ウェアラブル機器で高精度なバイブレーション制御を実現する

2018年1月4日

Frank Dowling 筆者:Frank Dowling
マキシム・インテグレーテッド インダストリアル&ヘルスケアビジネス部門ビジネスディレクター 


いまや多くのアプリケーションがハプティック技術を取り入れ、触覚に訴えることで現実感あふれる魅力的な体験を提供しています。ハプティック技術の威力はウェアラブル機器でも発揮されています。スマートウォッチは、ユーザーがハイキング中に曲がる方向を間違えた場合、バイブレーションで知らせることができます。ランニングにおいても同様で、ユーザーが目標のペースを維持しているか、それとも遅れているかを通知することが可能です。さらに、ある特定のバイブレーションで上司からの着信、また別のバイブレーションで他の大事な人からの着信がわかるとすれば、その利便性を認めないわけにはいきません。

しかし、ウェアラブル機器にハプティック技術を組み込むのは、スペースがあらかじめ限られている上、消費電力が大きな課題となることから容易なことではありません。この困難を克服する方法の1つは、パワーマネージメントIC (PMIC)を設計に取り入れることです。

ハプティックアプリケーション、特に、ウェアラブル機器、ポータブル機器、さらには一部のIoT (モノのインターネット)ガジェットのような製品向けのPMICは、小型化や高効率の厳しい要件を満たす必要があります。そのような製品はたいてい、スタンバイモードに置かれる時間が長く、定期的にウェイクアップして何らかのタスクを実行します。そうした事情から、機器のバッテリ寿命の延長を促すため、バッテリから供給されるスタンバイ電流を可能な限り小さくすることが不可欠となるのです。こうした基準に基づき、一部のシステム設計者は、パワーアーキテクチャを簡素化し、1つのコンバータの自己消費電流のみ負担してシステム全体に給電することにより、システムの自己消費電流を最小限に抑えるのが最善の方式だと結論づけています。たとえば、システム全体の給電用に単一の3V電源を指定し、負荷スイッチを使用して、回路の一部が使用されない時にその部分を切断してバッテリ寿命を維持することが考えられます。しかし、こうした方式の問題は、スタンバイ電流が最小限に抑えられるとはいえ、アクティブモードでは消費電力が増大するため、最適な平均電流が達成されないという点です。その結果、バッテリ充電サイクル全体の平均電力は最適化されません。

高忠実度のハプティック効果を実現

今日のウェアラブル機器の多くは、偏心回転質量(ERM)アクチュエータを利用してバイブレーション(振動)を生み出しています。通常のDCモータと同様、ERMモータは直流電流の磁場を利用し、円環内で物体を動かします。それに対して、リニア振動アクチュエータ(LRA)では、状況に応じた情報を機器の着用者に伝える、より高度なバイブレーション信号を設計者は生み出すことができます。LRAでは、AC入力に基づき、供給した電気信号に対応する周波数と振幅のバイブレーションを生み出すボイスコイルを使用します。LRAはより複雑ですが、通常、ERMよりも小さな消費電力でバイブレーションを生み出します。PMICを使用する場合、同様の基準が当てはまります。つまり、特定のバイブレーションを生み出すのに必要なバッテリ電力を最小化するようなPMICが理想的です。

ハプティック機能を組み込んだウェアラブル機器の電力関連の設計課題に十分に対処するには、PMICは次のような機能を備える必要があります。

  • 超低自己消費電流のレギュレータ。常時オンリソースのスタンバイ電力を低減し、バッテリ寿命を延長し、バッテリのサイズを縮小
  • アクティブ電力を削減しつつ、バッテリ寿命の延長とバッテリサイズ縮小を実現する効率的なレギュレータ
  • スペースに制約がある設計で高度な電力アーキテクチャに対応する高集積化
  • スイッチングノイズ抑制、統合型I2C制御、集積化ボタン/リセット制御、残量ゲージなどの要素を備えたシステム管理
  • 電力効率に優れたハプティックドライバ

マキシムは、市販製品で初となるハプティックドライバを備えた新しいPMICを発表しました。超低電力ウェアラブル機器用のPMICであるMAX20303は、自動共振トラッキングを備えたERM/LRAハプティックドライバを特長としています。このPMICのパワーマネージメント機能はバッテリ充電量を拡張します。このデバイスは、3.71mm × 4.21mmのウェハレベルパッケージ(WLP)で提供されます。MAX20303は、次の機能も備えています。

  • Micro-IQブーストおよびバックレギュレータ
  • 内蔵のリニアリチウムイオンバッテリチャージャ、Micro-IQ低ドロップアウト(LDO)レギュレータ、および電流シンク
  • パワーオン/リセットコントローラ、I2C設定機能、およびオプションの残量ゲージ

MAX20303ブロックダイアグラム超低電力ウェアラブル機器用の設定可能な高集積パワーマネージメントソリューション、MAX20303のアプリケーションブロックダイアグラム

アプリケーションの一例として、GPSスポーツウォッチを考えましょう。このウォッチでは、MAX20303により、プロセッサ、センサー、GPS、およびBluetooth Low Energyインタフェースのパワーレールをすべて提供することができます。また、バッテリの充電、バッテリ充電状態の監視、およびユーザーに対するハプティックフィードバックの提供も可能です。

民生、メディカル、および車載アプリケーションがハプティック技術の成長をけん引

調査会社MarketsandMarketsの分析によると、ハプティックアプリケーションの設計者には大きな可能性が開かれています。同社では、ハプティック技術の市場が2022年までに195億5,000万米ドルに達し、2016~2022年の年平均成長率(CAGR)は16.20%に達すると予測しています。この調査会社では、こうした成長の主な要因として、民生用エレクトロニクスへの導入が増加していることと、医療車載分野のアプリケーションでも導入が見込まれることを挙げています。設計者にとって、MAX20303 PMICのような基盤テクノロジーは、超低電力の小型電子機器に触覚機能を取り入れるという課題に対処する上で極めて有効なのです。