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パワープレー:電源アプリケーションおよび回路の設計上のヒント
多相バック電圧レギュレータの特長を理解する

2020年5月26日

Reno Rossetti 筆者:Reno Rossetti
 パワーブロガー、マキシム・インテグレーテッド


ステップダウン(バック)電圧レギュレータは本質的に高効率であるため、長年にわたってDC-DC変換電子回路の定番となっています。サイクル全体の中でバックモードでのみ電流は出力に向けられます。サイクル当り、より高電流が出力に供給されるため、バックコンバータは最も効率的なアーキテクチャです。多くの例の1つとして、現代のマイクロプロセッサは、強力なサーバーブレードで使われるものからスマートフォンで使われるものまで、非常に低い入力電圧で動作するため、バックコンバータは必要な電力源となっています。これらのアプリケーションが高度化するとともに、電力源も供給電力を増強するとともに効率の向上によって熱損失を低減する必要がありました。それに応じて、バックコンバータは非同期整流から同期整流スイッチングへ、また数百mAの電流を供給する単相デバイスから数十~数百Aの電流を供給可能な多相デバイスへと進化してきました。図1は、スマートフォンやタブレットのCPUコアチップに給電する最新の4相インタリーブバックコンバータを示しています。

図1. 多相、インタリーブPCBの図図1. 多相、インタリーブPCBの図

2相インタリーブバックコンバータアーキテクチャ

話を簡単にするために、2相インタリーブ、同期整流バックコンバータアーキテクチャに説明を絞ります(図2)。

図2. 2相インタリーブバックコンバータの図図2. 2相インタリーブバックコンバータの図

2つのインタリーブされた位相によって、リップル電流の低減およびそれによる、リップル電圧の低減が保証されます。比較的低い相当りの動作周波数動作で低い総リップル電流が得られます。1つの例として、図3は180°逆位相で33%デューティサイクルの2つのリップル電流による総リップル電流が、単相の2倍の周波数で半分の大きさになることを示しています。出力電流リップルおよび電圧リップルがより低く周波数がより高いということは、出力に必要なコンデンサの数が少なくなり、部品数が減少することを意味します。

図3. 2相の電流リップル低減と時間の関係を示す図図3. 2相の電流リップル低減と時間の関係を示す図

2相アーキテクチャは、必要な入力コンデンサも少なくなります。総入力電流は2つの逆位相電流(図4のIIN1およびIIN2)の和です。ここで、総入力電流が時間に対して拡散されるため、単相動作に比べて入力電流の総RMS値が低減し、より小型の入力電流リップルフィルタの使用が可能になります。

図4. 2相の出力リップル電流および入力電流と時間の関係を示す図図4. 2相の出力リップル電流および入力電流と時間の関係を示す図

さらに、図5に示すように、2つの方式が同じ出力リップル周波数で動作する場合、2相(2Φ、赤で表示)は単相(1Φ、青で表示)より効率的です。単相は、2相の2倍のスイッチング周波数(fSW)で動作することによって、高周波および低電流リップルも実現することができますが、スイッチング損失がより高くなります。2つの方式は1つの周期内に同数の遷移がありますが、2相コンバータは単相コンバータの半分の電流を(2倍の期間にわたって)消費するため、スイッチング損失が低減します。

図5. 2相の電流と単相の電流と時間の関係を示す図図5. 2相の電流と単相の電流と時間の関係を示す図

2相コンバータのもう1つの優れた利点は、高速過渡応答および負荷ステップ時の電圧オーバーシュート/アンダーシュートの低減です。位相当りの電流が半分で、電流リップルの振幅が小さく、リップル周波数が2倍のため、位相スイッチング周波数を高めて部品サイズをさらに小型化し、熱制限に陥ることなくコンバータのクローズドループ帯域幅を増大させることが可能です。

最後に、総負荷電流の増大にともなって、受動部品のサイズが大型化します。高負荷の場合、単相バックのインダクタは大型で非効率になる可能性があります。多相動作によって各位相の電流が低減し、受動部品の最適なサイズが確保されます。

1つの例として、MAX77812は20A設定可能、単相~4相、シングル~クワッド出力高電流、バック(ステップダウン)コンバータです。多相インタリーブバックコンバータの充実したポートフォリオがシステム設計者に提供されています。

なぜ結合インダクタは高電流アプリケーションに最適か

効率を最後の1%まで絞り出すことが重要になる、非常に高電流のアプリケーションでは、結合インダクタというもう1つの手段があり、インダクタが共通の磁心に巻かれます。2相結合インダクタ(図6)では、磁束が互いに相殺し、理想的にはトランスの漏れインダクタンスLKがゼロで励磁インダクタンスが無限大になるように巻線の方向が設定されます。現実には、非結合の場合と比べて非常に低い巻線当りインダクタンス(Lk)になります。

図6. 2相結合インダクタのモデルと動作の図図6. 2相結合インダクタのモデルと動作の図

SW1およびSW4 がオンの場合の回路方程式を書いてみましょう。理想1:1トランスによって、各インダクタンス両端での巻線電圧VWは等しくなり電圧降下VLKも等しくなります。上の分岐路は次のようになります。

VIN = VW + VLK + VOUT

下の分岐路は次のようになります。

VW = VOUT + VLK

ここから、

VIN = 2VOUT + 2VLK

ここで、

VOUT + VLK = VY

したがって、

VY = VIN/2

および、

VLK = VIN/2 -VOUT

すなわち、各インダクタンス両端の電圧VLKは、入力電圧の半分以下になります。これは非結合インダクタの場合の値の半分以下です。同等のインダクタンスで、結合インダクタが生み出すリップル電流は2つの非結合インダクタの半分以下のため、部品数が減少し効率が向上します。あるいは、より低いインダクタンスで動作させることで部品数および過渡応答が向上します。

まとめ

バック電圧レギュレータは低電圧DC-DC変換を支える部品で、サーバーからスマートフォンまでのアプリケーションにコア電源を提供します。非同期整流から同期整流へ、単相から多相へ、さらに最近では、非結合から結合インダクタへと進化し、高度な負荷に歩調を合わせて継続的な進化を実現してきました。

関連情報

筆者について

Nazzareno (Reno) Rossettiはマキシムのアナログおよびパワーマネージメントの専門家です。書籍の執筆者であり、この分野で複数の特許を取得しています。トリノ工科大学(イタリア)で電気工学の博士号を取得しています。