バッテリマネージメントの課題に関して知っておくべきこと

2019年7月2日

Christine Young  筆者: Christine Young
 ブロガー、マキシム・インテグレーテッド 


皆さんがそわそわし始めるレベルは30%でしょうか、15%でしょうか。あるいは、スマートフォンを可能な限り使い倒し、バッテリ残量が5%まで落ちたところで、あわてて充電スポットに駆け込むといったところでしょうか。電気自動車のドライバーが走行距離を心配するのと同様に、モバイル機器のユーザーがバッテリ残量の低下に気をもむのはもっともなことです。実は、この悩みには名前があり、「ノモフォビア」(nomophobia)と呼ばれています。これはno-mobile-phobia、つまり「携帯電話が使えなくなることへの恐怖症」という意味であり、信号レベルの低下やバッテリの残量不足などがその原因になると考えられます。

そして、結局のところ電子機器の取り扱いや給電では、バッテリマネージメントが中心的な問題となります。誰でも毎回の充電後、再びプラグを差し込むまでの間に、機器をできる限り有効に利用したいと思うはずです。また、ご使用の機器によっては、充電時にバッテリの限界値を上回ったり下回ったりしないように、充電の仕方を工夫することもあるでしょう。そうして、機器の過充電(過熱や悪い場合は発火の原因)や過放電(回復不可能な容量減少の原因)を防止するわけです。

ポータブル電子機器を設計するエンジニアにとって、バッテリマネージメントはより深刻な課題をはらんでいます。機器はますます小型化しており、それはバッテリ容量に影響を与えます。それでもなお、消費者は長いバッテリ寿命を要求します。一般に内蔵型であるリチウムバッテリには、最近まで完全には利用することができなかった高度なバッテリマネージメント技術が必要です。リチウムバッテリと、その性能管理に関わる主な課題について詳しく検討しましょう。

スマートフォンユーザーは、この写真のスマートフォンのようなポータブル機器に長い動作時間を期待します。そのため、機器の設計者には優れたバッテリマネージメント戦略が不可欠です。

各種のリチウムバッテリ
最初の市販リチウムバッテリは1970年代初頭に発売されました。当時は再充電が不可能でした。再充電可能なリチウムバッテリが登場したのは20年後です。1991年、ソニーが最初の市販リチウムイオンバッテリを発売したのです1。リチウムイオンバッテリは、エネルギー密度が高い、自己放電が低率である、メモリ効果をほとんど示さないなどの長所を備えています。また、さまざまな化学組成のものがあり、それぞれ特定のアプリケーションに最適です。概要は次のとおりです。

  • コバルト酸リチウム(LCO)は、携帯電話、ノートPC、デジタルカメラなどのモバイル機器に適した高いエネルギー密度を実現します。
  • マンガン酸リチウム(LMO)は、内部セル抵抗が小さく、急速充電と大電流の放電に対応しており、電動工具、医療機器、ハイブリッド車や電気自動車でよく使用されます。
  • リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)は、大容量と大電力を実現し、電動工具、電動自転車、その他のエレクトリックパワートレインに最適です。
  • リン酸鉄リチウム(LiFePO4)は、大電流定格、長いライフサイクル、優れた熱安定性を実現し、鉛酸スタータバッテリの代替や蓄電用によく使用されます。
  • リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAIO2)は、高い比エネルギー、優れた比出力、長寿命を実現し、電気自動車のパワートレインで使用されます。
  • チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)は、急速充電と大電流の放電に対応し、安全性が極めて高いと考えられています。エレクトリックパワートレイン、無停電電源(UPS)、太陽電池式の街路照明でよく使用されます2

ポータブル機器のバッテリ寿命延長
ポータブル機器の場合、強固なバッテリマネージメントシステムを備えることは主要な設計課題に対処する上で重要な要素であり、以下ではこの問題について説明します。

バッテリ寿命の延長
長いバッテリ寿命はポータブル機器メーカーにとって至高の目標ですが、それはまた最も困難な課題の1つです。容量の制約にもかかわらず、機器は世代を追うごとに、より多くの高度な機能を装備しています。スマートウォッチを取り上げてみましょう。初期の製品は、テレビの受像(セイコーT001)、計算器、予定表やメモ帳アプリケーション(セイコーRC-20リストコンピュータ)などの機能を備えていました。テレビは単3電池で数時間の視聴が可能でした。最新のスマートウォッチは非常にしゃれたデザインで、ヘルス/フィットネスモニタ、メッセンジャー、音楽プレーヤーなどとして使用することができます。最も高性能な製品では、バッテリ寿命が1回の充電で数日間にも及びます。リチウムイオンバッテリを最大限に利用するには、バッテリマネージメントICの自己消費電流などを考慮することが不可欠です。たとえば、自己消費電流が数マイクロアンペアにすぎない残量ゲージICは、バッテリ寿命の延長に有効です。

