電圧監視回路ICのすべて

2019年8月29日

Jim Harrison  筆者:Jim Harrison
 ゲストブロガー、Lincoln Technology Communications 


私は最近、どんな種類のアプリケーションに電圧監視回路が必要かと尋ねられました。愚かな質問です。すべてのアプリケーションに監視回路が必要です。もちろん、プロセッサを使用する設計なら、ということですが、これはほぼすべての設計に該当します。そのプロセッサは、電源電圧が仕様以下に低下すると非常に奇妙な動作を始める可能性があります。すべてのエンジニアは、これが破滅的な設計の不備の原因になることを忌み嫌い、場合によっては、それが重大な安全上の問題となる可能性もあります。

たとえ設計にMCUが含まれていなくても、電気工学のエンジニアは、電源電圧が低下し、しかしオフにはならない場合に、自分たちの回路が愚かな状態に陥ることを望みません。それを考えるとき、私たち人類には電圧監視回路ICが必要なのです。

これらのデバイスには、注目に値する多数の異なる機能があります。Mouser社は15,789種類の「監視回路」をリストに載せ、Avnet社は16,904種類をカタログで提供しています。しかし恐れることはありません。これらの数は、同じ基本デバイスの非常に多数のバージョンによって大幅に誇張されています。考慮すべき重要なバリエーションは少数です。

では、どのような仕様を探せばよいか?

検討すべき第1の仕様は、チャネル数でしょう。多くのポータブルまたはIoT設計の場合、単一電源用のシングルチャネルで十分です。それと対照的に、シングルチップで12チャネルの製品もあります。中には32の電源レールを監視するものまであって、何のアプリケーション用なのか見当も付きません。これらのマルチチャネルICには、1つのリセット出力を備えたものと、各チャネル用の出力を備えたものがあります。

設計に2つの電源レールがある場合、2つのシングルチャネルデバイスを使うのが最善でしょう。それらは低コストで、非常に小型で、PCBレイアウトの大幅な簡素化が可能なため、長いトレースのノイズ混入も最小限に抑えられます。一方で、電源回路がレイアウト内で相互に隣接している場合は、デュアル、トリプル、またはクワッド監視回路が最も効果的です。

最も明白な仕様は、リセット電圧、またはスレッショルドです。これは、公称電源電圧から、電源の許容誤差(通常は5%または10%)と監視回路ICの許容誤差および小さいガードバンドの和を引いた値によって決定されます。たとえば、3.3Vの電源が許容誤差である5%まで低下すると3.135Vになります。監視回路ICの精度が±1%の場合、それを加え、さらに1%のガードバンドも計算に含めます。すると、リセットは公称3.07Vになります。設計内のすべてのデバイスが、この低電圧で適切に動作することをテストで確認することが重要です。

図1. MAX16140の4ピンWLPパッケージ図1. MAX16140の4ピンWLPパッケージ

監視回路ICは、最小0.4Vのスレッショルド電圧で提供されます。これらの低電圧では、特に注意してノイズ混入の問題を防ぐ必要があります。ノイズは、隣接するトランスやRF回路、または外部ソースからPCBトレースに混入します。下記のビデオ「電圧監視回路ICの高周波ノイズ除去」では、監視回路ICがどのように安全で高信頼性のシステム動作を容易にするかを説明しています。

多くの監視回路ICは出荷時設定済みで、型番のサフィックスを介して多数のトリップスレッショルド電圧を提供します。たとえば、シングルチャネルのMAX16140は1.70V~3.25Vの32種類の選択肢を提供しています。一部の監視回路ICは、調整可能またはトリム可能です。設定ポイントの精度は重要な仕様です。MAX16140の精度は、室温で±1%、-40℃~125℃で±1.5%です。デバイスによっては、3.5%という低精度のものもあります。

