューションをどう利用することができるかを思い描くことです。想像してみましょう。もし医療サービスをほとんど受けられない僻地の村で、ウェアラブルヘルスケア機器や生体センサー対応のスマートフォンを通じて人びとの健康を遠隔モニタすることができたとしたら。あるいは、医療設備の乏しい病院がウェアラブル機器によって不足を埋め合わせることができたとしたら。たとえば、バイタルサインを測定する低コストのパッチがあれば、医療サービスのコスト効率を高めることができるでしょう。

マキシムのhSensor Platformは、1つの生体電位アナログフロントエンド(AFE)ソリューション、1つのパルス酸素濃度計および心拍数センサー、2つの体温センサー、1つの3軸加速度計、1つの3D加速度計および3Dジャイロスコープ、1つの絶対気圧センサーを内蔵しています。このプラットフォームでは、それらの各コンポーネントを設計技術者が自らの設計コンセプトに照らして評価することが可能で、製品の開発サイクルを最大6カ月短縮することが可能です。このプラットフォームには、次のような様々な使用事例があります。

  • 光センサーソリューション、心拍数や血中酸素濃度の測定
  • ウェアラブルパッチ、胸部ストラップソリューション、不整脈検出デバイスなどの設計による心電計アプリケーション
  • 温度測定ソリューション
  • マルチセンサーソリューション、様々なパラメータの測定

シアトルにおける私と医療関係者との会合は、Specialists in Global Health (SiGH)の協力によって設定されました。この組織はカリフォルニア大学サンディエゴ校を母体とした非営利団体であり、全世界で医療専門家の教育を支援するとともに、問題解決に役立つモバイルテクノロジーの開発と導入を後押ししています。シアトルでの会合は、当社のウェアラブルヘルスケアテクノロジーの有効性を確認する取り組みの一環にすぎませんでした。SiGHは、当社のテクノロジーを医療の現場で有効に使用することができるかどうかを確認するための臨床評価試験も実施しています。今夏にその試験が完了した後、結果を受け取ったら、詳しく報告したいと思います。

Andrew Bakerは、シアトルで開催された「レトロウイルスと日和見感染に関する会議」 (CROI)で、マキシムの生体センサーテクノロジーについて議論した。

遠隔医療の普及に向けて

フィットネストラッカーは、当社がウェアラブルテクノロジーで生み出し、実現することができるもののごく一部にすぎません。当社が提供するテクノロジー、コネクティビティ、およびアプリケーションは、遠隔医療をさらにありふれた現実とすることを可能にしつつあります。健康に関係するデータを患者から医師に送信することができるデバイスは、さらに普及していきます。たとえば、世界各地のいくつかの大学の研究者たちが昨夏、心拍数、血中酸素濃度、皮膚温、紫外線(UV)曝露、および皮膚の色の変化をモニタすることができる、バッテリーのいらない伸縮可能なウェアラブルパッチの開発を発表しました。この非常に薄いパッチは、それらの健康データをワイヤレスで送信することが可能で、また近距離無線通信(NFC)によってワイヤレスで給電されると、その研究者たちはScience Advances誌上のオプトエレクトロニクス分野の記事で説明しています。

患者に対する高頻度のモニタリングは、ウェアラブルヘルスケア機器で可能にすることができるもう1つの現実です。昨夏、ウィチタ州立大学で医用生体工学を学ぶ学生たちは、アメリカ国立科学財団から、Mobile HealthLinkというスマートウォッチ用モバイルヘルスモニタリングアプリケーションの開発促進を目的とした5万ドルの助成金を受け取りました。このアプリケーションの目的は、医師が患者を遠隔モニタすることができるようにし、通院の必要をなくすことです。患者の方では、スマートウォッチのインタフェースを介して医師とコミュニケーションをとることができます。

技術者たちは、ウェアラブルテクノロジーを利用した、その他様々な健康パラメータのモニタリングの有効性を追求し続けています。研究者たちは生体に傷をつけないで血糖値測定を可能にする方法を何十年も研究しており、いまや明るい兆しがいくつか見られます。今後5~10年で、何らかの実用的なソリューションが現れるというのが現実的かもしれません。2型糖尿病に対しインスリンを計測して投与するモニタなど、より低コストのソリューションを商業化する道を見いだそうという取り組みも行われています。人体への水分補給に関する研究も行われています。しかし、水分補給はいかなる測定単位にも対応しないため、水分補給が必要となった時にユーザーに対して正確に警告することができるツールを開発するのは容易でないことがわかっています。手首バンドを使わない代替的な血圧測定方式についても研究が行われています。

診療ごとに支払う医療サービスから、価値に基づく医療サービスへ

医療サービスは、ウェアラブル機器やその他の遠隔医療テクノロジーによって、まさに姿を変えようとしています。こうした展開は、医療サービスを適宜に受けにくい、移動手段の限られた人たちや、発展途上諸国の辺境に住む人たちにとって特に有利だと考えられます。実は、これらのテクノロジーがより広く利用されるにつれて、その恩恵は私たち全員に及ぶ可能性があります。昨年11月、サンタクララで開催されたIDTechEx Show!の場で、GoogleのHeidi Dohse氏は、自身の30年にわたる心臓疾患との付き合いについて詳しく話しました。彼女は、ウェアラブル機器と患者から引き出されるデータが、いかにして医療サービスのあり方を、診療ごとに支払う現在のモデルから価値に基づくモデルへと変えつつあるかを力説しました。Wi-Fi機能を内蔵したDohse氏のペースメーカーは、彼女が自転車を走らせている時に心拍が安全な範囲から外れると警報を発します。このデバイスは、収集したデータを主治医に直接送信することもできます。

患者と医師の双方に健康データをより簡単に利用することができる力が与えられるなら、このモデルは治療成績の向上に資する可能性があります。低電力、小型、低コストなどの要因が、今後もウェアラブルヘルスケア機器内の基盤的なテクノロジーを進歩させる原動力となります。こうしたテクノロジーは最終的に、より健康な世界を作り出すのに貢献することができます。