GPSを設計に組み込むとどんな利点がある?

2018年7月17日

Jim Harrison 筆者:Jim Harrison
ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications 


グローバルポジショニングシステム(GPS)は驚くべきものです。あちこちを動き回る際に役立ち、友だちに自分の居場所を知らせることができ、公園の茂みの中でiPhoneをなくしてしまっても見つけることができます。

また、GPSを使えば政府当局が私たちの居場所をいつ何時でも知ることができるだけでなく、私たちが訪れるすべての場所をほぼ常に把握することもできます。しかし、差し当たりこの問題には深入りしないでおきましょう。1つ指摘しておくとすれば、最近、最高裁判所は、警察が携帯電話の記録を調べて個人を追跡するには裁判官から令状を取得する必要があるとの決定を下しました。したがって、今ではそうした追跡は政府にとって少し難しくなっています。

ドライバーが運転している時、GPSは常に情報を取得しています。その結果、カーナビゲーションシステムは交通情報を取得します。GPSにより、道路上のすべての自動車の速度を常に読み取ることによってです。

私は自分のiPhoneでハイキングアプリ(AllTrails)を使っています。トレイルマップをダウンロードしてから出発すれば、Wi-Fiや携帯電話ネットワークに接続していなくても、進路上で自分がどこにいるかを常に把握することができます。なぜなら、GPS信号を受信しているからです。GPSレシーバの消費電力はどれくらいでしょうか。そして、そのガイドを使用して、どれくらい長くハイキングやバックパック旅行を続けることができるのでしょうか。一概には言えませんが、まる1日くらいは間違いなく可能です。GPSチップの動作電流は15mA程度です。しかし、ほとんどの時間はスタンバイ状態(1mA未満)にあります。

GPSなどのグローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)は、世界的な情報インフラストラクチャに欠かせない要素の1つです。GPS/GNSSは無料かつオープンで信頼性が高いため、現代の生活のあらゆる側面に関わる何百ものアプリケーションが開発されています。GPSテクノロジーは、今では携帯電話や腕時計からブルドーザー、輸送用コンテナやATMまで、あらゆるものに組み込まれています。

そしておそらく、今後の製品設計にも取り入れるべきものです。GNSSにはそれほどコストがかかりません。GNSSを利用すれば、メーカーやその顧客はどこであろうと機器を追跡することが可能です。万一、盗まれたり紛失したりしても見つけることができます。およそカメラを使用するなら、画像を撮影した場所がわかることが望ましいでしょう。多くのポータブル測定器でもそれは同じです。しかし、問題はGPSやその他のグローバル追跡機器が受信専用であるということです。したがって、位置を把握することはできますが、その情報をユーザーに伝える方法については別途考案する必要があります。自動車では、主にセルラーネットワークを使用してこの接続を実現しています。

ナビゲーションの詳細

GNSSとは、ポジショニング、ナビゲーション、タイミング(PNT)のサービスを全地球規模や地域的な規模で提供するあらゆる衛星システムの総称です。GPSは、衛星と衛星制御システムをユーザーの利用に供する米国の公益的なGNSSです。米国空軍がこの衛星および制御システムを開発、保守、運用しています。

GPSや欧州のGalileo、日本のQZSS、ロシアのGLONASSなどのグローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)では、レシーバが3つ以上の衛星からの距離を計算することで自らの位置を割り出します。すべてのGNSS衛星は、なお使用中の最も旧い世代のものも含めて、L1信号というメッセージをブロードキャストしています。この信号には、衛星の位置、時刻、識別用のシグネチャパターンが含まれます。L1信号の周波数は1575.42MHzです。比較的新しい世代の衛星は、L1に加えて、L5というより複雑な信号を別の周波数(1176.45MHz)でブロードキャストします。レシーバはこれらの信号を利用して、信号が衛星からレシーバに届くまでの時間に基づき、各衛星からの距離を決めます。現在、市場ではL5を利用する高度なシステムが、一般に石油やガスの探査などの産業用途に提供されています。L1とL5の両信号を使用する量産チップの市販も始まっています。現時点では、L5信号を備えた衛星は、日本とオーストラリアの上空のみを通過する一群を含め、軌道上に約30基あります。

基本的なGNSSシステム

図1. 基本的なGNSSシステム。図の提供元:www.gps.gov

米国政府は現在、民生用GPSの平均水平精度を4mとしています。垂直精度はそれより劣ります。もっとも、これはワーストケースの場合です。機器や場所によっては、ほぼ確実(95%以上の場合)に3mの精度が得られます。L5機能を備えたハイエンドの携帯電話が、2018年中にいくつか発売される予定です。これらの携帯電話は、約±4cmの精度を発揮します。

一部の携帯電話メーカーは、携帯電話による緊急通話の際に発信者の位置を特定するため、HELO (Hybridized Emergency Location)という技術を利用しています。この技術では、携帯電話の基地局と、電話機に搭載されたGPSやWi-Fiアクセスポイントなどのデータソースを利用して、911番を携帯電話で発信した人の位置を推定します。iPhoneでは、どのアプリでも位置情報の提供をオフにすることができますが、この機能は例外です。興味深いことに、携帯電話では位置を特定するために気圧のデータも利用しています。

ナビゲーション用のチップ

マキシムが提供するMAX2769 GNSSレシーバICは、GPS、GLONASS、Galileoの衛星に対応しています。このチップのシングルコンバージョン、低IF GNSSレシーバは、携帯電話機などの幅広いアプリケーションで高性能を発揮します。このチップには、デュアル入力LNAおよびミキサ、イメージ除去フィルタ、プログラマブルゲインアンプ、VCO、フラクショナルN周波数シンセサイザ、水晶発振器、および50MspsマルチビットA/Dを含む完全なレシーバチェーンが内蔵されています。レシーバの総合雑音指数は、わずか1.4dBです。MAX2769は、少数の外付け部品しか必要としないオンチップIFフィルタを実装しています。その20ビット、デルタシグマ、フラクショナルNシンセサイザでは、デバイスを約±40Hzの精度で必要なVCO周波数に調整することができます。

リファレンス回路4275

図2. MAX2769レシーバを備えたGPSリファレンス設計の上面図。リファレンス回路4275。

このICには、パッシブおよびアクティブアンテナ用の2つのRF入力、2つの汎用LNA、および1つのアンテナスイッチがあります。このデバイスは2.7V~3.3V電源を使用し、エクスポーズドパッド付き、5mm × 5mmの28ピンTQFNパッケージで提供されます。この製品はダイでも提供されます。評価キットが利用可能です。このチップの単価は数量100個で約3.60ドルです。

GPS設計に関係するマキシムのもう1つのチップは、GPS/GNSS超低電流ローノイズアンプのMAX2679Bです。このデバイスは、GPS L1、Galileo、およびGLONASS用の1575MHz設計を対象とし、入力換算1dB圧縮ポイントおよび3次インターセプトポイントの最適化を特長としています。消費電流はわずか650µAで、1.03dBの雑音指数と16.5dBの利得という優れた性能を発揮します。このデバイスは1.08V~1.98Vの単一電源で動作し、4ピン、0.83mm × 0.83mmのWLPパッケージで提供されます。

図3. MAX2679B超低電流LNAのファンクションダイアグラム。

まとめ

GPS、Galileo、QZSS、GLONASSなどのGNSSは、私たちエンジニアが最大限に活用すべき素晴らしい資産です。無料かつオープンで信頼性の高いGPS/GNSSシステムは、現在、地球上のほぼすべての人や私たちの大部分の生活に関わる何百ものアプリケーションで利用されています。