検討すべき動作の特長

これらすべてのデバイスで、一般的に、リセット出力は監視回路ICの入力で監視対象の電圧が出荷時調整されたスレッショルドを下回ったときにアサートします。リセットは、入力の電圧がスレッショルド以上に戻ったあと指定可能な最小タイムアウト時間にわたって維持されます。この遅延時間は、通常は約200msですが、5µs~2秒またはそれ以上の範囲があります。このタイムアウトは、フォルト状態およびシステムの起動時に発生します。

たとえば、前述のシングルチャネルのMAX16140 (図1)は、217µs~2,000msの8種類のタイムアウト遅延時間の値に対応する型番のオプションを備えています。このチップは、小型4ピンWLPパッケージ(0.78mm × 0.78mm × 0.5mm)で提供されます。この特定のデバイスの大きい特長の1つに、その超低消費電流があり、バッテリ動作の設計に最適です。公称消費電流は、わずか370nAです。また、デバウンス付きリセットプッシュボタン入力も備え、アクティブローまたはハイまたはエッジトリガに設定することができます。

ほとんどの監視回路ICでは、出力タイプの選択が可能です。私は、MCUのリセット入力のプルアップ抵抗に接続することができるアクティブハイ、オープンドレイン出力を好んで使います。多くの監視回路ICでは、プッシュプルまたはオープンドレイン出力構成を選択することができます。

その他の監視回路のオプション

もう1つのICの例として、低電圧状態と過電圧状態の両方を監視するトリプルウィンドウ電圧監視回路ICのMAX16134があります(図2)。このデバイスは3つの個別のオープンコレクタ出力を備え、全温度範囲でのスレッショルド精度は±1%です。このチップのSOT23-8パッケージは占有スペースがわずかで、3つの監視対象の電源電圧に関して17の組み合わせが提供されます。

図2. 電圧監視回路ICのMAX16132/33/34/35の簡略ブロック図図2. 電圧監視回路ICのMAX16132/33/34/35の簡略ブロック図

これらのICの多くはハードウェアウォッチドッグタイマを提供し、通常はMCUの出力ビットの1つによって制御されます。良い例としてMAX16155があります。このシングルチャネルICは、ウォッチドッグに加えて、わずか400nA (typ) (900nA (max)、-40℃~125℃)の超低電力および1.2V~5.5Vの動作電源範囲を提供します。また、ウォッチドッグ機能をディセーブルするロジック入力も備えています。このICのスレッショルド精度は±2.5%です。

一部のアプリケーションでは、ブラウンアウト発生時にMCUがリセット状態の間もRAMデータが保護されるように、外部RAMのバッテリバックアップ対応が必要です。1つの例として、MAX6364 (図3)があります。このチップのリセット出力は、VCCがリセットスレッショルド以下のときおよびVCCがVTHを上回ったあと少なくとも150msの間ハイになります。さらに、VCCがリセットスレッショルドを下回ると、BATT入力がOUTに接続され、メモリに給電します(ただしVBATTが少なくとも20mVだけVCCより高い場合)。OUTの電流は継続的に20mAが可能です。

図3. バッテリバックアップを備えた低電力監視回路図3. バッテリバックアップを備えた低電力監視回路

より複雑なプロセッサ/MCU、Wi-Fi/ネットワーク機能を備えたものは、多くの場合起動時に電源レールの正確なシーケンスを必要とします。これは、プッシュプルのリセット出力とともに個別のオープンドレイン出力を備えたトリプルシーケンス/監視回路チップのMAX16042などのICで容易に行うことができます。このデバイスは、起動時に1つずつ順番に時間遅延付きで電源をイネーブルし、いずれかがスレッショルドを下回るとすべてをディセーブルします。電源の制御は、DC/DCコンバータのイネーブル端子または3つの電源の内の2つと直列にしたパワーMOSFETで行うことができます。

電圧監視回路ICの多様さに怖じ気づくかもしれませんが、エンジニアは恐れてはいけません。少数の重要な側面を理解すれば、これらの非常に重要なデバイスを使うための正しい道筋をたどることができるでしょう。