これらの産業用通信ICは古いが、もっともな理由で優れもの

2019年3月19日

Andrew Smith  筆者:Andrew Smith
 インダストリアルコミュニケーション事業部門プロダクトマネージャー、マキシム・インテグレーテッド 


イノベーションといえば、通常は最も優れた最新技術に関係するものですが、常にそうだとは限りません。「古いけど優れもの」(oldies but goodies)、という古い言い回しには理由があるのです。時代の先駆けとみなされた製品が、長年にわたって生き残るというケースもあります。革新的であるということは、ある特定の時期に斬新で独特なものを生み出すことだけを指すのではありません。将来のニーズを予見し、それに応えることによって、長く存続するものを生み出すことを指す場合もあるのです。設計の簡素化、コスト削減、最終製品の小型化に役立ついくつかのインタフェースおよび信号ルーティングICを見てみましょう。これらのICは登場して久しいですが、いまだにさまざまな最終アプリケーションに取り組むユーザーを助け、設計目標の達成に寄与しています。

「Beyond-the-Rails」マルチプレクサでインタフェースと信号をまとめる
「Beyond-the-Rails」マルチプレクサは、幅広いユーザー層の間に熱心な支持者を得ています。Beyond-the-Railsマルチプレクサでは、最大4つの信号を1つの共有コネクタにまとめることによって、設計を簡素化することができます。インタフェースと信号をまとめることによって、ユーザーは最終製品を小型化しつつ追加チャネルの配線コストを削減することが可能です。Beyond-the-Railsテクノロジーでは、マルチプレクサはインタフェースと信号を高コモンモード電圧でスイッチング可能である一方、3V~5Vの電源レールしか必要としません。一方、従来のソリューションでは、インタフェースまたは信号と同じ電源電圧で給電される時にしか、インタフェースと信号を処理することができません。Beyond-the-Railsマルチプレクサは、追加の電源コンポーネントを不要にし、システムコストを削減しつつ設計を簡素化することができます。これらのICは、物流最適化機器、ホームオートメーション/ビルオートメーションシステム、スマート農業機器、POS端末、自動車診断装置など、さまざまな最終製品に組み込まれています。物流最適化機器では、サプライチェーンネットワークを最適化するために、在庫水準、燃料供給、輸送中の振動、発送指示などのリアルタイムデータが収集されます。これらのマルチプレクサは、車載診断装置にも広く組み込まれています。マルチプレクサによって、診断装置はさまざまなインタフェースと信号を1つの共有コネクタで送受信することができる一方、単一の電源レールしか必要としないからです。

在庫管理Beyond-the-Railsマルチプレクサは、リアルタイム在庫データなどの入力を用いてサプライチェーンネットワークを強化する物流最適化機器をサポートすることができます。

広く使用されているマキシムのBeyond-the-Railsマルチプレクサの1つは、デュアル±25Vレール以上/以下4:1アナログマルチプレクサのMAX14778です。その3V~5V電源は、最大±25Vまでのアナログ信号(RS-485、RS-232、USB 1.1など)をサポートします。このデバイス内の各マルチプレクサは、独立したスイッチングを可能にする個別の制御入力を備えています。このデバイスでは、同じコネクタピンで異なる通信信号を多重化することができます。このICは±6kV (ヒューマンボディモデル)の拡張静電放電(ESD)保護を備えているため、ケーブルおよびコネクタに直接インタフェースすることができます。このデバイスでは、低い1.5Ω (max)のオン抵抗と3mΩ (typ)の平坦性によって、全電圧範囲で信号品質を最大化することができます。MAX14778評価キットは、オーディオ/データ多重化、通信システム、コネクタ共有、ゲーム機、ハンドヘルド産業用機器、POS周辺機器、RS-485/RS-232/USB 1.1の多重化など、幅広いアプリケーションでデバイスをテストするために提供されています。

Beyond-the-Railsスイッチによるスイッチング
マキシムは、さまざまなBeyond-the-Railsスイッチも提供しています。これらのスイッチでは、高電圧インタフェースの信号を受け入れ、スイッチングすることができます。実装するチャネル数によっては、単純にマルチプレクサを使用することもできます。しかし、6つ以上のチャネルを実装する場合は、マルチプレクサとスイッチが必要になります。そして、8つのチャネルを実装する場合は、スイッチを使用して信号をオン/オフしつつ、2つのマルチプレクサを使用して入力信号をまとめる必要があります。これらのスイッチは、オーディオ信号ルーティングおよびスイッチング、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、計装システム、医療機器、産業用測定システムなどのアプリケーションに適しています。

注目すべきスイッチファミリは、レール以上/以下アナログスイッチのMAX14759/MAX14761/MAX14763で構成されます。これらのスイッチは、その電源レールを超えるバイポーラ信号を通過させることができます。電力損失を最小限に抑える低オン抵抗と高帯域幅によって、デジタルおよびアナログ信号スイッチングアプリケーションでの使用が可能です。これらのデバイスは、+3.0V~+5.5Vの単一電源で動作し、-25V~+25Vの範囲の信号をサポートして電源要件を簡素化します。それぞれの特長は次のとおりです。

  • MAX14759は、1Ω (max)のオン抵抗を備えた単極/単投(SPST)アナログスイッチ
  • MAX14761は、2Ω (max)のオン抵抗を備えたデュアルSPSTアナログスイッチ
  • MAX14763は、2Ω (max)のオン抵抗を備えた単極/双投(SPDT)アナログスイッチ

この場合、レール以上/以下アナログスイッチのMAX14760/MAX14762/MAX14764も注目に値します。前記の製品ファミリと同様、これらのスイッチも自動試験装置、光リレー代替機器、その他の産業アプリケーションなど、類似した対象の電源要件を簡素化するうえで最適です。これらのデバイスの方がオン抵抗は20Ω (max)と高いですが、リーク電流が小さいことが特長です。それぞれの詳細は次のとおりです。

  • MAX14760はSPSTアナログスイッチ
  • MAX14762はデュアルSPSTアナログスイッチ
  • MAX14764はSPDTアナログスイッチ

これらのデバイスはリーク電流が10nA/30nA (max)と小さいため、敏感なアナログ信号スイッチングアプリケーションに適しています。MAX147xx評価キットは、MAX14759およびMAX14760ファミリとMAX14760~MAX14764デバイスの評価用に提供されています。この評価キットは、8ピン/10ピンTDFN表面実装パッケージのフットプリントを持つ完全実装および試験済みの回路基板で構成され、このファミリのあらゆる製品を評価することができます。

さて、これでお分かりいただけたでしょう。アナログICの世界にある古いけど優れたいくつかの製品のことを。今後、産業アプリケーションに取り組む際には、ぜひこれらのデバイスをご検討ください。