機器の信頼性と安全性の維持
機器の信頼性と安全性を向上させるには、電力消費の慎重な管理、ユーザーに正確なバッテリ残容量値(SOC)データを提供する機能、およびバッテリセルの信頼性のある保護が必要です。熱の問題は興味深い難問を引き起こします。英国のバッテリコンサルタント会社は、自社のバッテリやエネルギー技術に関するウェブサイトで次のように指摘しています。「皮肉なことに、バッテリエンジニアが絶えず小型化する容積の中にますます多くのエネルギーを詰め込もうとするにつれて、アプリケーションエンジニアがそれを再び取り出すことはいよいよ困難になる」3。バッテリ充電コントローラ技術は、さまざまな条件(短絡、開回路、カットオフ以下など)を検出するバッテリ性能評価、バッテリ温度の検出、チャージャのあらゆる状態に対するタイムアウト設定により、有効性を発揮することができます。バッテリSOCデータについては、残量ゲージICにより、バッテリから機器に再充電なしで給電可能な残時間を予測することができます。また、バッテリセルを保護するには、信頼性の高いバッテリモニタやバッテリプロテクタなどのICが必要です。これらはそれぞれ、高精度な測定により精密に電圧を確定するデバイス、および個別のセル電圧をモニタしながら過電圧/低電圧状態を防止するデバイスです。

カメラバッテリこのカメラのようなポータブル機器に給電するには、小型でしかも効率的なバッテリが必要です。

ソリューションの小型化とコスト削減
ポータブル機器はますます小型化しているため、内蔵バッテリは多彩な機能に電力を供給しつつも、過度に大きなスペースを占有することはできません。そのため、ポータブル機器の内部ではコイン電池サイズが一般的となっています。その結果、バッテリマネージメントICに組み込まれる機能が多いほど、スペースの制約や部品コストの要件を満たしやすくなります。

バッテリの複製や偽造からの保護
バッテリパックの複製は、業績に対してもブランドの評判に対しても有害です。最悪の場合、偽造バッテリは傷害や物的損害の原因にもなりかねません。偽造品は、正規品に組み込まれている安全性部品や保護デバイスが欠如していることがよくあります。認証では、製品が本物であり、偽造からの保護を備えていることを確認します。最新の残量ゲージICは、SHA-256ハッシュ暗号アルゴリズムによってセキュリティ保護された方式を実装し、コスト効率に優れた比較的容易なバッテリ保護手段を提供しています。

USB-Cに対応した充電回路の設計
双方向のデータ伝送および給電用に、小型、多機能のUSB-Cコネクタを備えたモバイル機器が増加しています。しかし、USB-C用の充電回路の開発には特有のスキルセットが必要であり、特に従来のUSB規格用の設計に伴う作業と比較した場合、違いは顕著です。USB-Cバックチャージャ技術はこのプロセスを簡素化し、個別のポートコントローラICを不要にするとともに、ホストソフトウェア開発の軽減と部品コストの削減を実現することができます。

バッテリマネージメントICによるコスト削減、省スペース、バッテリ寿命延長
バッテリマネージメント技術は従来、多くのエンジニアにとって特に利用しやすいものではありませんでした。バッテリマネージメントシステムの中核機能は、充電と残量測定などであり、これはいかなるモバイル機器やモノのインターネット(IoT)アプリケーションでも非常に重要です。しかし、バッテリから高度な性能を引き出すには、残量測定アルゴリズムを駆動する高品質なバッテリモデルが必要です。特定のバッテリ用に適正なモデルを抽出するには、複雑かつ高コストな作業が必要であり、通常は少数の大規模メーカーでしか対応することができません。幸いにも、高度なアルゴリズムを組み込んだ最新の残量ゲージICにより、高精度なバッテリモデルの利用が可能となっています。たとえば、マキシムは、ModelGauge m5 EZアルゴリズムを内蔵した残量ゲージICを提供しています。このデバイスにより、バッテリの特性評価を行わなくても非常に高精度なバッテリSOCデータが得られます。設計者は、評価キットソフトウェアのシンプルな設定ウィザードを使用して、バッテリモデルを自分で生成することができます。これらの残量ゲージICは、バッテリチャージャ、モニタ、プロテクタ、セレクタ、識別/認証ソリューションを含むマキシムの広範なバッテリマネージメントポートフォリオの一部です。マキシムのバッテリマネージメントに関するページで、開発ボード、アプリケーションノート、ビデオなどをご確認ください。次回のバッテリ駆動ポータブル製品の設計に際して、迅速に作業に着手することができます。

参考文献
1 https://batteryuniversity.com/learn/article/lithium_based_batteries
2 https://batteryuniversity.com/learn/article/types_of_lithium_ion
3 https://www.mpoweruk.com/thermal.htm